Part13 ごんぶとエルフは魔法を覚える
マリエッタがデレた件(´・ω・`)
――大地よよみがえれ! グランドリジェネーション!!
ハーゼルは両手を前に突き出し、マリエッタから教わった呪文を唱える。
すると、ドラゴンの血で干からびた大地が光り輝き、緑を取り戻していく。
「素晴らしいわ! 流石魔王様ねっ! この調子でどんどん魔法を使っていきましょう!」
ドラゴンの襲撃からひと月の間、ハーゼルはマリエッタに教えてもらいながら、与えられた領地の復旧作業に努めていた。
「ありがとうございます、王妃様」
「マリエッタでいいわよ? 私も名前で呼んでもいいかしら?」
「あっ、はい、お願いします。――マリエッタさん」
タルンドル王国の王妃マリエッタは、ハイドワーフと魔族の混血だ。
元はドワーフ王家の血筋であり、由緒正しきお姫様である。
土魔法を得意としており、今はハーゼルの師匠として指導していた。
「それにしてもすごい魔力量ね、一日にこれだけ使っても枯渇しないなんて」
「まだまだいけますよ!」
――グランドターンオーバー!!
ドガガガガガガガッ!
全属性を扱えるハーゼルだが、土魔法との相性が一番良かった。
荒れ果てた農地を回復させ、耕すことで新たな作物が植えられるようになる。
王妃マリエッタは最初こそエルフを毛嫌いしていたものの、懸命に働くハーゼルの姿を日々見続けたことで考えを改め、今では息子のように可愛がっていた。
「ハーゼル、そろそろ食事の時間ね! 一度王城に戻りましょう」
「はい! マリエッタさん!」
ハーゼルが魔法を使うことにより、農地に潤沢な栄養素が供給され、通常3か月程かかっていた栽培作業が、僅かひと月にまで短縮できている。
それにより、王都の食料事情も徐々に改善し、とりあえずの危機は脱していた。
「ハーゼル殿、大儀であった!」
王城の特別室で国王デプルと共に食事をとる。
「ハーゼル様から頂いたカロ〇ーメイトの備蓄がそろそろ……」
「あっ、はい、後で食糧庫に詰めておきますね」
「すまぬな、もうしばらくはそなたの世話になるやもしれぬ」
食糧事情が改善してきているものの、いまだに難民の数は多い。
ハーゼルが供給するカロ〇ーメイトは、今や国民食となっており、フルーツ味やメープル味等が、闇市でひそかに取引されているほどだ。
「婿殿、午後はどうなさるおつもりかな?」
「えっと、午後は領地の村と町の修復に向かいます。マリエッタさんも一緒です」
「そうか、ならば夕食は少し遅めに用意させるようにしよう」
「いつもありがとうございます、お父さん」
「はっはっはっ! フットルの息子は働き者じゃな!」
宰相から譲り受けた領地は、ドラゴンの襲撃により焼け落ちてしまい、帰るあてのない難民が王都にあふれていた。
それを解決するためには、領地の復興も行わなければならず、ハーゼルは土魔法をつかって街を作り始めていた。
街を作りにあたり、点在していた村や町をまとめて、領地の真ん中に集約することにした。
これは龍族の侵攻が再び発生した時に、点在していると守り切れないからだ。
ハーゼルは土魔法を駆使して地面を平らにならし、地中に石造りの上下水道を整備する。
王都タルンドルにも似たような設備はある。しかし公共の施設だけだった。
――クリエイトマテリアル!!
ボトッ、ボトボトボトッ!
