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願い星ー宇宙を駆ける王位継承レース  作者: ネコ雲


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20/25

三人を救う為に


 宇宙船へ連れていかれる、こうき、みずき、ひろき。


 三人の手首と足首には、ヘイゾウのゼウスによって生み出された鉄の鎖が繋がれていた。


 その後ろから、ゆきとサクラもついてきている。


「こうき、本当に何もしてないの?」


「してない」


 こうきは即答した。


「じゃあ、なんで捕まったの?」


「……警察だから」


「それ、答えになってないよ」


 ゆきが呆れたように言う。


「俺たちは本当に何もしてないぞ!」


 ひろきが振り返る。


「そうそう」


 こうきも頷いた。


「ちょっと話を聞かれるだけだろ」


「その割には、手足まで鎖で繋がれてるけど……」


 サクラが苦笑する。


 みずきは、自分の手首と足首を繋ぐ鎖へ目を落とした。


 見た目は鉄の鎖。


 だが、普通の鎖とは明らかに違う。


 指先で触れると、内部を流れるような感覚がある。


「……心気が込められている」


「やっぱり?」


 こうきも自分の鎖へ目を向ける。


「かなり頑丈だな」


「まあ、何とかなるだろ」


「本当に?」


 ゆきが心配そうに三人を見る。


「本当に何かバカなことしたんじゃないでしょうね?」


「してない!」


 三人の声が揃った。


 ヘイゾウが振り返る。


「本当に何もしていないなら、これから分かる!」


「だから何もしてないって!」


 ひろきが叫ぶ。


「なら、堂々としていろ!」


「してるだろ!」


「その割には、ずいぶん騒がしいな!」


「そっちが捕まえてるからだろ!」


「何だと!」


「ひろき、もうやめろ」


 みずきが呆れたように言う。


「話が進まない」


「……はい」


 ひろきが渋々口を閉じる。


 こうきはそんな二人を見ながら、小さく息を吐いた。


「警察って、やっぱり苦手だな……」


「何だと!?」


 ヘイゾウがすぐに反応する。


「いや、何でもない」


「聞こえておるぞ!」


 こうきたちは思わず苦笑した。


 そんなやり取りをしているうちに、停泊場が見えてきた。


 様々な形の宇宙船が並ぶ中、一際目立つ船がある。


 白と黒を基調とした、頑丈そうな宇宙船。


「それが、ヘイゾウさんの船?」


 サクラが尋ねる。


「そうだ」


 ヘイゾウが胸を張る。


「宇宙警察の捜査船だ!」


「へえ……」


 ひろきが興味深そうに眺める。


「お前、今は観光してる場合じゃないぞ」


「分かってるって」


 ひろきはそう言いながらも、船をじっと見ていた。


 こうきはため息をつく。


「ひろき、今は大人しくしておけ」


「分かってるよ」


 やがて、ヘイゾウが船の扉を開いた。


「ゆき、サクラ!」


 こうきが振り返る。


「俺たち、ちょっと行ってくる」


「うん」


 ゆきが頷く。


「でも、本当に何もしてないなら、ちゃんと説明してね」


「分かってる」


「あと――」


 ゆきが少しだけ眉を寄せる。


「何かバカなことしたなら、ちゃんと謝るんだよ」


「だからしてないって!」


 ひろきが叫ぶ。


 サクラが小さく笑った。


「気をつけてね」


「ああ」


 こうきが頷く。


「そっちもな」


 三人が船内へ入っていく。


 扉が閉まった。


「……行っちゃった」


 ゆきが宇宙船を見つめる。


「大丈夫かな?」


「たぶん大丈夫だよ」


 サクラが答える。


「でも……」


 少し考えてから、苦笑した。


「あの三人なら、何かバカなことをして捕まっていても驚かないかも」


「それは分かる」


 ゆきも苦笑する。


 心配ではある。


