……………………
謎の肉生生物が世界を侵食して60日目にて、
朝陽が昇る時刻。どこまでも広がる田んぼに僅かな廃屋そのものの家しか無い過疎地。
しかしい今は侵食してきた赤い肉生生物による侵食で変化し、田んぼが赤く蠢く肉・家はいろんな内臓に見える肉に覆われるよう完全に肉の世界へ変わり果てていた。
そんな静寂の肉の過疎地に、
「ウッヒョおおおおおおおおお!!肉だああああああああああ!!一番乗りだああああああああああ!!」
「どこ見ても新鮮だああああああああああ!!お前ら!今なら取り放題だぞ!イヤッホおおおおおおおおおお!!」
「喧しい。口を閉じろ変人メガネ。」
「まぁまぁ。【キリシマ兵士長】。【カワセ隊長】落ち着いてくださいって。」
カワセ「これを見て落ち着いていられるかって!我が自慢の助手ゥ!我々の本拠地である火山地帯から遥々と出向いた先がこれだああああ!!何処見渡しても出来立てほやほやな不活性の肉だらけ!こんな肉取り放題の大大大チャンスにより心躍るもんでしょうおおおがあああああああああ!!」
騒がしいほどの素っ頓狂な奇声と多量の蹄の音。
肉に侵食された過疎地へと踏み入れ、その全員統一するよう背には独特の翼の紋章を背負う緑のフード付きマントと黒いボディスーツを着た生存者の彼らは、重装の黒い鎧で覆われた馬に跨る形で現れた。
その内彼らを束ねるテクノカット髪をした強面の青年が興味無い風に軽くあしらい、対しゴーグル型のメガネを着けたポニテ髪の同じく青年がより顔全体を赤く染めて興奮する他の生存者たちにドン引きされるよう騒がしい動きを取っていた。
キリシマ「んなもんテメェだけだ。さっさと取り掛かれお前ら。」
「「「「は!」」」」
それを背後にシカトするよう先に馬から降りた兵士長…キリシマは引き連れた生存者達入りたての若手の兵士達へと命令を出し、聞いた兵士達は一斉に大脚部のサスペンダーに装着していた鞘内のナイフを引き抜いて、そこらじゅうにできている動かない肉へと切り込み食糧を取る狩りを始めた。
キリシマ「どこ見ても不活性状態だが決して油断するな。少しでも動いている肉・奇声をあげる肉・呼吸しているような音などを聞いたら直ぐに報告しろ。」
キリシマ「直ぐに俺と変人メガネで処理する。」
「了解。」
「わかりました!」
「「はい!兵士長!!」」
キリシマは彼らへそう言いながら肉まみれの田舎の道を一人進み、やや遅れて変人メガ…カワセと付き添う真面目風な助手が肉の繊維で覆われた過疎地の広い田んぼの光景を静かに傍観する。
カワセ「うーーん♡どこ見てもすんっばらしいいい見事な肉だぁー。この分だと半年ぐらいはもつかも。うむ。最初は何も分からない謎の生物として恐れていたのに。もう2ヶ月経ったか。この光景に慣れるの早いもんだー。」
キリシマ「そこは発見してくれた【例のあの人】に感謝するんだな。あの人のお陰で俺らはこの日まで生きている。」
キリシマ「あの人が覚えているかどうかは分からないが、近々あの人が居るコミュニティに赴いて借りを返さなきゃならねぇ。」
「あの人?」
カワセ「近々我々がまとめた新たな報告書を渡しにR孤島のコミュニティに赴く予定がある。そこで君もあの人へ挨拶するといい。大丈夫だ、キリシマ。あの人は覚えている。絶対に。」
キリシマ「あぁ。」
「(あの人って…誰の事だろ?)」
と、話し合っている3人へと急いで走ってきた若手の新兵がやってきて
「キリシマ兵士長!カワセ隊長!至急報告があります!」
キリシマ「どうした?」
カワセ「落ち着いてー。落ち着いてー。何何ー?」
「トビ君。何かありましたか?」
トビ「はい!カゲロウさん!実はー」
急ぎ報告する内容を聞いた3人は、
何かの異常報告を聞かされ新兵に案内された3人は、
トビ「こちらです!もう聞いての通りですが…」
カワセ「おおお。スゲェ爆音ー。」
キリシマ「でけェいびき声だな。」
カゲロウ「いびきというよりも空腹音らしい異常すぎる音ですが…。」
浮腫みたいな肉まみれの倒壊しそうなボロボロの松材の家へと赴いた時、凄まじいゴロゴロ音が響くよう3人と見つけた新兵も耳にする。
かつ異常音を聞いて何人かも兵士達が「なんだ?」「凄い音…。」「誰か居るのか?」などと松材の家へと自然に集まって、少しざわざわする彼らを背後にキリシマは一人松材の家の玄関前へと歩む。
キリシマ「…。」
「兵士長。」
トビ「…。」
そこで背後からカワセがキリシマへと短くかけて、
