↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
願い星ー宇宙を駆ける王位継承レース  作者: ネコ雲


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/25

宇宙警察


 グリーンガルドを出発してから、数時間。


 五人を乗せた宇宙船は、次の星へ向かっていた。


 操縦席ではサクラが星の雫石を確認している。


「もうすぐだよ」


「次はどんな星なんだ?」


 こうきが尋ねる。


「惑星ノクティア」


 サクラが答える。


「人口の多い町がいくつかあるみたい」


「じゃあ、食料とかも買えるかな」


 ゆきが嬉しそうに言った。


「グリーンガルドでは、自分たちで探すのが大変だったからね」


「今度は普通に店で買いたいな」


 ひろきが笑う。


 みずきも窓の外を見る。


「星の雫石は?」


「こっち」


 サクラが手にした星の雫石から、淡い光が伸びている。


 その光は、惑星の一角を指していた。


「町の近くだね」


「なら、まずは町へ行こう」


 こうきが言った。


 やがて宇宙船は大気圏へ入っていく。


 雲を抜ける。


 眼下に広がったのは、緑の大地だった。


 そして、その中に――


「……あれ?」


 ゆきが窓へ顔を近づける。


 広がっていたのは、どこか懐かしい風景だった。


 田畑。


 川。


 低い山。


 住宅。


 そして、古い木造の建物。


「日本の田舎みたい」


「俺もそう思った」


 こうきが驚いた顔をする。


 だが、よく見ると普通ではない。


 道路を走っているのは、車ではなく小型の浮遊車。


 田畑では、巨大な機械が人の代わりに作業している。


 古い家の屋根には、宇宙通信アンテナ。


 町の中央には昔ながらの時計塔がある。


 その隣には、空へ伸びる巨大な通信施設まで建っていた。


「見た目は田舎なのに……」


 みずきが呟く。


「中身はかなり進んでるな」


「面白そう!」


 ひろきが身を乗り出す。


「早く降りようぜ!」


 宇宙船は町から少し離れた停泊場へ降下していった。


     ◇


 宇宙船が停泊場へ着陸する。


 扉が開く。


「着いた!」


 ひろきが真っ先に飛び出した。


「おい、待て!」


 こうきが呼び止める。


「町を見てくる!」


「俺も行く!」


 みずきまで歩き出した。


「ちょっと!」


 ゆきが声を上げる。


「勝手に行かないでよ!」


「大丈夫だって!」


 ひろきが振り返る。


「ちょっと見てくるだけだから!」


「俺も付き合う」


 みずきも続く。


「この星を知っておいた方がいい」


「こうきも行くの?」


 ゆきが呆れたように言う。


「俺も少し見てくる」


「もう……」


 サクラが苦笑する。


「三人とも、気をつけてね」


「おう!」


 三人は町へ向かって走っていった。


 その背中を見送りながら、ゆきがため息をつく。


「本当に落ち着きないんだから」


「そうだね」


 サクラも笑った。


 その一方で、ゆきの視線は町の方へ向いている。


 サクラはそれに気づいた。


 だが、何も言わなかった。


     ◇


 町の中心から少し離れた場所。


 こうき、みずき、ひろきは並んで歩いていた。


「この町、面白いな」


 ひろきが周囲を見回す。


「昔の日本みたいな建物があるのに、浮いてる車が走ってる」


「農作業用の機械もかなり高性能だ」


 みずきが巨大な機械を見る。


「見た目だけで判断できない星だな」


 こうきは周囲を観察していた。


「……あっち、人が集まってる」


「行ってみようぜ!」


 三人は人だかりへ向かう。


 そこには、立入禁止の札が立てられた商館があった。


 建物の扉は壊され、壁には何かで削られたような跡が残っている。


「何だ、これ?」


 ひろきが覗き込む。


「盗賊に襲われたらしい」


 近くにいた住民が教えてくれた。


「盗賊?」


 こうきが聞き返す。


「最近、この辺りで商館を狙う盗賊団が出ているんだ」


「まだ捕まってないのか?」


「そうみたいだ」


 こうきが商館を見る。


 そのときだった。


「お前たち」


 背後から声がした。


 三人が振り返る。


 そこに立っていたのは、一人の男だった。


 年齢は三十代ほど。


 宇宙警察の制服をきっちりと着こなし、胸元には星が刻まれた警察章が輝いている。


 鋭い目。


 真っ直ぐな姿勢。


 見るからに生真面目そうな男だった。


「この星の住人ではないな」


「……」


 三人が顔を見合わせる。


「どうして分かるんだ?」


 みずきが尋ねる。


「この町の人間なら、その格好でこの辺りをうろついたりはしない」


 男は三人を観察する。


「それに――」


 視線が、こうきの胸元へ移った。


