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お嬢のお金

「そういや嬢ちゃんの昔の話聞くと、金には困ってないというか普通に金持ちだよな?」


 いつも通りのみんなと焚き火を囲む談笑タイム。

 船長の人が尋ねてきた。


「お金?まあそうね、不自由はしてなかったわね」


「確か、彼氏たちの稼ぎは、みんな嬢ちゃんが管理してるんだっけか?金持ちもフリーターも問わず彼氏たち全員の分を」


「そうよ。それで皆の分のお小遣いを振り分けるの。仕事をしている人は、そのぶん必要になるお金も多いから、経費として別に渡すお金は多くなるけど……言っとくけど、私のお金は私が稼いだものよ?彼氏たちの稼ぎを私のものにしているわけじゃないわよ?」


「え、そうなのか?てっきりそうだとばかり思ってたんだが」


「あのね、預かるお金は私たちの将来のために貯めたり使ったりしています。そのお金を私個人が好きにできるわけがないでしょう。生活するというのは色々と物入りよ?いざという時の蓄えは必要だわ。私が浪費してどうするのよ」


「そこら辺は現実的なんだな。じゃあお嬢のお金はどうやって稼いでいるんだ?彼氏たちの相手だってそれだけの人数になれば手間がかかるだろうし、普通に働きに出るってだけじゃなかなか大金にはならないだろう」


「そんなことが気になるの?まあ話してもいいけど……その前にあなたたちにとっても重要なことだから改めて説明するわよ?日本に帰ってからの生活のこと、お金のことを」


「お、おう……」


「まず今まで話していた通り、あなたたちが稼いだお金は一旦全部私が預かります。その上でお小遣いとして渡します。まあ、そうしている夫婦も多いからここらへんは想像しやすいでしょうね」


「まぁそうだな。そうしている夫婦は多いな」


「それでここが重要なのだけど、たくさん稼いでいる人もそうでない人も、お小遣いは同じ額です」


「……それ前から思ってたんだが、大丈夫なのか?労働意欲というかそういうのの面で。いくら稼いでも使える分が同じってのはちょっとマズくないかって思うんだが」


「それが問題は起きていないのよ。色々と調整はしてみたのだけどね、ここが着地点になったの。もちろん稼いでいるお仕事をしている彼氏はそれなりにかかるお金は多いわ。見栄えのするスーツに時計、それに車もそうね。世界中を飛び回れば当然お金はかかるし、会食などもそれなりのお店でしなければならない時も多いわ。だからね、そういうのは必要なお金として認めてちゃんと経費として渡しています。その彼氏が経営する会社の経費とは別に、彼氏個人が仕事上必要とするお金もね」


「なるほどなあ」


「でも、自分1人でお昼を食べたり、趣味のものを買ったりするのはお小遣いの範囲でしなさい、ということよ。仕事をしていて他人から見て恥ずかしい思いはさせないわ。だからそういうものは必要なお金として認める。だけど、私の彼氏の一員である以上は、自分1人の時は他の全員の彼氏と同じ扱いになるということね」


「それって不満出なかったのか?」


「面白いくらい出ないわよ。だって私がいるんだもの」


「あー……そっか。なるほどなあ」


「そういうこと。男である以上、手に入れられる最高峰のものは既に手に入れているわけよ。後は些事ということね。全身合わせて数百万円のお金をかけて着飾ったところで、私を連れてファストファッションの服を着ている男より下になるのだもの。そういう欲求ってのは、私と付き合った時点で自然と薄くなっていくみたい。それまではギラギラとしていた男であってもね」


「そうなってくのも分かるってもんだな」


「船長の人、あなただって知り合いに稼いでいる人はいるでしょう?交友関係が広そうだし」


「何人かはいるな」


「じゃあ、日本に帰ったらその人に偶然を装って会ってみましょう。それで私はあなたと腕を組むわ。そうしたら『あー悪い、今からこの女(スケ)と牛丼食いにいくんだよ。なかなかイカす女(なおん)だろ?あっちの具合もいいんだぜ』って言ってみなさいよ」


「なぜ昭和テイストかつ下品なのかは聞かないが、確かに食いに行くのが牛丼だろうがマックだろうが、嬢ちゃんを連れてる以上、もうそれで勝ちだわな圧倒的に」


「でしょ。それで時間を確認するフリをして腕時計を見なさい。カシオの1500円のでいいわ。それでこう言ってみなさい。『いやはやコイツからのプレゼントの時計コレだぜ?シャバいだろ?まったくチョーハズだぜ。今すぐドロンしたい気分だぜ』って。そうしたら相手の時計がロレックスでもパテックフィリップでもあなたの勝ちよ」


「だからなんで昭和なんだよ……でも嬢ちゃんの言う通りだな。嬢ちゃん自身が言うのは凄いと思うがその通りだからなんの反論も出ないわ」


「別に欲しければプレゼントとして高い時計くらいいくらでも買ってあげてもいいのだけどね。私個人のお金からね。でも不思議とそういう風に言ってくる彼氏はいないわ。そういう物質的な欲求って私と付き合った時点で薄くなるのよ。つまるところ人の欲求って、他人からどう思われるかってことでしょう?今はSNSの影響でそれが顕著になってるけど、大昔からそれは変わってないわ。だからこそ、私と付き合って、私を連れている時点でその辺りの欲求は全部埋まってしまうわけね」


「深いなあ。欲求ってのは他人からどう思われるか、か」


「そういうこと。他人から羨ましがられたい、カッコいいと思われたい、そこから転じて軽く扱われたくない、影響力を持ちたい、そんで人生の最期のほうになると名誉欲ってのが出てきて銅像建ててみたり下らない人生だったのに中身の9割が捏造の人生録を出版して自分の会社の社員に買わせたり配ったりするようになるわ」


「お嬢、人生を達観しすぎだろ。中身お婆ちゃんだったりしない?」


「この容姿のせいで少しばかり色んな人と関わる機会が多かっただけよ。死に際の金持ちからどうしてもって言われて呼ばれることなんてしょっちゅう。最期の最期に求めるのが、性格の中身も知らないただ綺麗なだけの女ってのはどうかと思うけどね」


「嬢ちゃんは自覚してないかもしれないけど、『ただ綺麗なだけの女』じゃないからな。そういう次元は超えてる。気の毒だがその金持ちの気持ちは分かるよ」


「そんなものかしらね。まあ私は同情で交際したりすることはないし、彼氏以外とは手も握らない。だから、来世があったら期待しなさい?くらいのことしか言わないのだけど、それでもとても満足そうな、穏やかな顔つきになって最期を迎えられたようね」


「気持ちは分かるよ」


「話が逸れたわね。というわけで、日本に帰ったらそういう生活になるからみんな覚悟しなさい。きちんとお金は一旦私に預けること。きちんとそこから分配します。異議のある子はいる?」


「「「「「別にないでーす」」」」」」


「いい子ね。それと……次は私個人のお金の話だったかしら?それこそつまらない話よ?」





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