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第八十一話 万花の帝冠、赫灼の狩弓

本日二話目です。



 店の地下にある空間に二人を案内。カメラをシダに任せて、仮想敵の設定を行う。



「いろいろ出せるけどなにがいい?」


「ドラゴン!」


「……そんなの出せるのか?」


「いけるよ」



 設定を変更すると、部屋の中央にいた人型のマネキンがそこそこな大きさのドラゴンに変化した。

 ドラゴンとしては少し控えめなサイズかもしれないけど、部屋の広さにも限界があるのでこれが精一杯。とはいえ、武器を試すのには十分だと思う。



「じゃ、始めるよ」



 戦闘開始を告げるように、ドラゴンは大きく吠えた。腹の底から震えるような轟音の中、真っ先に動いたのはエリエザだった。



「よ〜し、行くよ!!」



 ハンマーを手に駆け出し、強く床を蹴って跳躍。そのままドラゴンの眼前へと躍り出る。



「まずは一発——《マキシマムインパクト》!」



 大きく振りかぶったハンマーを、勢いのまま頭部へ叩きつける。

 激しい衝突音。

 ダイレクトヒットの派手なエフェクトが散り、王冠のような戦鎚に嵌め込まれた花弁が、一枚ゆっくりと開いた。



『おおー』

『開いた!』

『早速特殊効果出てるな』



 強烈な一撃をまともに食らってよろめくドラゴン。

 その横合いから、今度は狼真が短弓を引き絞る。



「《玖蓮吼》」



 放たれた矢は九本。三本ずつ、僅かに軌道をずらしながら連続で撃ち込まれる。

 赤黒い軌跡を引いた矢がドラゴンへと突き刺さり、何本かは肉を貫いてそのまま背後へ抜ける。追加ダメージのエフェクトが遅れて弾け、ドラゴンの巨体がわずかによろめいた。


 大ぶりな一撃の後隙をフォローするタイミングでの攻撃。かなり連携が取れているみたい。


 その間に、エリエザは再び距離を詰めていた。

 今度は深く腰を落とし、ハンマーを強く引き絞るように構える。次の一撃に向けて力を溜める動きだ。

 その状態のエリエザに対し、ドラゴンが前脚を振り上げた。鋭い爪がエリエザを捉え、ダメージエフェクトが走る。

 避けようとする素振りは見せなかった。HPを減らすために自分から食らいに行ったのだろう。

 HPの減少と同時に、エリエザの身体に複数のエフェクトが重なった。攻撃力上昇、クリティカル率上昇、耐久補助。複数のバフがかかっているのが見える。



「狼真!」


「合わせる!」



 狼真が狙い澄まし、今度は一際強く弓を引く。

 番えるのは仇花の矢。



「——《剛穿》!」



 放たれた一矢は赤い光の線を引き、まるで細いビームのような軌跡を残しながらドラゴンの頭部を穿った。

 顎の側面に赤い彼岸花がひとつ咲く。

 怯んだドラゴンが怒りを露わにし、力を溜めていたエリエザへ噛みつこうと大きく顎を開く――その瞬間。



「《ブルカノ・ブラスト》!!」



 エリエザのハンマーが勢いよく下から跳ね上がり、ドラゴンの顎に命中した。

 顎へ叩き込まれたアッパーの衝撃で、咲いたばかりの彼岸花が散る。同時にクリティカルヒットとダイレクトヒットのエフェクトが重なって炸裂。花弁が一度に二枚開いた。


 狼真が仇花を咲かせ、エリエザが強力な一撃を叩き込む。

 花弁は、一枚、また一枚と開いていき、大した時間もかからずに、十一枚目が開いた。



「よーし、せっかくだし散華を発動させて終わろっかなー!」



 エリエザがそう言った直後、頭部に咲いた彼岸花を揺らしながらドラゴンが大きく咆哮した。

 離れた位置で見ていた私まで倒れそうになるほどの強烈な衝撃波が部屋全体を揺らす。



「きゃっ!? あ、ありがとうございます先生……!」



 吹き飛ばされかけてたシダを抱えつつ二人の様子を見ると、エリエザはすぐに床を蹴って立ち上がり、真っ直ぐに駆けだしていた。

 それを迎え撃つようにドラゴンが前脚を振り上げるが、そこに狼真の矢が飛び彼岸花を咲かせた。

