Part12 ごんぶとエルフvsドラゴン
初めて魔王らしい仕事をするハーゼルさん(´・ω・`)
――ォォオオオアアァンベンッショォォォ!!
この日、王都タルンドルと北のエマニエル山脈との間にある魔族の町が、ドラゴンの襲撃を受けて壊滅した。
総勢300ものドラゴンに襲われた町は一夜にして灰塵と化し、人口3000人の町から生き延びることができた人は、僅か400人にも満たない。
轟然たるドラゴンの咆哮が大地をつんざき、猛り狂うブレスが街を焼く様は、50キロも離れた王都タルンドルを恐怖に陥れた……
ドラゴンは逃げ惑う人々を追いまわし、周辺の村々を次々と炎に包みながら、一直線に王都へ向かってきていた。
新国王デプルは、フットル将軍と新魔王となったハーゼルを呼び出し、王城の一角で緊急対策会議を行っていた。
「まずいことになったな、すでに町が2つ、村が3つ焼け落ちた……。奴らの侵攻はとどまることを知らず、今だこの王都タルンドルを目指しておる。このままじゃと、半日もすればこの王都タルンドルも戦火に巻き込まれるであろうな……」
「国王陛下、もはや猶予はありませぬ、王都に避難命令を出しましょう!」
「間に合わん! 逃げられるものはすでに王都をでて西の森に逃げておる。街にはまだ半数の国民がのこされておるのじゃ、5万もの民をすべて逃がすには、時間が足りぬわ!」
「―――ッ! でしたら、迎え撃ちましょう! 北の城壁に火力を集中し、各個撃破できればあるいは!」
「無論そのつもりじゃっ! 王都に残る国民の為に少しでも時間を稼がねばならん、しかし数が問題じゃ、300ものドラゴンが同時に攻め入ったのならば、迎撃なぞ間に合うはずもなかろう?」
「くそっ、なぜこの時期にドラゴンが大量に攻めてくるんだ! 来たとしても例年は10匹も来ないのにっ!」
国王デプルとフットル将軍が頭を抱えながら唸る中、勘のいい宰相は原因に思い当たる節があった。先日行われた新魔王の魔力測定時に、エリーゼが放った殲滅兵器"ドラゴニックバスター"が、龍族の谷"ピンキークレバス"に直撃していたのだ。 エマニエル山脈にある"霊峰スパンヒップ"には、複数の龍族が暮しており、先日の攻撃によりその一つが山ごと吹き飛んだのだった。
タルンドルにおいて一番威力のあるドラゴニックバスターは、砲身が砕け散っており、今は台座しか残っていない。
しかし宰相はあきらめていなかった。そして彼は気づいている。以前王都の外壁を破壊した強烈な一撃が、新魔王ハーゼルによるものだということを……
チラリと国王デプルとフットル将軍に目配せをした宰相は、うつむきながら考えるそぶりをしている新魔王ハーゼルに声をかける。
「ハーゼル様、ここはひとつ"新魔王の仕事"として、ドラゴンの討伐などいかがでしょうか?」
(万が一勝利をおさめたらそれでよし、やられたとしても国の脅威が一つ消えるだけで、こちらとしては丸儲けであるな)
「えっ? 俺ですか?」
「左様でございます。新たに魔王になった者は"必ず"どこかでドラゴンの討伐を行わなければなりませぬ。それをもって国民に"魔王の力"を知らしめるのです」
(まぁ、本来は魔力砲で弱らせてから戦うんじゃがの)
「でっ、でも俺、魔法を使えないし、空を飛んでるドラゴンとは戦えないと思うけど……」
「…今から十日ほど前ですかな? 西の城壁が何者かによって打ち破られたのです。それも強大物理攻撃によるものだと調べはついておる……。そのあと現れたのはハーゼル様、あなたでしたな?」
「誠かっ!? 婿殿! もしやあの城壁に大穴を開けたのは……」
「あっ、あ~、…あの城壁直すのにえらい苦労したんじゃがな~」
「国王陛下、こちらが見積書です」
(流石国王様! のっかってきたっ!)
「私にも見せてください……。こっ、これは! 婿殿の結納金の3倍の魔石量!
