Part14 ごんぶとエルフはエリーゼ様を迎えに行く
エリーゼ様覚醒回(´・ω・`)
よく晴れた昼下がり、ハーゼルは王都タルンドルを馬車で移動していた。
手には小さなバッグを持ち、向かいには侍女長が座っている。
今日は待ちに待ったエリーゼの退院の日であり、二人で迎えに行くことになったのだ。
「魔王様、そちらのバッグにはエリーゼ様のお召し物が入っております。私は医師長からの申し送り事項を受け取ってまいりますので、エリーゼ様にお届けしていただけますでしょうか?」
「えっ? これ、服だったんですか? 少ないんじゃないですか?」
「ふふっ、行ってみればわかりますよ。でも魔王様、エリーゼ様が"どんな姿"になっていても、決して驚かないでくださいね」
侍女長の話を聞いたハーゼルは息をのむ。
事前に聞かされていた話では、エリーゼから大量の破片が摘出されており、傷だらけになっているという事だった。
治療により傷跡はほとんど目立たなくなったというものの、ハーゼルにとってそれはいささかの問題もなく、エリーゼを愛する自信があった。
唯一の心配は、エリーゼの心のケアだけだった。
それというのも、およそひと月もの間エリーゼが面会を拒んでいたからだ。
家族はもちろん、国王の面会すら拒絶したというのだから、彼女のメンタルがとても心配だった。
「では私は医師長と面談してまいります。エリーゼ様の病室は3階の特別フロアです。一部屋しかないのですぐにわかりますよ」
そういって侍女長はハーゼルを残していってしまう。
「覚悟を決めなきゃな、俺はエリーゼがたとえどんな姿になっていようとも、愛して見せる!」
階段を上り3階に上がると、薔薇の装飾が施された豪奢なドアが見える。
それはエリーゼの紋章であり、ここが彼女の病室だと言うことを示していた。
極度の緊張と心配から、ハーゼルはドアを"ノック"することも忘れ、勢いよく開け放った。
「エリーゼ! 迎えに……来た……よ?」
――ッ! キャァァアアアアアアアッ!!
「ごっ、ごめんなさいっ! 間違えましたっ!」
ドアを開けた先でハーゼルが見たのは、裸にひん剥かれて看護婦に体を洗われている可憐な美少女の姿だった。
「あっれ~ おっかし~なぁ~ 3階だって聞いてたんだけどなぁ~」
周囲を見回してみるものの、このフロアにはドアが一つしかない。
しかもドアにはエリーゼの紋章まで入っていて、間違いようもなかった。
ハーゼルがしばらく悩んでいると、中から看護婦が出てきた。
「魔王様、中へどうぞ、エリーゼ様がお待ちです」
「へっ? やっぱりここでいいの? 相部屋か何かなの?」
「いいえ、ここはエリーゼ様の専用フロアです。 王族専用ですよ?」
「まじで? じゃっ、じゃあさっきのは!?」
「どうぞ、中でエリーゼ様がお待ちになっておられます」
ハーゼルが恐る恐るドアを開けると、先ほどの少女がベッドに腰かけて座っていた。
病院で支給されたと思われるパジャマのようなものを着ているのだが、その上からでもわかるほど立派なおっぱいだとわかる。
男としてその豊満な双丘を目にしてしまうと、必然的に視線が動かなくなる。
彼女が恥ずかしそうに身をよじると、双丘もつられて"ふるんっ"と揺れた。
「はっ、ハーゼル様っ、どこを見ていらっしゃるのよ~」
「ごっ、ごめんっ…… きっ、君は、エリーゼなのか?」
「そっ、そうよっ! 悪かったわねっ! こんなガリガリになっちゃって……」
慌ててハーゼルが胸から視線をおろすと、ほっそりとした腰回りと、すらりと伸びた綺麗な足が見える。
「あのっ、ハーゼル様?……」
ふと顔を上げると、心配そうな顔でこちらを見つめるエリーゼと目が合った。
