光と闇
「何にしようか。辛い系?」
「うーん。どうせなら夏祭りっぽいやつにしない?」
「確かに。じゃあ焼きそばとかは?」
「あー、全然いいよ」
「じゃあ焼きそばにしよう」
空いている段差に腰を下ろす。
「思ったよりすぐだったね」
「うん。回転率が高くて助かる」
「じゃあいただきます」
「いただきます」
美味しい。焼きそばはあまり好きな方ではないけれど、いつもより美味しく感じる。
「君は辛いものの他に好きなものはあるの?」
「うーん。麺類は結構好きかな。ラーメンとかうどんとか」
「あー、そうなんだ。私も一緒。うどんだったら何うどんが好きなの?」
「釜揚げうどんが一番好きかな」
「釜揚げ?意外かも」
「あれが一番うどんを食べてる感じがあるからね。釜揚げだったらいつも麺つゆにつけずに食べるし」
「え?それほんと?美味しくなくない?」
「いいや、普通に美味しいよ。うどんそのものの味がして」
「えー!まじで?食べ方面白すぎでしょ。聞いたことないよ、つゆにつけずにうどんを食べるなんて」
「笑いすぎでしょ」
「あはははは。いやいやこんなん笑うでしょ」
......。焼きそばを頬張る。
「君も紅生姜残すタイプ?」
「うん」
「ふふ。私と同じだ。これ美味しいよね」
「正直これが一番美味しい」
「あはは。まったく一緒のこと考えてる」
「まあ辛いもの好きとしては当然だね」
「それもそうだね」
しばらく二人して焼きそばを口に運んだ。
「それじゃ行こっか」
「そうだね。行こう」
花火が見れる場所まで移動する。
「どの辺まで行くの?」
「えーっと、川までかな。そんなに遠くはないよ」
「了解」
花火か......。久しぶりだな。
実物を見たのなんていつぶりか......。夏祭りに来ることよりもご無沙汰だった気がする。
「花火ってさ、炎色反応でしょ?」
「え?うん。そうだけど。急にどうした?」
「いや、私もちょっとは頭いいんだぞってアピール」
「いやいや。そんなん言ったところででしょ」
思わず肩を震わせる。
「だって君はあんまり私のことを賢いと思ってないでしょ?前も勉強教えてもらったし」
「いやいやそんなことないよ」
確かに賢いかと聞かれるとだが。
「いーや、君は私を賢いと思ってないね。表情にでてるよ」
「え、そんなに?」
「うん。ちょっと笑いを堪えてる感じ、バレバレだよ」
「えー、そうかなー」
「そうだって。まったく、君の頭のよさが羨ましいよ」
「そんなことないよ。今はあんまりだし」
「その言い方だと昔は頭よかったってことでしょ?」
「まあ確かに小学生の時はね......。まあまあだったかも」
「ほら、小学生の時点で賢いじゃん。私が小学生の時なんて外で走り回ってただけだよ?」
「ふふ。走り回ってたんだ」
「鼻で笑いやがってー。そこそこ足は速い方だったんだからね」
「そうなんだ。ちょっと意外」
まったく、どんな話をしてんだか。
あまりにもどうでもいいけれど、少し気が抜ける。
......なんというか......。
『こんなふとした瞬間が俺の宝物』
そんなこと言ってたやつもいたな。
まあ分からなくもない。
だって僕は今......。
「あっれー?『男と歩いてる女』じゃん」
「ほんとだ。久しぶりー、元気してた?」
「中学校ぶりだね。ふふふ」
声のした方に目を向けると女子高校生らしき人が三人。数字は若干、少なめか?見た目からして僕が得意な方ではなさそうだ。耳に穴があいている。
「知り合......」
思わず目を疑った。
息を忘れる。
暗闇で僕の目がおかしくなったんじゃないかと思った。
君のそんな表情を見たこともなかった。




