じゃあもうもったいぶらないわね
この島に着いてから最初の朝が来た。
昨日男達が総出で、不格好ながらもそこそこに居心地のいいテントを作っていた。
船からはそれなりに物資を持ち出せたこともあり、人が寝起きする分には問題は起きない程度のテントがそれなりの数出来上がっていたのだ。
私には専用のテント、男達は気の合う者同士で5,6人ずつ1つのテントで眠ったようだ。
私がテントから出ると、男達30人が一斉に視線を向けてくる。
島で唯一の女であるという希少性と、それに加えて昨日の出来事である。
注目するなというほうが無理だろう。
昨日、私の小指と薬指に屈服させられた体格のいい男は、顔を青くしながら下を向いている。
うん、よし。怪我はしていないようね。
確認を済ませた私は声を上げる。
「おはよう、私の可愛い彼氏達。昨日はよく眠れたかしら?」
声を上げるものはいない。
「私が質問したのが聞こえなかったかしら?もう一度言うわよ?『昨日はよく眠れたかしら?』」
私が質問を繰り返すと、
「はい、よく眠れました!」「朝までぐっすりでした!」「テント作りがなんとか上手くいって良かったです!」「問題ありません!」
等々の返事が返ってきた。
うん、良い返事の仕方だ。
もしかしたら男の躾は全員一斉にしたほうが効率がいいのかもしれない。
日本にいた頃は20股していたとはいえ、流石に全員を集めて躾をするということはなかった。
島という特殊な環境だからこそ成り立つことだろう。
「良かったわ。睡眠不足はこんな環境では命取りになりかねないわ。夜はきちんと熟睡するのよ」
これに対しても男達はきちんと返事をする。
うんうん、いい子達ね。
「今日はあなた達をなんて呼ぶか決めようと思うわ。大切なことだからみんなちゃんと集中して聞いてちょうだい」
私が言うと、船長の人が恐る恐ると手を上げる。
「嬢ちゃん、つまり、ここにいる30人の名前を確認するってこと……だよな?」
「違うわよ?」
「ん?だってなんて呼ぶか決めるんだろう?つまりは名前を……」
「あなた達は今日から、少なくともこの島から出るまで名前を剥奪します。私が名付けをするのでお互いをその呼称で呼び合いなさい」
船長が呆けた顔になる。
「……名前を……剥奪?いやなに言って……」
「あなたは今まで通りでいいわね。『船長の人』よ。それがあなたのここでの呼び名。
私は残り29人の男を見渡して、
「あなたは『魚を捕る人』よ。横のあなたは『穴を掘る人』、その隣のあなたは『罠を作る人』ね」
私はどんどん名付けを行っていく。
船長が遮るように
「おいおいちょっと待ってくれ。それは役割だろ?名前とは違うもんだぜ嬢ちゃん。元々俺らにゃ名前があるんだからそれで呼べば……」
「それは私が決めるわ。今全員分は決めないけど、追々名前をあげるから安心しなさい」
「……」
「きちんとした役割をこなすことが大切なのよ。魚を捕る人、あなたはもしかしたら今までの人生で魚なんて触ったことすらないかもしれない。でも構わないわ。これから自分で考えてどうしたら魚を捕れるようになるか勉強しなさい。穴を掘る人、あなたの仕事も重要よ。まずトイレだって穴が掘れないことには始まらないわ。ゴミをその辺に放り捨てれば虫が湧いたり腐ったりして不衛生よ。穴の掘り方を一生懸命考えなさい。罠を作る人、この島は広いからきっと野生生物がいるわ。食料になる動物を罠を使って狩るのはもちろん、危険な生物がいたら罠を使って駆除してちょうだい。とても大切な仕事よ」
男達30人は私を見たまま黙り込む。
「それぞれに役割を与えるわ。平等にね。ただ例外がある。もしその仕事が致命的に向いていなくて『怪我や死に繋がる可能性がある時』のみ変更を考えるわ。向いている、向いていないはほぼ考慮しません」
船長の人がおずおずといった様子で話す。
「ああ、まあ、役割は明確にしといた方がいい……か。それにそれぞれの役割で成果を上げれば、なんらかの報酬とかのメリットも考えやすいしな」
誰かがそれを言うであろうと予測していた私は即座に反論する。
「成果によって報酬は変化しないわ。少なくとも私の身体については仕事の成果がどうであろうときちんと分け与える。魚を捕る人が一週間一匹も魚を捕れなくても抱いてあげる。それは今この場でハッキリ言っておくわ。みんな覚えておいてちょうだい」
それを聞いた船長が
「ちょっと待ってくれ嬢ちゃん。嬢ちゃんは若いから分からないかもしれないが、報酬、つまりインセンティブがないってのはサボったやつが勝ちになっちまって……」
