第77話《原初の粒vs新型の神編 崩壊プロトコル④幸せの毒》
悪魔たちの報告によって明らかになった、41の与える幸せが周囲の不満を増幅させる神々の「絶望設計」。
「自分のせいで周りが不幸になる」という自責の念で41の心を内側から破壊しようとする悪辣な罠に対し、ねこにゃんとぴょこにゃんは、偽物にサプライズを仕込んで敵の元へと送り返し、エスネコにすべてを託す一か八かの賭けを決断する。
一方、現実世界。
通り魔に襲われながらも奇跡的に無事で41の家にたどり着いたケイ。
温かい日常の裏で、41自身の胸の奥にも言い知れぬ違和感と恐怖が広がり始めていた——。
第77話《原初の粒vs新型の神編 崩壊プロトコル④幸せの毒》
ここは、41のアタマの中に作られた異空間。
突然、起こった現実世界の異変に対応するため、ねこにゃんとぴょこにゃん、かみかみが集まっていた。
エスネコはハラハラと崩れ行く41の《コア》を抑え、封印で隠している。
ー41たちのガーディアンとして送られた悪魔たちの報告を、ねこにゃんとぴょこにゃんは聞いていた。
ーー
ソノリス「ご報告いたします。ケイ様はご無事です。ケイ様を襲おうとした通り魔は一般人です。犯人の心から不満の音が強く聞こえていました。ただ、気になる点がございます。この不満を増幅させたのは、ケイ様から発信されてる音…。申し上げにくいのですが、これは41様から与えられた幸せの波長です。犯人をどのように呼び寄せたのかまでは、私にはわかりませんでした。申し訳ございません。」
ーーこの悪魔の名はソノリス・ミューゼ。
音の悪魔だ。
クロノア「私が始末したのは《影》です。これも、申し上げにくいのですが、《影》はジュン様の影から出現しました。ソノリスと同様、《影》は不満の色を強く出している者に取り憑こうとしていました。」
ーーこの悪魔の名はクロノア・クロティカス。
色の悪魔だ。
ラミーノ「サル様には、まだ直接の脅威はございません。サル様の周囲には、白昼夢の混乱障壁を構築しています。勝手ながら、先ほどケイ様やジュン様たちにも障壁を張らせていただきました。そして、ひとつ具申させていただきたいのですが、サル様の彼女のエミ様も防御範囲に入れてもよろしいでしょうか?エミ様の夢を観測したところ、嫉妬が悪意に変換されようとしています。ねこにゃん様、ぴょこにゃん様。これは、どういう事なのでしょうか?」
ーー具申した悪魔の名はラミーノ・モルフェ。
夢の悪魔だ。
ねこにゃん「…なるほどにゃー。41の設計には、そんな仕掛けまでしてあるわけか。」
ぴょこにゃん「( ・`ω・´)おい!感心してどうするにゃ。41の願いが叶うとともに41が与えた幸せが毒になってるんだぞ。」
ねこにゃん「ぴょこ。怒るなってば。ここまでやるのかって、ビックリしたにょさ。おりだってムカついてるにゃん。」
ぴょこにゃん「…ゴメン。41の事になると熱くなっちゃうにゃん。でも、これじゃますます41の時間がなくなるにゃん。」
ソノリス「仕掛け?毒とは?どういう事なのでしょうか?」
ねこにゃん「ガンマとデルタは41の出生とか現実世界にも干渉してるからにゃ。他人の運命や思考操作してても、おかしくない。41の《願いが届けば死ぬ》という《絶望設計》はもっと残酷に仕組まれてるようだにゃ。41が一番嫌がる事しようとしてるにょさ。」
ぴょこにゃん「41に《自分のせいで回りが不幸になる》って思わせる事にゃんよ。」
ねこにゃん「さらに言えばだにゃ。相手もそういう風に思うって事にゃ。『41とつきあってから、ろくなことが起きない。41みたいなジャンキーと遊んでたからだ』って考え出す。アイツら《ガンマとデルタ》にとっては、41が苦しむほど《設計成功》なんだにゃ。」
ソノリス「ひどい。神と言うより悪魔ですね。」
クロノア「ソノリス。私たちも悪魔ですよ?」
ラミーノ「クロノアったら。41様は正義のジャンキーです。私たちも正義の悪魔でもいいでしょ。」
