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願い星ー宇宙を駆ける王位継承レース  作者: ネコ雲


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ボス戦


 盗賊団のアジト。


 薄暗い倉庫の中で、盗賊たちが一斉に動き出した。


「行けえええっ!」


 怒号とともに、何人もの男たちが五人へ襲いかかる。


「来るよ!」


 セリアが声を上げた。


「ガルド、ノア!」


「任せろ」


 大柄なガルドが前へ出る。


 その身体から、獣のような心気が一気に膨れ上がった。


「獣化――!」


 身体が大きく変化する。


 腕が太くなり、全身を黒い毛が覆っていく。


 顔も獣へと変わり――


 一瞬のうちに、大きな狼の姿へ変わった。


「グルル……!」


 巨大な狼となったガルドが、低く唸る。


「うおっ!?」


 盗賊の一人が怯んだ。


 その隙に――


 ガルドが床を蹴った。


 ドンッ!


 巨体が一気に距離を詰める。


 鋭い爪が振り抜かれた。


 ザンッ!


「ぐあっ!」


 男の身体が吹き飛ぶ。


 ガルドは止まらない。


 別の男へ飛びかかり、爪を振る。


 盗賊が腕で防ぐ。


 だが――


 ザンッ!


「ぐっ!」


 腕を弾かれ、そのまま床へ転がった。


「ガルド、そっちはお願い!」


「分かっている」


 その横をノアが駆け抜ける。


 ノアが両手を前へ出した。


「水!」


 手の前に水が集まり、いくつもの球体へ変わる。


「いけ!」


 ヒュンッ!


 水の弾丸が一斉に飛ぶ。


 ドンッ!


 ドンッ!


 盗賊たちの身体へ次々と命中し、男たちが後ろへ吹き飛ばされる。


「まだいる!」


 ノアが振り返る。


 背後から別の盗賊が迫っていた。


 ノアは振り向きざまに腕を振る。


 水の塊が飛ぶ。


 ドォン!


「ぐあっ!」


 男が壁へ叩きつけられた。


「よし」


 ノアが息を吐く。


 その一方で――


「こっちは私たちでやろう」


 セリアが、ゆきとサクラを見る。


「はい!」


 ゆきが頷く。


 サクラも前へ出た。


「三人で倒した人が、星の雫石をもらうんですよね」


「そうよ」


 セリアが笑う。


「だから、最後まで気を抜かないでね」


「分かってます」


 サクラが答える。


 その正面に巨大な男が立っていた。


「話は終わったか?」


 低い声がひびく。


 五人が一斉にそちらを見ると、先ほどのボスだった。


「お前ら……」


 ボスが拳を握る。


「俺の子分をやった上に、よくも好き勝手言ってくれたな」


 サクラが一歩前へ出る。


「自分たちから襲ってきたんでしょう?」


「……」


 ボスの目が細くなる。


「いい度胸だ」


 その口元が、不敵に歪んだ。


「お前らの全てを奪ってやる」


 セリアが身構える。


「来るよ」


 ボスが大きく息を吸い込んだ。


 ヒュオオオオオッ!


「……?」


 空気が、ボスの身体へ吸い込まれていく。


 その瞬間――


「……!」


 ゆきが胸元を押さえた。


「何……これ?」


 身体の奥から、何かが引っ張られている。


 サクラも同じ感覚を覚えた。


「私も……!」


「心気が吸われてる!」


 セリアが叫んだ。


「止まれ!」


 言葉に心気を乗せる。


 ボスの身体が――


 ピタッ。


 一瞬、動きを止めた。


 だが――


「……なるほど」


 ボスが笑った。


「自分から心気をくれるとはな」


「くっ……!」


 セリアが構え直す。


 ボスは再び息を吸い込む。


「ありがたく喰らってやる!」


 ヒュオオオオオッ!


 ゆきとサクラの心気が、さらに引き寄せられる。


「だったら――!」


 ゆきが前へ出た。


「それなら私が新技で捕まえる!」


 ゆきが両手を前へ出し、心気を一気に集中させる。


「――氷縛!」


 冷気が走る。


 パキパキパキッ!


