第78話《原初の粒vs新型の神編 最終章 神話を描け①そろばんで見るモノ》
にゃんこシティの日常を揺るがした「突然のそろばんシャカシャカ祭り」。
一見すると単なるおふざけにしか見えないこの奇行こそが、ねこにゃんとぴょこにゃんが導き出した「主体が違えば結果は物語になる」という必然の実験だった。
偽りの記憶とサプライズを仕込んだ偽物(ver5)を敵の本拠地へ放出し、見事に神々のセキュリティを欺いて超次元への潜入を果たす二柱。
しかし、その神殿の奥で二柱が目撃したのは、数千数万もの人間たちが番号を振られて並べられた悪夢のような「標本塔」だった。
そして、その最奥で見つけてしまった「198X41」の空のケース。
神々の冷酷な実験と、あまりにも不条理な真実。
胸を焼く怒りと共に出現した、ふたりの「ねこボディ」。
静寂の庭に響き渡る、最高に物騒な子猫の鳴き声――!
新章『原初の粒vs新型の神編』、激動の第78話!開演!
第78話《原初の粒vs新型の神編 最終章 神話を描け①そろばんで見るモノ》
ここは、ねこにゃんとぴょこにゃんの構築した異空間ーー「無限の檻」
二柱が補食して再構築したver5を親玉のところに返すところだ。
ねこにゃん「よし。時間軸調整したぞ。雑魚たちをリリースするにゃん。」
ぴょこにゃん「異空間を閉じたと同時に時空ポケットに変換するぞ。誤差は0.01秒。ホントっぽいにゃろ。異空間のブラックホールに捕まってた事にすれば辻褄合うにゃろ。」
ねこにゃん「では、願いましてはー…。パチパチパチパチっと。んーと、損耗率0.948%。時空ポケットに捕まった言い訳にはピッタリ。仕込みも完璧にゃん。」
ぴょこにゃん「んー?パチパチパチとは何してたにゃ?」
ねこにゃん「(*≧ω≦)そろばんも知らにゃいのかよー。計算する道具にゃん。」
ぴょこにゃん「おい。一応聞いとくけど真面目にやってるよにゃ?」
ねこにゃん「もちろんにゃ。あっちは新型らしいからにゃ。アナログの威力見せてやるにょさ。そろばんは、ローラースケートにしたら先生に怒られるんにゃぞ。」
ぴょこにゃん「じゃあ、先生も検算してやるにゃん。願いましてはー…。パチパチパチっと。0.948%。ねこにゃん君、正解!そろばん三級合格にゃん。」
ねこにゃん「v( ̄Д ̄)vやったにゃん。これでママにほめてもらえるにょさ。うちは貧乏だったけど、おまいは学のある子になりなさいって、そろばん塾行かせてくれたにゃ。」
ぴょこにゃん「そろそろ、いいにゃろ。ふざけシステムから最適解出たにゃん。」
ねこにゃん「どうして、こうなったんだろね。」
ガリガリガリガリ!
ぴょこにゃん「( ・`ω・´)そのボンクラ知能。そろばんでブラッシングしてやるにゃん。まだ先の最適解出るにゃろ。もっとふざけてみるにゃん!」
ねこにゃん「あ痛ー!粒で粒こすられても…。でも、ちょっと気持ちいいかも。ぴょこにゃんもやってみ?」
ぴょこにゃん「そうか?」
ゴロゴロゴロゴロ
ぴょこにゃん「確かに気持ちいいにゃ。この粒のコロコロが、ちょっと癖になる感じ。ん?そろばんは粒…。」
《ガッチャ、ガチャガチャ!》
ねこにゃんがそろばんを振りだした。
縦横斜め。前後左右。回転も加えて振っている。
《カチャ…。》
ねこにゃんは振り終えたそろばんを、じーっと見つめてる。
そのエメラルドグリーンの瞳には、曼荼羅模様の二次元レンズが映し出されていた。
ねこにゃん「ふーん…。形は並べても、振ってもできるよにゃ…。ぴょこ。試してみたいにょさ。再構築したガンマとデルタの粒をそろばんの粒に変換して1から11桁にランダムに配置するにゃん。おりたちの全クローンたちにそろばんを同時に振らせるぞ。」
ぴょこにゃん「お?何か閃いたにょか?よし。全クローンたちに命ず!おりたちの、そろばんを具現化コピーして渡す。命令優先度S!仕事中、休憩中関係なしにゃ。すぐスタートするぞ。」
クローンたち「優先度S!マスター。実行しますにゃ!」