ねこにゃん「まあ、安心しろ。ケイとサルとジュンは大丈夫にゃん。アイツらと41の絆は強い。だけど、エミは要注意だにゃ。ラミーノ。防御範囲を広げろ。Mちゃんたちや、その仲間もだ。エミの毒はすぐに浄化しろ。できるか?」
ラミーノ「ハイ。ただちに実行します。」
ぴょこにゃん「絆か。幸福は共有しないと毒になるにゃん。エミには足りてないのかもにゃ。」
ねこにゃん「41は人に中毒性のある多幸感を与える?それじゃ、41そのものがヤクみたいなもんにゃろ。おりたちもアイツの中毒なってるかもにゃw」
クロノア「それでも、41様から受けた幸福が毒に変わるとは。…許せませんね。」
ーークロノアの白い瞳に横向きのギザギザの波形が流れる。色は炎のような赤。怒りの波長だ。
ねこにゃん「これは、ガンマとデルタの失敗が組み込まれてるのは確かにゃ。幸福も与えすぎると毒になる。人を腐らせるってな。」
ぴょこにゃん「おりたちが旧型なら、あっちは新型なんにゃろ?高性能なのかもしれにゃいけどさ。新型ってどんな思考回路してんだろにゃ?狂ったAIの狂った人工人格ってとこか?そんなのに真剣に取り組んでるとしたら、ただの勤勉なバカにゃん。」
ねこにゃん「だけど、ますます厄介になってきたにゃん。急がないと後手に回るにゃよ。」
ぴょこにゃん「エスネコ。41の《コア》はどうにゃ?かみかみ。通訳頼むにゃん。」
エスネコ「( ・`ω・´)にゃ。」
かみかみ「守ってるけど、崩れるスピードが突然上がったって?」
ねこにゃん「…そうか。ケイの心配して無事を祈ってるだけなのに魂削るんだにゃ。」
ぴょこにゃん「エスネコ。作戦はわかってるよにゃ?もう一度確認するけど《粒》のままだと無理なんだよにゃ?」
エスネコ「(´・ω・`; )にゃー。」
かみかみ「くっつけないってさ。ていうかさー。作戦聞いたけど大丈夫なのかお?エスネコが離したら41すぐに死んじゃうんでしょ?」
ねこにゃん「そうにゃ。だから、一か八かにゃん。おりとぴょこの仮説が正しければの話だけどにゃ。ガンマとデルタの設計通り死なせるくらいなら、エスネコに食わせるにゃんよ。」
エスネコ「( ・`д・´)にゃ!」
かみかみ「大丈夫だって?でも、それじゃどっちにしても41死んじゃうじゃん。」
ぴょこにゃん「だからタイミング大事にゃのさ。魂が失くなると肉体も死ぬだろ。でも、41は無自覚にバックアップ作ってたにゃんよ。」
ねこにゃん「一度、概念の世界を圧縮して閉じる。それを人の魂の形にするにょさ。それをエスネコが41の粒を食べたと同時に入れ替えするにゃん。タイミングがズレたら終わりだにゃ。」
かみかみ「その後は?41は、そうすれば死なないの?別人なったりしにゃい?」
ねこにゃん「これは、やってみないとわからにゃい。おりたちの未来視可能性計算でもエラーばかりにゃ。」
ぴょこにゃん「かみかみ。おりたちの演算表示で、できない事は《無理》って出るにゃんよ。エラーは失敗って意味だけじゃない。《バグ》って事でもあるにゃ。もともと、エスネコもバグだし、それを生み出したのは41にゃん。」
ねこにゃん「バグからバグを生み出すのか、バグが正しいバグになるのか…。今までの偶然は必然だったからにゃ。やるしかないにゃろ。それに、エスネコから合言葉もらったんだろ?」
エスネコ「(*≧ω≦)にゃ」
かみかみ「( ;∀;)何とかなるって?みんな、いなくなっちゃったら、ボクだけになっちゃうじゃん。そんなのヤダおー。」
この空間に、しばらく誰も声を出さなかった。
誰もが理解していた。これは勝てるかどうかの話ではない。
ーー「間に合うかどうか」の話だと。
ねこにゃん「かみかみ。おまいが心配なのはわかる。でも、ニルヴァーナでも言ったろ?おりたちは死なないように出来てる。うまくいくって思ったら、うまくいくもんにゃ。41も、にゃんこたちも死なせにゃいよ。」
ぴょこにゃん「おまいとつないだ《絆》の糸は絶対切れない。それこそ、おりたちの命綱でもある。」
かみかみ「( 。゜Д゜。)わかったお。約束だからね。」
ねこにゃん「約束は守らなきゃにゃ。」
