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いま



* * * * * *



「輝生―ご飯できたわよー」

「分かったーすぐ行くー」

階段を降りているといつも通り声が聞こえる。

「今日のご飯もまた一段と美味しそうだな」

「いっぱい召し上がれ。あ、輝生。もう運んでもらったから食べていいわよ」

「はーい。いただきます!」

「召し上がれ」

美味しい。

「今日は学校どうだったの?」

「楽しかったー」

「どんなことしたの?」

「今日は、体育の時間にサッカーしたり昼休みに鬼ごっことかみんなでやった。あ、あとね。授業でめちゃめちゃ難しい算数やったんだけど解けたの僕だけだった。すごいでしょ」

「すごいじゃないか。その調子で頑張れ」

「ふふふ。流石ね。明日も頑張って」

「ふふーん」


何も、必要なかった。

ただそれだけでよかった。


「おはよう」「おはよう」

「いってきます」「いってらっしゃい」

「ただいま」「おかえり」

「いただきます」「召し上がれ」

「おやすみ」「おやすみ」


当たり前だった。


そんな日々が僕には......。



* * * * * *



はっとして、いまを噛み締める。


「そ...うか......。君がまさかそんなことを考えながら生活していたなんてね......。思いもよらなかったよ」

できるだけ冷静に話す。

「まあ実際のところ悟られないに生活しているしね」

声が少し高い。

隣では音が聞こえる。ブランコをこいでいるようだ。



僕は兎にも角にも必死で考えを整理していた。

情報量が多すぎて頭が追いついていない。

頭の中を先ほどの会話に戻す。聞いている中でいくつか違和感を感じた。



「戦争?」比喩表現にしては重ずぎる。

「認めてくれた......?」

それに途中で言葉に詰まっていた。


あれは......。



「あれ?輝生と山崎さんじゃん。こんなとこで何してんの?」

慌てて声のした方に目線を向けるとスクールバックを肩にかけた田中が立っていた。

「田中......」

こんな所で二人でいる状況を見られるのはまずい。良い言い訳がないか頭をフル回転させる。

「図書委員の仕事でね?ちょっと話したいことがあったから」

彼女が流暢に答える。

「なんだ。なるほど。そういえば山崎さんも図書委員だったな。仕事中に失礼しました」

拍子抜けするような声で喋りながら、田中が僕に目線を送る。

「頑張れよ。じゃっ」

そう告げると早足で去っていった。

一安心だ。田中でなければ大惨事だっただろう。クラスの人気者とクラスの底辺が二人きりで公園にいるなんて。よくよく考えれば大層なことだ。

「田中君だったらまあ大丈夫でしょ」

「彼と話したことあるの?」

「いや、ないけど、さっきの感じだったら大丈夫そう。良い友達を持ったね」

「そうか?」

「うん、良い子だよ」

どこからその根拠がくるのか分からないがまあいつも通りだ。

「そろそろ帰ろっか。暗くなってきちゃった」

「そうだね。暗いし家まで送るよ」

「えーほんとー?ありがとう。見かけによらず優しいところあるじゃん。行こっ」


 この暗闇で数字は見えないが、彼女の顔ははっきりと見える。


それが何だか嬉しかった。

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