「関係ないわ。インセンティブは、この集団の蓄えが増えたり安全性が増したりすることよ。もう一回言うわよ。どんなにそれぞれの仕事で成果を上げても、私はその人を多く抱いてあげないわ」
「……」
「けど、ちゃんと誠意を持って一生懸命仕事をしなさい。みんなのためにね。もちろん私を含めた、よ。もしわざとサボったり手抜きをしていると私が判断すれば……」
私は昨日痛めつけた体格のいい男に目を向ける。
男は『ヒッ』と言って目を背けた。
「そういうことよ。仕事の成果がなくても食べる量が減ったりすることはない、私の身体を好きにする順番が飛ばされることもない、ただきちんと仕事をしなさい。それだけよ。いい?」
全員を見渡す。
「私は今『いい?』と質問したのよ」
そう言うと30人全員が
「「「「「分かりました!!」」」」
と返事をしてきた。
うんうん、可愛い良い返事ね。
「とは言っても流石に今まで箸より重いものを持ったことが無さそうな線の細い子に一番の力仕事をやらせようとは思っていないわ。それじゃあただの虐めになってしまうものね。今日のところはさっき名前を付けた3人以外は自分の思うように動いて働いてみてちょうだい。それを見てから私が決めるわ。それと私の呼び名だけど……もう船長の人が呼んでいたからそのままみんなも『嬢ちゃん』か『お嬢』と呼んでちょうだい。その2つ以外の呼び方は許可しないわ」
向き不向きがあってもきちんと誠実に仕事をやればいいけど、流石にできないことを無理やりやらせるのは違うのだ。
それは向き不向きではなく『できないこと』なのだから。
アリに因数分解はできないのだ。
それはそうと……
「返事」
「「「「「分かりました!!」」」」
うん、いい子ね。
さて、仕事としては一瞬考えてみただけでも、火を守る人、拠点を守る人、木の実を集める人とか色々あるけど……そこら辺は生活しながら追加していくしかないでしょうね。
今全部思いつくのは無理だわ。
「さて、じゃあもうもったいぶらないわね。みんな気になっているであろう私の身体の話。もしかしたら働くだけ働いてご褒美は貰えないんじゃないか、って考えてる人もいるはずよね。だから今日、きちんとご褒美を貰えるということを証明します」
30人の顔つきが明らかに変わる。
「既に言った通り、完全に順番よ。順番は最初に私が決めます。くじ引きだとそれぞれを恨んでしまって暴力沙汰に繋がる可能性があるでしょう?私が決めたことに文句を言うなら、それは私の敵ということだから……どうなるかは分かるわよね」
慌てて全員がウンウンと首肯する。
「では今日は『体格のいい人』と『魚を捕る人』よ」
2人をじっと見る。
体格のいい人は少しだけビクっとした後に私の顔を見て戸惑っているようだ。
「昨日は痛くしてしまったから、あなたが一番最初よ。順番だから別にあなたを特別扱いだとか優遇しているとかそういうことではないわ。そこだけは勘違いしないでね。魚を捕る人は……まあそこにいたから」
魚を捕る人がガッツポーズをする。可愛いわね。
「時間は日没前よ。それまではみんな一生懸命仕事をしなさい。何がこの島の生活に必要かそれぞれちゃんと考えて動いてちょうだい」
「「「「「分かりました!!」」」」
さて、私は私で考えることがある。
とにかく暴力沙汰を起こさないこと、死人を出さないこと、そのために全力で私は頭を動かさなければならない。
私の能力は万能ではない。
万能どころか今の目的のためにはかなり使い勝手の悪い能力とすら言えるだろう。
24時間、30人の男達の監視ができるわけがないのだから、いくら彼氏に対して無敵であろうと大した意味はないのだ。
暴力で脅しても突発的な争いを止められる保証はない。
男達が『争いをしても意味がない、むしろ損だ』、そう思わせる必要がある。
つまるところ、私の身体もそのための材料なのだ。
私の身体を使って発射させ、欲求不満にさせない。
ただただそれだけの目的であって、男達を喜ばせたいとか、ましてや私の快楽などのためではない。
だから、一番効率的に私の身体を使って男達を鎮める方法を、私は頭を使って考えるのだ。
(1日2人射精させるだけじゃ無理か……暴動が起きかねないわね)
私への危害の心配は一切ないが、暴動が起きれば男達が傷つく、人死にが出る。
1日に何人の男を射精させれば一番効率的に暴動を防げるか、それが一番重要なのだ。
増やせばいいというものではないのは簡単に分かる。
