14. 本日二回目の「はあああああああ~~!!?」
『どうしたんです、マスター。
鳩が三八式歩兵銃喰らったような顔して…』
黒髪のミリオタ少女、ベルがスマホを見ながら固まっているカケルを見ながら呟く。
お、女……?
女はクソだのウンコだのって、女が言ってたの…?
それも18歳……。
カケルはセイイチローの言うところの" ウンほじ "のプロフィール画面にと飛ぶ。
鼻ウンコほじほじ @anegawa
女はクソ、女はウンコ
おっぱい見せて金儲け
男がおっぱい見たら、はいセクハラ!
地球上で最低の生き物、それが女
2025年10月からZを利用しています
…………無茶苦茶なプロフィール…。
ネットで噂にする女叩きアカって、こういうのか……しかし。
このアカウントの持ち主は女って…どういうこっちゃ?
カケルはまさに鳩が豆鉄砲を食ったような表情で、ベルが持ってきたウンほじの情報を見つめる。
顔写真もあった。説明文を読むと、どうやら中学の時の卒業写真らしい。ぽっちゃりした女の子が写っている。
「う~~~ん……」
しばし悩んだのち…カケルはウンほじに、PM…プライベートメッセージを送る。
[あの…あなた女性ですよね?
なんで女性の悪口を言ってるんですか?]
『あれ、マスター。
荒らしの相手はしないはずでは?
ひょっとして…バトルですか?』
「しないよ…。
ただ単に、好奇心で反応してるだけ」
『…そうですか』
その間にもパソコンのモニター画面からは、翡翠もえのライブ配信動画が流れていく…。
[あ、セイイチロー君。スパチャありがとうございます。
わあ~~イベント来てくれたんだね、ありがとう]
な、なに…? セイイチロー!?
振り向き、動画のコメント欄を見るとセイイチローというアカウントが、コメントと共に1000円のスーパーチャットを送っている。
……多分、セイイチローだろうな…。
くっそ……もえさんにコメント読んでもらって羨ましい。おれも、もえさんとお話したいなあ……。
などと思春期真っ盛りの青臭い妄想にふけっていると、ウンほじこと鼻ウンコほじほじがPMに返信してきた。
[なんだお前! 人を女扱いするな!!
女はクソ! 女はウンコ!!]
カケルことカグラが返信する。
[いや、あなた女性でしょ、おれには分かるんですよ
なぜって、おれはヒキ板の魔法使いだから
あなたは姉川萌さん、女性ですよね?]
他の人には見えない、プライベートメッセージでのやり取りなので、ストレートに本名を伝える。
さって…どう出る?
本名まで知ってる事を伝えた。無視はできないだろう…。
10分近く経ってから、ウンほじより返信が来る。
[君、スタッフの人?
わたしが裏垢で好き勝手やってるから、止めにきたわけ?]
……スタッフ? 裏垢…? なんの話だ?
[わたしはスタッフじゃないですよ。
インターネットをさまよってる、ただのしがない魔法使いです]
[意味わかんないですけど…!
なに魔法使いって?? ごまかしてるつもり?
スタッフじゃないって言い張るなら、わたしが産まれた場所、言ってみて
これ、誰にも言ってないからね!
言えたら魔法使いって、認めてあげる]
口調がすっかり女の子になったな……。
あんたが産まれた場所ね…そんなの調べるの、造作もないんですけど。
カケルが鼻ウンコほじほじこと姉川萌の経歴を探ってる間にも、パソコンのモニターには翡翠もえのライブ動画が、淡々と再生されている。
[あのお…おっぱいの話になると、みんなのコメントが増えるのは、なんでかな?]
[コメント読むね…えっと、もえぺえ、さいこー! なんでか分かってるくせにw…って、みんな、落ち着こ…ね?」
セクハラまがいのコメントが溢れる中、ただひたすらに優しいリアクションをする、翡翠もえ。
それを傍目に聞きながら、カケルは" ウンほじ "の出生地を見つける。
[姉川萌 2X08年1月20日
中華人民共和国 遼寧省大連生まれ]
……あれ、中国人?
いや、国籍は日本国ってなってるな。
…父方の祖父が中国人か……中国で産まれ育った日本人、ってとこか。
3歳の時に日本に移住して、その後はずっと日本だな。
[中国は遼寧省大連で誕生。
日本には3歳の時に移住。合ってます?]