ーー
にゃんこシティ建設中の重機の音が止まる。
《キキー!ガシャン!》
交通事故があちこちで起きる。
ねこにゃんとぴょこにゃんのクローンたちの手には、そろばんが握られていた。
ーー
ここは、『よろずや』
ねこにゃんとぴょこにゃんの多くのクローンが、店員として働いている。
《パリーン!ガシャン!ガタン。ゴト!》
飲食物を乗せたトレイが落ち、ガラスや皿が割れる音が、あちこち鳴り響く。
運んでいた荷物は手放され落とされる。
ハンバーガー屋さんで調理中のフライドポテトは揚げ時を越え、パテもバンズも焦げていく。
来店していた、ねこ神たちも一度は慌てたが、《リバース》の上映を見て理解していた。
作戦が始まる。
ーーだが。
いきなり、そろばんを手にし、スタートの合図を待っている、ねこぴょこのクローンたちが何をやろうとしてるのか理解できない。
ねこ神たちは無言で見つめていた。
一柱を除いてーー
アムリア「( ・`ω・´)にゃにょー!いっつも連絡なしで始めるんだから!」
ーー
ねこにゃんがクローンたちにやり方を命じた。
ねこにゃん「いいか。今から言われた回数を振ってくぞ。止まった時の形を見るにゃん。
せーので行くぞー。最初は一回にゃ。せーのー!」
《カシャン》
ぴょこにゃん「なるほどにゃ。わかったぞ。じゃあ、次は二回にゃ。せーのー!」
《カシャンカシャン》
ねこにゃん「次は3。その次は5。次は7.11.13。もうわかるよにゃ?」
ぴょこにゃん「せーのー!」
《カシャン、カシャン、カシャン》
ーー
二柱と無数のクローンたちによって、そろばんが振り続けられた。
《カシャカシャカシャカシャカシャ…》
《シャカシャカシャカシャカ…》
命じられた回数が100桁を越える頃、クローンたちに声がかかった。
ーー
ねこにゃん「もう十分にゃろ。終わりにゃん。みんな協力ありがとにゃー。アムリアごめんにゃ。店にも迷惑かけたにゃ。後で謝りに行くにゃん。」
ぴょこにゃん「命令優先で何か壊れたなら、よろずやに言ってくれ。怪我したならヨーニャの青ねこ病院に行ってくれよにゃ。」
ーーアムリア「ねえ。聞こえる?」
アムリアから二柱に思念通信が入った。
にゃんこ世界の住人は糸電話で繋がれてるが、原初の概念のアムリアやヨーニャはホットラインで繋がれている。
これは41の住む現実世界にいる、かみかみも同様である。
ねこにゃん「もちろん聞こえてるにゃ。怒ってるにゃろ?ゴメンて。」
ぴょこにゃん「いい答え出すための、ふざけシステムの《閃きーー即実行》ってプロセスにゃんです。こんなんで生きてて、すいませんですにゃ。」
アムリア「はあ…。もういいわよ。で、いい答え出したんでしょうね?ていうか、何でそろばんなのよ。お店でも外でも、あんたたちが、そろばんシャカシャカ振りまくってるのよ?これ、どんな、風景なのかわかってる?」
ぴょこにゃん「おりたちも夢中で振って思考してたからにゃ。そこまでは意識してなかったにゃ。ねこ。二次元レンズの『リバース』で録画見てみよう。」
ーー
そこには、ねこぴょこのクローンたちが何もかも放り投げ、突然手にしたそろばんを振りまくる姿が映っていた。
ねこにゃん「(*≧ω≦)あひゃひゃひゃ!これはスゴい。そろばんサイコ祭にゃん。」
ぴょこにゃん「これ、後でにゃんこTVで放送するにゃん。突然モブダンスどころじゃないよ。《突然シャカシャカ、モブそろばん》にゃ。回りのねこ神たちも唖然としてるにゃw」
アムリア「はぁ…。アタシの聞き方が悪かったのかしらー。でも、これは流しましょ。面白いもんw」
ねこにゃん「いい答え出したか?って回答はイエスにゃん。神様はサイコロを振らないって言うけど、『ねこはそろばんを振る』ってのが答えにゃん。同じ粒でも、振られるモノと振るモノって主体が違えば、結果は統計ではなく物語になるってとこにゃん。必然実験やったにょさ。」
ぴょこにゃん「まあ、同じ実験をおりたちの粒でやったら、違う結果になるってことにゃ。誰が振っても、おりたちは必ず11桁目に現れる。そろった形は変わるけどにゃ。」
