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8歳にしてバツイチ! ~お先真っ暗な男爵次男の運命の人は?~  作者: グーグー


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13/28

13.テントにて

 

 朝、目が覚めるとアーツの目の前には端正に整ったヴァルの顔のドアップがあった。


『あ~、びっくりした!寝てても男前って男前なんだ!』


 心の中でそんな感想を言いながら、アーツはしばらく観察する。

 印象的な藍色の瞳は隠れている。サラサラのアイスブルーの髪は、触ってみたくなる。


 無意識に、そ~っと、手を伸ばしていた。静まり返ったテントの中、アーツも自分の呼吸を止めていた。


「ぴーぴっぴ!」


 驚きすぎて口から心臓が飛び出しそうだった。

「ダメだよね。勝手に人に触るなんて」

 アーツは、声の主に言い訳をしようと、寝返りをうった。


 なんだ?これ?


 結界内に入ってこられているのだから、友好的なモノに違いはない。はずだ。


 爬虫類?翼がある。

 鳥類?牙がある。

 哺乳類?鱗っぽいものがある。


「分かんないなぁ?でも、まさか?ちっちゃい手乗りドラゴンだったりして?」

 アーツは、自分で言って、ないない、と否定した。

 そして、恐る恐る抱っこしてみる。

「ぴ~ぴ~!」喜んでいる気がする。

 小さい翼がピコピコ動いている。

「ぴ、けふぅ」喉がつまったような、咳払いをしたかと思うと、小さい小さい火がでて、アーツの前髪をふわりと揺らした。



「やっぱり、ドラゴンかも~~~~~~!!!!?」


 アーツの叫び声に、ヴァルは跳ね起き、テントの外で見張っていた先輩たちは、雪崩のようにテントの中に押し寄せてきた。


 この場を一言で言い表すと、『カオス』

 誰もがみんな、それぞれに、どこを始めに突っ込めばいいのか、迷っていた。


 *******


 一番初めに声を出したのは、ヴァルだった。


「まずは、危害のなさそうな未知の生物の話をするべきか、それとも、他人のテントを覗き見する危険な部下を粛清するべきか、迷う所だな」


 凍り付いたテント内。

 訓練官の一人が、あきらめたように話し始める。

「団長が、アーツをお気に入りすぎてですね……。団員一同、アーツがそばに居れば団長はご機嫌だと気づいています。それでもですね、それをいいことに、一緒のテントを割り当てるのは、アーツの貞操の危機と言うか……。それを人身御供にしていては我らも夢見が悪いといいますか……。ロス副団長からも、しっかり見張っておくようにと言われていますし……」

「ほう」


 怖い、世の中で一番怖い、ほう、だ!

 アーツは、その声のトーンに震えた。


 だが、全くもって紳士的なヴァルを、そのようなケダモノ扱いはよろしくないと、意を決して、声を上げた。

「僕、全然、危機とか無いです!なんなら、僕のほうが、団長のサラサラストレートを触りたくって、手を伸ばしたくらいで。変態なのは僕のほうです。この子が鳴いてくれなかったら、触っていたかもしれません。この子は止めてくれた恩人です。いや、恩ドラゴンです!」


 アーツのカミングアウトに、顔を思い切り崩したのは、言うまでもなくヴァルだった。

「アーツなら、触っても構わない」

 そんなことを言い出す、ヴァルを見て、団員たちは『この二人にはかかわってはいけなかった!!』と激しく後悔するのだった。


「ゴホン!」

 咳払いして、ヴァルがアーツの腕の中に視線を戻す。

「その生き物はドラゴンだと?」

「多分そうだと思います。さっき咳き込んだ時に小さいですが、火を噴いたから」

「「火を!」」


 火を噴くと聞いて、皆、一気に緊張した。


 こうして、ヴァルとアーツのあれやこれやはうやむやになり、団員たちの見張りも無かったことになったのだった。


 王都に緊急帰還の決定がくだされ、慌ててテントを撤収した。


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