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願い星ー宇宙を駆ける王位継承レース  作者: ネコ雲


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23/25

星の雫石争奪戦


 地下街の外れ。


 人気のない通路を、五人が歩いていた。


 先頭を進むのはセリア。


 その隣にガルドとノア。


 少し後ろを、ゆきとサクラが並んで歩いている。


「そういえば、まだ名前を聞いてなかったね」


 セリアが振り返った。


「私はセリア」


 長い髪を揺らしながら、軽く手を上げる。


「こっちはガルド」


 大柄な男が短く頷いた。


「よろしく」


 続いて、隣の少年が口を開く。


「ノア」


「よろしくお願いします」


 ゆきが頭を下げる。


「私はゆきです」


「サクラです」


 サクラも続けた。


「よろしく」


「こちらこそ」


 セリアが笑う。


「じゃあ、これで自己紹介は終わりだね」


 その直後だった。


「……あれ?」


 セリアが足を止める。


「どうした?」


 ガルドが聞く。


「星の雫石が……」


 セリアが胸元へ手を当てる。


 身につけている星の雫石が、淡く光っていた。


「反応してる」


「え?」


 ゆきが自分の胸元を見る。


 サクラも同時に星の雫石を取り出した。


 二人の石も、淡く輝いている。


「私たちのも……」


 サクラが呟く。


 セリアたちの視線が、二人の星の雫石へ集まった。


「やっぱり」


 セリアが目を細める。


「二人もレースの参加者なんだね」


「セリアさん達も、やっぱりそうだったんですね」


 ゆきが答える。


 すると――


「……待って」


 サクラが周囲を見回した。


「私たちの石だけじゃない」


「え?」


 ゆきも気づく。


 五人の星の雫石とは別に、もう一つ。


 遠くから微かな反応が返ってきている。


「これ……」


 セリアが反応の方向を見る。


「あっちの方からだ」


 ガルドが頷く。


「盗賊団が盗んだ星の雫石の反応だ」


 ゆきが言う。


「うん」


 サクラがゆきの言葉にうなずく。


「盗賊団よりも先に――」


 セリアが二人を見る。


「今から星の雫石をかけて戦ってみる?」


「え?」


 ゆきが目を丸くする。


「レース参加者同士なら、そういうのもありでしょ?勝った方が盗賊団の分も含めて総取り」


 セリアは悪戯っぽく笑う。


 だが、ゆきは首を横に振った。


「ごめんなさい。今は戦えない」


「どうして?」


「こうきたちが捕まってるから」


 ゆきが答える。


「先に三人を助けないと」


 サクラも頷く。


「私たちは仲間を助けるために、盗賊団を追っているんです」


「なるほど」


 セリアはすぐに納得した。


「じゃあ、私たちとは戦えないね」


「はい」


「それなら――」


 セリアが盗賊団のいる方向を見る。


「盗賊団の星の雫石は、争奪戦だな」


 ゆきとサクラが顔を見合わせる。


「……望むところです」


 サクラが答えた。


「私も」


 ゆきも頷く。


 セリアが嬉しそうに笑った。


「決まりだね」


 ガルドが腕を組む。


「最初からそうなると思っていた」


「だって、レースなんだから」


 セリアが肩をすくめる。


「欲しいものがあるなら、戦って手に入れる。それでいいじゃない」


「それなら、急ごう」


 サクラが前を向いた。


「こうきたちを待たせたくない」


「うん」


 ゆきも頷く。


 五人は盗賊団の星の雫石が反応する方向へ走り出した。


     ◇


 その頃。


 地下街のさらに奥。


 一人の男が、息を切らしながら薄暗い建物へ駆け込んでいた。


「ボス!」


 部屋の奥。


 椅子に座っていた大柄な男が顔を上げる。


「どうした?」


「大変です!」


 男が息を整える。


「仲間がやられました……」


「何だと?」


「仲間をやった奴らが俺達を探してます!」


 ボスの表情が変わる。


「何?」


「女二人と途中から三人加わりました!」


 男が振り返る。


「……そうか」


 ボスがゆっくり立ち上がった。


「なら、そいつらまとめて相手にしてやる」


     ◇


 五人が建物の中へ入る。


 薄暗い倉庫のような場所だった。


 奥には、何人もの盗賊が集まっている。


 そして、その中央に――


 一際大きな男が立っていた。


「来たか」


 低い声が響く。


 男が五人を睨みつける。


「お前らか」


 拳を握る。


「俺の子分たちをやったのは」


 サクラが一歩前へ出た。


「そうよ」


「サクラ!?」


 ゆきが驚く。


 サクラは盗賊たちを見回した。


「あなたの仲間なら、縛って路地裏に捨ててきたわ」


「……!」


 盗賊たちの顔が引きつる。


 ボスの眉が動いた。


「貴様……」


 サクラはさらに一歩踏み出す。


「自分たちから襲ってきたんだから、自業自得でしょ」


「ちょっと!」


 ゆきが慌ててサクラの腕を引く。


「なんでわざわざ挑発するのよ!」


「ゆきは怒ってないの!?」


 サクラが振り返る。


「あんな臭い目にあわされたのに!」


「それは……怒ってるけど!」


