でも出来なかった。母親という責任の束縛という…
出産から4日目経過、
『グギュ゛ウウウウウウ……ゴオオオオオ……』
『グヴウ゛ウウウウウウウウウウウウ…オオオオオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛…』
ユキ「…。」
我が子を産んで4日が経った。
最初は辛うじて残っていた所々身体が内臓が外にはみ出るように溶けた赤ちゃん。
その次はダブルベッドごと取り込むよう四角くなった赤ちゃんの原型すらない大きな肉。
そして今は、
ゲン「いっぱい食べて寝室全体まで大きく巨大化したなーー。キッモ。グロッ。まんまエイリアンそのものじゃん!!」
ゲン「汚い寝息も無駄にデカいし、五月蝿いし。お前大変だな。これからがよぉ。クククク。」
『ゴアアアアアアアアア…ゴオオオオオオオオオオオウウウウウウ……。』
ユキ「…。」
ゲンの偽物の声を背中から聞きながらも無視する私。
今私が見つめている通り寝室全体までいっぱいになった我が子の姿になっていて、開けていた寝室の入り口から見える我が子の身体の肉の皮膚の一部を見る。
異常なまでのなんでも食べる食欲旺盛と、猛スピードで成長・巨大化する我が子の姿。
私は遠い目でいびきをあげながら寝ている我が子の姿を見つつ、キッチンから押して持ってきた私の分の食糧入りポリバケツを入り口前に設置した。
ユキ「…。」
本来ならこのポリバケツに入っている肉…丁寧に作った人肉のソーセージやステーキ用の肉をキッチンにあるフライパンを使って食べるはずだった。
だが今は目の前の部屋いっぱいになった我が子の為に差し出す…
ユキ「大丈夫…大丈夫…大丈夫…。」
ユキ「私にはまだ、非常食用の食事と水・念のために作った彼らの干し肉数枚と美味しい虹色の飴あるから。」
ユキ「あの子用のご飯は…アレだけじゃなく、浴場の肉もあるから…」
私は、より心も体も追い詰められていくようふらついた足取りでリビングへと戻った。
リビングに戻った私はテーブルの席に座って、
ユキ「いただき…ます。」
ユキ「……。」
私はテーブルに置いた非常食の缶詰一缶とコップに少し入れた水入りのボトルで食事をゆっくりと摂る。
少ない物資を貴重にするよう少量で食べ、昼も夕刻も3回に分けるよう缶詰め一缶と、注いだお水を少しずつ含む3回分にする様に調整する。
その間、目が覚めた我が子が満足するまでムシャムシャと貪り食べる咀嚼音をリビングから聞いて、
『ガフ……!!ゴヴ!!!!!ググ!!』
『ヴーー!!ヴヴ!!ウ゛ウウウーーー!!!!』
ユキ「(私が食べるはずだった貴重な肉を食べやがって…。)」
ユキ「(でも浴場の肉はあの子に食べられても直ぐに復活するから逆にありがたい。こっちは必要最低限の食事さえ与えればいい。)」
ユキ「(まるで放置飼いしてる豚に絶えなく出てくる餌を自動で与えているみたい…。)」
少し食べた私は椅子から立ち上がり、回収したポリバケツが置いてあるキッチンのシンクへと歩んで、シンクの蛇口を無言で捻った。
そこから、
ユキ「(この家はもうあの肉共に侵食された。でも都合がいい。)」
蛇口からソフトクリームみたいに渦を巻くよう出てくる小腸・血管みたいな不活性の肉がズルズルと出てきて、私は出てくる肉へ右手に持った包丁で次々と切り落とす。
そして蓋を開けたポリバケツの底に溜まっている赤い血へと切った肉片を投げ入れ、あの子のお腹を満たす量分の肉を無心で入れる。
ユキ「(あの子のお腹を満たす無限の餌が手に入る。逆に感謝しかない。)」
ユキ「(あの時は恐れていた存在だけど、逆に利用させて貰うから。)」
十分な量まで入れた私は開けていた蛇口の栓を閉じ、ポリバケツの蓋を閉めあの子が一時的に寝るタイミングまで寝室行きの廊下の角で押してきたポリバケツと一緒に立つように待つ。
『ガフ゛……ゴオオオオオ……グオオオオオオ……。』
そして大きないびきをあげて眠る我が子のタイミングで、
ユキ「(よし。今。)」
私は用意した次の分の肉片入りのご飯を寝室前へ押すよう持っていき、空になった横倒し状態の返り血付きのポリバケツを回収して急ぎ我が子でいっぱいの寝室から早足で離れた。
後、私は一息吐いて1日分の食事を食べ、ソファーで横になって寝る前にテーブルから持ってきた一つの虹の飴を口へ入れゆっくりと舐めた。
ユキ「(はぁ…落ち着く……。)」
ユキ「(少し休んだら次のあの子のご飯分の肉をポリバケツに入れなきゃ。)」
ユキ「(…。)」
私はいろんな果物の味がする幸せな一時を味わった後、そのまま眠りに落ちるように両目が下がった。
その間私の口の中は…
ゲン「はっはっはっは。もはや育児が完全に動物の餌やりみたいになってんじゃん。あり得ねーーー。モロサイコ過ぎてバカウケるし。ぷっくっくっくっくっく!!」
ゲン「でも同時にお前の人生が終わるカウントダウンも迫って来てるんだよなぁ。何時死ぬかなぁー?どう死ぬかなぁー?死に方がどんな風になるか楽しみで仕方ないぜぇーー。はははははは!!」
眠っている私の耳に届かないゲンの高笑いと、ゆっくりと始まっている私の口内が溶けるように歯肉が酷く下り、歯が抜ける手前までボロボロになるよう崩壊する仕込みが着実と出来ていく。
追加で私の鼻穴から赤い鼻血が気付かない間にいっぱい流れ出て、寝ているソファーのボロボロの綿にいっぱい染み込むよう赤く染めていった。
続く。




