11.訓練の日々
入団式も無事終わり、アーツたちは訓練漬けの日々を送っていた。
「おらそこぉ~、もっと真剣に振れ!魔法が途中でヘタッてるぞ!魔物相手だ、死ぬ気でやれ!死ぬぞ!」
訓練官の怒声が飛ぶ。
アーツはそんな中で、黙々と結界魔法を構築する練習をしていた。
「平常心平常心」そう呟きながら練習する。
たまに魔法使い先生のファイアーボールが飛んでくるが、冷静に対処した。
「よいよい。上達しておるのぉ」そう言って褒めてくれるのはルーカス先生。
第三騎士団に一人だけの魔法使いとして入団したアーツの為に、指南役を買って出てくれたのだ。
感謝しかない。なじみの先生とのマンツーマンの訓練が引き続きできるのだ。
しかも、第三騎士団では自分の身の安全を確保しながら魔法を構築する必要があるからと、様々な工夫をして、アーツをスパルタで鍛えてくれている。
最初に、ファイアーボールがアーツに向かって飛んできたときは、周囲の団員全員が
「まじか!?」「嘘だろ!」「やばい!」といって、ファイアーボールを弾き返そうとアーツの前に剣をもって立ちふさがってくれた。
なかでも最も頼もしい背中が、ヴァルだった。どこで見ていたのか、いつの間にかアーツの前に立っていた。
アーツは、皆に感謝を伝えて、訓練だと分かってもらった。
なので今では、随分見慣れた光景になったはずだ。
「今日は、団長がおらぬから、氷の視線で射殺される心配がなくて、快適じゃのぉ」
ルーカス先生がそう言って笑っている。
どうやら、ヴァルは、初めての魔法使い団員が心配で、普段はどこかで目を光らせているようだ。
「僕が、不甲斐ないばっかりに、迷惑をかけていますね。安心して目を離してもらえるように、頑張ります!」
力いっぱい、こぶしを作って、ポーズを決める。
「そういう意味では、ないのじゃがのぉ。まあよいわ。頑張るのはよいことじゃ」
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数か月後、いよいよ、実戦訓練だ。15人の新人騎士全員が、それぞれ先輩一人を補助に魔物と対峙する。
他の騎士団と違って、魔法剣士でないと入団資格がない第三騎士団は、少数精鋭にならざるを得ない。
よって、同期はみんな仲が良く、先輩も優しい。
ワチャワチャしすぎる、第二も好きなアーツだけれど、『お互い、命を預け、預けられている、そんな自覚を持て!』という第三も大好きになった。
第一は、なじめなかったという負い目から、苦手意識が先に立つアーツだった。
実際は、ヴァルがストーカーじみた「アーツは俺のだ!」宣言をしたことによる、変な影響が出ただけなのだが、アーツがそれを知るのはしばらく後になるのだった。
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王都周辺の魔物は、日々寄せられる情報で、おおよその生息地や危険度がマッピングされている。
最初の実戦訓練は、毎年、一番危険の少ない地域が選ばれる。
今年は西の森だ。湖もあって、少し前までは、気軽にピクニックが出来た場所だが、今はイノシシ型の魔物が出現して一般人の出入り禁止になっていた。
「到着だ!補助のものは、決して新人から目を離さないように。新人は好きにやっていい。だが、先輩が口を挟んできたときは、必ず従うように!」
なぜか、ヴァルが指揮を執っていた。通常は訓練官だけで引率してくるらしい。
アーツは、そんな所も、自分と言う初めての魔法使い枠がいるせいかもしれないと、申し訳なく思って恐縮していた。
野営のテント分けも、身を護るのに不安があるからか、ヴァルと同じテントになった。
新人15人、補助の先輩15人、訓練官3人、団長1人。計34人。
いくら二人用のテントだと言っても、アーツとヴァルの二人テントはヘンテコな組み合わせだと思ったが、同期達は、
「アーツ!お前は、団長と一緒だと守って貰えて安心だぞ。魔法剣が使えないのに、魔物の側で野営するんだからな」と優しい事を言ってくれた。
「いや、だから、僕、結界張れるから。僕のテントはそもそも安全なんだよ!」
アーツは反論していた。
その横で先輩と訓練官が、
「アーツを捧げておけば、俺たちに被害が及ぶことはない。安心しろ」と小声で話していることを聞き逃していた。