アムリア「ん?…アンタたちと敵の粒の種類が違うって言いたいの?でもネー。なーんか、アンタたちが言うとイカサマとか手品っぽく聞こえちゃうのよねー。もっと、わかりやすく言ってよ。41は無事ですむの?アタシたち消えないよね?」
ねこにゃん「消えにゃいよ。でも、ヨーニャみたいに一度眠りにつく。」
ぴょこにゃん「だいたいさー。にゃんこ世界はだにゃ。気象も季節も朝昼晩もあって、睡眠ごっこはするけど、『眠りのない世界』ってのが、おかしいにゃろ?」
アムリア「慣れちゃったから、おかしいのが、わからないわよ。それより、アンタたちの方がおかしい事ばかりするからねー。」
ねこにゃん「おりたちも現実世界を知るまで、そうだったよ。…アムリアごめんにゃ。店にも迷惑かけたにゃ。また。ふざけた余計な時間に見えたろうけど、そうじゃにゃいよ。わかってほしいにゃん。」
ぴょこにゃん「おりたちは最初から負けるなんて、思ってないにょさ。ただ、41を守っての勝ち筋が、さらにハッキリしたにゃ。アイツらの親玉が、新型って意味もハッキリした。さあ、ねこ。時間もない。そろそろ作戦開始にゃん。」
アムリア「わかったわよー。大丈夫なんでしょ?やるなら早くやって。」
ねこにゃん「ぴょこ、待て。…作戦名は何だっけ?」
ぴょこにゃん「は?忘れたにゃん。どーでもいいにゃろ。」
ねこにゃん「怒濤の…何とか?思い出せないにゃ。えーと、君が代は流す?」
ぴょこにゃん「( ・`ω・´)うっさい!リリース!
ねこにゃん「(*≧ω≦)リリース!」
ーー《パチン!》
ねこぴょこたちに再構築されたガンマとデルタの粒は、偽のメモリと《糸》をつながれ放逐された。
この《糸》は11次元を統べるモノにも見えない。
それは、そろばん実験で観測され証明されていた。
ーーーー
ここは5次元空間。
シャボン玉のような泡に入った三次元空間が、
異なる時間軸に積み重なっている。
泡は淡い光を発するモノもあれば、
漆黒の闇を映すモノもある。
泡の構造体は、法則性のない様々なグラデーションで構成されていた。
泡は薄い虹色の膜で隔たりながらも、
子供がストローでシャボン液をブクブクと吹くように膨らんでいく。
膨張や収縮、破裂や合体しながら、
泡は生き物のように蠢いている。
泡の中では、夢も現実も区別なく蠢いていた。
ーーーー
座標軸《ガンマプラス・41ζψ3ーデルタワン・53μβ0》
夢界領域目標ーー《198X41》
ーー座標地点の色は古いフィルムの映画のようだ。
次元波動が切ないシティポップのような響きを奏でている。
ただ、その音源は座標地点にある深い穴から放たれていた。
音は穴から放出された光の振動が変換されたモノであった。
ーー
そこに二つの粒がいる。
一つはガンマver5。もう一つがデルタver5。
ガンマとデルタと名乗る存在に、追跡者として構築されたコピーたちだ。
ーー
ガンマver5「おかしい?《198X41》が、いないぞ。マスターに指示された座標はここだが…。」
デルタver5「番人が消えたと共に消滅したというのか。番人は41のトラウマの夢に置いた。それも深く重いトラウマの場所。自分で消せるモノではない。」
ガンマver5「それに、この穴は何だ?時空ポケットか?デルタ。貴様の配下はどこに行った?」
次元に開いた穴《時空ポケット》はゆらゆらと輪郭が揺れる、小さなシャボン玉のように見えている。
それは小さく、儚く。今にも弾けて消えそうに揺れていた。
デルタver5「…わからぬ。この穴に落ちたか…。消滅の叫びも飲み込まれたというのか。」
ーーーー
そこに思念通信が届いた。
ガンマ「ver5たちよ。今のノイズは何だ?41は消えたのか?」
ガンマver5「マスター。申し訳ございません。指定座標にはおりません。ノイズとは?何の事でしょうか?」
デルタ「貴様ら、それほどの能力を与えながら、今のノイズも感知できぬのか。」