カワセ「キリシマ。どんな相手でも優しく丁寧に。」
キリシマ「ふん。」
そう聞いた後、チェーンのように硬く絡みついた腸みたいな肉で堅められた玄関前に立ったキリシマは、まず辛うじて玄関の原型が残る部位へと軽く3回ノックをした。
キリシマ「すまない。誰か居るのか?」
と、直ぐに
『マ……ま?』
キリシマ「!」
カワセ「!」
カゲロウ「!」
トビ「!」
「「「「「!」」」」」
幼い子供?みたいな酷く喉が潰れたようなガラガラ声が返ってきて、聞いたキリシマ達は思わず臨戦体勢を取り、対しキリシマだけはまだ構えない素振りでもう一度声を松材の家の中に居る主へと掛ける。
キリシマ「…父親は?」
『マ、ま。まマ…ママ…まま。』
キリシマ「君と母親だけか?」
『マ…マ?…まぁマ?』
『ママ?まーマぁ??』
キリシマ「…。」
しかし聞いても『ママ』との短い応えのみ。
心なしか聴こえる空腹のゴロゴロ音と、パキパキと骨が鳴る音が聞こえ、松材の家自体が軋み亀裂も所々走っている状態を後ろで見守る兵士達は見た。
トビ「へ…兵士長。あ、あの…カワセ隊ちょ…!!」
カワセ「…。」
カゲロウ「…。」
「「「「…。」」」」
と、背を向けているキリシマが素早いハンドサインを彼らへ見せた時、トビ含む彼らは静かに素早く行動を取るよう動き始め、皆松材の家を取り囲むように移動し更に遮蔽物へ身を隠しながら背中に背負う独特の形状をした銃火器を手に取った。
キリシマ「…。」
その数秒後、キリシマの耳につけているインカムから次々と兵士達の『包囲完了。』『いつでも攻撃できます。』『合図はお任せします。』などの声が入り、聞いたキリシマは更に玄関先…松材の家に居るヤバそうな存在へと声をかけた。
キリシマ「安否の確認をする。入ってもいいか?」
『マま?ママ?まマ?マーーまぁ??』
キリシマがドアノブへと手にかけ、内部に居る存在は同時により破れる音を立てるよう松材の壁の板が前のめりに一部剥がれ、亀裂がたくさん走り、徐々に剥き出しになっていく中の分厚い肉のような肌が外へと露出していった。
キリシマ「失礼。」
そしてドアノブを回し玄関を開け、固められた肉のチェーン諸共引きちぎるよう平然としながら、前へと何かが破れる音も立てつつ引っ張った。
その瞬間、
『マ゛ぁァまぁ゛ぁ゛!!』
開いた玄関口から異常に長いアヒルの嘴みたいな口と、口が開いた途端に4つへと別れた鋭い歯茎が現れ、開けたキリシマへ向けて食らいつくよう豪快に多数開いた口で豪快に噛んだ。
しかし、
『?まマ…?』
『マぁ、ま??』
玄関を開けたハズのキリシマ本人の姿は無く、空を切った異形の歯茎だけが右往左往に動く。
と、
キリシマ「…。」
『マ゛。』
不意に何処からか一瞬で瞬間移動してきたように現れたキリシマが、恐ろしく速いジャブで玄関から飛び出た口ごとぶっ飛ばし、殴られた歯茎…長い口ごと粉々に粉砕するよう砕けた肉の一部が路上に落ちた。
続け様に…否間入れず、
『ア゛、ヴぁ゛。』
『オ゛、ヲ゛。』
キリシマの怒涛の拳ラッシュが松材の家内の全体の形状を取るようより成長した巨大過ぎる肉の異形の躰へと突き刺さり、より大きな存在だろうとも関係なくキリシマが打つ拳によって松材の家に巣食う異形は何もできずひたすら攻撃を受けるよう内部の寝室まで後退する勢いで滅多撃ちにされていく。
キリシマ「寝ろ。」
『ビャ゛。』
そしてキリシマのシメとなる右掌が紫色を帯びる雷のような光を纏った掌底を顔面?らしき部分へぶち当てた後、異形は感電を受ける音をあげてあがる煙と共に大きく陥没するよう床へ力無く項垂れるように沈黙した。
後、キリシマは瞬時に外へと瞬間移動するよう移動し、軽く指パッチンする合図を送った。
すると、
「撃ェーーー!!」
「家ごと焼き尽くせ!!」
包囲していた兵士達が一斉に手に持った銃火器で松材の板壁ごと貫通するよう撃ち抜き、内部でまだ項垂れている異形は外から撃ってきた兵士達の弾幕で、分厚い身体へと次々と刺さり細かな穴が開く。
「もっと撃て!休まず撃ち続けろ!!」
『ギャ゛!?!?ア゛!!!!ア゛ぁ゛ア゛ア゛!!!??』
「確実に息の根を止めるまで撃てェ!!」
後、至る所に開かれた銃創から火が噴き出し、内側から焼いていくよう異形は悲鳴をあげた。
どんどん燃えていく大きな身体と共に家内も飛び火するよう着火し、ボロボロで崩れそうな松材の家が瞬く間に燃えるよう大きな火災へなった。
