突如として地獄へ落とされた。
妊娠と突然の婚約者の消失から8ヶ月後…
何処かの一本に整列された広めの駐車場にて、
「一人ずつ順番に乗ってください。」
「生存者全員乗車するまで警戒を怠るな。」
「「は!」」
「「はい!!」」
私は今安全な場所へ避難するために、目の前のバスへ足を運ぶ。
あの時からより大きくなったこのお腹で、私は一歩一歩とバスの階段へ足を上げる。
ユキ「はぁ…はぁ…はぁ…。(安定期に入って体がより大きいから、段差がある階段を一歩上がるだけでとても辛い…。)」
ユキ「(この子の為に…とにかく、安全に…。)」
お腹の子の為に慎重に一歩一歩階段をゆっくりと上がっていた私へと、心無い声で容赦なく怒声を私の背中から掛ける。
「早く上がれ!このデブ腹女!!早く乗らんかああああ!!あああもおお!!遅い遅い遅い!!蹴り倒してでも俺が先に乗るぞおおおお?!!」
「ちょっと!彼女妊婦さんだよ!!」
「失礼だぞ!じーさん!!」
「うっさいわ!偽善者共!!てかこんな大変な時によくも子作りしおって!!」
「普通は健常者優先だろ!!こんな足手纏いがいちゃ安全に脱出出来にゃせんわあああ!!」
「言い過ぎだ!」
「そうだよ!」
「気にせずに。さぁ。」
ユキ「すみません…。」
「はよせんかぁ!!ったく!!」
私は近くにいた兵士さんの補助を受けながらやっとバスへと乗車し、前方にある優先席へと案内してくれた。
私は窓へと目を向けて、
ユキ「(安定期に入るまで悪阻がとにかく酷かったけど、なんとか産婦人科に予約をとってそのまま入院、安全に出産しようとした矢先に、か。)」
ユキ「(こんな変な肉の所為で…。……。)」
「因みに避難先は!?」
「リーダー・ムラクモが指揮っている生存者コミュニティの一つR孤島です。その近くの船着場まで移動となります。」
「そうか。…ふん!この足手纏いの腹デブ女付きか。」
「「…。」」
ユキ「…。」
突然と私達の日常を壊した謎の肉生物。
今でも世界各地でその肉生物が縦横無尽に喰い荒らし、得体の知れない肉の怪物へと変えるよう…今私が見つめている血管みたいに複数膨れ上がった肉の繊維がついた道路標識や建物の壁のあちこちに伸び出ている光景を目にする。
ユキ「(とにかく、安全な場所で出産と子育てができるなら何処でもいいわ。)」
ユキ「(何がなんでも私がこの子を守らないと。)」
「よし。全員乗った。出るぞ。」
「はい。」
「皆さん。船着場へ到着するまでシートベルトを着けてください。」
「はいはいっと。」
ユキ「…。」
そして外で並んでいた私達生存者が安全な場所へ向かうバスへと乗り込み、兵士さん達も乗って掛け声と共に私達はシートベルトを着けバスが動き出す。
ユキ「(住んでいたこの町とお別れね。)」
ユキ「(私達が住んでいたアパートはもう肉生物に侵食されたからもう…)」
駐車場から出て赤い肉の繊維が多少伸び出ている道路へと出た。
走り出して間もなく…
ユキ「え?」
「は?」
「「「「!?」」」」
「な…」
前を見ていた私たちの目に飛び込んだ光景。
それは視界いっぱいの赤い肉。それはより大きく、蛇の胴体みたいに長くて…
私達が驚いている間にその大きな肉はしなやかに捻って、走るバスへと横から薙ぎ払うように激突した。
その瞬間、
「えええええええあああああああ!!?あああああああああああああ!!!?」
「「「うわああああああああああああああ!?!?」」」
「「「「きゃあああああああああああああああ!?!?」」」」
ユキ「いやあああああああああああああ!!!!」
バスが大きく宙を舞うように吹き飛び、かつ何度もバスが横向きに回るよう車内にいた私達は悲鳴をあげた。
私はとにかくお腹の子だけでも守るようできる限り体を屈めて、大きなお腹を両手で守るようにとにかく止まるまで耐えるしかなかった。
近くから聞こえる骨が折れる音、肉が裂ける音、肉が潰れる音、血がたくさん付着する音、私の衣服や身体のあちこちに誰かの血、中身の肉の一部が当たる音…とにかくいろんな人が壊れる音が回るバス内で聞こえる中、
ユキ「(お願い!お願い!お願い!!早く止まって!!)」
ユキ「(助けて!誰か助けて!!助けてよおおおお!!ゲンーーーーー!!!!)」
私は必死にもう会う事もない元夫の名を叫んだ。
続く。