「髪……少し伸びたね」
「もぅっ、それだけですの?」
「……とても……綺麗になった」
「うふふっ、嬉しいわ……」
久しぶりに見たエリーゼは大変身を遂げており、体形に至っては面影すら残っていなかった。
美しい髪と金色の瞳はかつてのエリーゼを思わせるが、その目はパッチリと開いており、クリクリとしていてとても可愛らしい。
以前は顔と体の境目がわからなかった彼女の首元は、すっきりしており、シャープな顔のラインと相まって、綺麗に肩のラインを描いていた。
パジャマから覗く鎖骨にかけてのラインが艶めかしくて、ついつい凝視してしまう。
「ハーゼル様の…エッチ……」
エリーゼが視線に気づいて胸元を手で覆ってしまった。
そのしぐさの一つ一つが愛おしくて今すぐ抱きしめたい……
ハーゼルは衝動をぐっとこらえて、侍女長からの荷物を彼女に渡した。
「そっ、そうだ、侍女長から服を預かってきたんだ」
「ふふっ、ハーゼル様、ありがとうございます!」
そういってほほ笑む彼女を見て『ドキン』とハーゼルの胸が脈打つ。
ふとハーゼルは彼女に質問を投げかけた。
「そういえば、エリーゼさんっておいくつなんですか?」
「……今年で24になるわね……」
「にじゅうよん!? まじか!?」
ハーゼルはエリーゼの年齢を30代半ばだと思い込んでいた。
それというのも、太っていた時の彼女はそれ相応に老けてみえたからだ。
「ごめん、俺、エリーゼがもう少し年上だと思ってたよ……」
「ちょっと! ハーゼル様っ! 失礼よっ!」
「でも今は10代にしか見えないなぁ……」
「なっ! もっ、もうっ、ハーゼル様ったらっ! 私着替えますわね!」
――シャッ!
頬を朱に染めたエリーゼはカーテンを閉めてしまう。
魔族の寿命は長く、15歳で成人してからはゆっくりと成長する為、大概の魔族は見た目が若々しい。
エルフも同様で、39歳のハーゼルも見た目は20歳ほどだった。
しばらくして衣擦れの音が聞こえてくる。
ハーゼルは『ハッ!』と、気が付いたが、時すでに遅し。
窓から差し込む日差しが、カーテン越しにエリーゼのシルエットを映し出していたのだった。
パジャマのボタンをはずし、シャツを脱ぐと『ブルン』と彼女の双丘が現れる。 カーテン越しに見る彼女の双丘は見事なおわん型だった。
その頂にある可愛らしい突起まで見えたところで、彼女が後ろを向いてしまう。
(わざと見せつけているんじゃないか? やばい、鼻血出そうだっ……)
もちろんエリーゼはわざとやっているのだった。
後ろを向いた彼女は、ゆっくりとブラジャーをつけて見せる。
シャツを着ようとエリーゼが両手を上げると、カーテンには彼女の美しいくびれが映し出された。
(やばい、エリーゼの脇腹からお尻にかけてのカーブがやばい!)
エリーゼがショーツを手に取り、立ち上がって静かに足を通した。
今まで見えることが無かった彼女の太ももに隙間ができて光が差し込む。
(ハァッ、ハァッ…… これは新居を早く完成させる必要がありそうだ……)
この光と女体の共演は、侍女長と宰相の考案であり、すべて計算しつくされていたのだ。
このフロアすべてを使っているのも、すべての壁をぶち抜いて光を集めるためだ。
ハーゼルが部屋に入る時間帯も計算しつくされており、一番艶めかしく見える様に、ベッドの角度やカーテンの位置も、すべて作り替えられていた。
「――ッ! ちょっと、こんなの聞いてないわよ……」
「どうしたエリーゼ!? 何か問題でもあった?」
「いっ、いえ、問題ないわ……」
(もう~侍女長ったら、こんなものまで用意していたなんて!)
エリーゼが手に取ったのは、黒くて柔らかい光沢のある布で出来たものだった。
――ブパッ!