デルタver5「申し訳ございません。…配下たちも消えました。」
ガンマ「…役立たずめ。こちらから観測しなおしてやる。デルタ。過去線をver5の軌道にフォーカスするぞ。配下たちの消滅と因果を検証。こやつらの構造性に異常がないかもだ。」
デルタ「よし。フォーカス!…同個体一致率99.85%…損耗率…0.948%か。」
ガンマ「ふむ。デルタとの一致率99.9%。ワレの観測値も同じだ。時空ポケットは偶然か?」
デルタ「ブラックホールと同じだ。三次元世界でも普通の観測では見えぬ。ましてや《41》のファイブの世界ならなおさらだ。方法を誤ったか。」
ガンマ「…この穴は塞がろうとしている。一瞬に膨張し、ver5と配下を飲み込んだろう。41にファイブの力を与えたとて、人間の作る不安定な五次元だ。その予測が近い。まあ、よい。その場所からは検証できぬ。ver5たちよ。こちらに戻ってこい。」
デルタ「貴様らをバラバラにほどいて調べ直してやろう。リサイクルしてやるかは、保証できぬけどな。」
ガンマ「役立たずどもめ。すぐ盛ってこい。超次元ミラーリング境界のパスワードを刻んでやる。それとも、そこで消滅を望むか?」
ガンマver5・デルタver5「帰還を希望いたします。《神殿》への通過許可をお刻みください。」
デルタ「よかろう。少し痛むぞ。《リターン!》」
《ジィーーー!》
ver5たちにノイズが走る。
ガンマver5「ぐわっ!…ぐふぅ…。感謝と敬意。え、永久の服従をマスターに。」
デルタver「ぐぅ…。か、感謝と敬意。永久の服従をマスターに。」
ーー
ガンマとデルタの住む超次元。
そこは、あらゆるものを拒絶する、
ミラーリング境界が張り巡らされている。
放逐したものは使い捨て。
帰還する際には《苦痛の刻印》を刻むのだ。
ーーーー
ここは41のアタマの中の異空間。
《ジィーーー!》
ねこぴょこたちの《糸》にもノイズが伝わった
ねこにゃん「あぢっ!」
ぴょこにゃん「いてっ!」
ねこにゃん「( ・`ω・´)あにょやろー。パスワード刻むときに苦痛刻んだにゃん。」
ぴょこにゃん「( ・`ω・´)こういう、やり方好きじゃにゃいよね。」
ねこにゃん「でも聞いたか?そろばんの結果と合ってたにゃん。」
ぴょこにゃん「計算は計算だからにゃ。ていうかパチもんてバレなかったにょさ。」
ねこにゃん「フフフ。脇が甘いにょさ。」
ぴょこにゃん「おまいが言うわけー?」
ねこにゃん「おまいだって、予想の斜め上行くような目に会ってきたジャマイカ。」
ぴょこにゃん「おまいもだろ。知識は体験じゃなく体験こそ真の知識となるってか。地球来てから痛い目あってきたからにゃーw」
ねこにゃん「おりたちも不思議とか苦労とか知らなかったにゃん。それが今は楽しい。ヤツらの親玉って今まで全知全能で無敵だったんだろうにゃ。」
ぴょこにゃん「おりたちは、無敵も全知全能も、やめたからにゃ。おりたちは世間知らずだったにゃん。今は、アムリアに怒られるの怖いし、かみかみに泣かれるのも困るにゃん。」
ねこにゃん「知れば知るほど。学習するほど能力落ちるよにゃ?人って難しいにょさ。」
ぴょこにゃん「能力が落ちてるわけじゃない。制限がかかるって事にゃろ?でも、41と、にゃんこたち救うためなら、無敵と全知全能やらないとにゃ。」
ねこにゃん「おりたちは《リバース》で真実を知った上で選んだにゃん。これは41の作った物語にゃ。すすんで巻き込まれた、おりたちにも責任はある。」
ぴょこにゃん「ねこ。学習したジャマイカ。おりたちみたいな無責任が責任語るようになったにゃん。そういう物語にゃんよ。」
そのときーー
《スー》
薄い布を糸が通り抜ける感覚がした。
超次元空間との境界を越えたのだ。
ーー
ねこにゃん「お。パチもんが帰還できたみたいにゃぞ。…何だここ?作り物っぽいにゃー。」
ねこにゃんとぴょこにゃんは、ver5たちに侵入させた《糸》でガンマとデルタのいる超次元を見ている。