ぴょこにゃん「おまいに、ふざけた事はするけど、ウソはついた事にゃいよ。任せときにゃ。」
ねこにゃん「41。絶対助けるからにゃ。」
ぴょこにゃん「あ。ズルいにゃ。それって、おりが先に言うセリフだったにゃん。」
ねこにゃん「フフン。早い者勝ちにゃ。じゃあ始めるか。二次元レンズ起動!異空間《無限の檻》のメモリよりガンマとデルタを表示。過去線参照ーー再構築。レギオンによる補食ーー崩壊までの耐久性観測。ーー判定結果《雑魚》w」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)判定結果《雑魚》じゃアバウト過ぎるだろ。真面目にやれよにゃ。二次元固定オフ。ガンマとデルタの次元超過運動性を解析、戦闘力より推測ーー能力値ーーver5。ーーねこにゃん、ゴメン。やっぱり雑魚にゃw」
ねこにゃん「だろ?じゃあ親玉のとこに《糸》つけて返そう。ぴょこ動かすにょさ。」
ぴょこにゃん「おっけー!《マッドサイエンティスト》の力において、超次元ナノエネルギーをガンマとデルタに流入。さあ、イレブンで刻むぞー。超弦振動をギフト!ほら動け!」
再構築されたガンマとデルタの《粒》がエネルギーの循環を始め輝き出した。
ねこにゃん「よーし。今からおまいらは道化にゃん。書き換えた記憶とサプライズを刻み込んで帰れ。《魔のつくもの全て》の力において《擬態》の悪魔を構築。サプライズは…。ぴょこ。どれくらいにする?」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)次元膜崩壊爆弾かにゃ?」
ねこにゃん「それいい!本体が怪しんだ時だにゃ。」
ぴょこにゃん「どうせ、再構築された偽物ってバレたら消されるだろ。それまでは観測させてもらうにゃん。こっちの目的は41の命と、にゃんこ世界を守るだけ。設計のバックドアとか見つけられればラッキーなんだけどにゃ。」
かみかみ「ねえ?これってケンカの準備?だったら怖いお。」
ねこにゃん「かみかみ。そんなことにゃいよ。41を救う準備にゃん。戦うのも、めんどくさいもんにゃ。おりたちはピースフルでハートフルだから。」
ぴょこにゃん「( ・`ω・´)ほお…。どの口が言ったにゃ?」
ねこにゃん「(´・ω・`; )自分っす。振り返る時間欲しいっす。自分探しの旅からやり直したいっす。」
ねこにゃん「(*≧ω≦)にー」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)にー」
エスネコ「(*≧ω≦)/にゃー」
かみかみ「は?」
ポトリ。
かみかみの手から握っていた小枝が落ちた。
かみかみ「(´・ω・`; )何だかなだおー。余計に心配なってきたお…。」
エスネコは41の《粒》を抱きしめるように回りながら小さく呟く。
ーーエスネコ《心配ないよ。ボクに任せて。》
ーーーー
その頃。ここは東京N23区。
41が人間ドックから帰ると、家の駐車場にケイのリンカーンが止まっていた。
41がカトラスを横に止めると、リンカーンの中からケイが出てきた。
ケイのシャツやパンツは切り裂かれたように数ヶ所破れている。
あちこちボロボロだ。
ーー
オレ「ケイ!は?何だそのナリは?それって…もしかして通り魔の?お前、怪我は?」
ケイ「そう。その通り。通り魔にやられたんだ。でもオレは無事だよ。これはさ…。んーと話せば長くなるから家に入れてくれ。お前の帰りを待ってたんだ。」
ーーケイの破れた服から素肌が見える。
だが傷も血も見えなかった。
ジュン「テレビでやってたとこにホントにいたんだ!そんなビリビリの服で無事って何?インタビューとか受けなかったの?」
ケイ「(´・ω・`; )わかんだろ?薬物所持してて、顔出せないじゃん。警察に関わるのもヤダから、とっとと逃げてきたんだよ。ったく。41の誕生日近いだろ。お前のプレゼント探しに、渋谷ブラブラ歩いてたら、いきなりだよ。詳しく話すから入ろうぜ。お前の好きなオカルトかもよ。」