一瞬にしてハーゼルの顔色が青くなっていくのをみた3人は、ここぞとばかりにたたみかけた。
あと一押しと感じた宰相がハーゼルにとどめを刺す。
「よいではありませんか、ハーゼル様は魔力装甲入りの城壁を破壊できる力をお持ちなのでしょう。必ずや"王都の病院に残る"エリーゼ様をお守りしてくださいますよ」
それを聞いたハーゼルが『ハッ!』と、息をのむ。
今もエリーゼは集中治療室にいて、スタッフも懸命の治療を行っていたのだ。
避難も考えたのだが、設備がないという理由から、王都にとどまっていた。
「わかりましたっ! 俺やります!」
「おぉっ! ハーゼル殿! やってくれるか!」
「さすがは婿殿! 見直しましたぞ!」
「ハーゼル様がドラゴンを討伐した暁には、正式な"結納"として、素材を収めることもできるでしょうな、きっとエリーゼ様もお喜びになりますぞ!」
あれよあれよという間に、ハーゼルは魔王鎧と魔王サークレットをつけられ、
北門の城壁の上に連れていかれた……
城壁の上には数十門の魔力砲が並べられており、兵士が決戦の時を待っていた。
「魔王様がいらっしゃったぞ!! 総員! 敬礼っ!」
タルンドル王国において、魔王とは軍の最高司令官であり、最大の戦力である。国王デプルも、ハーゼルと同等の権限をもつものの"魔族の王"であるハーゼルの命令の方が、優先されるのは仕方のない事だ。
魔王の装備がやたらと目立ち、角までついているのは、その存在を知らしめ、戦意を向上させるためである。
戦場でのの魔王は最強であり、その場にいるだけで兵士の士気が上がるのだ。
ハーゼルは門の上にある塔に上ると、力の限り叫ぶ。
「聞けっ! 魔王軍の勇士たちよっ!! 王都は今未曽有の危機にさらされている。このままでは都がっ! 人がっ! 仲間がっ! 諸君らの愛するすべてが焼かれるだろう……
此度の戦いで命を落とす兵士もいるだろうだがしかしっ!!
諸君らが稼いだ時間で助かる命が必ずあるっ!!」
ハーゼルはアイテムボックスから巨大な弓と矢を取り出し、天高く掲げた。
そして、腹の底から地鳴りのような大声をだして叫ぶ!
「この国を守りたいかぁっ!!!」
――ウォオオオオオオオオッ!!!
「仲間を守りたいかぁっ!!!」
――ウォオオオオオオオオッ!!!
「愛する人を守りたいかぁぁあああっ!!!!」
――ウォオォォォオオオオオオオッ!!!!
「タルンドル王国、万歳!!」
――タルンドルに栄光あれ! 国王陛下万歳っ! 魔王様バンザーイッ!――
ハーゼルが塔の上で演説するのを、フットル将軍をはじめとする関係者がが見ていたのだが、想像を絶する兵士の士気の高まりに驚きを禁じ得なかった。
「婿殿っ! 私はなんと立派な息子を持ったのだろうか…。指揮官に挨拶してくれと頼んだだけなのに、塔の上から全部隊に呼び掛けるとはな、驚いたぞ!」
ハーゼルはただ勘違いをして演説を始めたのだが、宰相が『このままやらせましょう』といいだしたので、誰もとめることはなく、結果士気があがったのだ。
―――ォォオオオアアァンベンッショォォォオオオ!!!
「魔王様! ドラゴンが見えましたっ! 数300! 接敵まで5分!」
「よし! 先制攻撃を行う! 魔力砲射撃用意!」
―――撃てぇぇぇええええっ!!!!!
ズドゥウウウム!!!
空が裂けたかと思うほどの閃光が幾筋も走り、戦闘を飛んでいたドラゴンが勢いを失って墜落していく。
「第二射いそげっ! 敵はまだまだ来るぞっ!」
魔王軍の装備は非常に強力だが、魔石の交換やチャージに時間がかかり、なかなか次の攻撃が行えずにいた。
ハーゼルは少しでも時間を稼ごうと、弓を引き絞り射撃を開始する。
ズドォォオン! ズドォォオン! ズドォォオン!
放たれた矢が空気を切り裂き、凄まじい轟音と閃光をまき散らしながら飛んでいく。慌てたドラゴンが、巨大なフレアを撃ちだすが、ハーゼルの矢はそれごとドラゴンを吹き飛ばし、空に真っ赤な花を咲かせる。
「「「スゲェエエエエエ!! 魔王様半端ねぇ!!」」」
さらに士気を上げた兵士が、第二射を撃ちだすと、ドラゴンが次々と落ちていく。
―――ベンッショォォォオオオ!!!
ズドォォオン! ズドォォオン! ズドォォオン!
―――グルッウッゴォメンク・ダッサァァァィイイイ!!!
ズドォォオン! ズドォォオン! ズドォォオン!
ハーゼルが矢を放つたび、空に真っ赤な花が咲き、北の森に血の雨が降った。
兵士とハーゼルの活躍により、ドラゴンが半数まで減ったところで、おそれをなしたのか北の山に向かって一斉に引き上げていった。
「…敵戦力の撃退を確認! 戦闘に勝利しましたっ!」
――ウォオオオオオオオオッ!!! タルンドル万歳!! 魔王様万歳!!
