嫉妬
僕はいつも自分の選択を後悔してしまう。
まるで、超有名なラーメン屋の店員をしているかのようだった。
僕たちはジュースを売る中で、タピオカじジュースも売っている。それを作るのが大変で、茹でたりミルクティーを注いだり、とにかく忙しそうだった。タピオカ以外はすべて缶ジュースなため、それをお客さんに渡すだけでよかった。僕はもちろん後者で働いていた。彼女が受付で聞いた注文を、僕が間違いのないように手渡ししていく。僕も一生懸命だったし、彼女も一生懸命だった。だから、何回か触れたその手を気に留める暇なんてなかった。
「はあ」
とにかく疲れた。今はひと段落ついて、お客さんも並んでいない。腰を降ろして休憩する。
「お疲れ様。急に言ったのにありがとうね。ほんとに助かったわ」
凛さん?
「あ、ああ。別に大丈夫。暇だから」
少し目を泳がせてしまう。
「そっか」
できれば隣に座らないでほしい。
......。
無意識に彼女を探していた自分を自覚して言葉を失う。
いや、別にそういうわけじゃない。ただなんというか......。
......。言葉にならない。
「そういえばさー」
「え?」
「山田さんって『今お手洗いにいる人』ちゃんと付き合ってるの?」
「え?何言ってんの?」
「大丈夫、今彼女はお手洗いに行ってるから」
「そういう問題じゃないって、え?なんで?噂?」
あまりにも唐突すぎて頭が追いつかない。けれどもめんどくさいことになるのは間違いなさそうだ。
「クラスの何人かが、君と彼女が一緒にまわってるのを見たって言ってたから。それにさっきも彼女と一緒にいてたでしょ?じゃあやっぱり付き合ってるんじゃないかって」
「違うって......」
やっぱり見られていたか......。そりゃあもちろん見られてないとは思ってなかったけど、改めてこうなると、とてつもなくめんどくさい。
「じゃあなんで一緒にまわってたの?君と彼女が話してるところなんか見たことないんだけど」
「それは......」
どう答えるのがベストやら......。頭をまわそうとするがうまく働かない。シフトのせいだ。そもそもなんでこんなに苦しい状況になったんだ。なんかもうどうでも良くなってきた。
しばらく沈黙が続く。凛さん?の顔なんて少しも見ずに正面だけを直視する。どうにかしていなしたい。
「ただいまー」
いつもタイミングのいい女だ。よくも悪くも。
「あっおかえりー」
隣の女も立ち上がる。
「あれ?二人で話してた?お邪魔したかな?」
見なくてもニヤニヤしているのは分かる。
「そんなことないよー」
多分こっちを見ているのだろう。目線を感じる。
「ていうかもう時間的にシフト終わっていーい?」
「あーそうだね。二人とも終わっていいよ。私はちょっと残るけど」
「なんで凛ちゃん残るの?」
「タピオカを作れる人材があんまりいないからね。まあちょっとだけだよ」
「そっか。ありがとう。じゃあお先に」
彼女の後を追う。
「あれ?そこの君は何もなし?」
逃げきれなかった。
「頑張って」
ギリギリ聞こえそうな声で言う。
「まあ許してあげよう」
後ろを振り向かずに彼女の隣に並ぶ。
「やっぱり凛ちゃんと何かあったでしょ?」
「いや、何もないよ。ちょっと話しただけ」
「ふーん。......まあ凛ちゃん可愛いしね」
「えっ?だから違うって」
「そーですか。まあお好きなように」
「えっ?ちょっと......」
ツカツカと歩いて行く。
え。
何これ。
どうすればいいんだ......。