 ボスの両足を氷が包み込んだ。


「何だと!?」


 ボスの動きが止まる。


「これで動けない!」


 ゆきが拳を握る。


「何その名前?」


 ゆきがサクラを見る。


「技を使うなら、技名を言うのは常識でしょ」


「どこの常識?」


「日本」


「ゼウスが存在しない地球なのに!?」


 サクラが呆れた顔をする。


「日本の常識よ」


「二回言わなくていい!」


 セリアが二人を見る。


「……今は技名の話をしている場合じゃないよ」


「そうだった!」


 ゆきが慌ててボスへ向き直る。


 サクラも自分の周囲に浮かぶ光の羽根を見つめ、心気を集中させる。


「私は羽根で相手を縛るから……」


 光の羽根が一斉に広がる。


「天羽縛!」


 羽根がボスの身体へ絡みついていく。


「……!」


 ボスの身体が、光の羽根に縛られる。


 サクラは自分の力を見つめる。


 羽根で相手を縛る。


 そのイメージが、今までよりはっきりと形になっていた。


「……これが、私の技」


 サクラが小さく呟く。


「天羽縛」


 自分で決めた名前を、もう一度口にする。


 その瞬間――


「……ありがとよ」


 ボスが不敵に笑った。


「え?」


 ゆきが顔を上げる。


「こんな近くに心気を集めてくれるとはな」


 ボスが大きく息を吸い込む。


 ヒュオオオオオッ!


 氷縛へ込められた心気が引き抜かれる。


「え……?」


 ゆきの目の前で、氷に亀裂が走った。


 パキッ。


 パキパキッ。


 氷が崩れていく。


「そんな……!」


 ボスの身体へ心気が吸い込まれていく。


 やがて――


 ボスが息を吐いた。


「……ふう」


 腹をさする。


「もう十分だ、今度はこっちから行くぞ!」


 ドンッ!


 地面が揺れる。


 巨体が一気に迫ってきた。


「来る!」


 三人が散開する。


 拳が振り下ろされる。


 ドゴォン!


 床が砕ける。


「速い!」


 ゆきが横へ飛ぶ。


 サクラも身体を捻ってかわす。


 セリアは拳を避けながら、ボスとの距離を取った。


 ボスは止まらない。


 大きな拳が横薙ぎに振られる。


「危ない!」


 ゆきが跳ぶ。


 拳が足元をかすめた。


「くっ……!」


 サクラが羽根を飛ばす。


 だが、ボスは腕を振って弾き飛ばす。


「効かない……!」


 ゆきも氷を飛ばす。


 ボスの肩へ当たる。


 しかし――


 氷が砕けるだけだった。


「どうすれば……」


 三人は攻撃を決められず、防戦一方だ。


「逃げてばかりじゃ勝てないぞ!」


 ボスが拳を振り抜く。


「止まれ!」


 セリアが命じる。


 ボスの身体が一瞬だけ止まった。


「今!」


 ゆきが横へ回り込む。


 ボスの足元へ手を向ける。


「――氷縛!」


 パキパキパキッ!


 再び両足が氷に包まれた。


「またか!」


 ボスが力を込める。


 バキッ!


 氷に亀裂が入る。


 だが――


「……?」


 ゆきが目を見開いた。


 氷が砕けるまでに、さっきより明らかに時間がかかっている。


「やっぱり……」


「どうしたの?」


 サクラが聞く。


「さっき、あの人は心気を吸って『もう十分』って言ったよね」


「うん」


「つまり――」


 ゆきはボスを見つめる。


「もう、心気を吸えないんだよ」


 セリアが気づく。


「吸収できる量に限界があるってこと?」


「うん」


 ゆきが頷く。


 サクラもボスを見る。


「だったら、もう一度!」


 ゆきが叫ぶ。


「サクラ!」


「分かった!」


 二人が同時に動く。


「氷縛!」


 ボスの両足を氷が覆う。


「天羽縛!」


 光の羽根が身体へ絡みつく。


 さらに――


「もう一重!」


 ゆきが心気を込める。


 氷が上から重なり、足をさらに固定する。


 サクラも羽根を重ねる。


 一枚。


 二枚。


 三枚。


 光の拘束が厚くなっていく。


「ぐっ……!」


 ボスが身体を動かそうとする。


 だが、動かない。


「なら――」


 ボスが大きく息を吸い込んだ。


 ヒュオオオオオッ!


