籠の中の肉。
出産から###日経…………
ユキ「……。」
このオンボロの松材の家から出られなくなって何日も過ぎた。
辛うじて確保した私だけの食糧・水・干し肉・虹色の飴も全て無くなってしまった。
壁を背にして座っている私の周りには空になった缶とボトルと瓶…抜けたいくつかの私の歯がいくつか転がっていて、更に玄関前の段差下の靴履き場には私が閉じ込められて何日もそこで排泄した便と尿が蠢く蛆虫達と共に溜まって、今私が座り込んで居る所まで酷い激臭が漂う。
でも、
ユキ「(何も感じない…何も匂わない……。)」
ユキ「(私…このまま…餓死…しちゃう、かな?)」
普通ツンと来るハズの臭いも感じず、虚な私の視界にはブンブンと飛び回る小さなハエ達が、私の酷く痩せ衰えた腕や脚、開いたままの口へと止まり何度も吸い付くような小さな感覚を受ける。
着ている妊婦用の服が所々穴が開くようボロボロになっていて、穴が空いている箇所によっては私の皮と骨だけとなった痩せ衰えた身体が露わになっていた。
私はずっと何日もボーッと何日か前に侵食されたリビングの蠢く肉達の光景を遠く眺める形で、
ユキ「(ゲンの偽物通りに、私食べられるの?生きたまま…この姿で?)」
ユキ「(今の私なんか食べても大した栄養にならないよ。だって骨と皮しかないから…。)」
ユキ「(でも生きたまま食べられるなんて嫌だなぁ…せめて…せめて私が死ぬ時は…)」
私は傍に置いていた折れそうなぐらいにひどく刃こぼれ状態の包丁へと目を向けて、私はボロボロの包丁を手に取り刃先をお腹の正面に構え持つよう私は一呼吸をした。
ユキ「(せめて即死で…楽に。)」
お腹に向けて一気に刺すよう自殺しようとした。
その直後、
『……ま……マ?』
『マ…ぁ…ま…ぁ…?』
ユキ「!」
開いていた寝室入り口を塞ぐ化け物の肉塊…いや、我が子の始めての言葉を聞いて思わず虚だった目が大きく開き、構えていた包丁をつい床へ落とし声を掛けてきた部屋いっぱいな我が子へと目を向けた。
始めてのママ呼びを聞いた私は…
ユキ「!い、今…ママって、呼んだの?ねぇ?」
ユキ「もう一度言ってみて?ほら。さぁ。」
私はふらつきながら壁を背にしつつ立ち上がって、寝室入り口の肉塊が少し後ろへ下がる?みたいな変則的な動きで我が子の頭らしい物が正面に現れる。
と、
『ま…マ。…マァま…。』
ユキ「!すごい…喋った!私を…ママって、言ってくれた!!」
『まま…ママ…マま…まマぁ。』
ユキ「上手…!上手よ…!!」
大きく開いた丸い片目と左頭部沿いに折れ曲がった鼻、そして腐食した歯が並ぶ返り血まみれの口が現れて、その口で私へと【ママ】と言った!
スゴい!凄い!!スゴいわ!!生まれて多分何日もしてないというのにこんな事があるの!?
ユキ「スゴい…偉いわ…!上手…!!流石私の子…!!」
『ママ…まぁマ…。』
ユキ「上手っ!!」
私は思わず痩せ衰えた身でも感動の涙を流し、言葉を発する我が子の下へ自然に寝室入り口へと歩んだ。
私は最初のお喋りができた我が子へと抱き締める為、痩せた両腕を大きく前へと広げて、
ユキ「お利口…!お利口よ!!」
ユキ「やっぱり私が生んだ子は本当にかわー」
どんな姿であれなんだか愛おしく感じるよう、愛する子へ向けて抱きしめようとした。
その瞬間、
『ママぁーー。』
ユキ「え。」
小さかった我が子の口が一瞬で大きく広がるよう私が広げた両腕を一瞬で噛み千切り、さらに両脚も下から伸ばしていた肉の触手みたいなものが、その先端を切り裂く刃物状へと変えて私の両脚を一瞬で切断するよう、四肢がなくなった私はそのまま仰向けに床へと倒れる。
そして大きく開けた口で倒れた私の身体を加えた後、
ユキ「ぎゃ!?ああああ!?ぎああああああああああああああああああああ!?!?」
私は一気に我が子の大きな口で身体を折り畳むように噛み砕き、私は生きたまま我が子に食べられるよう折れた身体が口内へと入り、中からもバリバリと肉と骨をすり潰し細かく千切っていく感覚を受ける。
ゲン「はははははははははははははは!!あっははははははははははははははは!!」
ゲン「死んだーーーー!!死んだああああああ!!ざまぁ見ろおおおおお!俺が言った予言通りになったじゃーーーん!!ブハハハハハはははははは!!!!」
生きたまま絶命し我が子に食べられていく私の大きく反転した両眼が、その先に映るゲラゲラと嘲笑うゲンの偽物の姿を見るのが最期となって…
ゲン「いろんなドラマや漫画・ゲームのキャラクターの台詞で【どんなに長く辛い事でも明けない夜はない】の良い対義例になったな。」
ゲン「どんなに頑張っても一度夜に染まったら朝陽が昇る事は無い。最初からドクズだったお前にゃぁふさわしい末路だ。」
残る私の頭部がそのまま我が子が閉ざす口と歯に挟まった後、
ゲン「【夜は明けない。永久に。】。」
私の頭部が半分に切断されるよう喰い千切られ、残る私の半分になった頭部と脳みそと眼球がべちゃりと床に落ちた。
続く。