島での生活という大前提がある以上、発射のために体力を使い果たしてしまっては全員の生存に関わるし、何より私の身体という希少なものをご褒美として頑張るという意欲が沸かなくなってしまう。
そのせいで食料が足りなくなり暴動が起きたなど笑えない。
毎日全員に好きに抱かせていたら食料調達をやる人がいなくなり滅亡しましたとか、教科書に載るレベルの大失態だ。
(直接の行為以外の何かしらの方策が必要ね……)
色々と考えていたら日が傾いてきた。
ああ、そういえば抱いてあげる約束があるのだったわ。
テントから出て、ゾロゾロと集まりだした男達の前に姿を現す。
みんなそれぞれ仕事をしてきたのだろう。泥にまみれている。
「まずは水で綺麗に身を清めてちょうだい。体格のいい人と魚を捕る人は特に念入りにね」
私が言うと、すごすごと全員が木やテントの影に隠れて身体を拭こうとしている。
「隠れるのは禁止。きちんと身を清めているか私が見ます。ササっと拭くだけではダメよ。何回も拭きなさい。清潔さは今の環境にとってとても大切よ」
私が言うと、隠れていた男達が出てきて私の前で身体を水で濡らした布で拭き始めた。
「もう分かっていると思うから言うけど、私は男のものなんて見慣れすぎていてなんとも思っていないの。きちんと隠さないで堂々と拭きなさい。小さかろうが皮を被っていようが何も思わないわ。ショックを受ける初心な子もいるだろうからあんまり直接的なことは言わないけど、仮に今あなたたちがその場で射精したとしても何も驚かないのよ私は」
そこまで言うと、やっと男達は恥じらいを捨てたのか堂々と前を見せながら身体を拭き始めた。
「そうそう。私があまりに綺麗だからって天真爛漫で無垢な美少女だと勘違いしないで。むしろ逆よ。こんな容姿でいたらどれだけ男が群がってくると思っているの。だからあなた達もそういう遠慮は一切不要よ」
船長の人が言う。
「なんか、綺麗過ぎると男が寄り付かないとか言うやつもいるけど……」
「程度問題ね。私くらいになっちゃうともうそういうの通用しないのよ。呪いみたいなもんよここまでくると」
「だろうさ。あんたと日本で会ってたらその場で土下座してでも付き合ってくれって頼んでただろうさ」
「そうねそんな人もよくいたわ。20股してる女の21人目の男でも良かったらあなたもそこに加えてあげていたかもね」
「はは……そりゃよくよく考えてから土下座しないといかんな」
会話をしている最中に全員が身体を拭き終わったようだった。
「さて、お待たせ。体格がいい人、私のテントに入りなさい。この島で最初のご褒美タイムよ」
全員が息を呑む。
本当にご褒美をくれるのか、と。
そうよ、私はあげると言ったご褒美はきちんとあげる。
騙したり不公平にはしないわ。
「あなた達は、別にこのテントの前にいてもいいけれど、最初に言っておくわ。私は行為の最中に声を出さない。それは覚えておいて。声を出すと、誰の時の声が大きかった小さかった、俺の時の声が一番色っぽかったとかそういう話になって競争になるでしょ。だから公平さのために私は一切声を出さないわ。聞き耳を立てていても構わないけど期待はしないでちょうだいね」
私が言うと男達は少し残念そうな表情になる。
まあそれはそうだろう。
「しようがないのよ。だって男のはみんな大きさも形も違うでしょう。動き方や技巧も違うわね。だから何の遠慮もなく声を出すとそれぞれ違った声色や声量になってしまうでしょう。それってかなり男を惑わすのよ。『俺の時はあまり声を出してくれなかった』…とか。下らないわよね別に気持ちいいから大きな声になるわけじゃないのに。とにかくそういうわけだから声は期待しないでちょうだい」
そこまで言うと、納得はできないがしょうがないかというような雰囲気になり、テントの周りに座りだす。
いやここまで説明したのにテントの周りにいるのか……ほんと男の子は大変ね。
「さ、おいで。好きにしていいわよ」
(数分後――)
「……あ、ありえねえ……なんだあれは……」
「どうしたんだお前。いい思いして満足して出てくるところだろうがそこは!?」
思ったより簡単に終わって楽だったわ。
この子の体格からして何回でも時間内なら相手をしてあげようと思っていたのだけど、1回で完全に精根尽き果てたようね。
「さあ、魚を捕る人。遠慮しないで入っていらっしゃい。本当ならあなたにとっての初めてだしシャワーを浴びてから相手をしてあげたいのだけど、こんな環境だものね。我慢してちょうだい。ん?何で不思議そうな顔をしているの。……ああ、初めてかどうかなんてそんなのは抱くまでもなく丸分かりよ」
今日は月が綺麗ね。




