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91. その少女の勇気を知れ!!

 2X26年2月11日 〈2X24年度卒業生〉一ノ谷英磨

 書き込みがないようなので確認させて下さい

 まず、この会談が終わり次第、このスレッドは直ちに削除して下さい

 削除がなされない場合、英磨氏への名誉棄損として訴えさせてもらいます

 またあなた方が英磨氏、他二名を不正に入手した証拠をもって、強姦の疑いで告発するのは自由ですが、その場合はこちらとしても全力で弁護すると同時に、証拠の入手経路についても調べさせてもらいます



 若緑高校の掲示板に、英磨の弁護士が淡々と書き込みをする。



 ……証拠の入手経路ね…………暗に脅してきやがったな、いやらしい。


 カケルは掲示板を読みながら、その証拠である可憐さんのレイプ動画を見ている。


 誰がどう見たって、合意の上での性行為じゃない……だけど………………


 " 可憐さんとレイプごっこしてました "


 って言ったら、どうなる……?

 そんなわけあるか! と言いたいが、被害者である可憐さんが亡くなってる以上、そんなバカみたいな屁理屈が通ってしまいそうだ……というか、現に通ってる。

 可憐さんが亡くなった時、可憐さんの自室からはレイプ犯三人の体液がついた下着が見つかってる。だけどレイプ犯どもは無罪放免となった……。



「僕達は合意の上で、可憐さんとセックスしました」



 死人に口なし……レイプされたと証言する被害者はもういない…………。

 それをいいことに、三人は……正確に言うと二人は、合意の上とウソブいた。そして、その嘘は…………事実になってしまった。


 被害者の証言が得らえれない状態で、性行為に合意があったかどうかを証明するなんて、悪魔の証明と一緒じゃないか……。

 どうする…………勝ち目がありそうに見えて、なにもないぞ……!?



 2X26年2月11日 〈2X24年度卒業生〉大林美月

 英麿!

 わたしはお前を刑務所に行かせたいんじゃない!

 ただ真実を話し、可憐に謝罪してほしい

 それだけだ!

 付き合ってたんだろ、可憐と

 少しでも可憐に対する、申し訳ないって気持ちはないのかよ!!


 掲示板では美月が英磨に問いかけている。

 若緑高校の在校生だった酒井可憐が、なぜ死んだのか……可憐の死の真相を当時の同級生達に知ってもらいたいがため、美月は英磨との" 決戦 "の場をマルバナでも、自身が運営する黒々ますく掲示板でもなく、若緑高校の掲示板に選んだ。



 2X26年2月11日 〈2X24年度卒業生〉一ノ谷英磨

 酒井可憐さんが亡くなったのは、卒業後の進路における不安からのウツ病の発症です

 これは若緑高校の公式見解です

 酒井可憐さんの死と英磨氏は関係ありません

 よって謝罪の必要性はありません



 2X26年2月11日 〈2X24年度卒業生〉大林美月

 英麿、お前こんな時も自分の言葉で喋れないのかよ!

 いつもいつも、困ったことがあれば権力の後ろに逃げやがって!!

 少しは前に出て、自分の言葉で自分を守ってみろよ!

 情けない!!!



 美月が掲示板に書き殴る一方で、ゼータのグループチャットにはコジロウの書き込み。


 [もう、こうなったらよ

 この可憐さんの動画、世界中に拡散させちゃおうぜ!

 英麿の顔も、バッチリ映ってんじゃん!

 マルバナの掲示板とかに張り付けて、レイプ犯一ノ谷英磨って世間に周知させようぜ!!]


 [先輩! それはダメっす!]


 カケルが止めに入る。

 そしてカケルのパソコンには、再生している可憐の動画が流れている。




「ってか、ちょっと待てよ、おい! 可憐ちゃん、タンポン入れてんの? 紐見えてんだけどさあ~~♪ ギャハハハハ! マジうける♪♪」


 他人の尊厳など、まったく気にしない人物の下劣な声がカケルの部屋に響き渡る……。




 [先輩……この動画を拡散しちゃったら、可憐さんはまた、辱しめを受けます]


 [コジロウ、それはできない……それは、可憐に対する新たなレイプだ……]



 [そっか……そうだよな、すまん。軽率な発言だった]


 [わかってくれたなら、それでいい]




 [んじゃもう、告発しちゃおうぜ!

 駄目元でもいいじゃん! 動画を警察に突き出して、訴えようぜ!]


 コジロウの発言に、大輔が苦言を呈す。


 [コジロウ君、待った!

 英麿の弁護士は、


 証拠の入手経路についても調べさせてもらいます


 と言っている

 コジロウ君が不正アクセスをしたというのが、バレるぞ!]


 [ぐう~~~!

 相手、ロシアだしい~~~

 大丈夫じゃねえの……わからんけど!]


 [先輩、シベリアに抑留されちゃうんじゃ……]


 [ハッキングでシベリア抑留されてたまるか、こんちくしょーー!]



