惑星アステラと古物商の老婆
惑星アステラに近づいた宇宙船は、やがて大きな宇宙港へと降下していった。
「ここがアステラか……!」
窓の外を見たひろきが、思わず声を上げる。
宇宙港には、地球では見たこともない形の宇宙船が何隻も並んでいた。肌の色も体格も異なるさまざまな種族が行き交っている。
「本当に、いろんな種族がいるんだね」
ゆきが周囲を見回した。
「うん。アステラは、多くの惑星から人が集まる場所だからね」
サクラが答える。
「こんなところでレースの情報が手に入るのか?」
こうきが尋ねた。
「きっとね。まずは情報を集めて、必要な物資もそろえよう」
サクラの言葉に、四人も頷いた。
五人は宇宙船を降りると、宇宙港を後にした。
街には、さまざまな種族を相手に商売をする店が並んでいた。食料品を扱う店もあれば、見たこともない道具や機械を売る店もある。
こうきたちは周囲の様子を確かめながら、情報を集められる場所を探して歩いた。
やがて、サクラが足を止めた。
「この下に、地下街があるみたい」
「地下街?」
ひろきが首を傾げる。
「うん。中央地下管理区に、いろんな店が集まっているんだって」
「よし、行ってみようぜ!」
こうきたちは地下へと続く通路を下りていった。
そこには、地上とはまた違った賑わいが広がっていた。
狭い通路の両側には店が並び、食料や水、旅に必要な品々が売られている。レースの参加者らしき者たちの姿も多く見られた。
「まずは食料と水だな」
こうきが言う。
「そうだね。これから先、いつ補給できるか分からないし」
ゆきも賛成した。
五人は店を回り、長持ちする食料と水を購入した。宇宙を旅する以上、戦う力だけでなく、移動中の備えも欠かせない。
買い物を終えたこうきたちは、さらに地下街を歩いて情報を集めることにした。
すると、ある店先で、ひろきが足を止めた。
「おい、これって星の雫石じゃないか?」
店の台に並べられていたのは、星の雫石によく似た小さな石だった。
「本当だ。でも、こんなにたくさんあるの?」
ゆきが不思議そうに覗き込む。
こうきは自分たちの星の雫石を確かめた。
「……いや、何か違うぞ」
見た目は似ているが、手元の星の雫石とはどこか違っていた。
「偽物かもしれないね」
サクラが言った。
「偽物まで売ってるのかよ……」
ひろきが呆れた声を漏らす。
レースに参加する者が多いということは、それだけ星の雫石を狙う者もいるということだ。見た目だけで判断すれば、騙されてしまうかもしれない。
「気をつけないとね」
ゆきが念を押した。
そのときだった。
こうきの持つ星の雫石が、かすかに光を放った。
「ん? どうしたんだ?」
こうきが手の中の石を見る。
光は、地下街の奥へと向かうように明滅していた。
「また何かを示しているのかな?」
サクラが首を傾げる。
「行ってみようぜ」
こうきたちは星の雫石に導かれるように、地下街の奥へ進んでいった。
やがて、周囲の賑わいから少し離れた場所に、小さな店が見えてきた。
店先には、古びた看板が掲げられている。
――惑星間古物商。
「ここか……?」
こうきが看板を見上げた。
五人は店の中へと入っていった。
店内には、見慣れない道具や装飾品、古い機械などが所狭しと並んでいた。その奥に、一人の白髪の老婆が座っている。
「いらっしゃい」
老婆は五人を迎えると、こうきの手元に目を向けた。
「おや……その石は」
老婆の視線が、こうきの持つ星の雫石に留まる。
「これのことですか?」
こうきが石を見せると、老婆は静かに頷いた。
「本物だね」
「分かるんですか?」
ゆきが尋ねた。
「長くこういう品を扱っていればね」
老婆はそう答え、こうきたちを見渡した。
「お前さんたち、レースに参加するのかい?」
「ああ。俺たちは王様を目指してるんだ」
こうきが答える。
「そうかい。なら、知っておいたほうがいいことがある」
老婆は店の奥から、小さな石を取り出した。
こうきたちが持っているものと同じ、星の雫石だった。
「星の雫石は、持ち主を別々の星へと導いていく。参加者全員が同じ道を進むわけじゃないんだよ」
「じゃあ、みんな別々の場所を目指すってことですか?」
ゆきが尋ねた。
「最初はね。でも、進んでいけば道は少しずつ絞られていく。いずれ、参加者同士が出会うことになるだろうさ」
「なるほど……」
こうきは星の雫石を見つめた。
ただ集めていくだけではない。どこへ向かい、誰と出会うのか。それも、このレースの重要な要素なのだ。
老婆は手にしていた星の雫石を、こうきへ差し出した。
「これを持っていきな」
「えっ、いいんですか?」
こうきが目を丸くする。
「私はレースの参加者じゃないからね。持っていても仕方がないんだよ」
「ありがとうございます!」
こうきは礼を言い、星の雫石を受け取った。
それを見ていたサクラが、老婆に尋ねる。
「最初の目的地はどこですか?」
老婆は、迷うことなく答えた。
「オルディア」
「オルディア……」
サクラがその名を繰り返す。
こうきたちは顔を見合わせた。
次に向かうべき場所が、ようやく分かったのだ。
「よし! オルディアへ行こうぜ!」
ひろきが勢いよく言った。
「その前に、ちゃんと準備を確認してね」
ゆきが釘を刺す。
「分かってるって!」
ひろきは笑って答えた。
こうきは老婆に向き直る。
「いろいろ教えてくれて、ありがとうございました!」
「気をつけて行きな」
老婆はそう言うと、再び店の奥へと目を向けた。
こうきたちは店を後にした。
地下街を抜け、宇宙港へと戻る。
食料も水も手に入れた。そして、次の目的地も分かった。
「これで準備はできたね」
サクラが宇宙船を見上げる。
「ああ。次はオルディアだ!」
こうきたちは宇宙船に乗り込んだ。
やがて船体が浮かび上がり、宇宙港を離れていく。
五人を乗せた宇宙船は、レースの始まりの星――オルディアを目指して飛び立った。