オレ「渋谷ブラブラでケイボロボロかwわかった。入れよ。」
ジュン「(*`艸´)ひっどい。ダジャレのつもりー?」
ケイ「( ・`ω・´)コラ。ざけんなよ。怒るぞマジで。」
オレ《良かったー。ただ無事でいてくれって思っただけなんだけどな。何か胸の奥がひどく削られた感覚がする。…今日、人間ドッグ行ったばかりなのになw》
ーー
家のドアを開けるとかみかみが出迎えてた。
かみかみ「にゃい!おきゃーりー!」《ケイ!お帰り!》
ケイ「(´・ω・`; )幻聴か?かみかみにケイお帰りって聞こえた。」
オレ「今、始まった事じゃねーだろ。上がれ上がれ!早くオカルト話聞かせろよ。いやー。テレビ見てマジで焦った。心配したよー。」
ケイ「ふぅ…。何か安心。お前が言うようにホントに神様いるかもな。」
ーー
ケイから通り魔事件の出来事が話された。
ーーオレ「マジで?」
ケイ「マジだよ。服見ればわかるだろ。」
ジュン「怖っ!その人どうなったの?」
ケイ「ニコって笑って人混みに消えてったよ。」
ーー
ケイが言うには、通り魔は最初からケイを狙うように前から刃物で襲ってきたらしい。
だが、ケイの横から突然、紫と黄色に分けられた髪の超美人が現れて、刃物を振り回す犯人の手や体を、ケイの体に当たる寸前に《トン、トン》と音を立てながら軽く押さえたらしい。
そして刃物は服を切り裂くだけで、ケイの体に触れることはなかった。
そして犯人は突然耳を押さえ苦しみ出してから、周囲の人に向かって刃物を振り回し暴れ出した。
そのターゲットにされたのは、手持ちのカメラで犯行現場を撮ろうとして、逃げ遅れた野次馬たち。
それも突然現れた超美人が助け、野次馬たちも軽傷ですんだと言う。
ーー
ジュンがテレビをつけると、通り魔事件のニュースが流れていた。
ケイ「あれ?」
オレ「いねえぞ?」
テレビのニュースにはケイを助けた超美人の姿はない。
そして、インタビューに答えた人々の証言も食い違う。
「助けてくれたのはマッチョの男」
「刺される前に犯人が勝手に転んだ」
「最初は道路に向かって刃物を刺してました。耳を押さえて叫びだして…他には誰も見てません。」
共通する証言は一つだけ。
《ずーっと耳鳴りがしてた。》
ーー
オレ「ケイ。オレはいつまでも友達だからな。お前も人間ドッグ行ってこい。」
ケイ「( ・`ω・´)ホントだって言ってんだろ!こんな奇跡あるか?このシャツお気に入りだったのに!」
すると、かみかみがケイの膝に乗った。
かみかみ「(*≧ω≦)にー」《よかったにー》
ケイ「やべー。かみかみが笑顔してる。」
オレ「でもさ。このニュース見てると、その耳鳴りってヤツ聞こえるよ。ケイ。お前もヤクの神様に愛されてるんだよ、きっと。」
ケイ「もう、めんどくせえわ。いいから、何か決めようぜ。着替えも貸してくれ。」
ジュン「着替え?犯行現場から逃げてきた人、匿ってるみたい。ケイちゃん。帽子もサングラスあるよ。変装する?」
ケイ「(*≧ω≦)あははは。そういう冗談もありがてえな。さっきの事件も全部、夢みたいに感じるよ。こんなふざけた、《41んとこの日常》の方がフツーってか?」
オレ「ん?んん?」
オレ《あれ?言葉がつまる。いつもみたいに軽口が出てこない》
オレは、この世界が壊れ始めていることが薄々わかっていたみたいに感じていた。
ーーオレ《あれ?オレといっしょにいて、不思議が起こるの当たり前に楽しんでた。でもこれって、幸せを分けあって楽しんでたつもりだったけど、誰かを不幸にしてるのかな?もしかして…オレが毒を吐いてる?何か、今まで良かれと思ってやったことほど、誰かを削ってる気がしてきた…。いやいや…。でも…。ダメだ!これじゃ同じように自分も削れちゃう…。》
オレ《ケイ。無事でいてくれてありがとうな。》
かみかみ「にゃおん!」《心配にゃいよ。》
オレ「だよな。かみかみ。これがリアルだ。ケイ。ホントに無事で良かった。オレ、すぐにコークスクリュー作るよ!」
そう言いながらも、胸の奥の違和感だけは消えなかった。