この日、王都では深夜まで祝勝会が行われ、街の至る所でドラゴンステーキがふるまわれた。
しかし、王国北側の町や村は焼き払われ、ドラゴンの血がしみ込んだ大地は作物が枯れ果ててしまった。
ハーゼルは、自らが撃墜した120匹のドラゴンのうち、100匹の権利を放棄して、町や村の保証にあてた。
職を失った者たちは、しばらくの間、畑からドラゴンの素材を回収する仕事に従事になったのだが、作物地帯がことごとく吹き飛んでいたため、食物価格が跳ね上がり、飢える人々が続出していた……
タルンドル王国の宰相は王城の執務室で頭を抱えていた……
数々の功績を評価され、広大な領地をもらっていたのだが、その領地がことごとくドラゴンの襲撃で壊滅したのだ。
ハーゼルがドラゴンの素材を放棄したため、最初こそ喜んでいたものの、すぐに食糧問題に気づいた。
回収した素材の中にはドラゴンの肉もあるのだが、傷みやすく長期保管には向かない。
素材回収が終わった農地は、洗浄魔法で浄化が必要であり、次の作物を収穫できるようになるまでに、半年はかかってしまう。
目下の悩みは食糧事情であり、焼きだされた難民と、王都から避難していた国民の帰還が増えるたびに、厳しい状況になっていく。
「はぁぁぁ……どうしたらよいものか、このままだと10日はもたぬな……」
「どうした宰相よ、策は出てこぬのか?」
「……国王様、この無能な宰相をお許しください、何とかやりくりしておりますが、もはや時間の問題でしょうな」
「ううむ、同盟国のドワーフ族からも支援はあるじゃろうが、国民すべてに配給するにはあまりにも少ないな、すでにワシの食卓から3皿程きえおった……」
「この際恥を忍んでエルフに助けを求めるというのは……」
「今の国の現状を知られると攻め込まれぬか?」
「……あり得るでしょうな、それに魔石運搬用の馬車では小さすぎます。食料を運ぶには大型の馬車が数十台必要になりますぞ、現状では無理ですな……」
エルフの国であるデガリア王国には、肥よくな大地と広大な森があり、食料に事欠かない土地がある。
タルンドル王国とは魔石の取引こそあるものの、ドワーフと同盟国にあるタルンドル王国を毛嫌いしており、食料援助をしてもらうのは極めて困難だった。
「国王陛下、魔王ハーゼル様がいらっしゃいました。お通ししてもよろしいでしょうか?」
「おぉ! 参られたかっ! 通してくれ!」
「ハーゼル様、よくぞおいでくださいました!」
「こんにちわ、本日はお日柄も『良い、まず座ってくれっ』…はい」
「ハーゼル殿、突然呼び出してすまぬな、そなたに大事な話があるのじゃ」
「はっ、はい……どうぞ?」
「実はな―――ググ~ゥ……。すまぬ、腹の虫が鳴いたわぃ! はっはっはっ!」
「あっ、それでしたら、これをどうぞ……」
ハーゼルはアイテムボックスから、カロ〇ーメイトを取り出して国王デプルに渡した。
その瞬間を宰相が『やはり!』と、目を見開いてみていた。
「失礼を承知で申し上げますが、魔王様、そのカロ〇ーメイトはいかほどお持ちでしょうか?」
「これですか? 多分無限に出てくると思いますけどなにか?」
「「それだぁぁあああっ!」」
「ちっ、ちなみに魔王様はアイテムボックスのスキルをお持ちですよね? 収納力も教えていただけませんでしょうか?」
「ん~、多分ですけど、無限に入りますがなにか?」
「「それだぁぁぁぁぁぁああっ!」」
「ハーゼル殿、そのカロ〇ーメイトを買い取らせてはもらえまいか?」
「……いいですけど、魔石も素材もいりませんよ?(無料で差し上げます)」
「魔石も素材もいらないのですかな?(ほかの物をよこせという事か?)」
「はい……」
「国王様、では……」
「うむ、ではハーゼル殿に領地と城を与えることにする!」
「―――どうしてそうなった!!―――」
この日ハーゼルに領地が下賜された。
王国の北側に位置し、畑からドラゴンの素材がとれる奇跡の土地だと言いくるめられ、宰相が持て余した領地を譲り受けることになったのだ。
後の世で、新魔王城が立ち、王都タルンドルより栄えることになるのだが、そのことはまだ誰も知らない……
しばらくの間ハーゼルの仕事は、
カロ〇ーメイトを出し続けるマシーンになる事だった(´・ω・`)




