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広島の向日葵 〜アメリカ人の血を引く少年、戦後を生き抜く〜  作者: フクロウ


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第二十二話 西王会崩壊

「あれからずっと行方不明になっていた牙驢馬の居場所をついに特定しました。場所は西王会です」


 キャノン機関のとある秘密基地で会議が行われていた。拷問で無理矢理スパイにした牙驢馬を取り戻す為。


「Jさん、西王会襲撃はいったいいつにしましょうか」


 そのJと呼ばれた男はサーベルを右手に、拳銃を左手に持つ独特な構えをする。


「特定ができたなら、今すぐにだ。二度と日本人がアメリカ人に逆らえないように分からせてやる」


 Jは西王会の玄関に立つ。何をする気なのか。


「すいません。誰かいませんか?」

「何の御用かしら?」


 西王はJの前に立つ。二人はしばらく無言で目を合わせ続ける。状況はまさに一触即発だ。


「道案内をしてもらいたいんだ」

「どこへ?」

「西王牙驢馬のいる所へね」


 するといきなり西王はJを殴った。こいつは一目瞭然に牙驢馬を取り戻しに来たキャノン機関のものだ。そして家具に隠れていた、蒼太、時和、葵、牙驢馬も飛び出して一斉にJを叩きのめしに行く。だがこの人数を相手にJは一切怯まず一気に振り払う。


「とうとう現れたなキャノン機関!牙驢馬は渡さないわよ!」

「へっ……面白い。まさかとは思うけど吾輩がたった一人でここまでやってきたとは思わないよな」


 外には大量のキャノン機関のスパイがいた。もはやこれは西王会とキャノン機関の全面戦争だ。すると、火炎放射器が西王会に放たれ、事務所はあっという間に燃え上がってしまった。葵にとって色々思い出があったこの建物が崩壊してしまう……。葵はまた悔しい思いをした。どうして自分はまた奪われなければならないのか。戦争で散々苦しい思いはしたというのに。すると西王雅馬は葵に言う。


「西王会はいずれ滅びる運命だったのよ。今は悪事はこれでも控えている方だけど昔、私の父が運営してた頃の西王会は人を騙して借金まみれにしたり、他所との組の争いで罪なき一般市民を何度も巻き込んだりしていた最悪な場所だった……。だから父は恨まれ命を奪われた。でも私は任侠というものを本気で実現させたかったから、父の二の舞にならない、居場所のない人達の居場所になるように西王会を新しくしたの。でも結局……西王会という場所は先代の因果応報から逃げる事はできなかった……。葵……ヤクザは幸せになれないのよ……。だからお前はもう自由だ……。西王会の事なんか忘れて自分の人生を歩みなさい」

「……嫌だ……僕は最後まであなたと一緒に戦いたい……だって西王さんは僕の大切な友達なんだから……仲間を見捨てて逃げたら……この先一生光のある方向なんか向けないよ」


 すると、時和も雅馬の前に出る。


「そうだぜっ、俺もお前と最後まで戦いたいんだ。あと俺は雅馬、お前が好きだ」

「ふぇっ?」

「初めて会ったときから綺麗な人だなって思ってた。はっきり言って実は一目惚れしてたんだ。あのな雅馬。ヤクザは幸せになれないだなんてお前は言うけど、俺はお前に幸せになって欲しいって思ったんだぜ。だって友達なんだから」

「……分かったわ。ちょっと考えさせて。この戦いが終わったら必ずあなたの好きという気持ちに返事をするから」


 雅馬は少し照れていた。恋愛にはあまり慣れていないだろうからか。続いて蒼太と牙驢馬も前に出る。


「こんな俺を受け入れてくれた姉さんを絶対に傷付けさせはしない」

「お前が俺を受け入れて西王会に誘ってくれたときは嬉しかった。だからやっと恩返しができるぜ」

「皆……分かったわ。ありがとう。お前達は私の誇りだよ……」


 西王会はまさに一致団結した。全員がキャノン機関と最後まで戦い抜く覚悟を決めたのだ。五人は外にいるスパイに向かって突撃した。雅馬は二人のスパイを両腕で首に当てて倒した。続いて牙驢馬は殴ってきたスパイの腕を掴み投げた。次に蒼太はスパイを蹴り上げ葵が上から叩き落とす。時和はスパイの金玉を蹴って倒す。葵は急いでJの元へ向かった。しかしどれだけ追いかけてもJは逃げ足が速く、そのまま車へ乗り込んでどこか遠くへ行ってしまった。


「くそっ、逃げられたか……」


 葵は追跡を諦めて燃え上がる西王会の元へと戻った。すると、騒がしい様子を見聞きする。遠目で見ても何か悪い事が起きたのだと、葵は嫌な予感がし吐き気を催した。


「時和!」

「しっかりしろ!」

「まさかお前まで……」


 時和は血反吐を吐いて倒れていた。誰にやられたのか。だが、時和の体に外傷そのものはなかった。これはまさか……。


「悪い……葵。俺、原爆症みたいだ」


 時和が原爆症……?そんな馬鹿な。ついこの間まではあんなに元気だったのに。だが原爆症は被爆者となった人がある日突然、無慈悲に発症する病気なのだ。


「すまない……葵……お前を悲しませたくなくて今まで黙ってた」

「時和さん……僕は許さないですよ……僕より先に勝手に死ぬなんて……僕を置いていかないで……僕はこれ以上大切な人を失いたくないんだ」

「最期に言いたい事があるから……聞いてくれないか」

「……うん」

「俺な……原爆で両親を失ってから親戚に引き取られたんだ……でもそこでは乞食扱いされて居場所なんてなかった……だから出て行ったんだ……もう俺の居場所なんてない……そう思っていたときにお前に出会ったんだぜ……お前が俺の友達でいてくれたから……俺は独りぼっちにならずに済んだんだ……ありがとう」

「……僕の方こそ……こんな金髪の頭をしたアメリカ人の血を引く僕をあなたが受け入れてくれたから……独りぼっちにならなかった……感謝するのは僕の方だよ」


 二人の最後の話し合いを邪魔したのはJの車だった。Jは葵を掴みそのまま誘拐した。

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