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レスバの無双者 -ネットの匿名、全て見破ります!-  作者: シンザン34


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109. 引きこもり少年は決意する

 …………………………電気の点いてない子供部屋…………パソコンのモニター画面が発する光だけが、部屋を照らしている……。

 その部屋の主であるカケルは親に買って貰ったゲーミングチェアの上で、あぐらをかきながら、うなだれたままだった……。


 階下より母親の声が聞こえる……。



「翔琉(カケル)、お風呂空いてるわよ……入っちゃいなさい」


 カケルは返事をしない…………。飼い猫のナツが階段をかけ上がってくる音が聞こえる。



「にゃ~~~」


 二階にやって来たナツが鳴きながら子供部屋のドアに爪を立てる。



 …………カケルは自身のスマホを手に取り、どこかに電話をかけ始めた。

 スマホを耳に当てながら椅子から立ち上がり、気まぐれにやって来たナツを部屋に入れてやる。



「もしもし、カケル君。どうしたの?」


 電話に出たのは恋人の翡翠もえこと、姉川萌だった。

 カケルは倒れるようにベッドの上に寝っ転がり……もえに、さっきまでの顛末を話す。

 その間……ナツはカケルの傍まできて、添い寝をするように丸くなる。



「…………最低だよね、おれ……」

 カケルはナツを撫でながら呟く……。


「……話してくれて、ありがとうカケル君。嬉しいよ」


「……う、うん」


「そだね、最低だね……。荒らしとはいえ、相手の性経験を煽っちゃうなんて」


「……うん…………」


「だけどね……そういうこと、隠さず全部話してくれるカケル君、好き」



 ……もえさん。


「わたし、カケル君がイケメンだから好きなんじゃないよ。ストーカーのアヤ丸をやっつけてくれたからでもないから。

 いや、アヤ丸を撃退してくれたのは感謝してるけどさ」


「うん……」


「わたしがカケル君のこと好きなのは……なんでも話せるから。

 カケル君は、わたしの家庭環境のこと、家出したこと……援交やろうとしたことも全部受け入れてくれた。わたし……カケル君になら、自分のこと全部話せるんだ」


「……………………」


「そしてね……カケル君も、自分のこといっぱい話してくれた。父親が嫌いなことも、お弁当屋さんの志村さんに悪口言ったこと……。

 そして今も、荒らした女の人を侮辱したことも話してくれた。みんなみんな、全部わたしに話してくれた……!」


「うん……最低なおれの話聞いて、嫌いになった?」


「ならないよ! だって全部、ウソつかずに話してくれたんだもん!

 何度も言ってるじゃん、わたしもウンコだって! ウンコのわたしがカケル君のこと、責められるわけないじゃん! 

 そもそもカケル君、ちゃんと反省してるしさ……偉いよ! さすがはわたしの彼氏だ、惚れ惚れするぞ、うん♪」



「…………ありがとう、もえさん……。

 好き……へへ、大好きだよ……なんて♪」


「うん、わたしも好きだぞ、カケル君!」



 スマホ越しに聞こえる明るく無垢な、もえの声を聞きながらカケルは思わず泣きそうになるが、それはカッコ悪いと涙を堪える。



「もえさん……」


「なにかな? わたしの愛しい彼氏君♪」



 カケルの中には、ある決意が固まっていた……。

 最初は……消えてなくなりそうな、小さな決意だった。しかし……!

 もえと話せたことで、その決意は大きくなり……やがては決して崩れることのないほどに大きく…………そして固くなっていた。



 黒猫のナツが大きくあくびをし、毛づくろいを始める……。

 そんなナツを眺めながら、カケルはもえに伝える。



「…………おれ、磯貝寿美子さんに謝りに行こうと思う」


「磯貝寿美子さんが住んでる静岡県御殿山町(ゴテンヤマチョウ)って、電車で一時間もかからない距離だし…………おれ、謝りに行って来る」



「え、マジ!? 

 だってカケル君、引きこもりでしょ? 外でれるの?

 それとも、夜に行く気?」



「にゃ~~~」


 ベッドの上が飽きたのか、ナツはベッドの上から降りて部屋をうろつき始める。

 カケルもナツの動きに合わせるようにベッドから起き上がる……。


「夜になんていかないよ、相手に失礼だし。

 …………昼間行く、昼間……謝りに行く」


「……外、出るんだ。

 もえとのデートは断ったのになあ~~」


「えっと……ごめんなさい」


「いいよ、そんな謝らなくったって♪

 へへ、カケル君が外に出ること決断してくれて、わたしも嬉しいよ。

 …………一緒に行こうか?」


「い、いいよ!

 子供じゃないし!」



「ぷぷっ! 体はお子様のショタ坊主♪」



「うるっさい!!!」



 カケルはチビ……というより、小学生並みの体形に激しいコンプレックスを抱いていた……。


「と、とにかく……行って来る」


「……明日?」


「……………………」



 引きこもりのサガか……即断できないカケル。



「明日、行くんだよね?」


 その引きこもりの心情を知ってか知らずか……もえからの圧かけまくりの発言。



「う、うん……明日、行く」


 その圧に、あっさり負けるカケル……。



「さっすが、わたしの彼氏! 頼もしいぞ、カケル!

 帰ってきたら、今度はわたしとデートしようね♪」


「う、うん…………」



 そして……もえとの通話は終わった。



「にゃ~~~ご」


 カケルの部屋に飽きたナツが、ドアにカリカリと爪を立てる。ドアを開けて、ナツを解放してやるカケル。

 ドアを閉めながらカケルは思う……。



 今日は脱ヒキのチャンスが三つもあった。


 もえからのデートの誘い

 ブラマスメンバーからのオフ会

 そして…………。



 磯貝寿美子への謝罪。


 カケルが選んだのは、かつて自分が傷付けてしまった女性、磯貝寿美子への謝罪だった。



 明日……明日、いくのか…………静岡県に……。


 ……べ、別に明日じゃなくてもいいんじゃ…………。そうだよ! 明後日でも、その次の日でも……。



 途端にヘタレるカケル……。



「べ、ベル……明日の天気予報は?」


『晴れですね、明日、日曜日は快晴です』


「そ、そう…………」

 明日、日曜日かよ……! 外に人、いっぱいいるだろ!!



「げ、月曜日の天気は……?」



『月曜日は朝から雨です。火曜日まで荒れた天気となり、水曜日には雪に変わります。木曜日には再び雨に変わりますが、日曜まで降り続け、雪になる可能性もあります』


 な、なんだそりゃ……。

 ようするに、外出するチャンス、明日だけじゃねえか……コラ!



 よ……よりによって日曜日…………外に出るのか!?

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