『アアアア゛ーーーー!!!!』
『マ゛ア゛ア゛ア゛アぁま!!!ま゛あああああアアアアマアアアア??!!』
完全な炎だるまな家となり内部ごと成長するよう形状をとっていた異形は移動しようにもそのまま家自体の支えになってしまっている為身動きができず、どんどん燃えていく家と内側から焼いている身体諸共焼かれ肉の一部も燃えながら欠損し大きな身が崩れながら悲鳴をあげ続けた。
『アアアアアアアアアア!!!!』
そして天井の一部が崩れ、顕になった陽が昇る薄い空へと異形は燃える腕を一本伸ばそうとした。
が、
カワセ「残念。現実は非常にして無情であるうううう!!発射あああああああああああ!!!!イエーーーーーーーーーーーイッ!!!!」
上空に浮かぶよう待機していたカワセが両手に持った何処かのSFダブルビームライフルみたいな物を構えており、容赦なく引き金を引いた直後に発射されたぶっといレーザーが片腕を上げた燃えていく異形ごと飲み込むよう入った後、大きな爆炎を上げるように松材の家ごと粉微塵に吹き飛ばしていった。
数時間後、自然鎮火し跡形もなく焼け焦げた松材の家跡に集まった彼らは、
カワセ「さーーて、残されたコイツを切って見ますかーー!!カゲローーウ!!」
カゲロウ「はい。どうぞ。お使いください。」
キリシマ含む兵士達を背に一人前に出たカワセは、焼け跡に残った四角い形状の大きな焼け焦げた黒い胃へと歩み、隣に立つ助手のカゲロウが押してきた一輪車の上に盛っていた様々なジャンク品へと手を翳す。
カワセ「ふふふ。よーし、こんなもんでいいかな!」
すると盛っていた様々なジャンク品が宙へ浮かび、カワセが翳した手へと収まる形で浮かび集まるジャンク品が鋭い包丁みたいな馬鹿でかい刃物へと変形した。
これを少し離れたところから見ていた若き新兵トビは、
トビ「(相変わらず凄い力だ。)」
トビ「(兵士長・キリシマさんは雷を自在に操る【雷の闘眼】。カワセ隊長は磁力を自在に操る【磁の闘眼】。本拠地に居るリーダー・ヤマトさんは大地を操る【大地の闘眼】…。)」
トビ「(人の姿をした神そのものの力。その力のおかげで俺たちは生き延びている。)」
カワセ「行くぞおおおおおーーー!!ストマックチェーーーック!!」
そう言っている間に、カワセは変形させたデカ包丁で豪快に四角い胃へと振り下ろし、真っ二つに振り下ろされた胃はぱっくりと割れ、中から薄赤い色の胃液が雪崩のように滑り出てきた。
その胃液の中にたくさん浮かんでいた…
「うお。これ…人の頭蓋骨、か?噛み砕かれてる骨がいくつかある。」
「?噛み砕かれたベッドフレームらしいものもあるぞ。」
「これはタンス?か?」
「潜伏型の化け物にしちゃ変なモンも食べているな。」
「ああ。ほとんどは消化中の人肉か骨ばっか出てくるんだけど。」
「これはクマのお人形さん?至る所に溶けて破れてますけど…。」
カワセ「ほお…。」
トビ「…。」
カゲロウ「…。」
胃液で溶けて一部砕かれた頭蓋骨がたくさんある中、一部噛み砕かれていたベッドフレームやタンス、ソファー、リュック、溶けて破れているクマの人形など家具が混ざっていて、兵士達は少し困惑する中、キリシマはとあるものを目にする。
キリシマ「…。」
キリシマはたくさん浮かぶ胃液の中に上に向けて上げていた一本の…ボロボロに溶け爛れた細い女性らしい腕。
その右薬指にはめていた一つの指輪を目にした後、
キリシマ「どんな事であれ、生を持つ以上、いずれ死ぬ。」
キリシマ「覚悟を持つ持たないであろうとも、必ずその時が訪れる。」
キリシマ「その現実を甘んじてはいけない。常に俺たちは前進し続けねばならない。」
キリシマは集まった兵士達へ伝えながら、
キリシマ「この残酷な現実で生きていくには、受け入れる選択を受容しなければ生き残れない。」
キリシマ「それでもその選択が正しいとは限らない。その選択でこの先の未来で何が起こるか誰でもわからない。だからこそ…」
流れ出た犠牲者達と残された異形の一部を燃やし、荼毘しているキリシマ達兵士は次第に灰となって土に還るまで、
キリシマ「生きていく上で極めて重要な道が差し掛かった時、後悔の無い一時凌ぎそのものの選択をせざるを得ない。」
キリシマ「悔いなき選択こそが、生きる我々にとって重過ぎる瞬間だ。」
彼らへ敬意を払うよう背筋を真っ直ぐに伸ばし、左腕を胸部へ添えるよう荼毘した火が消えるまでポーズを取り続けていった。
終




