やりたいこと
充実した......?一日だった。
結局あのライブを見た後に閉会式を迎えた。閉会式が終わった後にはクラスのみんなで片づけをし、それも特に問題なくスムーズに終了した。凛さんに言われたように誰かが僕に「お前山崎さんと付き合ってるの?」と言われるかもしれないと思ったが杞憂だった。彼女とは最後に「今日は一日、私に付き合ってくれてありがとう。楽しかった」と笑顔で言われて以来、一言も話していない。ただいつも通りの関係に戻っただけだ。
家を目指しながらそんなことを考えていた。
「なんで今パン食ってんの?遅い昼飯?」
後ろを見ると田中がいた。
「あ、まあそんなもん」
隣に並ぶ。
「文化祭楽しかった?」
「まあまあかな」
「お、そっか。それはよかった」
少しの沈黙が続く。いつもなら絶対に自分からは話しかけないが、どうしても聞きたくなってしまった。
「......。田中ってさ、もしあと一年で死ぬって言われたら......何がしたい?」
「えっ?急にどうした?」
「いや、最近小説で『あと一年で死ぬ女の子』の物語を読んだからさ。田中なら何をしたいかなって」
「えー。うーん、そうだなー。......。難しいけど俺は楽しく生きたいな。なんせあと一年しか生きられないんでしょ?じゃああと一年の人生をできる限り楽しみたいよ」
「具体的には何をしたい?」
「おぉ、結構食い下がってくるね。そうだなー......。たくさんやりたいことはあるけど......。例えばバンジージャンプとか闘牛とか?」
「本気で言ってる?」
「うそうそ冗談冗談、まあそうだね。本当に難しい質問だけれど、真面目に答えるとしたら......」
「何?」
「君との何気ない会話かな。今みたいな」
「もう冗談はいいよ」
「いやいや本気だよ。これはガチのまじ。やっぱりさ、俺はこのなんの変哲もない日常が好きなんだ。しょうもなくて、くだらいことで笑える毎日が好き。一瞬『ふっ』て気が抜けて、ふとした夕焼けや友人との会話が何よりも好きかな。そういう時に『ああ、俺って生きてるんだな』『なんか高校生らしいなつ』って思える。それが俺のかけがえのない、『宝物』」
「なるほど......」
「くっ、ごめん忘れてくれ。言ってからめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた」
「いや、ありがとう。いいアドバイスになったよ」
「アドバイス?」
「それこそ忘れてくれ」
不思議そうな表情をする田中を横目に角を曲がる。
「じゃあ俺こっちだから」
「あ、お、おう。じゃあな」
「じゃあね」
綺麗な影を落とす帰り道だった。




