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物語る。  作者: 桃巴


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34/36

物語る。34

知っている。

ここを通った。

光の痕跡を辿っていく。

魔力溜まりを抜けてそこへ。


『ちゃんとルキオに継承したからね。覚えといてよね』


ああ、視える。

光の柱が。

光が螺旋状に天空へと繋がっている。


ルキオは導かれるように、光の柱に入った。

すると、上昇していた螺旋が下降螺旋へと変わっていく。

天が見守り預かっていた軌跡が降り注ぐ。

ルキオは目を閉じた。


『……お前、何を隠している?』

私の声だ。

『私は……』

耳元に近づく人影。

『……』

躊躇する思いごと抱き締めた。

『ルキオ?』

背中におずおずと手が回る。

隠しているのは私の方だ。

『私は『好きな者』の名も呼べぬ『呪い茨の棘』にかかっている。醜い女の呪いだ』

背中に回っていた手がグッと私を抱き締める。

二人にもう壁はない。

『私は『聖女』だよ、ルキオ。元に戻ろうね。私がルキオの『呪い』を祓うから』


ルキオが目を開くと、上昇螺旋の光へと変わっていた。


「あん、の……ちんちくりんめ」


ルキオはもう一人のルキオを取り戻した。






リリアナの姿は腐海の森にある。

川岸に座り、流れを眺めている。

それが、毎日の日課になっていた。


リリアナは赤い宝石のペンダントをふわりと包む。


「おはよう、ルキオ」


リリアナは今日も髪一本だけのルキオに、思いを込めた。


「……会いたいな」


ひと言だけ想いを吐露する。

それ以上は口にしない。

そう決めて過ごしている。


「おーい、嬢ちゃん」


背後からの声に、リリアナは振り返る。

白猫を抱いた行商人が立っていた。


「叔父さん、叔母さん、おかえり」


リリアナは立ち上がった。


「依頼ある?」


必要な者の所へ必要な薬を届ける依頼だ。

叔父さんと叔母さんは、猫に変化したり、行商人に扮して年がら年中国々を巡って民の声を拾っている。

……クランツでは、確かにルキオの元に万能薬は渡ったし。


「んー、特にねえな」

「そっか……暇だな」


「お、そうだ。小屋に寄ってきたぞ」


リリアナの胸がキュッと愛おしさで苦しくなる。

クランツを出てから、まだ一度も小屋には戻っていない。


「箒が立てかけてあった」

「嘘!?」


第三師団長からの合図だ。


「暇なら、さっさと行ってこいって。ついでに、多量に作った万能薬を回収してきな。宝の持ち腐れじゃねえか」

「うん……」


ーーでも、あれはルキオのものなんだよ。もう不必要になっちゃったけどさ。

リリアナは踏ん切りがつかない。


「嬢ちゃんがそんな辛気臭えままなら、お師匠様が泣くぞ」

「そ、だね」


リリアナは苦笑した。


「夜になる前に行け」


行商人の叔父さんが空を指さす。

リリアナはまだまだ青い空を見上げる。


「星空、じゃないか……昼間だし」


眩しさに目を閉じた。

すると、星空の下で手を繋いで歩いた景色が、鮮明に瞼に浮かぶ。

今のルキオの中に、あの時のルキオはもういない。

だけど、リリアナの中には在る。


リリアナは赤い宝石に触れた。


『ここにいてね』


ニャーゴ

ヌャーゴ


視線を戻すと、黒猫と白猫が茂みへと消えていった。


「……行ってくるかな」


リリアナは、山奥の小屋へのんびり向かった。




「あ、ニセッキオ!」


戦友の姿を見て、リリアナは思わずそう声をあげた。

出入口横に立てかけてある(ニセッキオ)に駆け寄る。


ヒラヒラと紙が舞い降りた。

リリアナは屈んで紙を拾う。


***

聖女様へ

運命には抗えません。

***


「はい?」


第三師団長からの文だとはわかるが、その内容に首を傾げる。

首を傾げながら、リリアナは箒の柄に手を伸ばした。


ボロッ


「へ?」


リリアナは箒の柄を、しばし見つめる。正確に言えば、箒の柄だったものだ。へし折られて、棒になっている。


『っ、こいつへし折ってやる』


ルキオの言葉が脳裏を過ぎる。


そして、

ビクン!

と、背筋で感じた。


『居る』


リリアナは赤い宝石を握る。

そして、咄嗟に転移した。

が、すぐに感知されることはわかっている。


『ヤバいヤバいヤバい!』


リリアナは、連続転移する。

その間にも、どこに向かえばいいか考えを巡らせながら。


『ルキオが知らない場所、感知されない場所は……あそこしかないけれど……』


確実に近づいてくる魔力に、リリアナは寸でのところで転移した。


腐海の森へと。


リリアナは、いつもの川辺にへたり込んだ。

本当は腐海の森へは転移してはいけない。魔力の痕跡を探られないために。


「『緊急避難』できないから」


両手で顔を覆い、踞る。

涙がとめどもなく流れる。


転移寸前で、ルキオが一瞬見えた。


嬉しさと苦しさと、愛おしさと悲しさと……残酷な奇跡だった。


「おい」


え?

リリアナは空耳を聞いた。

だが、その魔力が背後にあるとわかる。


「な、んで?」


口に出すものの振り向けない。

信じられないから。

ここを知るはずないのに。

それに、転移独特の気配もなかったのだ。


「なんでだと? 『緊急避難術式発動』と念じたからだ」


リリアナは自分の耳を疑った。

それをなぜ口にできるのか、と。

導いた新たな軌跡に、それはない記憶なのだから。


「私、幻聴が聴こえてる?」

「お前なあ」


ふわりと包まれる。

背後から抱き締められていた。


「ちょこまか逃げやがって、すばしっこい『野良』猫みたいだな」


ハッとする。

初めて会った時と同じだ、とリリアナは気づく。


「なんか、言え」


リリアナは首を横に振る。

喉が、胸が熱くなって、声が出せない。


「ったく、ちんちくりんめ、減らず口はどこに置いてきたんだよ?」


リリアナはまた首を横に振った。

今度は頑張って息を吸う。拙くて、ぎこちなくて、だけど紡いでいく。


「ヒックヒック……ちんちく、りんでも……野良でも……ヒックヒック、お前でもない、もん」


そう言うのがやっとだった。

確かな答えが欲しかったから。

ルキオの吐息が耳元に近づく。



「リリアナ」



それが全てを物語る。

それ以上の言葉は要らないのだから。







物語る。

ーー失せ恋本編完結

プロローグでもありエピローグでもあり。


昨年末三週間弱で駆け抜け執筆した作品です。

突っ走り気味展開のため、矛盾等あるかと思います。

手直しは気分がのったとき……新作を手がけるより手直ししたい気分になった稀なとき、かと。


おまけ話

今週中に公開できるように手がけます。


桃巴。


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良かった! 幸せになってほしい2人です。 更新ありがとうございました
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