宇宙海賊
地球を離れた宇宙船は、広大な宇宙を進んでいた。
「うおおっ! 身体が浮いてる!」
ひろきが手足をばたつかせる。
「宇宙だからね。重力がほとんどないんだよ」
操縦席に座るサクラが説明した。
こうきたちは窓の外を覗き込んだ。
青い地球が、少しずつ遠ざかっていく。見慣れていたはずの故郷が、今は手の届かないほど小さく見えた。
「地球って、あんなに小さく見えるんだね……」
ゆきが窓に近づく。
「俺たち、あそこから来たんだよな」
みずきも、遠ざかる地球を静かに見つめていた。
その周囲には、数え切れないほどの星々が広がっている。
「すげえ……。あの星にも、俺たちみたいに生きてる奴がいるのかな?」
ひろきが尋ねた。
「いるかもしれないね。宇宙には、いろいろな種族が暮らす惑星がたくさんあるから」
サクラが答える。
こうきは窓の外を見つめ、楽しそうに笑った。
「こんなに広いなら、まだ見たこともないものが山ほどありそうだな」
「もちろん。でも、楽しいことばかりじゃないよ」
サクラの言葉に、四人が振り返った。
「宇宙にも危険な奴がいるってことか?」
こうきが尋ねる。
「うん。星の雫石を奪おうとする者もいるし、レースの参加者には、私たちよりずっと強い人もいるはずだよ」
「だったら、そいつらに負けないくらい強くならないとな!」
ひろきが拳を握る。
「そのためにも、まずは情報収集だね」
ゆきが釘を刺した。
「分かってるって!」
ひろきが笑う。
サクラは前方の計器を確認した。
「それじゃあ、アステラへ向かうよ。ワープを始めるね」
宇宙船の周囲で光が揺らめいた。
次の瞬間、窓の外の星々が光の筋となって流れ始める。
「うわっ! 何だこれ!?」
ひろきが驚いて声を上げた。
「ワープだよ。これで遠くの場所まで、一気に移動できるんだ」
サクラが説明する。
やがて光が消え、宇宙船は通常航行へ戻った。
「着いたのか?」
こうきが窓の外を確認する。
「まだだよ。でも、アステラには近づいたはず……」
サクラの声が途切れた。
前方には、無数の宇宙船が集まっていた。
大型船の周囲を、細長い高速船が飛び回っている。さらにその向こうでは、多数の小型船を従えた別の船団が接近していた。
そして、その船同士が攻撃を仕掛け合っている。
「何だ、あれ……?」
みずきが目を細めた。
通信から、怒鳴り声が聞こえてくる。
『右の連中を逃がすな! あいつらが奪った荷は俺たちのものだ!』
『先に見つけたのは俺たちだ!』
『うるせえ! まとめて奪ってやる!』
「海賊同士で争ってるのか……」
みずきが呟いた。
そのとき、こちらの宇宙船にも通信が入った。
『おい、そこの船! お前らもレースの参加者か?』
『星の雫石を持っているなら、そいつを置いていけ!』
「こっちまで狙われたぞ!」
ゆきが焦った声を上げる。
「数が多すぎる。戦っても勝ち目はないよ」
サクラが周囲を見回した。
「でも、囲まれてるんだろ?」
ひろきが拳を握る。
「だから、隙を探すんだ」
こうきは、船団同士の位置関係と動きを注意深く観察した。
そのとき、大型船が五人の宇宙船ではなく、右側を飛ぶ高速船の集団へ砲撃を放った。
攻撃を受けた船団が散開し、周囲の船も次々と進路を変える。
海賊たちの争いが、さらに激しくなった。
「今だ! サクラ、左へ!」
こうきが叫ぶ。
「分かった!」
サクラが船を旋回させた。
海賊船の間にできた隙間へ進もうとした、そのとき――。
前方から一隻の高速船が割り込んできた。
「塞がれた!」
ゆきが叫ぶ。
サクラはすぐに操縦桿を切り、船体を傾けた。高速船の脇をすり抜け、間一髪で衝突を避ける。
だが、背後には複数の宇宙船が迫っていた。
「まだ追ってきてるぞ!」
ひろきが後方を振り返る。
こうきは追手だけでなく、そのさらに後方にいる海賊船へ目を向けた。
海賊船の砲口が光る。
「あいつら、後ろの船を攻撃してる……」
こうきは一瞬考え、サクラに指示を出した。
「サクラ、少しだけ速度を落として!」
「えっ? 追いつかれちゃうよ!」
「いいから!」
サクラが一瞬だけ速度を落とす。
追手との距離が縮まった。
その直後、後方の海賊船から攻撃が放たれた。
狙いは、追手のさらに向こうにいる船だった。
攻撃を避けようとした船が進路を変え、追手の行く手を塞ぐ。
追手も急旋回を余儀なくされ、海賊船同士が再び攻撃を交わし始めた。
「今!」
こうきが叫ぶ。
サクラは一気に加速した。
前方に開いた隙間を抜け、五人の宇宙船は海賊たちの包囲網から脱出した。
追手の姿が遠ざかっていく。
ようやく安全な距離まで離れると、船内に安堵の空気が戻った。
「危なかったな……」
ひろきが息を吐く。
「正面から戦っていたら、どうなっていたか分からないね」
みずきも頷いた。
「うん。今の私たちじゃ、あの数を相手にするのは無理だよ」
サクラが前方の計器を確認する。
「アステラまでは、もう少し。今度こそ、無事にたどり着こう」
「そうだな」
こうきは窓の外へ目を向けた。
地球から見上げていた宇宙は、ただ美しく、どこまでも広がっているように思えた。
だが、その広大な世界には、自分たちの知らない危険も、強者もいる。
「まずは情報収集だ。俺たちに何ができるのか、知らないといけない」
こうきの言葉に、四人は頷いた。
五人を乗せた宇宙船は、惑星アステラへ向かって進んでいった。