 ゆきの身体から心気が引っ張られる。


「……!」


 サクラの心気も吸われる。


 だが――


「入ってこない……?」


 ボスの表情が歪む。


 吸い込んだ心気が、身体の中へ入っていかない。


「くそっ!だったら、今ある分を使えばいい!」


 ボスが身体へ心気を集中させる。


 筋肉が膨らむ。


「おおおおおっ!」


 身体強化を発動しようとする。


 しかし――


「……何だ?」


 力が入らない。


「なぜだ……!」


 ボスが腕を見る。


 身体の中を巡らせようとした心気が、途中で消えていく。


 それどころか――


 ボスの身体から、心気が外へ流れ出していた。


「……!」


 サクラが気づく。


「私の天羽縛……」


 光の羽根が、ボスの身体に触れている。


 触れた場所から、ボスの心気が削られていく。


「心気を吸うより、減る方が速いんだ」


「そんな……!」


 ボスが慌てて息を吸う。


 ヒュオオオオオッ!


 ゆきの心気を吸い込む。


 だが――


 その間にも、天羽縛がボスの心気を削っていく。


 いくら吸ってもそれ以上の速度で削られる。


「ぐっ……!」


 ボスの顔から、余裕が消えた。


「俺の心気が……!」


 身体強化へ回すこともできない。


 吸収することもできない。


 残った心気だけが、どんどん減っていく。


「くそおおおおおっ!」


 最後の力で身体を動かそうとする。


 だが――


 ガクッ。


 巨体が膝をついた。


「……」


 そのまま、ドォンッと地面へ倒れ込む。


 倉庫が揺れる。


 静寂が戻った。


「……倒れた」


 ゆきが息を吐く。


 サクラも荒い呼吸を整える。


「心気が空になったみたい」


 セリアが倒れたボスを見る。


「私たちだけで、倒したんだね」


 そのとき――


「ご苦労だったな」


 背後から声が響いた。


「……!」


 三人が振り返る。


 そこに立っていたのは、宇宙警察のヘイゾウだった。


「ヘイゾウさん……」


 ゆきが驚く。


 ヘイゾウは倒れたボスを見る。


「まさか、お前たちだけで倒してしまうとはな」


 そして、ゆきとサクラへ視線を向ける。


「たいしたものだ」


 ゆきが一歩前へ出る。


「これで、こうきたちを釈放してくれますね?」


 ヘイゾウは少しだけ目を細めた。


「どうだろうな」


「え?」


「あいつら次第だ」


「……?」


 ゆきの頭に、疑問符が浮かぶ。


 その頃――


 ヘイゾウの宇宙船では。


「外れろおおおおっ!」


 ガシャガシャッ!


 こうきが鎖を引っ張っていた。


「まだ外れないのか!」


 ひろきも必死に鎖を引く。


 みずきも竹刀へ心気を込めている。


「くっ……!」


 三人はまだ、自分たちを拘束している鎖と格闘していた。


 ヘイゾウから告げられた言葉が、三人の頭に残っている。


 ――わしが込めている以上の心気で打ち破るんだな。


 だが、ヘイゾウがどれほどの心気を込めたのか、三人には分からない。


「……だったら、もっと心気を使うしかない」


 こうきが鎖を見つめる。


「絶対に、ここから出るぞ」


「おう!」


 ひろきが拳を握る。


 みずきも頷いた。


 牢屋の中で、三人は再び鎖へ向き合った。

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