「何か隠しているだろう」


「……!」


 こうきの身体が僅かに固まる。


 服の内側。


 そこには星の雫石がある。


「俺たちは何もしてないぞ」


 ひろきが言う。


「まだ何も聞いていないぞ!」


 男が声を張る。


「先に言ったな?」


「……」


 ひろきが黙る。


 男はため息をついた。


「私はヘイゾウ。宇宙警察だ」


 胸元の警察章を指で叩く。


「この町で起きている盗賊事件を捜査している」


「宇宙警察……」


 こうきが呟く。


「そうだ」


 ヘイゾウは腕を組む。


「怪しい奴を見つけたら、話を聞く。それが警察の仕事だ」


「でも俺たちは本当に何もしてないぞ」


「なら、話を聞かせてもらえばいい」


 ヘイゾウは三人を見る。


「私の宇宙船でな」


「宇宙船?」


 ひろきが首を傾げる。


「そこまで行く必要あるのか?」


「ある」


 ヘイゾウは即答した。


「ここで立ち話をするより、落ち着いて話を聞いた方がいい」


 こうきはヘイゾウの顔を見る。


 その真面目な態度に、嘘をついているようには見えなかった。


 だが――


 警察。


 その言葉だけは、こうきにとって相性が悪い。


 怪盗を目指している以上、警察は天敵だ。


「……俺たち、急いでるから」


 こうきが一歩後ろへ下がる。


「そうか?」


 ヘイゾウの目が細くなる。


「では、なぜ逃げようとしている?」


「逃げてない」


「今、後ろへ下がっただろう」


「……」


 こうきは黙った。


 ひろきが小声で聞く。


「こうき、どうした?」


「警察は苦手なんだ」


「なんで?」


「怪盗にとって天敵だから」


「今それ言うなよ!」


 みずきが小声で突っ込む。


 ヘイゾウの眉が動いた。


「……怪盗?」


「いや、何でもない!」


 こうきが慌てて否定する。


 ヘイゾウは三人をじっと見つめた。


「やはり怪しいな!」


「だから何もしてないって!」


 こうきが踵を返す。


「行くぞ!」


「待てーーー!」


 ヘイゾウが叫ぶ。


 三人が走り出す。


「待てー!」


「なんで追ってくるんだよ!」


「怪しいからだ!」


「だから怪しくない!」


「なら逃げるな!」


「逃げる!」


「開き直るなーーー!」


 町中を三人が走っていく。


     ◇


「そこまでだ!」


 ヘイゾウが立ち止まる。


 三人も振り返る。


 ヘイゾウが右手を上げた。


「私のゼウスを見せてやろう!」


「ゼウス?」


 こうきが身構える。


 次の瞬間――


 ガシャァン!


 地面から鉄の鎖が飛び出した。


「うわっ!」


 ひろきが横へ飛ぶ。


 鎖が地面を叩く。


 こうきも身体を捻って避ける。


 みずきは竹刀を構えた。


 鎖は地面を這い、三人を追いかけてくる。


「捕まえろ!」


 ヘイゾウが手を動かす。


 鎖が伸びる。


 だが――


「見える!」


 こうきが横へ跳ぶ。


「こっちだ!」


 ひろきも鎖を飛び越える。


 みずきも身体を捻り、鎖を避けた。


「避けられるぞ!」


 ひろきが笑う。


 ヘイゾウは三人を見る。


「ほう……」


 その口元に、僅かな笑みが浮かんだ。


「なら、もう少しだ」


「来い!」


 みずきが竹刀を構える。


 こうきもネックレスへ手を添える。


 三人が迎え撃とうとした――その瞬間。


 地面の下で、何かが動いた。


「?」


 こうきが眉を寄せる。


 次の瞬間。


 背後の地面から――


 ガシャッ!


 三本の鎖が飛び出した。


「なっ!?」


 こうきの腕。


 みずきの身体。


 ひろきの足。


 それぞれに鎖が巻きつく。


「しまった!」


 三人が一斉に引っ張られる。


「くっ!」


 こうきが力を込める。


 だが、鎖はびくともしない。


「何だよ、これ!」


 ひろきが暴れる。


 みずきも鎖を掴む。


「……硬い」


 ヘイゾウがゆっくり近づいてくる。


「どうした?」


「こんなの、卑怯だろ!」


 ひろきが叫ぶ。


「戦いに卑怯も何もない!」


 ヘイゾウが言い切る。


「捕まえた方が勝ちだ!」


 こうきが鎖を見る。


 最初に飛んできた鎖。


 あれは本命ではなかった。


 避けさせることで、三人の意識を前へ向けさせた。


 そして本命は――


 地中。


「……やられた」


 こうきが悔しそうに呟く。


 ヘイゾウは三人を見渡す。


「大人しくしていろ!」


「嫌だ!」


 ひろきが叫ぶ。


「離せ!」


「話は宇宙船で聞く!」


 ヘイゾウが言う。


 それ以上は何も言わずに、三人を連れて宇宙船へ向かって歩いていく。


 こうして――


 三人は宇宙警察ヘイゾウの宇宙船へ連行されることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。