27.感謝の気持ち
今日はヴァルと一緒にお出掛けだ。
大量の何かを買う事だけは決まっている。
「どうしてアーツが身銭を切ってあいつらをねぎらう必要があるのか理解できない。勝手にやったことだろう」
「でも、親衛隊に入ってくれたってことは、僕を守ろうとしてくれた人たちですよね。それって僕がねぎらわなければ、いったい誰がって話になっちゃう気がします」
「ロスにやらせておけばいい」
「う~ん。そう言われると、そうかもと思っちゃいますけど、やっぱり、僕がやらなきゃだと思います」
アーツ親衛隊はヴァルによって強制的に解散させられたのだけれど、お礼が必要だと思ったアーツはほんのちょっとでも気持ちの品を、と買い物に出て来たのだ。
だが、いかんせん、人数が多い。高給取りの第三騎士団員とはいえ、まだ新人のアーツに余裕があるわけではない。
街をぶらぶらと見て回りながら、「この買い物は苦戦を強いられそうだ」とふたりは早々に思い知った。安くても感謝の気持ちが伝わって、数が大量に揃う物など、なかなか無いのだ。
「あのバカが、あっちにもこっちにも節操なく声をかけたのが悪いな。せめて、第三騎士団だけにとどめておけばよかったものを」
ヴァルはロス副団長に恨み言を言い始めた。
「ちょっと休憩しましょう。足が痛くなってきちゃいました。買い物って疲れますね」
アーツは、気分転換にそう切り出した。
喫茶店に落ち着いて、パフェのバナナをピッピに分けながら、アーツは考えた。
「ピッピって脱皮しないのかな?」
「脱皮?」
「そうです。白蛇が脱皮した皮を財布にいれておくと金運が上がるって聞いたことがあります。ピッピの脱皮した皮だと、もっとなにかご利益ありそうじゃないですか?」
「……、そうだな。だが、ピッピは小さい。脱皮したとして、人数分に分けるとすると、恐ろしく小さなかけらを配ることになるだろう」
「そうですよね。人数多いから……」
「ぴっぴ~!」
自分の名前を呼ばれながら皮をツンツンされていたピッピは遊んでくれているのだと思って上機嫌だった。
ヴァルは不憫なものを見る目でピッピを見ている。
どうやら、ぬけがらを配る案は不評のようだと、アーツは悟った。
そして話し合った末、ヴァル御用達の石鹸屋を紹介してもらい、大きな石鹸の塊を融通してもらった。それを自分で小分けにしてラッピングすることで予算を浮かせる。
物自体はヴァルのお墨付きなので、安心だ。
アーツは、良い買い物ができたと喜んだが、その後の作業は楽ではなかった。
事情を聞いて、伯父様と伯母様も手伝ってくれる。
「アーツの事を心配して集まってくださった人達ですものね。何か感謝の気持ちが贈りたかったのは分かるわ。相談してくれたら、こちらでも手配はできたのよ?」
伯母様は手を動かしながら、そう言ってくれた。
「ありがとう、でも、自分でやりたくって。ヴァルの支援も断ったから……」
「ま、そうなの。トルティン団長とは仲良くやっているの?」
「うん。まあ」
照れくさそうに言うアーツを、目を細めて見る伯母様。
伯父様のほうは、困ったことがあったら早めに相談しなさいと、アーツに言った後に、
「ピッピ。不埒な真似を許してはいけないぞ。まだ早いからな」と、ピッピに言い聞かせていた。
「不埒なって……」
この間、抱きしめたのは不埒だったかと悩むアーツだった。
カバンに入れられて寝こけているピッピは役に立たないことを、伯父様はまだ知らない。




