幕間 其の二 時和と西王の夏休み
時和はドキドキしていた。何故なら西王をお出かけに誘いたかったからだ。実は初対面の時に西王に一目惚れをしており、ずっと気になっていた子であったのだ。
「あ、あの、さ……西王」
「なに?言いたい事があるならハッキリ言って」
「明日から西王会も夏休みだし……。一緒にお出かけしないか?」
「いいよ」
「えっ」
「私も暇だからね」
「いいの?」
「うん。それで早速なんだけど」
「うん」
「賭博について教えてくれない?私ちょっとチンチロに興味があって」
「え!西王止めた方がいいよ!お前は闇の世界に入っちゃダメ!」
「冗談に決まってるじゃん。賭博なんて店が必ず儲かるようにできているんだから。時和も今勝ってるならそろそろ辞めどきを探しな」
西王はニコリと冗談を言う。その顔は時和にとって眩しすぎた。
「えっと実は、最近結構ボロ負けで」
「そう。じゃあ時和が賭博やりたくなっちゃったら私が竹刀で叩いて止めてあげる」
「お……お願いします。それで話を戻すけど、お出かけはどこに行こうか」
「私ちょっと行きたい所があるの」
時和と西王はとある屋台へ行く。そこはお好み焼きのお店だった。
「おお!お好み焼きか!こんな良いものを食えるなんて」
「さあどんどん焼くわよ!」
小麦粉とキャベツが混ざり合い、その上にウスターソースがかかる。その匂いはまさに食欲を唆るものだった。戦後の広島は鉄工場が多かった為、簡単に鉄板が手に入り、お好み焼きが流行しやすい環境にあったのだ。
「美味しすぎるぜ……」
「最高だわ……」
二人は食事を終えてお好み焼きの余韻に浸った後、とある遊び場を見つけた。どうやら広島ではパッチンと呼ばれるめんこの遊びのようだ。
「そこの君!パッチンで遊んでいかないかい!俺はパッチン戦士だ!」
「パッチンか」
「面白そうだわ、やってみようよ」
時和には金龍というパッチンが与えられ、西王には白金龍というパッチンが与えられた。
「さあ勝負よ時和」
「望む所だ」
「オラアッ!」
「しゃあっ!」
「ウオオオッ!」
「はあっ!」
激しい怒号が鳴り響く。もはや遊びとは思えないほど二人は熱中していた。パッチン戦士はその激しさに感心する。
「楽しんでいるようで何よりだぜ!」
結果的に西王が勝った。思わぬ才能があったようだ。
「あー楽しかった」
「お……俺喉がカラカラだぜ……」
二人のお出かけは順調に進む。そう思われたが。
「おいそこの女。お前西王会の現会長だろ」
西王は振り返る。見た事がない人だ。
「俺はお前の親父のせいで借金漬けにされたんだ。どうケジメを付けてくれるんだ。とりあえず一発殴らせろ」
「時和、先に帰っていいよ。お前に迷惑はかけられない。私が殴られればそれで済む話よ」
「何言ってんだ西王。お前を一人にさせるわけにはいかないだろう」
男は容赦なく西王に殴りかかった。その直後、時和はその男の前に立ち、西王を庇って殴られた。
「俺は西王会の人間だ!殴りたければ俺を殴れ!」
「待って時和!何でそんな事を!」
「お前が痛いと俺も痛いからだ。西王が傷付けられるのを見たくないんだ」
男は再び容赦なく時和を殴った。
「そんな……私を庇って……」
西王は怒りを必死に抑えた。そして。
「私の父が迷惑をかけて申し訳ありません。どうかこのお金で許してください」
西王は大量の札束を出した。
「うお、凄え金だ……」
男は帰っていった。西王は時和の心配をする。
「西王、無事か……君の顔に傷を付けられずに済んで……本当に良かった……」
「馬鹿!私だって……。お前が痛いと私も痛いのよ!」
「そ……そうか……すまない」
「でも……庇ってくれてありがとう。その気持ちは嬉しかったわ」
「……へへ。どういたしまして」
「さて。気を晴らす為にもう一回お好み焼き行くわよ」
「え!また?今日の昼食ったのに」
「美味いものはいつ食っても美味いのよ!」
こうして災難も無事解決し二人はもう一度お好み焼きを食べた。
時和は西王のありがとうという言葉がとても嬉しかったのだ。