余裕でPMに書き込むカケル。
5分ほどして、ウンほじのメッセージ。
[君、なに…?
ほんとに魔法使い???
スタッフの誰にも話したことないし、
ネットにも書かれたこと、ないんだけどなあ]
ネットに書かれたこと…?
なんだよ、ネットで騒がれるほど有名なのか、この荒らし。
[言ったでしょ、ヒキ板の魔法使いだって
あなたのこと、全部知ってるよ]
カケルは半ば得意げになりながら、ウンほじの中の人…姉川萌の経歴を書き込んでいく。
一方ベルは、スマホの中で順調にイギリスの誇り、スピットファイアを組み立てている…。
[神奈川県は藤色市に移住した後は地元の小中学校を卒業して、藤色高校に入るも3年の時に中退。
その後は翡翠もえの芸名でコスプレイヤーとして活躍]
………………………………え?
『よっし…! では、レシプロ機の命とも言うべきプロペラを……』
「はあああああああああああああああ!!!???」
『マスター!!!
ヒトラーとネタニ〇フ首相が、仲良くデートしてる現場を見たようなリアクションはやめて下さい!!』
「やかましい!! 謎の勢力から一発BAN喰らいそうな例えやめろ!!!」
「…おい、翔琉。どうした?」
思わず大声を出したカケルに対して、階下から父親が声をかける。
「…な、なんでもない!」
父親に返事はしたくなかったが、勢いで返答を返してしまうカケル。
タタタ……。
階段を駆け上る足音…。
黒猫のナツだ。カケルの大声に釣られたんだろうか…。
ひ、翡翠もえって……ちょっと待て、おい…!
理解が追い付かないカケルをよそにモニターからは、その翡翠もえのライブ配信動画の音声が流れる。
[おっぱいの話ばっかするのは再生数稼ぎですかあ~~? ってコメントあるけど……みんな、おっぱいの話はイヤ? やめたほうがいい?]
そしてカケルのゼータの画面には、鼻ウンコほじほじこと、姉川萌……ではなく、翡翠もえのプライベートメッセージ。
[凄いね、ペケゾー君
なにが望みなの?]
[なにが望みって、ただ好奇心で聞いただけで…
っていいうか、なんでペケゾーって名前、知ってるの?]
[ああ、ごめん
ヒキ板の魔法使いでググったら、ペケゾーって出てきたから
凄いね、荒らし撃退のスーパーハカーさん
あ、それとも人違いかな?]
……向こうも向こうで、こっちのこと、調べてたのか…。
しばし考えたのち、カケルは返信する。
[合ってるよ
ヒキ板の魔法使いこと、ペケゾーです
はじめまして、コスプレイヤーの翡翠もえさん
望みなんて別にないよ]
[そうなの?
裏垢のこと知って、バラさないかわりにホテル行こうとか、言ってくるのかと思った]
ほ…ホテルって……!
[言わないよ、そんな事!
さっきも言ったように、ただ好奇心で聞いただけで…
なんで女叩きなんかしてるのかなあ~って]
[そうなんだ……。
ペケゾー君って、優しいね。
普通はさ…弱み握ったら、身体とか求めてくんのにさ]
…身体って……
[なんで女叩きなんかしてるの?
自分である、翡翠もえのことも馬鹿にしてたし…]
[だって…自分のこと、嫌いだもん」
[…なんで?]
[なんで?
翡翠もえってさ…最低じゃん。
エロで男釣って金稼いで……それなのになにも知らない純粋無垢なふりしちゃってさ…ゴミみたいな女]
「……もえさん」
カケルはスマホのPM欄を覗きこみながら、一人呟く…。
モニターからは楽しそうにリスナーのコメントを読んでいる翡翠もえの声。
[おっぱいの話大好きです…ふんふん」
[いやじゃないです、やめないで!…ほんとに?
じゃあ~あ…おっぱいの話、続けてもいいかな?]
カケルは声に釣られるように、スマホからモニター画面へと視線を移す…。
そこに映るのは胸元を強調する服を着て、リスナー達とえっちな会話をしている18歳の女、翡翠もえ。




