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レスバの無双者 -ネットの匿名、全て見破ります!-  作者: シンザン34


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123/131

123. 雅彦を追う者達

「ああ……でも、もえさん。明日はたしか、雨だったはず……。

 せっかくの初デートなんだし、晴れの日がいいんじゃないですかね?」


「え……? 天気予報だと、明日は晴れだよ?」


「へ? いやいや、月曜からずっと雨と雪でしょ?」

 ベルに天気予報を聞いた時、たしかにベルは、そう答えた。



「来週は週末まで晴れだよ?」


「……………………」


「カケル君?」



「ああ…………もえさん、ちょっと待ってくださいねえ……」


 カケルは自身のスマホを保留にすると、エイト06のホーム画面を見る。そのホーム画面では…………ベルが部屋に引き籠っている。


「おい、ベル……ちょっと話がある」


『……………………』


「……ベル、部屋から出て来い」


『……………………』



「部屋から出て来い、この引きこもり!!」


『引きこもりを無理やり外に出そうとしないで下さい……! 引き籠るには、それ相応の理由があるのです。それを無視して力ずくで外に出すなど……』


「やっかましい!! 引きこもりなど甘えだ、ボケ!!とっとと外に出てこい、ゴラァ!!」


「サイッテーーー! 自分が外に出れた途端に、引きこもりをバカにするんですかあ!?

 声優の西山剣太郎さんが言ってたじゃないですかあ~~! 外に出れた気持ち、上書きするなって!!」


「うるっせええ!! 

 お前~~! 月曜から雨とか、嘘つきやがったな!?」


『……そうでもしないと、マスターは外に出てくれないと思ったからです!』


「ぐっ……!」

 たしかに…………あの時は天気を理由に、外に出るのを拒もうとしていた……。

 月曜も火曜も晴れです……なんて言われてたら、先延ばしになって、結局は行かなかったかもしれない…………。



「正直に言ってくれ……月曜からの天気は?」



『……週末まで晴れです』



「どうも。


 …………ありがとな、おれを外に出させてくれて」



『マスター……。


 ……もえさんとのデート、楽しんでくださいね』


「……うん」



 カケルは保留を解除し、もえとの通話を再開する…………が、開口一番、もえが一言!


「なにやってたんだよお~~カケルぅう~~!

 まさかタヒ子と、密通してたんじゃねえだろなあ~~!」


「ちが~~~う!

 天気だよ、天気! ベルの奴がさあ…………!」



 経緯を話しつつ、もえと明日のデートについて打ち合わせをするカケル。

 一年近く家に引きこもっていた少年は、冬の青空の下……恋人とデートの計画で盛り上がるようになっていた。



 十数分後、もえとの通話は終わった。

 明日、2月14日の11時に藤色市(フジイロシ)の駅で待ち合わせとなった。


 二日連続で外出か…………。

 外に出て、引きこもりから登校拒否児にランクアップしたはいいけど、毎日が忙し過ぎないか…………?



 その毎日をさらに忙しくするかのように、コジロウから連絡が入る。



 おっと、ゼータに通知……。コジロウ先輩からだ。




 ■コジロウ @blackmask99z 2月13日

 おい、ペケゾーちゃん

 連絡ねえけど、タヒ子とはどうなったのよ?

 タヒ子の配信終わってるけど、無事ってこと?



 あ……心配してくれてたんだ。


 立ちながらだと疲れるので、カケルは近くのベンチに座り、ゼータに返信を入れる。



 [タヒ子の兄ちゃん、ペケゾーちゃんと同じエイト06持ってんのか

 ち……! おれ様にも配ってくれよお~エイト06]


 [パイセンはエイト06手に入ったら、なにに使うんすか?]


 [いや、そりゃあ、よお~~!

 って、それよりもよ……タヒ子のお兄さんにも一ノ谷雅彦の捜索、お願いしちゃったかあ~~]


 [ん? 捜す人は、多いほうがいいでしょ?

 ましてや、魔法のスマホ持ってんだから、バリバリ戦力っしょ!]


「まあ、そうだけどよ

 おれとしちゃあ、■Black(ブラック) Mask(マスク)が最初に一ノ谷雅彦を見つけたってしたいのよ]



 あ……そういうことか。


 [先輩、すんませんでしたあ!

 自分、そこまで考えていなかったっす!]


 [謝んなや!

 ようは、おれらがタヒ子より先に雅彦を見つけりゃいいってこった!]


 [そっすね、さすがパイセン!]


 [つうわけだから、ペケゾーちゃんよお~

 今晩、ゼータのグルチャで相談しねえか? 一ノ谷雅彦の捜索について]


 こ、今晩……!?

