宇宙への旅立ち
「そういえば、サクラはどうやって地球に来たんだ?」
こうきに尋ねられ、サクラは答えた。
「宇宙船で来たの。でも、地球に着いたときに壊れてしまったわ」
「じゃあ、修理するしかないのか……」
こうきは腕を組んだ。
「宇宙船はどこにあるんだ?」
「こっちよ。人目につかない場所に隠してあるの」
サクラはそう言うと、四人を連れて歩き始めた。
◇
やがて五人は、東京湾にある倉庫街へとたどり着いた。サクラは周囲を確認してから、一つの倉庫の前で足を止める。
「ここよ」
「こんなところに隠してたのか」
こうきが倉庫の中を覗き込むと、そこには一隻の宇宙船が置かれていた。
「これがサクラの宇宙船か!」
ひろきが目を輝かせる。
「でも、壊れてるんだろ? どうやって直すの?」
ゆきが尋ねると、サクラは宇宙船を見上げた。
「それが……」
サクラが宇宙船に近づき、そっと手を触れた。
すると――。
ウィィィン……。
「えっ?」
宇宙船が突然、動き始めた。船体に明かりが灯り、内部から起動音が響く。
五人は驚いて顔を見合わせた。
「ちょっと待て! 壊れてたんじゃないのか!?」
こうきが声を上げる。
「私にも分からないわ……。確かに壊れていたはずなのに」
サクラも戸惑いを隠せなかった。
「誰かが修理してくれたってことか?」
みずきが宇宙船を見回す。
「でも、誰が?」
ゆきの問いに、答えられる者はいなかった。
「とにかく、これなら宇宙へ行けるわ!」
サクラの言葉に、ひろきが目を輝かせた。
「よし! いよいよ宇宙だな!」
「でも、準備もなしに出発するわけにはいかないだろ」
みずきが冷静に指摘する。
「それもそうだな」
こうきもうなずいた。
「じゃあ、明日出発しようぜ!」
「分かったわ。明日、またここに集まりましょう」
サクラの提案に、四人も同意した。五人は翌日の出発に備え、それぞれ準備をすることにした。
仲間たちが帰ったあと、サクラは一人、動き出した宇宙船を振り返った。
ふと、父の言葉が脳裏によみがえる。
『サクラ。地球へ行きなさい』
あのとき、父はそう命じた。
なぜ地球なのか。地球で何をすればいいのか。サクラには何も分からなかった。それでも、父の言葉に従って地球へ向かった。
知らない星で、一人きり。頼れる人もいない。これからどうすればいいのか、不安でなかったはずがない。
それでも、ここまで来た。
そして今、自分の話を信じ、一緒に宇宙へ行こうとしてくれる仲間がいる。
こうきは好奇心に満ち、ひろきは宇宙へ行けることを心から喜んでいた。ゆきはみんなを気にかけ、みずきは冷静に先を考えてくれる。
それぞれ違う四人が、自分と一緒に旅立とうとしている。
サクラの胸に、温かな喜びが広がった。
地球に来たときには、こんな仲間ができるなんて思ってもいなかった。
――一人じゃないんだ。
そう思うと、自然に笑みがこぼれた。
この気持ちは、まだ誰にも話さなくていい。
サクラは胸の内にそっとしまい、明日の出発に思いを向けた。
◇
翌日。
東京湾の倉庫街に、五人が再び集まった。
「みんな、準備はいい?」
サクラが尋ねると、四人はうなずいた。
「もちろん!」
こうきが笑顔で答える。
「それじゃあ、行きましょう!」
五人は宇宙船に乗り込んだ。サクラが操縦席に座り、操作を始めると、宇宙船がゆっくりと浮かび上がった。
窓の向こうで、東京の街並みが少しずつ遠ざかっていく。
「うおおおっ! 本当に飛んでるぞ!」
ひろきが窓に張りつく。
「すげえ……!」
こうきも目を輝かせ、眼下に広がる街を見つめていた。
地上から離れた宇宙船は、大気圏を抜け、広大な宇宙へと飛び出していく。
こうき、ゆき、ひろき、みずき、そしてサクラ。
五人の新たな旅が、今、始まった。
◇
誰もいなくなった倉庫街。
一人の老人が、五人の乗った宇宙船が飛び去った空を見上げていた。
「旅立ったか……」
白い髭をたくわえた老人は、静かに呟く。
「星の雫石に導かれた者たちが、五人……」
老人は、遠ざかる宇宙船を見つめた。
「これで、始まるな」




