これが私が産んだ子?冗談じゃない。
突然の陣痛から一人孤独に命懸けでなんとか出産した…
その1日が経過した後、
ユキ「………?あれ??なんで…此処?」
ユキ「いつの間に…居たんだろ?」
長く意識を離していた私はいつのまにかキッチンの椅子に座っていて、私は裸のまま漸く朦朧としていた意識を取り戻す。
ただ何故か記憶が一部飛んでしまったみたいに全く身に覚えがない私は、ふと痛みがじんと来る股へと目を向ける。
ユキ「わ。踵まで血まみれじゃん。気色悪い。」
ユキ「一旦お風呂に行って洗い流そう。服も洗濯籠に入れたまんまだと思うから…痛。」
ユキ「いたたた…。中から引き裂かれたみたいに股とお腹…腰も痛い…。ううう。」
両足の踵までたくさん付着していた私の血と、じんわりとやってくる子宮口諸共中から引き裂かれたような痛みとぎっくり腰みたいな激痛。
痛みを堪えながら椅子から立ち上がって、取り敢えず血まみれになっている下半身を洗い流すべく浴場へと壁伝いにと慎重に歩いた。
ユキ「う。痛…。でも洗わなきゃ。」
ユキ「自分の血なのに血生臭くて気持ち悪い。」
時間を掛けて浴場へと入り既に湯は冷めてしまったが、私は構わず血まみれになっている下半身を急ぎ桶と手を使って付着した血を洗い流す。
ユキ「綺麗に洗ったら、一旦リビングに行ってアレを舐めよう。」
ユキ「持ってきてよかった虹の飴をね。うん。」
洗い流し続けてやっと私の下半身が綺麗になり、凹んだお腹も見ながら浴場外へと出る。
置いていたバスタオルで濡れた下半身を拭き取り、漸く裸から服を着た私は再び壁伝いで慎重にリビングへと戻った。
私が洗い流した浴場の排水溝の奥底から…
『…。』
『…。』
静かに暗闇の奥底から流れる私の流し落とした血を飲むように赤い触手みたいな肉数本が静かに上がって来て、やがて血の香りがする浴場へと飛び出たその赤い肉触手は蜘蛛の巣を作るようにたくさん伸ばし出すよう侵食し始めた。
そんな事を知る由もない私は、
ユキ「はぁ…。…。……。………。」
ひとまず落ち着くべくテーブルの上に置いた虹色の飴がたくさん入った瓶へと手を伸ばし、一つ手にとった私は口へと入れてゆっくりと何度も舐めるほど色んな果物の味が出る幸福感を受けながら満喫する。
ユキ「…はー。………うん。……。」
ユキ「私…無事に産めたんだ。本当に良かったぁ。」
飴がなくなるまで舐め切った私は思わず目頭から涙をいくつかこぼし出し、私は自然に笑顔を浮かべるよういっぱい溢れ出る涙を手で拭い取った。
その後私は赤ちゃんが居る寝室へ足を運んで、
ユキ「授乳、しなきゃ。」
ユキ「可愛い可愛い私の赤ちゃん…。ごめんね待たせちゃってー」
私は可愛い我が子が居る寝室の扉を開けた。
が、思い描いていた可愛いまんまる顔と身体の赤ちゃんと異な……否。
『ギャ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ーーーーーーー!!!!』
『グオ゛ヲ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ヲ゛ヲオオ゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛!!!!』
ユキ「…。」
ダブルベッドの真ん中にたくさんの血糊の池に埋もれるよう佇み、入ってきた私を飛び出した大きな片目を動かして獣のように叫ぶ半分身が溶けたような脳みそもたるみ出ている赤ちゃん…。
『ガオ゛!オオ゛オ゛!!』
『グオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!』
ユキ「…。」
『ギエ゛エ゛ア゛!ア゛ア゛!!』
『ガア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アーーーーー!!』
生まれて間もないハズなのに大きく裂けたように開けた口から成人並みの立派な歯が既に備わっていて、片腕だけ肉の繊維で編み合わせたような先端5本の鋭い鉤爪をした右腕を何度も掛け布団へ叩き、大きく開けた口も何度も歯で噛み鳴らす音も見せるようよう私へ訴えていた。
ゲン「だからお前に書き残しただろ。手遅れになる前に堕ろせって。」
ゲン「お前は選択を間違えた。もう後戻りは出来ない。」
ユキ「!」
ほんの数秒だけ呆然…いや、やっと思い出した私は後ろから声をかけてきた知っている声主に目を一瞬だけ大きく開いた。
私は急ぎ声をかけてきたゲンへと振り向いたが、
ユキ「ゲン!…あれ?居ない?どうなっ『ギャ゛オ゛!』!あ。ごめんね。直ぐにごはん用意するから。」
ユキ「待ってて。待っててね。私の赤ちゃん。」
当然私しかいないこの家にゲンの姿は無く、どういう事かと私は悩もうとしたけど、赤ちゃんの食事を求める声に急ぎ食事を作るべくキッチンへと早足で向かう。
ユキ「(あの口といい絶対私の母乳…ううん胸ごと噛みちぎっちゃいそう。)」
ユキ「(一応哺乳瓶代わりの醤油差しを使って砂糖水と…。……。)」
私はひとまず母乳よりも先にお試しで砂糖をやかんで沸かしたお湯で溶かし飲めれるぐらいまで冷ました砂糖水を作り、大きめのお皿の上に横転したバスから持ってきた誰かの頭部一つごと乗せて、お腹を空かせた赤ちゃんがいる寝室へと持っていった。
そして、
ユキ「お待たせ。まずは飲み物から行くわよ。さぁ。」
私はまず砂糖水入りの醤油差しを与えるべく、大きく口を開けた赤ちゃんへ吸い口を近付けた。
と、
『ガア゛!』
ユキ「わ!?」
『グググ!グ!!ギ!ギイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イーーーーー!!!!』
近づけた吸い口諸共綺麗に並んだ歯茎で最も簡単に噛み千切り、私は思わず半分噛み切れた醤油差しを見てつい床へ落とす。
ユキ「(醤油差しごと噛み千切っちゃった…。これは…直接は、駄目。)ご、ごめんね。やっぱ…足りないよね?」
『ギーーーーーー!!!!』
当然不服そうに奇声をあげる私の赤ちゃん。
だから私はもう一つ持ってきたお皿に乗る誰かの頭部を手に取って、再び口を大きく開けた赤ちゃんへと手に持った頭部を近づけさせた。
ユキ「じゃぁこれは?『ギュ゛イ゛ーーーー!!!!』あ。」
その瞬間私の赤ちゃんは素早く手に持った頭部を奪い取るよう噛みつき取って、バキバキと頭部の骨、眼球、脳みそごとなんでも食べるハイエナの食事姿と似たような動きで時間をかけて味わい頭部の肉と骨を歯で数回噛みむしり取るよう飲み込む姿を目にした。
それを見た私は、
ユキ「ああ。ならいいわね。これで。食べれない頭部と骨いくつかポリバケツ内に入っているから。これで処理に困らない。」
ユキ「ゆっくりと食べなさい。後で食後の骨もあげるから。」
『キ゛エ゛ーーーーーイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!!!!』
嬉しそうに食べる我が子の姿を見て笑顔を浮かべる最中、本当の心の中の私は深い後悔に打ちのめされるよう、今までの健気だった私が死んでしまったように無表情で立ち尽くしていた。
続く。