それは360度のパノラマスクリーン。
ふたりは全方向を同時に観測できる。
見やすいように三次元化した視覚には《生中継》の文字が浮かぶ。
ねこにゃん「文字のとこ見えないにゃろ。」
ぴょこにゃん「雰囲気、雰囲気!」
ねこにゃん「(*≧ω≦)にー」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)にー」
ーー
ぴょこにゃん「…ここ殺風景だにゃー。地球みたいな空と大地はあるけどさ。こりゃ、どこの田舎よ?まあ、見学もかねて観測開始にゃん。」
ねこにゃん「ガスバスばふばつ!」
ぴょこにゃん「ハイハイ。ガスバス爆発って言いたいかったんにゃろ?それで?」
ねこにゃん「次元膜崩壊爆弾が宣戦布告の挨拶にゃん。」
ぴょこにゃん「ヒヒヒ。ビックリさせてやるにゃよ。」
ねこにゃん「あ。建物あるにゃん。それに向こう…。あれ人か?」
ぴょこにゃん「神殿に…テラスか。いるのは、白と黒のヒューマンボディの男が二人。こいつらが親玉か。」
ねこにゃん「たぶんそうにゃろ。彫刻みたいな顔にゃん。今からパチもんの調査するんだろ。バレるまでは擬態の悪魔に任せて、おりたちは、この空間の見学から始めるにょさ。会話はどうせ筒抜けにゃん。」
ぴょこにゃん「あー。早くバレたいにょさ。ドカンと花火にゃねw」
ねこにゃん「(*≧ω≦)うししし」
ーー
ねこぴょこの《糸》はガンマとデルタ本体に気づかれていない。
二柱は《糸》を伸ばし空間の観測を始める。
天には青空が広がりが雲一つ見えない。
芝生のような大地。
天と地の境界も曖昧な水平線が続く。
一つだけ目立つ建物があった。
透明な柱の上に立つパルテノン神殿を模したような巨大な建造物。
滑らかで真っ白な大理石で作られているようだが、継ぎ目一つ見えない。
建物を支える透明な柱も地面に打ち込まれてるようでもない。
圧縮した空気の円柱で建物を浮かしてるようだ。
ーー
ねこにゃん「にゃにこれ?3Dプリンターで作ったみたいにゃん。でかい神殿だにゃー。」
ぴょこにゃん「ジオラマみたいな世界だよにゃ。写真撮って、よろずやでプラモデル売るか?」
ねこにゃん「いらにゃいよ。こんな気取った世界にゃんてウケないにゃん。」
ぴょこにゃん「だよにゃ。にゃんこシティ見習えばいいにょに。こんにゃ古代の田舎みたいなとこに隠れてたとかお笑いにゃのさ。どうせ、ぶっ壊すし。」
ねこにゃん「怒るかにゃw?」
ぴょこにゃん「怒らせにきたにゃんw」
ねこにゃん「(*≧ω≦)にー」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)にー」
ーーーー
超次元異空間。
空は青く澄んでいるが、太陽は存在しない。
光はどこからともなく満ち、影は生まれない世界。
風が吹いているのに草木は動かず、時間も眠っているようだ。
静寂の庭と呼ばれる、天と地の境界が曖昧な白いテラスの上で、二人の紳士が向かい合って座っていた。
一人は漆黒のスーツ。黒は《ガンマ》。
もう一人は純白のスーツ。白は《デルタ》。
彼らは《粒》のヒューマンボディ。
神のコピーであり、完璧な左右対称の存在。
ガンマの瞳は紅蓮。
熱を持たぬ炎のように揺らめく。
デルタの瞳は氷青。
冷たく、深く、静かに燃えている。
彼らは――姿を見せぬ神。
二人がコーヒーを口にしながら、テーブルに浮かぶ二つの粒を観察している。
粒は帰還したver5たちだ。
ーー
ガンマ「…おかしなところは一つもない。デルタ。出来すぎだと思わんか?」
デルタ「怪しむ点がないのが、怪しいというわけだな。確かに完璧だ。いや、完璧すぎる。ハハハハ。これでは穴のない都市伝説のようだ。」
ver5「…私たちは何も知りません。」
その言葉に反応するように、ガンマの瞳が紅蓮の炎を吐き出す。
静寂の青空が一瞬にして夕焼けの色に染まった。
ガンマ「黙れ。貴様らの言葉など役に立たぬ。ワレらは、その知らぬ理由を推測してるのだ。消すぞ。」