 今日は静岡県まで外出して、明日は、もえさんとのデートだぞ…………。

 なんか、もう……一日一日の内容が濃すぎないか?


 …………まあ、いいけど。



 [了解っす

 えっと、夕飯食べ終わって8時くらい?]


 [いや、夜の9時で頼むわ

 今日は家族で外食する日なんだ]



 [そっすか、わかりました 

 21時にゼータのグループチャットで会いましょう]



 …………カケルの胸に、一抹の寂しさがよぎった。

 学校に通わない者同士、ニートのコジロウとは気が合ったが、そのコジロウは家族で外食するという。今日は家族で外食する日……とも言った。毎月だろうか、そういう日があるのだろう……。

 カケルが家族と外食した日は、いつだったか…………中学の時だったろうか……。今は家で家族みんなで食事することすらない…………。同じ境遇の者同士だからこそ、相手が自分にはない幸せを持っていた時、言いようのない劣等感がカケルの胸の内を襲った。



 ……先輩は先輩…………おれはおれだ……。


 そう言い聞かせながら、歩き出すカケル……。外へ出る、という脱ヒキへの一歩を踏み出したカケルだったが、" そんなものは出来て当り前だろ、まだまだやらなきゃいけないことがあるんだぞ! "という厳しい現実が顔を覗かせるのだった。



 …………とにかく……家に帰ろう。今は、ゆっくり休みたい……。




 同時刻……。

 神奈川県 藤色市 


 人口200万以上の大都市の駅。多くの人々が行き交う、その駅の入り口に一人の青年が立っている……。

 中肉中背の体形だが、どちらかといえば痩せており、どちらかといえば背は低かった。ボサボサの髪に黒縁眼鏡……その眼鏡をかけた顔は、お世辞にもかっこいいとは言い難い…………ようするに、女性に縁のない男……弱者男性である。

 その弱者男性は自分が社会の除け者であるかのように、出入口の端っこで誰かと話している。女性に縁のない男……と言ったが、その男の話し相手は若い女性だった。



「ああ、" 羅舞(ラブ) "か。どしたあ~」


「にぃ~に、ペケゾー君の件ではあんがと! だけど実はさあ、ペケゾー君のことはもうどうでもよくて、また別の人を捜してほしいんだよね」


「別の奴? いいけど、誰よ?」



 弱者男性……配信者タヒ子の兄にてエイト06を持つ者、岩田良平は、片方の手をズボンのポケットに突っ込み、全てがダルそうに壁にもたれかかりながら妹と通話をする。


「一ノ谷雅彦って人だよ! にぃ~に、知ってる?」


「いや、知んない。でも、一ノ谷英磨は知ってるぞ……さっきのペケゾーって奴が倒した奴だろ」


「その英磨のお父さんが一ノ谷雅彦なんだって!

 えっとねえ、在在センの管理……管理部長だったけ? なんだっけっかなあ…………忘れちゃたあ~~アハハ♪」


「なんだよ、そりゃ」

 笑いながら妹と話す良平……兄妹(キョウダイ)仲は悪くないようだ。妹の葉亜兎羅舞(ハアトラブ)が言う。



「とにかく偉い人らしいんだけど……今、行方不明らしくてさ。

 ほんで、ニュースとかにもなってるらしいんだ」


「そう……わかった。一ノ谷雅子ね」


「違う違う! 一ノ谷雅彦! マサヒコだよ、にぃ~に!」


「…………わかってるよ、捜しとく。

 そろそろ切るぞ、人と会う約束があるんだ」


「そう…………。ねえねえ、夜は空いてる?

 あたし、神奈川に来るの久しぶりだし……会おうよ、にぃ~に」


「そだな……。

 それまでに一ノ谷……えっと、雅彦の情報を調べとくよ。

 ペケゾーの情報教えたんだから、夕飯、奢ってくれよな」


「うん、もちろん!

 にぃ~にのお陰で、たくさん再生数稼げたからね!

 これからも頑張ってこ~ぜ、にぃ~に!」


「ああ…………っていうか、人来た。

 もう切るぞ……また夜、連絡する」



 そう言って岩田良平は、スマホの受話器マークをタップして通話を終了させる。

 そして……前を向く。


 そこに立っていたのは、30歳前後の女性……多数の日本人と比べると浅黒い肌をしていた。



「あら……失礼、誰かと通話中だったかしら」


「いえ、大丈夫です。丁度終わりましたから…………橋本さん」



 エイト06を持つ者、岩田良平の前に立つのは橋本佐代(ハシモトサヨ)……。

 日本AI専制党党首であり、カマリ・橋本の娘である。

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