 けれど、本当に盗賊団の仲間だとは思っていない。


「……何して捕まったんだろう」


「そこは私も少し気になる」


 二人が顔を見合わせた。


 すると――


「お前たち!」


 宇宙船の入口から、ヘイゾウが顔を出した。


「え?」


「頼みがある!」


「頼み?」


 ヘイゾウは二人を見る。


 先ほどまで三人を追いかけていたときとは違い、その表情には真剣さがあった。


「この町を荒らしている盗賊団を捕まえてほしい!」


「盗賊団を?」


 ゆきとサクラが顔を見合わせる。


「ああ!」


 ヘイゾウが頷く。


「最近、町の商館を襲っている連中だ。わしも追っているが、まだ尻尾を掴み切れておらん!」


「それを私たちが?」


「そうだ!」


 ヘイゾウは二人をまっすぐ見る。


「先ほどの三人が盗賊団の一味ではないと確認できれば、解放する!」


「じゃあ……」


 ゆきが尋ねる。


「盗賊団を捕まえればいいんですね?」


「そういうことだ!」


 ゆきは少し考えた。


 そして、サクラを見る。


「……やろう」


「うん」


 サクラも頷いた。


「こうきたちを放してもらうためだもんね」


「それに――」


 サクラは町の奥を見る。


「この町で困っている人がいるなら、放っておけない」


 ゆきも頷いた。


「分かりました」


「頼んだぞ!」


 ヘイゾウは力強く頷くと、船内へ戻っていった。


「それじゃあ――」


 サクラが町へ向き直る。


「盗賊探し、始めようか」


「うん!」


 二人は並んで歩き出した。


     ◇


 一方、その頃。


 ヘイゾウの宇宙船内。


「だから、俺たちは何もしてないって!」


 ひろきの声が船内に響いていた。


「静かにしろ!」


 ヘイゾウが怒鳴り返す。


「何度言えば分かる!」


「だったら帰してくれよ!」


「それはできん!」


「なんでだよ!」


「お前たちは盗賊事件の現場にいた!」


「見てただけだ!」


 こうきが言い返す。


「この星に来たばかりなんだぞ」


「それは調べれば分かる!」


 ヘイゾウは腕を組んだ。


「だが、現場にいた以上、事情を聞く必要がある!」


「だから話しただろ」


「まだ聞き終わっておらん!」


「……」


 こうきが小さく息を吐く。


「警察って面倒だな」


「何だと!?」


「いや、何でもない」


 みずきが呆れたようにこうきを見る。


「今のは余計だったな」


「……そうだな」


 ヘイゾウが三人をじろりと睨む。


「よし!」


「何?」


「ひとまず、お前たちはここで待っていろ!」


「どこに?」


 ひろきが尋ねる。


 ヘイゾウが船内の奥を指差した。


「そこの部屋だ!」


「……牢屋?」


「そうだ!」


「牢屋に入れる気か!?」


 ひろきが目を見開く。


「俺たち本当に何もしてないぞ!」


「なら、盗賊団が捕まれば出してやる!」


「だから冤罪だって!」


「なら証明してみろ!」


「どうやってだよ!」


「それを今から考えるんだ!」


「無茶苦茶だろ!」


「うるさい!」


 ヘイゾウは三人を牢屋へ押し込んだ。


 ガチャッ!


 扉が閉まる。


「くそっ!」


 ひろきが鉄格子を掴んだ。


「こんなところに入れられてたまるか!」


 こうきは、自分の手首と足首を繋ぐ鎖を見る。


 牢屋に入ってから改めて触れてみると、やはり普通の鉄鎖とは違う。


 心気が込められている。


「……待て」


「どうした?」


 みずきが振り返る。


「この鎖、何とかできるかもしれない」


「本当か?」


 ひろきが近づく。


「やってみよう」


 三人は、それぞれ自分を拘束している鎖を調べ始めた。


「まず俺がやる」


 ひろきが鎖を両手で掴む。


「おおおおおっ!」


 全身に力を込めた。


 肩が震える。


 足が床を踏みしめる。


 ガシャガシャッ!


