今日は全員と相撲をします
私は朝、彼氏たちみんなを集めた。
体格のいい人と罠を作る人は身をもって知っているけど、この際全員に私の能力、つまり『交際している男に対する強者権』の説明をしておこうと思ったのだ。
「……というわけで、あなたたちはここに来た初日に私と交際することに同意した。彼氏になった。つまり、私はあなたたちに対して絶対無敵。殴られてもなんともないし、一方的にボッコボコにできるというわけなのよ」
男たちは
「えぇ……」「まぁなんか変だとは思ったけどよ」「え、重要事項説明違反じゃない?」「殴られるというか銃で撃たれてもピンピンしてたぞ」「ゾウムシかな?」「フリーザかよ」「もう配下じゃん」「クーリングオフはできますか?」「え、もしかして一生?」「お、お嬢の奴隷……デュフフフ」「彼氏とは一体」「発動条件に対して効果がデカすぎんだろ」
等々と好きに感想を言っている。
……なんか変なのが混じっているわね。
「はい、一生よ。文句ある?ある人は一歩前に出て私の目を見て言いなさい」
「「「「「ありません」」」」」
「よろしい。でも、なかなか身体で体験しないとこういうのは理解できないと思うのよ。まぁ昨日ああいうことがあったら頭じゃなんとなく分かっているとは思うけど、実際に体験してもらいます」
船長の人が慌てたように言う。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ嬢ちゃん。体験って、まさかこれから俺たちをぶちのめすとかそういうのか?勘弁してくれよ俺らなんも悪さしてねえぞ」
「もちろんそんなことはしないわ。なので、相撲をします」
「は?」
「相撲よ。日本の国技ね。ああ、手でひっぱたいたりはしないから安心なさい。穴を掘る人、土俵を作りなさい。簡単なものでいいから」
「はいな」
穴を掘る人はすぐさま立ち上がってロープを持ってきて簡易的な土俵を作ってくれた。
草で作ったホウキのようなもので土俵の中を整えてもくれた。
私は服を脱ぎ下着姿になる。
男たちは連日のアレのせいで見慣れてきているのか大して驚きもしなかった。
「さぁ、まずは船長の人。土俵に入りなさい」
「えー、俺からかよ。参ったなあ」
「立ち会いはあなたが好きな時に向かってきていいわよ。そうしたらそれに合わせて私が立つから」
「マジでやるのかよ。まぁしょうがねえ。でもやるからにゃ本気でいかせてもらうぜ」
「望むところよ。ドーンと当たってきなさい」
船長の人は息を整える。
そして私を睨みつけ一気に踏み込んできた。
あら、経験があるのかしら。なかなかの立ち会いね。
私は正面から船長の人を受け止めた。
「……………………岩かな?」
船長の人がつぶやく。
私の身体は一センチも動かない。
というか、直立不動のままだ。
一歩も動いてすらいない。
「嬢ちゃん、悪いけど、パンツ握るぞ」
そう言って船長の人は私の下着に指をかけ、力を入れて投げようとする。
相撲のマワシがないのだから力を込めるにはそうするしかないわよね。
「……嬢ちゃん、もしかして体重200キロくらいある?」
「はいアウト」
私は船長の股に手を差し込みそのまま放り投げた。
……ちょっとイラっときたので少し多めに飛ばした。
「次、あなた……地図を作る人、きなさい」
「デュフフ、了解でござる。せ、拙者実は小学校の地区横綱だったことがござってな、本気でいかせてもらうでありますぞ」
「あらそれは期待できそうね。ルールは同じよ、あなたの好きな時に立ちなさい」
地図を作る人はなかなかサマになった四股を踏み、手を地面に付けてから、それからフッと息を吐き一気に踏み込んできた。
さすが経験者ね。
私のパンツの前のほうを掴み、もう片方の手は私のお腹の辺りに押し当ててくる。
「デュフフフ、この形になればもう一気でござるよ」
そう言って地図を作る人は頭を下げ私の胸の辺りに当て、腰を低くして一気に寄ろうとしてきた。
本当に凄いわね。
確かにこの形になれば抵抗できずに土俵の外に押し出されてしまうでしょう。
……普通なら。
「………………岩でござるかな?」
例によって私の身体は一歩も動かない。
地図を作る人は足に力を込め、パンツは握ったまま今度は半身になって体全体を私に押し当ててくる。
「………………大樹でござるかな?」
「岩とか大樹とか、あなたたち乙女に向かってちょっと失礼じゃない?」
「し、しかしながら……な、なんで……あ、お嬢もしかして体重300キロくら」
私は地図を作る人の股に手を入れ、船長の人の倍くらい遠くへ投げ飛ばした。
200キロとか300キロとか失礼しちゃうわね。
私は妖精さんくらいの体重しかないのよ。
多分。
体重って測ったことないけど。
「はい、どんどんいくわよ。片っ端からかかってきなさい」
30人いる彼氏たちとどんどん相撲をとっていく。
強者権のせいで私は全く疲れない。
体重のことを言う人が何人かいたので、その度にさっきの二人よりも遠くに投げ飛ばしておいた。
一時間ほどで全員の相手が終わった。
罠を作る人が、
「お嬢、ちょっと下着がセンシティブな感じになってるからとりあえずこの布を巻き付けといてくれ」
と言ってちょっと古ぼけたバスタオルを渡してきてくれた。
なかなか気が利くじゃない。
「さて、これで私の強者権がいかに強力か分かったことでしょう。だから、この力でお仕置きされたくなかったらあなたたち暴力沙汰はダメよ?この島では暴力は禁止なのだからね」
(((((お嬢が言うのかよ……))))
「あんたたち、なにか今心の中で思った?」
「「「「「思っていません」」」」」
「よろしい」
そこで罠を作る人が口を開く。
「俺あんだけボコボコにされたんだから今日は別に相撲する必要なかったんじゃ……お嬢が強いことは多分俺が一番身に沁みて……」
「それはそれ、これはこれよ」
「ええ……」
次は船長の人が、
「強いというかただ嬢ちゃんが重いという感想しか」
と言いかけたのでとりあえずもう一回股に手を入れて投げておいた。
だんだんと投げ方のコツが分かってきたわね。




