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13. 鼻ウンコほじほじ

 カグラ @kagurazaka34 1月26日

 なんですか、あなた

 ウンコとかハエとか、失礼な事言うの

 やめてください



 カケルはアカウント名、鼻ウンコほじほじに返信する。


 しっかし、清々(スガスガ)しいほどの荒らしだな…。

 名前から本文まで、罵倒する気満々だ。

 返信しといてなんだが、ここまで酷いと怒りすら湧いてこない。


『マスター、お風呂掃除がまだですけど…今日はいいんですか?』


 完成したゼロ戦を手に持って飛ばしながら、ベルが呼びかける。


「あ…忘れてた」


 カケルは面倒くさそうに寝間着を脱いでジャージに着替えると、長い髪を再び結い、階下へと降りていく。

 引きこもり始めた時、親との約束で" 家の手伝いは一個やる、それができなければ学校に行く "となっていた。


 浴室の扉を開ける。

 今はまだ家の手伝いができているが、この先も律儀に家の手伝いをしてるかは分からない。いずれはやらなくなり、それで親に文句を言われれば更に引きこもって、部屋の外にすら出てこない引きこもりになってしまうのでは……そんな未来をカケルはうっすらと感じていた…。


 なんとか…なんとかしないと………


 水がかからないようズボンの裾をあげながら、カケルは一人呟く…。

 しかし呟くだけで、行動には結びつかない……。

 風呂場を洗う、という行動が、今のカケルには精一杯の行動だった。


 17時を過ぎると父親が帰って来た。仕事ではなく、私用で出かけていたようだ。

 カケルはというと、子供部屋で高そうな…(実際値段の高い)ゲーミングチェアに座り、飽きることなくインターネットに興じている。


 あ……翡翠ヒスイもえさんって、ライブ配信してるんだあ~。

 動画投稿サイトで翡翠もえの動画を見つけたカケル。すでにライブは終わっており、録画ではあったが嬉しそうにクリックする。


『…また、翡翠もえさんですか……』


 ベルが新しいプラモデルの箱を開けながら呟く。

 カケルはベルの呟きなど聞こえぬふりして、翡翠もえのライブ配信の録画を見る。

 ちなみにベルが開けたのは、救国戦闘機の異名を持つイギリスの戦闘機、スーパーマリンスピットファイアの箱だ。

 カケルがチラリとスマホ…の中のベルを覗く。


 …女子小学生みたいな見た目のくせして、ミリオタなのか。どういうキャラ設定のAIなんだ……。


 [こんばんは~翡翠もえです」


 パソコンのほうでは、オープニングが終わって翡翠もえのライブ(録画)が始まった。


 [えっとね、みんな…ちょっとさ……いきなりだけど、おっぱいの話していい?]


 え…? お、おっぱいって……も、もえちゃん?

 思春期のカケルは戸惑いながらも嬉しそうに反応する。


『まったくもう…』


 ベルがスピットファイアの機体を組み立てながら呟く。


 モニターから翡翠もえの声が漏れる。


 [開幕おっぺえの話かよ♪ って、そうなの。ごめんね、おっぺえの話。

 いや実はね、最近ブラがきついなあ…って思ってたらさ。スタイリストさんからね…もえちゃん、ブラのカップ合ってないんじゃないの?って言われてさ…」


 翡翠もえさんって…あんな可愛いうえに、えっちなんだあ~いいなあ~~♪


 カケルはすっかり18歳のコスプレイヤー、翡翠もえの虜になっていた。


『あ~~あ、なっさけない』


 ベルは、だらしない兄に呆れる妹のように呟く


『ねえ、マスター…。あの荒らし、どうなったんですかね』


「はあ…? 荒らし?」


 カケルは動画に夢中で、ベルの話す内容など頭に入ってこない。

 翡翠もえの話に夢中だ。


 [それでね、ブラの採寸をしにお店に行ったの]


