12.過酷な実地訓練
実地訓練一日目が終了した。新人はみなへばっていた。
実地の訓練の過酷さは体験しないと分からないとは、よく言ったものだ。まさに、その通りだと思った。
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アーツは、前線のすぐ後ろに結界をはって、避難所を作る役目だった。
「アーツ、お前はルーカス先生との練習通りで問題ない。よく周りをみて、危険を感じたら魔法は後回しにして、指揮官役のウォーレンの後ろにつけ」
王都っ子はみんな一度はピクニックで来たことのある場所だけに、気が緩んでいたからだろうか、大量のイノシシ型魔物に防戦一方となった。
「新人!ひるむな!押せ!」
「パニックになるな、剣筋を定めろ!」
先輩たちの怒号が響き渡る中、集中して魔法を唱える。避難所が前線の近くに出来ると、それだけで消耗が違うはずだ!アーツはそう思って、出来るだけ前線の側に結界をと奮起した。
結界が完成して、一息つこうと、ふと目線を上げると、先輩や訓練官がヴァルに合図を送っていた。
ヴァルの声が響く、
「緊急事案とする!訓練は一時中断!補助員、訓練官、総員でかかれ!新人は結界まで下がり、待機。以上!」
戦闘から離脱してきて、結界にやってきた同期をみて、アーツは言葉を失った。全身に血が滲んでいた。
こんなにボロボロになるなんて。なんて過酷な訓練なんだと。
「アーツ!お前がいない第三騎士団は、休憩場所の結界もないまま戦ってたんだろう!死ぬわ!まじで、無茶苦茶だ!」
「もう結界から出たくない!」
「第三騎士団!そりゃー高給取りだわ!危険手当安いくらいだ!」
意外と元気そうな同期達に、治癒魔法をかけていく。第二騎士団に入りたくって、必死に練習した甲斐があったようだ。
「アーツ!天使に見えるぜ!」
ギュっとウォーレンに抱きしめられた瞬間、
「新人、休憩は終わりだ。前線へ戻れ」
「「「……」」」
訓練漬けで、周りのことに無頓着だった新人騎士たちも、このころには流石に察してきた。
アーツはどうやらヴァルの秘蔵っ子らしいと。ちょっかいをかけると、火の粉が自分たちに飛んでくると。
「ウォーレン、お前のスキンシップのせいで、休憩が終わった気がする。恨むぞ」と、同期の一人が言った。
「いや、すまん。つい、休憩場所で手当てしてくれる天使がいたもんで」
「気持ちは分かるが、耐えろ」
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そんなこんなで、一日はあっという間に過ぎていった。
夜、テントで、ヴァルと二人きりになったアーツは、
「トルティン団長!僕、いえ、私は、いびきとか、かくか分かりませんが、もしかいたら蹴っ飛ばしてください!」そう言って頭を下げていた。
「畏まった場でなければ、僕で、構わない」
「あ……、はい」
構わないと言われても……、と戸惑う表情のアーツに、ヴァルは、
「他の団長の前でも僕だっただろう」と言ってきた。
それは、入団もしていない一般人だったから、注意されなかっただけで、正式に入団した今なら、怒られるのでは……。
どうなんだろう?と頭をひねるアーツだったが、ロス副団長を思い出した。
あんな自由な人がいる組織だ。きっとそんなものなんだろうと納得した。
二人で、気詰まりもなく、自然に今日の訓練のことや、学校生活のエピソードなど、楽しく会話して就寝した。
その外では、諸先輩方が聞き耳を立てていたことをアーツは知らなかった。
はたから見れば、ストーカーまがいのことをやってのけるヴァルだ。可愛い後輩を襲わないという信頼は無かったようだ。よって、交代で見張られることになった訳だが、それがバレるのは、朝、二人のテントに珍事が起きたからだった。




