↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/34

第21話:鉄壁の門番と、回避された貫通被害

隔離防壁『シールド』のメインゲート。

その分厚いエネルギー障壁の前には、一人の男が立ち塞がっていた。


……『黒之歯車(ブラック・ギア)』の防衛特化幹部:『鉄壁のダンプ』

身長はアルフレッドをさらに上回り、横幅も車ほどある巨漢。

彼の手には、戦艦の装甲板を繋ぎ合わせたような

巨大な『タワーシールド』が握られていた。


「ガハハハハ! よくここまで来たな厄災!

だが、この防壁のコントロールキーを持つ俺様を倒さねえ限り

一歩たりとも中には入れねえぜ!」


ダンプが巨大な盾を地面に叩きつけると、ズドォォン! と大地が揺れた。


「……鍵なら、物理的に(銃で)こじ開ける」

アルフレッドは僅かに億劫そうに、魔改造リボルバーを構えた。


「無駄だぜ! 俺様のこの重層超合金製『タワーシールド』は

さっきお前が戦艦を貫いた攻撃ですら弾き返す!

そして何より、俺様の後ろには居住区があるんだ。

お前のその規格外の銃をぶっ放せば、街に甚大な被害が出るぞ?」


……『ダンプ』の言う通りであった。

アルフレッドの魔改造リボルバーによる

『強化徹甲弾(アーマーピアシング)』なら

ダンプの盾ごと彼を貫通することは容易いかも知れない。

だが、問題は『貫通した後』だった。


……極太の光の針は『ダンプ』を貫いた後でさえ勢いを落とさず

そのまま直線状にある居住区――つまり、娘の住む街の家屋

(最悪の場合、娘の家のローンが残っている壁)にまで

突き刺さってしまう可能性がある。


(チッ『窓ガラス』どころの騒ぎじゃ済まなくなるか……撃てねえ)


アルフレッドが舌打ちをして銃口を下げたのを見て

『ダンプ』は勝ち誇ったように笑った。


「ガハハハ! 撃てねえだろ! 街の一般人を巻き込むことを恐れたか!

やはり噂通り、お前は無駄な血を流さず

帝国を築こうとする甘ちゃんだったってわけだ!」


『ダンプ』はシールドの裏側に隠されたスピーカーから、下劣な笑い声を響かせる。


「この門を死守すれば、ボスから莫大な報酬を出すと約束されてるんだ。

今夜は最高級の『生クリーム』をたっぷりと使った『ショートケーキ』と

ヴィンテージの『シャンパン』で祝杯を挙げる予定なんでな。

お前みたいな貧乏くせえ『修羅』に、俺様の贅沢は止められねえ!」


ピタッ。


アルフレッドの動きが止まった。


(『ショートケーキ』『生クリーム』『シャンパン』……だと?)


……ここ数日の間

プロテイン、ササミ、大豆ミート、青汁という

『味覚の地獄』を這いずり回ってきたアルフレッドにとって

その単語の羅列は劇薬だった。


「おい、お前……今夜『ケーキ』を食うのか」


「おうよ! 脂と砂糖の塊! 最高のジャンクフードだぜ!」


(俺は……茹で卵の黄身までパサパサの状態で食わされているのに……!)


アルフレッドの脳内で、理不尽な怒りのメーターが振り切れた。

彼は静かに、魔改造リボルバーをホルスターに収め

そして、分厚い革コートをバサリと脱ぎ捨てると

そのまま荒野の地面に放り投げた。


「お、親父さん!? ……銃を置いたぞ! 降伏する気か!?」

遠くの岩山から双眼鏡で覗いていたブラッドが叫ぶ。


コートを脱いだアルフレッドの肉体が、陽光に晒される。

無駄な脂肪が一切ない、鋼のワイヤーを束ねたような筋肉。

特に、毎日の荒野のウォーキングと極限の食事制限によって完成された

『シックスパック』と、丸太のような大胸筋が

異常なまでの威圧感を放っていた。


「なっ……なんだその筋肉は! 50を過ぎたジジイの体じゃねえぞ!?」

『ダンプ』がたじろぐ。


「残念だが銃は使えない……だが、俺は腹が立っている」

アルフレッドは、首をゴキボキと鳴らしながら『ダンプ』へと歩み寄る。


「お前が……『生クリーム』を食えることが、許せねえ……!!」


「ヒィッ! な、何を言ってるか分からねえが

俺様のシールドは素手で壊せるような代物じゃ……!」


『ダンプ』が巨大な盾を構え、全身の体重を乗せて防御態勢に入った。

しかし。


「スゥッ……シィィィッ!」


アルフレッドは深く息を吸い込み、限界まで研ぎ澄まされた右拳を

シールドの中心に向かって、ただ真っ直ぐに――振り抜いた。


ドゴォォォォォォォォォォッ!!!!!


銃声よりも重く、鈍い破砕音。

アルフレッドの拳が叩き込まれた瞬間

戦艦の装甲板を繋ぎ合わせた『タワーシールド』の中心から走った

蜘蛛の巣状の亀裂――


「ば、馬鹿な!? 素手で……俺様の『タワーシールド』が!?」


「……二発目」


ドンッ!!


さらに重い左の拳……瞬間『タワーシールド』は粉々の鉄屑となって吹き飛んだ。


「あ、あ、あ……」

『ダンプ』は盾を失い、完全に無防備な姿を晒した。


「お前の祝杯は……『ショートケーキ』は、中止だ」


ドスゥゥゥンッ!!

アルフレッド渾身のアッパーカットは

無防備に晒された『ダンプ』の顎を正確に捉え

『巨漢の門番』は白目を剥いて空高く舞い上がった。


直後、ズドーンと音を立てて地面にめり込み

完全に沈黙した『ダンプ』


「ふぅ……ゲホッ、ゼエ……」

アルフレッドは肩で息をした。


(最悪だ……ただでさえエネルギーが足りてないのに

純粋な肉弾戦(無酸素運動)なんてやっちまった。

また痩せちまう……俺の腹肉が遠のいていく……)


己の肉体がさらに健康(バキバキ)になってしまったことに絶望しながら

アルフレッドは『ダンプ』の懐からゲートのコントロールキーを奪い取った。


一方、そんな彼の戦いっぷりを遠くから見ていたカルメンは

震える手で口元を押さえていた。


「み……見た? ブラッド。

彼ったら街の被害を完全にゼロにするために

あえて、最大の武器である銃を捨てて

自らの拳だけで防衛線を突破しちゃったわよ!?」


「ああ……! 圧倒的な力がありながら

それを封印してまで守るべきもの(市民)を優先する。

これこそが『真の王』の戦い方だ……!

どこまで俺たちを惚れさせれば気が済むんだ、あの親父さんは!」

勝手な神格化と大号泣を繰り広げる二人の視線の先で

アルフレッドは『ピッ』……とコントロールキーをかざし

ついに居住区『セントラル・ガーデン』への入り口、隔離防壁のゲートを開いた。


「待ってろ、娘よ……今、父さんが(健康的な姿で)行くからな……」


ボロボロの心とバキバキの体。

伝説の殺し屋は、ついに娘の待つ街へと足を踏み入れた――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。