次の瞬間、ハーゼルが興奮のあまり鼻血を出してしまった。
カーテンに映し出されたのは、美しくすらりと伸びたエリーゼの足だった。
ゆっくりと持ち上げられ、ストッキングのようなものを履きだしたのだ……
シュルシュル…シュルっ…パンっ!
その光景と音に耐えかねてハーゼルが鼻血を噴射させたのだ。
その後も数分にわたり、艶めかしいシルエットショーが行われた後、ようやくエリーゼはカーテンを開けた。
――キャァァアアアアアアアッ ハーゼル様死んじゃうっ!!!
「ハーゼル様っ! 大変! どうしてこんなことに……」
エリーゼが見たのは、床にできた特大の血だまりであり、今なお拡大中だった。 出所はもちろんハーゼルの両の鼻穴であり、閉め忘れた水道の蛇口のように、とめどなく流れ落ちていた。
「ハーゼル様っ! 今何か拭くものを――」
「その布で良いよ……」
「こっ、これですかっ!?」
「うん、早くしないと床が血の海になるから……」
「――ッ ハーゼル様がよろしいのでしたら……どうぞ……」
エリーゼが手渡したのは、彼女が来ていたシャツだった。
「あれ? なんかすごくいい匂いがするんだけど、それに暖かいし……」
「あのっ、そっ、それは……」
ハーゼルが手にした布を広げてみると、先ほどエリーゼが脱いだシャツだと気が付いた。
彼は美少女のシャツで顔を拭いていたのだ。
普段であればこれくらいの事で動揺しないハーゼルも、この時はかなり興奮していたこともあり、再び鼻血の鼻を咲かせてしまった。
「ごめん、エリーゼ、ベッドが真っ赤になっちゃった」
「構いませんわよ、今日で退院いたしますわ」
エリーゼが『んっ』と、両手を広げて"抱っこして"アピールしてくる。
『なんて可愛いやつめっ!』
「エリーゼ……」
「……あなたっ……」
ハーゼルがそっとエリーゼを抱き上げる。
エリーゼの吐息がハーゼルの長い耳にかかり少しくすぐったい。
(夫婦なんだから……少しくらいいいよねっ)
艶やかなエリーゼの唇をそっとハーゼルの唇が重なる……
「んっ……んむっ…」
エリーゼはそっと目を閉じて、ハーゼルの背中にしがみついた。
彼女にとっては、これがファーストキスだった。
互いの鼓動が高まり、汗ばむほどの熱を感じる。
「ぷはっ、はぁっ、はぁっ……ハーゼル様、もっとっ…」
再び二人の唇が重なると、今度は激しく舌をからませる。
『あぁ、このまま時が止まればいいのに』そう思う程情熱的なキスを交わす二人。
しかし、永遠とも思われた長いキスは、興奮しすぎたエリーゼの気絶によってあっけなく終わってしまった。
「続きは…帰ってからだね……」
ハーゼルはエリーゼを抱えたままドアを開けて階段を下りた……
1階には侍女長と医師長が控えており、何やらニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「魔王様、お楽しみでしたね」
「……見てたの?」
「いえ、多分そうなるんじゃないかな~って思って、医師長と下で待ってました」
「さすがハーゼル様……まさかエリーゼ様が気絶なさるなんて……」
「あっ、あぁ、ちょっと激しくしすぎて興奮しちゃったみたい」
「……バイタルは安定しているようです。このままお連れしても問題ありません」
「でっ、では魔王様、馬車が控えておりますのでそのままお乗りください……」
「あれ? 侍女長は一緒に帰らないの?」
「わっ、私はお部屋からエリーゼ様の荷物を持ち帰ります!」
「そうですか、では私たちは先に帰りますね。医師長、侍女長、ありがとう……」
「「お気をつけてお帰りくださいませ!」」
エリーゼを抱きかかえたハーゼルが馬車に乗り込むと、二人は腰をおってお辞儀をして見送った。
馬車はエリーゼを気づかって静かに走り去っていった。
「さて、部屋を片付けましょうか」
「そうですね、大変な事になっているでしょうから……」