魔法というのは大変便利だ。
素材と形を明確にイメージできれば、大体のものが作れる。
それを利用して、空き地で部材を大量に生産し、ゴーレムに運ばせていた。
「よし! この区画の基礎は完成だ! あとは組み立てだけど……」
「心配ないわ、ハーゼル、難民の中から男手を連れてきました。それにしてもこんな方法があったなんて、私も知らなかったわ。まさか1日で家ができるなんてね」
「あっ、これはプレハブ工法っていうんですけど、部材を俺が先に作っておいてるんで、あとは組み立てるだけで出来ちゃうんですよ」
「素敵ねっ! ドワーフも似たようなやり方で作るけど、すべて石造りよ?ハーゼルが扱う材料は見たことがないわね……」
「基礎はコンクリートですが、上物はセラミックとカーボンで作ってるんですよ。ドラゴンのブレスでも燃えにくいかなって思いまして。それに魔法で作れるなんて、俺の方が驚いているほどですよ」
「そうね、素材を明確にイメージできれば私も作れますが、見たことが無いものは私でも作れないわ。あなたがミスリルを作れないのと同じね」
この世界では、体内の魔力を練り上げることで様々なマテリアルを生み出すことができる。しかし、土属性と相性の良いドワーフであっても、せいぜい一日に1キロの鉄か、10g程のミスリルが限界だった。
希少金属程沢山の魔力を消費する為、鉱山で採掘される鉱石を加工する方が儲かるのだ。
ハーゼルの場合は魔力量が膨大であるため、様々な部材を生み出すことができた。
地球産の素材しか生み出せなかったものの、それをみたマリエッタのドワーフの血が騒いだのか、ハーゼルに付きっ切りとなっている。
「そろそろあなたのお城も完成かしらね?」
「う~ん、もうそろそろ完成させたいんですけど、住居の方が先ですからね、少しずつ作っていきますよ」
「私とっても楽しみにしているのよ?」
「あはは、頑張ります!」
この土地を好きに使ってもよいと言われたので、思い切ってエリーゼとの新居を作ることにした。
しかし、何を勘違いしたのか『魔王様が城を建てる』と、うわさが広がり、気を利かせた国王デプルが人でを貸し出してきた。
最初は小さな一戸建てのようなものを作るつもりでいたけれど、『こんな小さい城なんてあるかっ!』と、ベテランの工夫に叱られてしまう。
それを見ていたマリエッタがデザインを考案し、ハーゼルが部材を作ることで、少しずつではあるが、形となってきていた。
地下2階建て、地上6階建ての新魔王城は、一部鉄筋コンクリートと、カーボンの外壁でおおわれた、真っ黒な城となる。
入れ物はほとんど完成しているので、現在は内装を造作しているものの、ハーゼルのセンスでは限界があるようで、手が止まってしまっていた。
「エリーゼと一緒に住むのでしたら、家財道具も必要になるわね、一度ドワーフの国に買い出しに行くといいわ」
「ドワーフの国ですか?」
「そうよ、王城の中身はほとんどがドワーフ製よ? 紹介状も用意するわね、必要なら職人の手配もしてもらうといいわ」
「マリエッタさん、ありがとうございます!」
これから数日後、ハーゼルはドワーフの国に旅立つことになる。
その傍らに、エリーゼを伴って……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ここは王都タルンドルにある医療センターの一室……
「エリーゼ様っ! またお食事を残してしまわれたのですか?」
「侍女長……いいのよ……こんな体になってしまったんですもの――」
「うぅっ、エリーゼ様! それでもカロ〇ーメイト1本だけというのは見過ごせません! せめてスライムゼリーとお野菜だけでもっ!」
「失礼します、侍女長様、これより肌蘇生の治療を行いますので外にてお待ちください」
「医師長様! エリーゼ様にお食事をしっかりとるようにおっしゃってください、このままですとあまりにもっ!」
「侍女長様、エリーゼ様の健康状態は問題ございません。むしろ以前より良いほどです。今はエリーゼ様を見守って差し上げるのが、回復への一番の近道ですよ」
「――ッ! そっ、そうですね……。エリーゼ様! 決して無理はなさらないでくださいねっ!」
「もうっ、わかったわよっ、それと侍女長、私に新しい服を持ってきてくださらない? 今までの物が着れなくなってしまったのよ……。退院は3日後よ、それまでに仕立てていたただけるかしら?」
「……かしこまりました、魔王ハーゼル様もいらっしゃるそうですので、とびっきり可愛いものをご用意いたしますね」
「お願いするわね……」
エリーゼの体からは、大小さまざまな100を超える破片が摘出された。
医師長は難しい手術を何度も繰り返し、無事にすべてを取り出していた。
エリーゼの体は何度も刻まれて、傷だらけになってしまったので、医師長自らが肌蘇生魔法を施し、今ではほとんど傷跡が目立たなくなっていた。
生々しい傷跡を見たエリーゼが、面会謝絶を希望し、食欲がなくなったのも、仕方のない事だと医師長は思っている。
「それではエリーゼ様、治療を行いますので衣服を脱いでください」
「わかったわ、お願いね、医師長……」
医師長は"やせ細った"エリーゼの腕をとり、うっすらと残っている傷の治療を始めた……
次回、エリーゼ様復活(´・ω・`)多分・・・・