「だったらいいじゃない!」


「よくないよ!」


 ゆきが呆れた顔をする。


 セリアは二人を見ながら、困ったように笑った。


「まあまあ」


「まあまあじゃないです!」


 ゆきが振り返る。


「ホント臭かったんですから!」


「……」


 セリアが二人を見る。


「そうだったね」


「忘れてたんですか!?」


「ごめん」


 セリアが素直に謝る。


 そのやり取りを見ていたガルドが小さくため息をついた。


「話が進まないぞ」


「そうだね」


 セリアが盗賊たちへ向き直る。


「じゃあ、そろそろ始めようか」


 ボスが一歩前へ出た。


「いい度胸だ」


 その身体から、凄まじい心気が立ち上る。


「俺の子分をやった上に、よくそんな口が利けるな」


 拳を握る。


「お前らの全てを奪ってやる」


 五人の表情が変わる。


 セリアが構えた。


「来るよ」


「うん」


 ゆきが両手を前へ出す。


 サクラの背中から、光の羽根が浮かび上がる。


 ガルドとノアも、それぞれ構えた。


 盗賊たちが一斉に動いた。


「行け!」


 ボスの声が響く。


     ◇


 一方。


 ヘイゾウの宇宙船。


 牢屋の中では、こうき、みずき、ひろきの三人がまだ鎖と格闘していた。


「外れねぇ!」


 ひろきが鎖を引っ張る。


 ガシャガシャッ!


 それでも外れない。


「くそっ!」


 こうきも自分の鎖を握る。


 心気を流し鎖の形を変えようとする。


「……駄目だ」


 びくともしない。


「なら、俺がやる」


 みずきが竹刀を構える。


「せやっ!」


 ガキンッ!


 鎖へ叩き込む。


 竹刀が弾かれた。


「……硬いな」


「俺も!」


 ひろきが鎖を口で咥える。


「おおおおっ!」


 ガリッ!


「……」


 こうきとみずきが固まる。


「どうだ!」


「ひろき」


 こうきが呆れた顔をする。


「何?」


「それで外れると思ってるのか?」


「分からないけど、やるだけやってみた」


「……」


 ひろきは今度は鎖を床へ叩きつける。


 ガンッ!


「外れろ!」


 ガンッ!


「外れろ!」


 ガンッ!


「外れろー!」


 ヘイゾウは牢屋の外で、そんな三人を面白そうに眺めていた。


「……お前らはバカか?」


「バカじゃない!」


 ひろきが叫ぶ。


「だったら、少しは頭を使え」


 ヘイゾウが鎖を見る。


「その鎖を外したければ――」


 三人が顔を上げる。


「わしが込めている以上の心気で打ち破るんだな」


「……!」


 こうきが鎖を見る。


「つまり、俺たちの心気が足りないってことか」


「そういうことだ」


 ヘイゾウは頷く。


「もっとも――」


 口元に笑みを浮かべる。


「わしがどのくらい心気を込めたか分かればの話だがな」


「……」


 三人が黙る。


「それって、分からないじゃん!」


 ひろきが叫ぶ。


「自分で考えろ」


 ヘイゾウはそれだけ言うと、背を向けた。


「おい!」


 ひろきが鉄格子を掴む。


「どこ行くんだよ!」


「もうそろそろだ」


 ヘイゾウが足を止める。


「行くぞ」


「どこへ?」


「仕事だ」


 ヘイゾウは答えなかった。


 そのまま部下たちを連れて、宇宙船の外へ向かっていく。


「……」


 こうきはその背中を見送った。


「何か変だな」


「何が?」


 ひろきが聞く。


「俺たちを捕まえたのに、ヘイゾウはずっと落ち着いてる」


 みずきが頷く。


「確かに」


「まるで――」


 こうきが鎖を見る。


「最初から何か分かってるみたいだ」


     ◇


 ヘイゾウは宇宙船を降りた。


 部下たちが後ろへ続く。


「隊長」


「何だ?」


「本当にあの三人を放っておいて大丈夫なんですか?」


「ああ」


 ヘイゾウは歩きながら答える。


「今はまだな」


 そして――


 誰にも見えないほど細い、一本の心気の糸が指先から伸びている。


 糸の先は、遠く離れた場所へ続いている。


「……見えているぞ」


 ヘイゾウが呟く。


 その先にいるのは――


 ゆきとサクラ。


 そして、セリアたち三人。


 ヘイゾウは以前、二人に出会った時。


 ゆきの身体へ、目ではほとんど確認できないほど細い心気の糸を取り付けていた。


 その糸は、ヘイゾウの心気によってどこまでも伸びていく。


 惑星一周程度なら、十分に届く。


 そして、その糸を通して――


 ゆきたちがどこにいるのか。


 何をしているのか。


 ヘイゾウは常に把握していた。


「盗賊団と接触したか」


 ヘイゾウの目が細くなる。


「なら、そろそろ動くか」


 ヘイゾウは部下たちへ振り返った。


「行くぞ」


「はい!」


 宇宙警察の一行が歩き出す。


 一方その頃。


 盗賊団のアジトでは――


「行けえええっ!」


 盗賊たちが一斉に五人へ襲いかかっていた。


 セリアが一歩前へ出る。


「止まれ」


 言葉に心気を乗せる。


 先頭の盗賊の動きが止まった。


「今だよ!」


 ゆきが狙いを定める。


 サクラの羽根が、その横を駆け抜ける。


 五人の戦いが――


 始まった。

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