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47. unknown(アンノウン)

「データを取得できないって、どういう意味だ!?」


『そのままの意味です。在在センでの■Lichリッチのデータが確認できず、ダウンロードできません』


 …………カケルの頭に、一ノ谷発言の一文が浮かぶ。



 " 在在センは既に人の手を離れた

 神の統治下にあり、首相でさえアクセスすることができない "



 まさか…………在在センへのアクセスが、制限された!?



 [ペケゾー君 応対ないけど、寝落ちかな?]

 ゼータに美月からのメッセージ。


 [いや、いる ちょっと待っててくれ!]


 [りょ]

 おそらくは了解だろう。美月は略語で応える。

 一方のカケルは黒々ますく掲示板のスレッドを前に、厳しい顔をしていた……。


 魔法が、もう使えなくなったのか……? そんな…………。


 カケルは、Lichリッチが建てたスレッドを閉じ、別のスレッドを開く



【オンラインストレージのおススメ教えて】

 2X26/02/04 19:45 ■にょるん

 複数人でデータを共有したいんだけど、どこがいい?



「ベル、このにょるんって奴の個人情報、持ってこれるか?」


『お任せを』



『はい、どうぞ』

 ものの数秒でベルは情報を持ってきた。


 大原大治 男性 46歳

 佐賀県大城市馬車町柳552


『大原大治は、Wi-Fiの契約者ですね。

 現在家族で住んでますので、その家の家族構成も添えます』


 大原真理子 女性 48歳

 大原一平  男性 17歳



 …………機能してるな。

 じゃあ、なんだ……リッチって奴の情報だけ、在在センから持ってこれないってことか?……なんで!?



 Lichリッチ……。

 ゲームの影響でアンデッドの王ってイメージが強いが、もともとは古い英語で死体って意味だったはず。


 死体……もはや魂は、そこにはない。ただの抜け殻…………それゆえに、在在センにデータが存在しないのか?

 そんな馬鹿な! 偽の幽霊とは違う……正真正銘のphantomファントム、幽霊なのか…………?



 [ペケゾー君、わたしそろそろ寝るね]


 あ……!

 しまった……美月のこと、ほったらかしだった。


 慌てて、なにか返信しようとしたが、それより先に美月からメッセージが届く。


 [さっきも言ったが、■Lichリッチには気をつけな]



 ……そんなヤバい奴なのかよ。


 [もし、なんか困ったことがあったら、相談に乗るよ]

 [というか、Lichリッチが建てたスレどうするんだ? 掲示板に削除依頼出しといたほうがいいぞ おやすみ]


 そ、そうだった……! このままじゃ全世界におれの名前が公開されたままだった…………ああ、面倒くさいなあ、もう~!

 カケルは黒々ますく掲示板の報告ボタンからスレッドの削除依頼を要請したのち、美月に声をかける。



 [なんでそんな親切なんだよ]



 [おっと、起きてたのかw]

 [言ったじゃん、人を捜してるって 君の協力が必要なんだ、だからさ]


 [助けるから、こっちも助けてってことか]


 [そういうこと お互い助け合おうじゃないか]


 [ふん、考えとく おやすみ]



 ……暗い部屋。布団の中でカケルは、ライチョウマークの黒いスマホを見つめながらなにやら考えこむ。

 ベルはといえば、クマのぬいぐるみを抱きながら再びベッドの中へと戻る。


 …………このスマホをカマリ・橋本から渡された時、カマリは言った。


「君は選ばれた」


 ……この言葉を聞いて以来、カケルはずっと考えていた。自分が選ばれた理由を……。



 16歳、引きこもり、特に秀でる能力はない。なのになぜ、自分が選ばれたのか…………カケルが導き出した答えは一つ……。



 無作為に選ばれた。



 これしかない。誰でもよかったのだ……。

 ランダムサンプリング。誰がなんの目的でサンプリングを行っているのかはわからないが、自分はたまたま集団の中から選ばれたに過ぎない。カケルは、そう考えた。そしてその考えの先には、もう一つの考え、憶測がある。

 自分がランダムに選ばれたのなら……自分以外にもランダムに選ばれた者がいるんじゃないか!?


 自分以外にも、この黒スマホを持っている者がいるんじゃないか……そしてそれは…………




 Lichリッチ



「ベル、眠りに落ちる前に一つ教えてくれ。

 この黒スマホの利用履歴は、追跡できるのか?

 ようするに……黒スマホで黒スマホの情報を在在センからダウンロードできるのか?」


 布団に潜っていたベルが顔を出し、こちらを見る……。



『それは無理です。

 なぜなら、このスマホの情報は在在センとは別のセンターに飛ばされます』


「……つまり在在センには、このスマホの利用履歴は保存されていないってこと!?」


『そうです』


「…………別のセンターに飛ばされると言ったが、それはどこだ?」



 ピィーーーー!



 嫌な機械音が黒スマホから流れる。


 [command99 Terminate]



「な……」


 ベルの目が閉じられ、ベッドの中で微動だにしなくなる。


「お、おい…ベル」

 ま……まさか死んだんじゃ……!?


「ベル……ベル!!」



『……ふぁい? なんれす、マスター』

 ベルが眠たそうに目を擦りながら応える。


 よ、良かった。生きてた……! っていうか……なんだったんだ、さっきの…………。

 Terminateターミネート 終了、打ち切り……その会話は終わりってことか?

 このスマホの利用履歴がどこに飛んでるかは、極秘事項みたいだな……。

 カケルは黒スマホをしげしげと見つめながら静かに呟く。



「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ…」



 誰かが見てる……この黒スマホの利用履歴。ずっと見てるはずだ。おれがこのスマホでなにをしているのか……。

 なにが目的だ……なにが目的で、このスマホをおれに渡した。いや……配布したんだ。おれ以外にも配ってるんじゃないのか、これ……。

 雨の日におじいさんを助けたからって、それがそんなに凄いことか? おれだけ特別に魔法を授かる理由がわからない……。

 おれ以外にもランダムに選ばれた奴がいるはずだ…………。



 モヤモヤした気持ちを抱いたまま、カケルは眠りについた……。

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