『んもう! ゼータに、鼻なんちゃらほじほじってアカウントがいたじゃないですか』


 AIでも恥の概念があるのか、鼻ウンコとは言わず、言葉を濁す。


「ああ…いたなあ、そんなの。

 あれから返信ないだろ? いいじゃん別に。気にするこっちゃないだろ。

 わあ…もえさん、Gカップなんだあ~♪」


『…さいってい! もう!』




 ポオ~ン



 ベルの住み家ともいうべき黒いスマホから通知音。


『噂をすれば…

 マスター、ゼータにプライベートメッセージが届いてますよ!』


 プライベートメッセージ、送った者と送られた者にしか閲覧できない機能だ。


『あれ…でも、これを送ってきたのは……』


 翡翠もえの動画鑑賞を邪魔され、やや不機嫌になりながらもカケルはスマホを取って、プライベートメッセージ欄、PM欄を開く。




 セイイチロー

 [おい、神楽坂

 ウンほじに触れるんじゃねえ]



 はあ?



 PMを送ってきたのは例の荒らしではなく、聖一郎ヒジリイチロウこと、セイイチローだった。



 カグラ

 [なんだよ、うんほじって]


 セイイチロー

 [鼻ウンコほじほじ

 翡翠もえさん絡みで有名な荒らしだよ

 マルバナのレイヤー板にも書き込んでるクズだわ

 相手すんな、アホ]



 アホ呼ばわりされたのは腹立つが……セイイチローの言ってる事は正論だった。

 今までヒキ板で何人もの荒らしを撃退してきたペケゾーことカケルだったが、荒らしに反応する奴も荒らし、という考えは理解していた。

 正義の味方を気取ってるわけじゃあるまいし…ゼータの治安を守る為に出しゃばって荒らしを撃退する気になんてならなかった。



 カグラ

 [了解]



 カケルは、しぶしぶ納得してセイイチローにPMを送る。



 ポオ~ン


 PMを送って、すぐに返信が着たようだ…?

 いや、PMではない。ゼータの返信に対して、更に返信があった。

 " 噂の "鼻ウンコほじほじからである。



 鼻ウンコほじほじ @anegawa 1月26日

 なにが失礼だ! 女はウンコ!

 女の味方するお前はハエ!

 翡翠もえは金欲しさに男におっぱい晒してるクズ女!

 女はいいよなあ~おっぱい晒すだけで大金げっと!

 男のオレは汗水垂らして道路工事、マジつれえええ!!!

 女はウンコ! 女はクソ!



 ……なんじゃこりゃ…。

 スマホの画面を見ながら、カケルは固まっている。

 ほんとまあ…清々しいほどの荒らしだな…。ここまで言われたら、怒りすら湧かんての。


 しかし……

 興味は湧いてきた。

 どんな奴が書き込んでんだよ…。


「ベル、そいつの情報をくれ。

 鼻ウンコほじほじ。」


『…はい。というか……なんとかならないんですか、その名前』


「おれに言ってもしょうがないだろ…」



 モニターには相変わらず、翡翠もえのライブ動画が流れ、配信者である翡翠もえの声が聞こえてくる。

 リスナーのコメントを読みながら、雑談しているようだ。


 [その買ったブラジャー見せて…って、それは駄目だよお~]

 [たかが布キレなんだからいいじゃん、か…。

 ん~~とね…たかが布切れなんですけど~

 ほら、わたしが着るとね…やっぱ価値が上がるじゃないですか、布切れさんのね。

 もえクオリチーと言いますか…ね♪]


 えっちで可愛いな、もえさん…。

 おれも、もえさんとお話したいな……今度配信してたら、絶対いこ。



『鼻の下伸ばしてるマスター、鼻なんちゃらの情報です。

 スマホから投稿してるみたいですね!』


「…どうも」



 位置情報 神奈川県 アカネ


 茜市って…隣町じゃん。

 なんだよ、近所に荒らしが住んでるとか、やだなあ……。




 姉川萌アネガワモエ 18歳

 性別 女性



 ………………………………………………



『さて、それじゃ大英帝国の誇る戦闘機を…』


「はあああああああああ~~~!!?」


『ま、マスター!?

 ガンジーがイギリス国旗掲げて行進してるのを目撃したような、素っとん狂な声を出すのはやめてください!』



 お…女!?


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