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美しすぎる。ならば上手く付き合っていかなければ

 私にも小さい頃というものがあった。

 当たり前よね、いきなり今みたいな容姿と性格になったわけではない。


 私自身はおかしいとは思わないけど、周りからは少し変に見えるらしい性格や男性観も、小さい頃からの経験の積み重ねで作り上げられてきたものだ。

 今は謙遜することすら嫌みなくらいの美少女なわけだけど、小さい頃はどうだったかというと……普通にとんでもなく可愛かった。


 流石に今のように告白だの求婚だのそういうのはあまりなかったけど、街中を歩いていれば必ず男性の視線は集中したし、写真を撮らせてくださいとか芸能事務所はどこに入っていますかとか、そういう声かけはしょっちゅうだったわね。


 子供相手になにをしているのだろうこの男達は、と最初の頃は思っていたのだけど、段々と慣れてきてそれが当たり前になる。

 鏡を見て自分の容姿を確かめる。

 雑誌やテレビを見て奇跡の美少女と呼ばれている芸能人を見る。

 ……うん、どう考えても私のほうが可愛い。


 自惚れではない。一生懸命自分を低く見積もっても、そういう結論になってしまう。

 多分これは神様が作ったエラー品だ。

 ゲームでいうところの魅力値設定をミスって一桁多くしてしまったのだ。

 今更低く設定し直すわけにもいかないから、悪いけど一生そのままいてくれ、って感じだろうか。


 ならば上手く付き合っていかなければ。

 帽子やマスク、伊達メガネなども試してみたがすぐにやめた。

 なぜかそれらはあまり役に立たない。

 着けていても人目を引いてしまうし、『あのー、マスクとメガネ取ったとこ見せてくれないかな?』って言ってくる男達が多くてその度に対応するのが面倒になってしまったのよね。


 男達曰く、顔を確認するまでもなく後ろ姿を見るだけで絶対に美少女だと分かるし、身体に電撃が走ったようになるのだそうだ。

 後ろ姿でそれなら帽子やマスクなんて意味ないわよね。

 一体どういう理屈で後ろ姿を見ただけでそんなことが分かるのかしら。

 男というのは超能力でも持っているのかしら?


『いや、分かるんだよ……説明できない。君はまだ小さいから、別にスタイルがいいとかそういうのではまったくないんだけど、分かるんだよ明らかに世界一であろう美しさが歩いている、絶対に声をかけないと後悔するって。

あ、言っておくけどナンパなんてしたことは一切ないんだ僕は。初対面の女性に声をかけたのなんて人生で初めて、そして多分これが最後だと思う。

ああ、質問への答えの結論は……君はどうやっても男の目を引く。後ろ姿だろうと、距離が離れていようと、帽子を被っていようとそれは変わらない。

そのことを自覚して気をつけて生きていってね。隠せるようなもんじゃない。

僕はね、自分のことを理性的だと自覚しているけどそれでも逮捕覚悟で小学生低学年であろう君に声をかけてしまったんだから』


 算数が得意そうなメガネをくいっと上げるのが癖な青年に質問したらそう言われたことがある。

 真面目そうないい人だったわ。

 だから、このエラー品の身体のことは特に隠そうともしなくなっていった。

 見たければ見てもいいわよ。

 他の男も、

 

『多分一生君のことは忘れない。今日1回見ただけ、少し話せただけだけど、爺さんになっても忘れないと確信できる。本当に俺なんかと喋ってくれてありがとう。写真を一枚撮らせてくれてありがとう。これだけで生きていけるような気がする』


 こんな感じ。

 

「はい、こんにちは」

「そうね、いい天気ね」

「そう、お仕事がんばってね」 


 私が言ったのはこの程度のセリフだけ。

 

『なんで私がこのくらい話しただけで男の人はこうなっちゃうのぅ~?ほんとフシギー!』


 などとは思わない。

 これが私にとっての普通だし、あの男のこれからの人生が私と話した1分にも満たない時間で上向くのなら、それはこのエラーの身体を持った人間としてやってあげなければならないことだろう。

 むしろ申し訳ないくらいだ。

 私は別になにもしていない、指先すら触れたわけでもないのに。


 ただ、変な女に引っかからないでほしいとは思う。

 私と話して喜んでくれる人だから。


 小学生低学年でこれなのだ。

 これから高学年になり、中学生になり、高校生になる。

 これから更に美しくなり、男を引き寄せる。

 それはほぼ確信だ。


 こういう日常を送っているので、頭お花畑ではいられない。

 本とかで色んな知識を詰め込んだ。

 男というのはどういうものか、経験からだけではなく知識としても必要だと思ったからだ。


 ……なるほど、これから大きくなるにつれて、今はまだ起こっていない問題が発生していくのね。

 確信に近い思い。


 女であるというだけで、色々な問題が起きる。

 恩恵でもあるけれど、問題の種でもあるのだ。


 そして私は普通の女とは違う、それは幼くして明らかに自覚している。

 どう折り合いをつけていく?

 私は大富豪の娘でもなんでもない。

 どっちかといえば経済的には恵まれていない家庭の娘だ。

 ボディーガードなんて付けられるわけがないし、セキュリティ対策の優れた私立なんとか学園に行くことも不可能だ。

 

 今は普通に最寄りの小学校へ通っているし、その後は最寄りの公立中学校に行くことになるだろう。

 高校も学力に応じた公立高校へ進学することになる。

 教師という存在はいるが、常日頃から私だけを気にかけて守ってくれるわけではない。

 このエラー品の身体の管理、セキュリティ対策は自分でやらねばならないのだ。


(今はまだ男達は私を見て、話すだけで満足している。そりゃそうよね、いくらなんでもこの年齢の私を見て性的に興奮する男はいないわ。いたとしたら異常者よ。

でも多分これからはそうじゃなくなっていく。いつ頃からかしら。高学年になってから?それとも中学生になるまでは大丈夫なのかしら?色々知識は付けてみたのだけど、なかなかそこら辺のことは分からないわね……)


 あ、そうか。

 聞いてみればいいんだ。

 男の意見ってやつを。

 男はみんな私に親切だし、今まで変なことをされたこともない。

 私が少し質問をすればあらん限りの知識を振り絞って答えてくれる。

 次に声をかけてくる男2、3人に聞けば少しは傾向も見えてくるでしょう。

 質問内容は……


『ねえあなた、私が何歳になったら性的な意味で興奮するようになる?』


 ってところかしら。

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