二人が3階の部屋に足を踏み入れた途端、悲鳴が上がったのはいうまでもない。 そこには大きな血だまりと、血濡れのベッドとシャツがあったのだ……
「医師長! エリーゼ様を連れ戻した方が良いのではないですか?」
「……いや、大丈夫だと思う。先ほど確認した時はなんともなかったのだがな」
「こっ、この血の量は尋常じゃありませんよっ!?」
「ふむ、私が見るに、着替え前に1回、ベッドで1回、最後はおそらく……」
「えぇ、そうね、最後は多分"ベントゥースタイル"に違いないわね」
ゴクリ……
「魔王様は大変なモノをお持ちなのでしょうね」
「えぇ、この惨状を見た今、否定するつもりはないわね」
「侍女長、やはり報告しなくてはならないのかな?」
「そうね、起こったことのすべてを宰相に咆哮するように申し付けられているわ」
「………‥」
この日、宰相の元に届けられた書類には『ごんぶと』という文字が何度も踊り、侍女長と医師長の所見が記載されていた。
どんな内容だったかは、読者の皆様のご想像にお任せしようと思う。
ただ、この日の夜、色街で宰相によく似た人物を多くの人が目撃したという。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ところ変わってオナラブル家(エリーゼの実家)
「お父様っ、お母様っ! ただいま帰りましたわっ!」
「おおっ、エリーゼ、お帰……り?」
「あらっ、エリー?ちゃん? お帰りなさい?」
「お嬢…様? お帰り?なさいませ…」
エリーゼを出迎えた家族と執事のセバスチャンの前には、白いブラウスに黒のタイトスカートと、ストッキングに身を包んだエリーゼが佇んでいる。
『はて、エリーゼの声が聞こえたような』や『息子しかいないわね』等と、首をかしげる両親を前にして、エリーゼは固まってしまっていた。
「旦那様、きっと何かのトラブルかと思われます」
「そっ、そうだな……退院は延期になったのか……」
「せっかくエリーちゃんの退院祝いのパーティーを準備していたのに、残念だわ」
「ちょ、ちょっと皆さん、エリーゼが固まってしまってますよ、ご冗談はそれくらいにしてください……」
「あらっ、もうおしまいなの? 優しい旦那様ねぇ」
「はははっ、お嬢様、申し訳ございません。少し調子に乗ってしまいましたぞ」
「ぇっ? お前たちどういうことだ? エリーゼの退院はどうした?」
「「「ぇっ? 気づかなかったの?」」」
フットル将軍だけがエリーゼだと気が付かなかったので、この日一日エリーゼが口を利かなかったとか……
夜には盛大なパーティーが開かれ、エリーゼ隊の面子も招待された。
退院祝いにも関わらず、なぜか贈り物はすべて"ベビーグッズ"だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その頃王城では、宰相が国王に報告書を提出していた。
報告を終えた宰相が、いそいそと街中へ繰り出して言った理由を、報告書を読んだ国王デプルはすぐに理解した。
「さすがハーゼル殿だ……見た目もすさまじいが、アレもすさまじいらしいな」
「あらあら、まぁまぁっ!」
「さすがのワシでもお前を気絶させるまで満足させたことはないな……」
「あらあら、まぁまぁっ!」
「これでこの国も安泰であろうな」
「あらあら、まぁまぁっ!」
「……ワシらに世継ぎができたらさらに安泰であろうな……」
「あらっ? あらあらっ? うふふふふっ」
この日から1年後、この国の第一王子が生まれるのだが、それはまた別の話である。
フットル将軍の元に、この日の報告書が上げられたのだが、大幅な修正と伏字が多用されており、難解な文章の最後に『この国の安寧は守られた』とだけ記されていた。
やっとヒロインが出てきました(´・ω・`)遅くなってごめんね