 振り下ろされた前脚を、エリエザが下から跳ね上げるように打ち返す。

 仇花が散り、クリティカルが発生。十二枚目の花弁が開き、王冠のようだった戦鎚はついに完全な花冠へと姿を変えた。



「行くよ! 最強最大の一撃!!」



 エリエザが跳ぶ。空中でスキルを発動し、その場で身体ごと回転。

 遠心力と落下の勢いを乗せたまま、満開の戦鎚がドラゴンの頭部へと振り下ろされた。



「《ギガントマキア》!!!」



 次の瞬間、赤い花弁が爆ぜるような散華のエフェクトが広がり、周囲の空間そのものを震わせる一撃が解き放たれた。

 ドラゴンの巨体が大きく沈み込み、そのまま勢いよく地面へ叩きつけられる。

 轟音と振動。

 倒れ伏したドラゴンの前に着地したエリエザは、満開の笑みを浮かべて親指を立てた。



「使用感はどうだった?」


「最高!!」


「本当によく手に馴染んだ。UNITも不自由なく使えたし、オレは大丈夫」


「了解。じゃあ微調整はなしでいいかな」



 それにしても、さすがはユニークを倒した二人組って感じで、初めて触った武器でもしっかり使いこなせていた。同じ武器種でも造形とか重さとか変わってくるから、普通は難しいと思うんだけどね。



「そういえば、名前は決まってるのか?」


「うん。二人の戦いを見ながら考えてたんだ」



 二人から武器を受け取って、名前を付ける。それぞれの戦い方から着想を得た名前だ。ちょっとかっこつけてる感じだけど……それも似合うんじゃないかなって。



狂咲く万花の帝冠(カルペ・ディアデム)と、彼岸穿つ赫灼の狩弓(リコリス・ラジアータ)。これが、この武器の名前。どうかな」


「いいね。気に入った」


「私も! 異議なし!」


「よかった。じゃあ最後に……みんなの出番だよ」


『待ってました!』

『うおー!!!』

『十二の花弁が咲き揃う時、戴冠せし戦鎚は王の一撃を振り下ろす』

『フレーバーテキストの時間だー!』

『炎のように揺らめく赫灼の花を宿す狩弓。』

『閉じれば宝冠、開けば狂花、その名は万花を戴く帝の槌』

『乗り込めー!!!』

『仇花を標に放たれるその一矢は、静かに、そして確実に獲物を仕留める。』

『花冠を戴く者よ、傷を誇れ、散華の一撃を掲げよ』

『狩る者の指先に導かれ、仇花は死へ至る標となる。』

『なんか多くない!?』

『砕けぬ意志を核に、散りゆく花はなお鮮烈に咲く』

『十二の花弁は勝利への秒読みであり、終焉の合図である』

『不屈の石を抱いた花冠は、逆境の中でこそ真価を示す』

『うわあ一気に送るな!!』

『静寂の中に仇花は咲き誇る。逃れ得ぬ死を示すように』


「多い! あと混ざってよく分からなくなってる……!」


 濁流のように流れるコメント欄をどうにか目で追いかけて、フレーバーテキストを作成。

 完成した武器を二人に渡し、これにてユニークモンスター『花螂』エルバガモールの武器を作り終えたのだった。


――――――――

狂咲く万花の帝冠(カルペ・ディアデム)

武器種:戦鎚

必要STR:247

[散華]、成長装備、攻撃力強化+151、打撃強化+58、逆境強化+30、クリティカル強化+18、装甲破砕+10


十二枚の花弁を戴く、帝冠の名を持つ戦鎚。

閉じた姿は宝冠のごとく、開いた姿は咲き誇る万花のごとく。

相応しき者の手によって、その花は最も美しく、最も鮮烈に狂い咲く。

――――――――


――――――――


彼岸穿つ赫灼の狩弓(リコリス・ラジアータ)

武器種:弓/短弓

必要DEX:168

[仇花]、成長装備、[噴射(ブラスト)]、攻撃力強化+109、射撃強化+56、速射+27、命中精度+21


炎のように揺らめく赫灼の花を宿す狩弓。

赤き軌跡と共に放たれた一矢は、此岸と彼岸とを穿ち繋ぐ。

獲物に咲いた仇花は、逃れ得ぬ死に示された標であった。

――――――――

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