 鎖が大きく鳴る。


 だが――


 外れない。


「くそっ!」


 ひろきが息を吐いた。


「硬すぎるだろ!」


 みずきも鎖を調べる。


「俺も試す」


 だが、手足を繋がれているため、腰の竹刀をまともに扱えない。


「……この状態では、竹刀も使えないな」


「そうか」


 こうきが頷く。


「なら、俺のゼウスで――」


 こうきが鎖へ手を当てた。


 心気を流す。


 自分の意思で形を変えようとする。


「……」


 しかし――


 何も起こらない。


「駄目だ」


「こんなもん、どうやって抜けるんだよ」


 ひろきが頭を抱える。


 こうきは鎖を見つめた。


 心気を流している。


 それなのに、自分のゼウスが鎖へ届かない。


「俺の力じゃ、まだ足りないのか……」


 みずきも鎖を握る。


「俺も、今のままではどうにもならない」


 三人は顔を見合わせた。


 簡単には外れない。


 それでも――


「諦めるわけにはいかない」


 こうきが言った。


「ここから出るぞ」


「おう!」


 ひろきが拳を握る。


「絶対に出る!」


 みずきも頷いた。


「方法を探そう」


 三人は再び鎖へ向き合った。


     ◇


 一方。


 ゆきとサクラは町の中を歩いていた。


「盗賊団って、どこにいるんだろう?」


 ゆきが周囲を見回す。


「まずは情報を集めよう」


 サクラが答える。


 二人は商店や住宅を回り、住民へ話を聞いていく。


「盗賊団を見たことはありませんか?」


 サクラが尋ねる。


「最近、町の端で何度か見かけたよ」


 住民が答えた。


「町の端?」


「ああ。商館を襲った連中も、そっちへ逃げたらしい」


「ありがとう!」


 二人は礼を言い、歩き出す。


「町の端か……」


 ゆきが考える。


「何か手掛かりがあるかもしれないね」


「うん」


 サクラが頷く。


「行ってみよう」


 二人は町の端へ向かって走り出した。


 町の中央から離れるにつれて、人の姿が少なくなっていく。


 住宅も減り、代わりに古い倉庫や商館が増えていった。


「……なんだか、静かだね」


 ゆきが周囲を見回す。


「うん」


 サクラも足を緩めずに答える。


「気をつけよう」


「分かった」


 二人は先ほど見た商館へ近づいていく。


 建物の扉は壊れたまま。


 壁には、盗賊が残したと思われる傷がいくつも残っている。


「ここだね」


 サクラが呟く。


 そのとき、ゆきが足元へ目を向けた。


「サクラ、これ……」


 地面に、いくつもの足跡が残っている。


「……新しい」


 サクラがしゃがみ込む。


「しかも、商館の裏へ続いてる」


「じゃあ――」


 ゆきが顔を上げる。


「近くにいるかも」


「行ってみよう」


「うん!」


 二人は足跡を追い始めた。


     ◇


 一方、宇宙船の牢屋では――


「おおおおおっ!」


 ひろきが再び鎖を引っ張っていた。


 ガシャッ!


 しかし、鎖はびくともしない。


「……駄目だ」


 ひろきが肩で息をする。


「何回やっても無理だな」


 みずきが鎖を見る。


「力だけでは外れない」


「俺のゼウスでも変化しない」


 こうきも頷いた。


 三人は顔を見合わせる。


「だったら――」


 こうきが拳を握る。


「別の方法を探そう」


「おう!」


 ひろきが頷く。


「絶対ここから出るぞ」


「焦るな」


 みずきが言う。


「鎖そのものを、もう少し調べよう」


「ああ」


 三人は改めて鎖へ向き合った。


 力を込める。


 心気を流す。


 何度試しても――


 鎖は外れなかった。


     ◇


 同じ頃。


 ゆきとサクラは、町の端へ辿り着いていた。


 そこには、昼間だというのにほとんど人の姿がない。


 古い倉庫が並び、その奥に商館が見える。


 そして――


 商館の脇から、裏手へ続く足跡が残っていた。


「……これ」


 サクラがしゃがみ込む。


「最近ついたものだと思う」


 ゆきも足跡を見る。


「盗賊の?」


「たぶん」


 二人は顔を見合わせる。


 足跡は、人気のない裏通りへ続いていた。


「追ってみよう」


「うん」


 二人は足跡を追って、静かな町の端へ進んでいった。

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