私がずっと思い描いていた家族…
宙を何度も回りながら舞うバスと悲鳴と断末魔が大きく響く中…
「ユキ!さっさと起きなさい!!」
ユキ「…はい。」
「ほら!さっさと着替える!朝飯作れ!!」
ユキ「はい。」
幼い頃の記憶が…何故か私の脳裏に映る。
これはまだ私が6歳の頃だ。
布団の中で眠っていた私を無理矢理引き剥がすように起こし、時に突然の手や足で私に暴力を振るい、子供だった私を好き勝手にこき使った母。
そして父は、
ユキ「お父さん。これ…」
「…。」
ユキ「…ねぇ?聞いてる??」
「……。」
「………。」
私に…いえ、私という存在すら全く無関心で、近づいても見向きもせず聞こうともせず、ただ手に持ったスマホで弄りずっとスマホの画面を見つめるだけの父。
たまに母と父が突如と前触れも無いまま喧嘩することもあって、
「おい。いつになったらアンタ昇進するんだよ?ええ?嫁の私を過労死させるまでこき使うつもり??ああ??この甲斐性なしの無能野郎が。」
「テメェこそ誰に向かって口を叩いてる?俺はこの一家の大黒柱なんだぞ?」
「私よりもクッソ低収入で塵そのもののアンタが大黒柱ですってぇ?片腹痛いわクソ雑魚塵屑。家事育児も全く出来てない時点で、アンタは社会的にも大変ご迷惑で、子供でもできる簡単な雑用事しか出来ない哀れな穀潰しな塵屑ジジイになっている事に気がつきませーーん?」
「言わせておけばこの×※※×ババア!!」
ユキ「…。」
私の家は本当にぐちゃぐちゃだった。
喧嘩すればコップとか皿とかいくつか破れて散乱するし、父と母はお互い共働きなのに全く安定しない乱れ過ぎた生活。
服もゴミ入りの袋もあちこちに散乱しているのが常で、片付けても片付けてもぐちゃぐちゃのゴミ屋敷みたいな状態へ戻るのが日常…。
だから私はある程度大きくなった15歳の時に家から逃げた。
暴力的な母と無関心な父、そしてゴミが溢れる最悪な環境の家から静かに飛び出して、所々穴が空いた着たままの衣服で外へ脱出した私は生まれて初めての解放感を受けた。
ユキ「(もう戻らない。あんな家に。)」
ユキ「(私は…絶対にあの人達みたいにならない。ずっと思い描いていた理想の家庭を築きたい!)」
私はふらふらとした足取りで外の街を歩み、その時偶然声をかけてくれたそこそこ収入ある会社員。私より20歳上のゲンとの出会いで私は…
私は……
………。
ユキ「うぅ…。」
何度も回っていた感覚がようやく収まった私はゆっくりと目を開き、私は横転したバスの中で座席ごと横倒しになっている状態で意識を取り戻した。
ユキ「痛…。で、でも…助かっ……た。かな?」
主に右肩と左肘が打撲で痛みはあったけど奇跡的に折れては無く、シートベルトだけでなくこの大きなお腹のおかげでちょうど良く座席と丁度良いスペースにはまって?いたからか五体満足とお腹も含めて無事だった。
ユキ「ごめんね。驚い、ちゃったね。」
ユキ「大丈夫。大丈夫。大丈夫よ。うん。」
私は横倒しになっていた身をゆっくりと起こし、お腹の子のことも気にかけ適度に腹へ手で摩りつつ立ち上がった。
そして見た光景は、
ユキ「あぁ……。そんな……。」
ユキ「みんなが……。……。」
先ほどまでいた兵士さん達と一緒に並んで乗った私と同じ避難してきた人達。
横転したバスの中、いや外も含めてもう見るも無惨で残酷過ぎるほどの光景だった。
横転したバスの天井、床、座席のあちこちに付着したたくさんの赤い血と破れた元避難してきた人たち含む人体の中身。
主に腸や脳の一部、眼球などが破れた窓ガラスに引っかかる形でぶら下がっていたり、中には食いちぎれたような頭部の一部の残骸と、千切れ取れた腕一本が外まで転がる形で壊れたバス周りは完全に死臭が漂う地獄絵図となっていた。
ユキ「出なきゃ…。ここから…。」
ユキ「落ち着いて…。落ち着いて…。赤ちゃんに、影響…。うう。」
私は慎重に横転したバスから出るよう誤って滑って転ばないように床を踏み、落ちていた臓物や人体の一部も踏まないようひたすらお腹の中にいる私の赤ちゃんの影響を及ぼさない為、喉の奥から上がってくる吐き気も堪えながら必死に横転したバスから外へと出た。
後、私は…
血と臓物、死体だらけが転がるバスから少し離れた私は、
ユキ「痛…。は、早く…。少しでも…遠くに……」
ユキ「ここ…どこ?」
一気に見知らぬ平野へとバスごと吹き飛ばされ、少し負傷している私は何処か身を休める場所を求めるようゆっくりと何処かへふらつく足取りで前へと進んだ。
続く。