 カケルがグループチャットに書き込んでる間にも、パソコン内では可憐のレイプ動画が再生されている。



「おい、裕也! ちゃんと押さえとけや~!」


「おい、布団はげって!」



 一瞬の隙をついて、布団の中へと逃げ込んだ可憐に対しての、レイプ犯達のセリフ……。



 ………………………………


 カケルは……シークバーを戻して、そのシーンをもう一度再生する。



 違和感があった……。

 最初に見た時も、どこか違和感を覚えた…………。


 レイプされている女性が、一瞬だけ自由になった!

 その時彼女は、なにをするだろうか……?



 …………部屋の外へと逃げないか?


 ……部屋の中だ。

 逃げようとしても、動画を撮っているタンクに捕まってしまうだろう……。


 しかし、だからといって布団の中に逃げたところで結果は同じだ、どうせ引っ張り出される……。それなのに、なぜ布団の中に? 

 ……酒井可憐はレイプされている。レイプされている女性が、そんな冷静な判断ができるか!?

 カケルは自分で突っ込みを入れる。たしかにその通りだ……冷静な判断など、できないだろう…………しかし!



 ………………動画内の酒井可憐は、冷静に見える。


 自身の身体を押さえていた寺澤裕也の手が緩んだ時、それこそ待ってましたとばかりに、酒井可憐はコートを掴み、一目散に布団の中へと退避している。

 まるで……あらかじめ、そう作戦を立てていたかのように…………!



 なぜ……なぜ、布団の中へと逃げ込んだ?

 コートを持って布団の中に逃げたのに、布団の中から引きずり出された可憐さんは、コートを着ていなかった……。

 すぐに引っ張り出されたから?


 …………違う!


 コートを持ったのは、別の理由だ……着るためじゃない…………。



 …………………………



 ……あ! 


 あああああああああ……!


 そうか…………。




「ベル! 亡くなった可憐さんのスマホのバックアップデータは、まだ在在センにあるか!?」


『はい、あります!』


「よし! 2X23年、12月27日の動画ファイルのデータを見せろ! その日に撮った動画ファイルがあるはずだ!!」





【東京都西稲田 稲田大学学生寮】


 トゥルルルル……!


 美月のスマホが鳴る。発信元は神楽坂カケル。



「もしもし……なんだよ、カケル」


「美月さん……可憐さんのスマホのデータ、見た事はあるか!?」


「……ないよ。

 なんで今、そんなことを聞く」


「バカ! なんで見なかったんだよ!」


「ば、バカって……お前なあ!」

 年下の男子にバカ呼ばわりされて、思わず声を荒げるが……。


「可憐は……可憐さんは闘ってた!

 三人の男達から迫られた時も、ただ恐怖に震え、なにもしなかったわけじゃない! 闘ってたんだ!!」


「…………どういう意味だ?」


「いつだか、言ってたよな? 可憐は……可憐さんは頑張り屋だって!」


「……そうだ、初めて可憐と会話した時……それは体育館だった。バスケのシュートを一所懸命練習していた。

 いつも可憐は、頑張っていた……」


「……卑劣な男共にレイプされている時でも、可憐さんは頑張っていた。逃げてなんかいない! 立ち向かってた!!」

 自然とカケルの目から、涙がこぼれ落ちる……。



「……カケル?」


 涙を流しながらも、カケルは通話を続ける。


「動画を見てみろ! 可憐さんは、男達の隙をついて布団に潜るが、それは恐くて逃げたんじゃない!

 コートの中のスマホを取り出し、この行為を録音するためだ!!」


「あ……!」



 目から大粒の涙をこぼしながら、カケルは続ける……!

「可憐さんは闘ってた……! 三人の屈強な男達に迫られながらも、決して恐怖に屈することなく、闘ってたんだ!!」


 美月は可憐のスマホを手に取り、フォトデータにアクセスする……!

 今までサムネ画像でしか見た事がなかったデータ……。たしかに、2x23年12月27日に動画ファイルのサムネがあった。


 恐る恐る、そのファイルをタップする……。


 布団の中……おそらくはコートの中から撮られたであろうそのファイルには、視覚的効果はなかった。ただ、音声だけが流れていたが、それでも十分だった。



「やめて、英磨君! わたし、こんなの望んでない…………!」


「うるさいなあ……! オレ達恋人だろ? だったら、セックスぐらいいじゃん!」


「やだ……やだよ! 止めて…………こんなの……レイプだよ!

 わたし……英磨君のこと、訴えるから!」



 酒井可憐は動画ファイルの中で、はっきりと拒絶の意思を示した!

 その行為をレイプと言い、訴えるとも言った!!


「……………………」


 可憐のスマホを見つめる美月の目から、一筋の涙が流れた。

 耳に当てた自身のスマホから、カケルが涙声で語りかける……!



「可憐さんは闘ってたんだ……最後まで!! だけど…………だけど最後、力尽きた……。

 三人の男達に凌辱され、弄ばれ……尊厳を踏みにじられた!! 可憐さんの魂は殺された……もう、闘うどころか、生きる気力すらなかったんだろう…………。

 だから……だから、美月さん!


 可憐さんはあなたに、そのスマホを託したんだ!! 

 親友のあなたなら、きっと自分の代わりに闘ってくれるって!!」



「…………可憐!」


 美月はスマホを見ながら、倒れこむように床に両膝をついた。

 その目からは……大粒の涙が溢れ出ていた…………。


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