レーススタート
アステラを離れて三時間。
こうきたちを乗せた宇宙船は、王位継承レースのスタート地点である惑星オルディアへ向かっていた。
「もうすぐオルディアに着くわ」
操縦席に座るサクラが告げる。
「ここがレースのスタート地点なんだよな?」
こうきが窓の外を眺めながら尋ねた。
「そうよ。惑星連合王国が正式に定めた場所なの」
やがて、前方に惑星オルディアが見えてきた。
その周囲には、数え切れないほどの宇宙船が集まっている。形も大きさもさまざまで、見たことのない宇宙船も多かった。
「すげえ……! あんなに宇宙船がいるのか!」
こうきは窓に顔を近づけ、目を輝かせた。
「今回の参加者って、どれくらいいるんだ?」
「数万人はいると思うわ」
サクラの答えに、こうきは驚いた。
「数万人!? そんなにいるのかよ!」
「それだけ王様になりたい人がいるってことね」
「強いやつもたくさんいそうだな!」
「だからこそ、まずは生き残ることを考えないとね」
サクラの言葉に、こうきたちはうなずいた。
「食料と水は十分に積んであるし、宇宙船の整備も問題ないわ。準備はできているわよ」
「よし! それじゃあ、行こうぜ!」
こうきの声とともに、宇宙船はオルディアの発着場へと向かった。
◇
宇宙船を降りると、そこには大勢の参加者たちが集まっていた。
人間に似た姿の者もいれば、全身が毛に覆われた者や、見たこともない姿をした者もいる。
「本当にいろんな宇宙人がいるんだな……」
こうきは周囲を見回した。
「ここにいる全員が、王様を目指しているのよ」
サクラが説明する。
こうきは服の下に隠したネックレスに触れた。そこには、自分たちが手に入れた星の雫石がある。
「こうき、星の雫石はちゃんと隠しておいてね。見つかったら、奪おうとしてくる人もいるかもしれないから」
ゆきが心配そうに声をかけた。
「分かってるって」
こうきはそう答え、周囲に視線を走らせた。
そのとき、近くにいた参加者たちの会話が耳に入ってきた。
「今年は参加者が多いぞ!」
「数万人はいるらしいぞ!」
「誰が最後まで残るんだ?」
「一つ星も何人か来ているらしいぞ!」
その言葉に、こうきたちは顔を見合わせた。
やがて、巨大な鐘の音が鳴り響いた。
集まっていた参加者たちが一斉にそちらを向く。
空中に巨大なホログラムが映し出され、そこに一人の老人の姿が現れた。
『これより、第百代目惑星連合王国王位継承レースを開始する!』
老人の声が、会場全体に響き渡った。
『ルールは簡単だ。宇宙に散らばった星の雫石を集め、王の城がある星へ最初にたどり着いた者が、新たな王となる!』
参加者たちの間から、歓声が上がる。
『レースの進め方に制限はない。星の雫石を奪い、相手を欺き、立ちはだかる者を倒すことも自由だ!』
老人は言葉を続けた。
『ただし、無関係な一般人を無意味に巻き込むこと、惑星を破壊することは禁じる!』
会場の熱気が、さらに高まっていく。
『そして、優勝者には願い星によって、どんな願いでも一つだけ叶える権利が与えられる!』
「うおおおおおっ!」
参加者たちの歓声が響き渡った。
こうきも拳を握りしめる。
「いよいよ始まるんだな……!」
「気を引き締めていこうね」
ゆきが声をかける。
「うん。まずは最初の目的地を目指そう」
みずきも落ち着いた様子でうなずいた。
そのとき、こうきの服の下にある星の雫石が光り始めた。
「ん? 光ってる……」
こうきが取り出すと、星の雫石はある方向を指し示していた。
周囲を見れば、ほかの参加者たちが持つ星の雫石も、それぞれ異なる方向を指している。
「みんな、向いている方向が違うわね」
サクラが気づいた。
「ってことは、最初に向かう場所はみんな違うってことか!」
こうきは星の雫石を見つめた。
「なるほどな。最初から全員が同じ場所に向かうわけじゃないんだ」
参加者たちは、それぞれの星の雫石が示す方向へ動き始めた。
その直後、少し離れた場所で爆発音が響いた。
「な、何だ!?」
こうきたちが振り向くと、参加者同士が戦闘を始めていた。
星の雫石を巡る争いは、レースが始まった直後から起きていたのだ。
「もう戦ってるのか……!」
こうきは驚いたものの、すぐに前を向いた。
「でも、俺たちはまだ戦わない。知らないことも多いし、まずは星の雫石が示す場所へ行こうぜ!」
「そうね。今は無理をする必要はないわ」
サクラも同意した。
こうきたちは宇宙船へ戻り、それぞれの準備を整えると、最初の目的地へ向けて出発した。
こうして、五人の長い旅が正式に始まったのだった。




