超能力
時計を確認すると十一時五十分。我ながらちゃんと十分前に集合場所に到着するのは偉いと思う。昨日家に帰ってからいろいろと考えた結果、行くという選択肢を取る事にした。もちろん彼女に説得されたからではない。いくら僕でもなんの伝えもなしに約束をすっぽかすのはよくないということぐらい分かっている。しかしながら以前と変わらず、人と関わるのは好ましくない。自分の意見を尊重するのならば約束をすっぽかしても良かったのになぜ来たのだろうか。僕は相当なお人好しかただの馬鹿だ。
強い風が頬をかすめたため顔を上げると、目の前にはインパクトを与えるには十分すぎる数字を持つ女がいた。
「あー。やっと気づいた。それにしても流石だね。ちゃんと約束の五分前には着いてる」
「到着していたなら声をかけろ。なんで声もかけずにずっとこっちを見ていたんだ。あとあれは約束じゃない。一方的な押し付けだ」
「えーでも君は今、約束だって認めてくれてたでしょ?それに君も昨日ずっと私こと見てたじゃん。だからお返し。君が何考えてんのかなーって」
この女は何を言っているんだ。
「大したことは考えていない。強いて言えばなんで今日に限ってこんなところに来ないといけないのかぐらいだ」
「ほんとかな?実際は私が可愛すぎて昨日も今日も私が頭から離れなかったんじゃないの?君が今日ここに来たのは私が誘ってくれて嬉しかったからでしょ?」
お腹に一発やってやろうかと思ったが我慢した。
「昨日も言ったが勝手な憶測で物事を決めつけるな。非合理的だ」
「君はブレないね。昨日とまったくおんなじだ」
「そろそろ帰っていいか?もう十分だろ?」
「だーめ。今からお昼ご飯に行くの!私の秘密教えてあげるから!ほら、私の余命についての秘密聞きたいでしょ?」
一瞬、頭の中が真っ白になった。鳩が豆鉄砲を食ったようとはまさにこのことだ。まさか余命を知ることができる能力がバレた?いやそれはない。では一体なぜ?頭の中が洗濯機のような状態の僕に彼女は言った。
「ね?来ないといけないでしょ?」
僕はいろんな感情を必死に飲み込みながら、苦しげに頷くしかなかった。