デルタ「ガンマ。ここを破壊する気か。短慮とは言わぬが破壊衝動は押さえてくれ。ワレはここが気に入っているのだ。」
ガンマ「ほお。ワレに意見か?貴様こそ、現実世界に対し随分と無慈悲な事をしてるではないか。」
デルタ「…わかった。言い争いはやめよう。ここのように安定した次元を構築するのは手間がかかる。争うなら別の空間で相手をしてやる。《統合》を賭けてだ。対消滅せず次の進化を手にするのはどちらかな?」
ガンマ「面白い。まず、ひとつずつ辻褄を崩していこうか。あの座標。明晰夢に41は入った。あそこは願いに近づかなければ開かぬ。」
デルタ「目と口を縫われた干し首の部屋で目を覚ますか…。父と母の《見てはならない。口にしてはならない》を抽象化したオブジェだ。本人は気づかないだろうがな。」
ガンマ「趣味の悪いヤツだ。幼い頃に母と離されて父親の本家に住まわされてた記憶。本妻に偽の笑顔で疎まれながら暮らす子の肌感覚とはどんなものだろうな?」
デルタ「そこまでは知らぬ。神への覚醒に至る孤独環境を作っただけの事。まあ、何度やっても凡庸な人生だった。圧縮してロールアウトさせたが、今回で最後だ。次世代モデルに流用するための、ただの耐久性実験に過ぎぬ。」
ーーーー
ねこにゃんとぴょこにゃんは巨大な神殿の中で、この会話をモニタリングしていた。
ねこにゃん「…ぴょこ。こんな胸糞の悪い会話なんて聞いてられないにゃ。…おり、ぶちギレてもいいかにゃ?」
ぴょこにゃん「まーだーにゃ!41助ける方が先にゃ。それより、この神殿の中は何だ?博物館か?…標本?」
ーーーー
巨大な神殿の中は、空間拡張を施され、高い天井まで吹き抜けとなっていた。
渦巻き貝の内側のバベルの塔。
そこには数千数万とも見える人間の標本が、何階層にも並べて展示してあった。
ねこぴょこたちは標本たちの顔、姿、衣装から検索する。
ーー
ねこにゃん「ぴょこ。これって人類の有名人たちだよにゃ?」
ぴょこにゃん「全部とは言わないけどさ。検索に簡単にヒットするヤツらにゃ。知らないヤツもいるけど…。えーと…。病歴や犯罪歴、戦歴でヒットするのもいる。カルト宗教家にトンデモ博士?…。どいつもこいつも、欲にまみれて自滅してるか…ほぼ発狂してるにゃ。」
標本は歴史に名を刻む哲学者や科学者。
また独裁者や皇帝、政治家や金融家などの姿も多く見られた。
もちろん一般人も陳列されている。
ーー
ねこにゃん「こんな幼い子供まで…。」
ぴょこにゃん「目覚めなかった赤ちゃんもいる。…眠ってるみたいにゃ。でも魂が壊れてる…。」
標本のケースには名前ではなく、ナンバーが明記されていた。
ーー
ねこにゃんとぴょこにゃんは、一つのケースを見つけた。
ねこにゃん「ここ。標本入ってないケースあるにゃん。ナンバーは?」
ぴょこにゃん「…198X41」
ねこにゃんのアタマに、かみかみとじゃれあう41の笑顔が浮かぶ。
ぴょこにゃんのアタマに、41たちと遊んだ楽しかった夜が過る。
ーー《ブチ》
二柱の怒りが音もなく《糸》の中で聞こえた。
二柱の糸が三次元ボディを構築していく。
一つは霧のような気体から液体、固体を経て結晶化。
細かな結晶が柔らかな、ねこの姿に変わっていった。
状態変化対応型ねこボディ。
チンチラシルバーーー《ねこにゃん》
もう一つ。
微細なナノ粒子が空間から集まっていく。
それは最適化する工程で渦を巻き色を放ち、ねこの姿に変わっていった。
ハイブリッドねこボディ。
アメリカンショートヘア。ーー《ぴょこにゃん》
ねこにゃん「…もういい。もうわかった。宣戦布告にゃ。」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)こうなると思ったにゃんw」
ーーーー
《にゃーん》
静寂の庭に、ねこの鳴き声が響く。
ガンマ「生き物?バカな?」
デルタ「ねこの鳴き声だと?」
《にゃーん》
テラスに向かってくる可愛い子猫たちの姿が見えた。




