93. 追い詰められる一ノ谷家
2X23年12月27日
17歳の一ノ谷英磨は、その日、初めて女性とセックスを経験した。
相手は自分と同じ若緑高校に通う酒井可憐。学校で一番の美少女と名高い女の子だ。
そんな彼女と彼は…………強姦で結ばれた。
" こと "が終わったあと、酒井可憐はベッドの上で静かに泣いていた……。
しかし、やがて…………静かな雨が豪雨となるかのように、彼女は泣いた……号泣した!
「うわああああああああん!!」
英麿はその鳴き声に驚いた。
普段の清楚で、おしとやかな可憐からは想像もつかない、子供が泣いているのか思う激しい泣き声…………。
" こと "が終わった英磨の下半身の" ソレ "は鮮血に染まり、みっともなく、ただぶら下がってるだけであった。
もはや男の欲に囚われず冷静な判断を下すしかない英磨は、その鳴き声に怯えた……! 自分が悪者になってしまうからだ。
下半身を丸出しにしたタンクがニタニタと笑いながら、からかうように可憐の身体に触ろうとするが、可憐はそれを狂ったかのように拒絶した。
「な、泣いてないで帰れよ!」
英麿は可憐の衣服を裸の可憐に投げつける。
その際……可憐の顔は、見なかった……いや、見れなかった。
酒井可憐がショーツを履く……そのショーツのクロッチ部分は、真っ赤に染まった……。そのあと、衣服を足早に着て去って行く可憐を英磨は、今更ながら申し訳なさそうに見送っていた…………。
………………………………
思い出したくない、奥底に封印したはずの過去に捕まった英磨は、凍りついたかのように沈黙していた。
弁護士の東も、祖父の十三も、声をかけるべきか否か……ただ黙って英磨を見ていた、その時……。
「うわああああああああん!!」
可憐の叫び声が一ノ谷邸の和室に響き渡る……!
「うわああああ!!」
思わず声を出し、怯える英磨。
新たな動画ファイルを再生しているノートパソコンから、その声は聞こえていた。
「止めろ! その動画を止めろ!!」
英麿は狂ったかのように叫ぶ。
「……最後まで、確認しないのですか?」
「止めろーーーー!!!!」
「英磨が止めろと言ってるんだ、止めろ馬鹿助!!」
「は、はい……申し訳ございません!」
「な、なんで…………なんで、こんなところまで撮ってるファイルがあるんだよ……!
これ、タンクが撮ってた動画じゃないよな……!」」
2X26年2月11日 〈2X24年度卒業生〉大林美月
これは、不正入手したファイルじゃないぞ
酒井可憐のスマホに入っていたデータだ!
はっきり、レイプと証言してるよな!?
「可憐のスマホって……! どういうことだよ!
…………いや、待てよ!」
「……英磨さん?」
「そうだ! こいつ……大林の奴、昼間に可憐名義のスマホで俺に電話をかけてきた……。可憐のスマホを持ってるのか!?」
「……なるほど!
英麿さん、それ……突破口になります!」
東は" 勝機 "とばかりに、掲示板に書き込む……!
2X26年2月11日 〈2X24年度卒業生〉一ノ谷英磨
酒井可憐のスマホに入っていたデータとは、どういう意味ですか?
あなた方は酒井さんの親族ではないはず
親族でないはずのあなた方が、どうやって亡くなった酒井さんのスマホのデータを見れるのですか?
亡くなった人のスマホを占有し続けることは、遺失物等横領罪にあたりますよ!
2X26年2月11日 〈2X24年度卒業生〉大林美月
たしかにわたしは可憐のスマホを持ってるが、これは可憐本人から譲り受けたんだよ
可憐が亡くなる、その日にな!
そしてわたしが可憐のスマホを持っていることは、可憐の兄である酒井陸も承知している
罪に問われる覚えはないぞ!
この動画ファイルは可憐がレイプされたという、はっきりした証拠だ!!
「ぐう……!」
東は、思わず声を漏らす……。
相手はハッカーを気取っているが法律のホの字も知らなそうな連中……やり込めるなど造作もない……そう思っていたが、話はそう簡単には進まなかった……!
「どうした、東君!」
苛立ちながら、老将軍が言う。
「……法的には、英磨さんがレイプしたという証拠になってしまいます。
たとえ告発でも、警察はそれを受理するでしょう……」
「そんなことは、絶対にさせん!!
なんとかしろ! 貴様、お任せ下さいと言ったじゃないか!
わしに嘘をついたのか!? お任せ下さいとは、嘘だったのか!!?」
「……嘘ではありません。全力を尽くします」
「お任せ下さいとは、全力を尽くすことじゃない! 解決することだ!!
解決しろ! わしに嘘をつくな!!」
「……は、はい」
焦りと悔しさと怒りで苛立つ東が見つめる先の掲示板に、更新が入る。
2X26年2月11日 〈2X24年度卒業生〉赤木大輔
英麿! こっちはお前を自殺するまで追い込みたいんじゃない!
罪を認めて謝罪してくれれば、それでいい!
可憐さんに謝ってくれ!!
東にしてみれば、この赤木の投稿は勝ち確だった。大林美月も同じような投稿をしていた。法的にはなんの拘束力もないことを提案している。謝罪したあとで若緑高校に詰め寄り、スレッドを削除させてしまえばそれで終わりだ。条件を飲んで、とっとと切り上げよう……そう思ったが、老害と化した男は、それを許さなかった。
「一ノ谷家は、謝罪などせん!
なにがブラックマスクだ! 日本人のくせして、横文字など使いおって……!
愚民どもが、たかが四人で一ノ谷家を潰せると思ったのか!! このたわけが!」
「…………」
せっかくの勝機を潰された……東はそう思ったが、口には出さない。
「アニオタのデブが、うるせえんだよお!
俺をぶん殴ったうえに、説教しやがって!!」
英麿は親指の爪を噛みながら、パソコンを叩き壊そうかって勢いで掲示板を睨みつける。
「……英磨。赤木というのは、あいつか?
めでたい正月に、お前を殴った不届き者!」
「そうだよ、ジイジ! 太っちょのアニメオタク!
ああ、ちくしょう……!! あの時のこと思い出して腹が立つ!!」
「…………よし、こいつを使おう」
「え…? ジイジ、それってどういう……」
「東君、今度は英磨ではなく、わしの言う事をそのパソコンに書け!」
「は、はい……!」




