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第75話《原初の粒vs新型の神編 崩壊プロトコル②ねこ神フェス》

音の悪魔ソノリスやガーディアンたちの加護のもと、41の五感を守るための戦いが水面下で動き出す中、魂の異空間ではもう一つの重大な局面が訪れていた。

よろずやの裏の広場。にゃんこシティに暮らす数十万の「概念のねこ神たち」に発令された、シティ史上初の緊急事態宣言。

野外フェスの熱気と祝祭ムードに包まれる中、ねこにゃんとぴょこにゃんは、自分たちの正体、そしてこの世界を創り出した人間「41」の存在と、彼の魂に迫る崩壊の危機を明かすため、全員の頭脳へあるドキュメンタリー映画を投影する。

そこで映し出された、知られざる過去と残酷な真実とは――?

第75話《原初の粒vs新型の神編 崩壊プロトコル②ねこ神フェス》


ここは、にゃんこシティ。


ねこにゃんとぴょこにゃんが観測した、41の魂の過去。二柱は、にゃんこシティの住人に見せるため映画に編集した。


タイトルは『リバース』


超巨大三次元スクリーンが、よろずやの裏の広場に設置されていた。


ねこにゃんとぴょこにゃんは、ねこ神全員に思念通信で《緊急事態宣言》を発し集合を呼び掛けた。


この《概念》を司るねこの姿をした神々は、かつて、アルファ(ねこにゃん)とベータ(ぴょこにゃん)が地球に降り立った時は、自我を持たず、ゾンビのように徘徊するだけの存在であった。


だが、二柱は街を作り、《ごっこ教育》により社会性を学習させ自我を持たせた。


今や自我を持った、ねこ神たちは、にゃんこシティ生活を満喫している。


さらに己の概念に応じた個性や特性を獲得し、ただの白猫からカラードやネームドに進化。

様々な猫種に変わるモノたちも多くなってきた。


ーーただし、


ここの、ねこ神たちは《概念》を司る神々たちだが、自分たちが何者であり、どこから生まれたのかを、まだ知らない。


真実を知っているのは、ねこぴょこの二柱とかみかみ。41のアバターであるヨーニャ、アムリアだけだ。



ーー

夜の帳が降りる頃。


呼び掛けに応じて、ぞろぞろと集まったねこ神たちは数十万に及ぶ。

ここは41の見る夢の世界。

概念のねこ神たちの数は41の知る言葉の数と同じだ。


にゃんこシティ初の《緊急事態宣言》


普段、よろずやでダラダラさぼっている、ねこにゃんとぴょこにゃんに対して、親しみを込めて「役立たず」と声をかけるものもいるが、街を作り、秩序と平和のための絶対ルールを作ったモノたちへの感謝と畏怖の心を持たぬものはいない。


ーー

元々、この街は新宿を三次元コピーして作られているので、公共交通機関や道路のインフラも整備済み。


二柱が経営する雑貨屋アミューズメント《よろずや》で、車から飛行機まで自由に手に入れる事もできる。


《飛行》や《ショートカット》など、自分の概念の能力を使って友猫、知猫と共に来るものもいる。


交通不便な郊外でコミュニティを作っているモノたちへは、新幹線に変形したメロン号が迎えに行っていた。


ーー


普段ならふざけて遊んでるねこ神たちも、呼び掛けにわさわさと集まる。


近くの猫同士で心配そうに「何が起きたの?」とひそひそ話している者もいたが、ほとんどは、お祭り気分で「楽しい」に期待して集まって来ていた。


ーー


そしてーー

広場に設置された高いステージ。

そこに、ねこにゃんとぴょこにゃんが現れた。


ーー

ねこ神たち《ねこにゃーん!》


ねこ神たち《ぴょこにゃーん!》


二柱は、ここの王だが偉そうに振る舞う事はない。

ふざけて呆れられて笑われる。


《にゃんこライフ》の生きてるお手本。

二柱は大歓声で迎えられた。


ーー

二柱の姿は巨大スクリーンにも映し出されている。


会場の空には七色のレーザービームが飛び交い、上空に巨大なリングライトが虹色に回転する。まるでフェスだ。


国歌とも言える《FUNFUN In The Night》のインストゥルメンタルが流れ、フェス音響に合わせて、広場の足元がふかふかの雲に変わっていった。


ーー


ねこにゃん「(*≧∀≦)みんなー!楽しく遊んでるのに集まってもらってありがとにゃー!」


そして、ぴょこにゃんも大きな声で叫ぶ。


ぴょこにゃん「(*≧∀≦)にゃんこたちー!にゃんこライフ楽しんでるかー!」


ねこ神たち

《ウォーーー!》


《ねこにゃん!大好きー!》


《ぴょこにゃん、こっち向いてー!》


鳴り響く大歓声。

コール&レスポンス。大きな歓声が響き渡る。


タオルを回すねこや、ペンライトを振るねこ。


隣同士、自己紹介し合うねこ。

違法のマタタビを持ち込み、ラリるねこ。


にゃんこシティ初めての大規模集会。


見渡す限り、ねこだらけ。

にゃんこまみれの大集会


これでテンション上がらないわけがない。


ーー


ねこにゃん「(*≧ω≦)そうこなくちゃにゃー!」


ぴょこにゃん「今日は、おりたちにも、みんなにとっても大事な話があるにょさ。今まで話してなかったこと、そして、これから起きようとしてることについて伝えなきゃならにゃい。」


ぴょこにゃんの言葉にザワザワする、ねこ神たち。

《え?》


《大事な話?》


《話してなかったことって何?》


最初のコールとは一変、

ぴょこにゃんの声に真剣さが入る。


ザワザワザワザワ…。


《話してなかったって何だよ?いたずら?》


《何の話?》


ザワザワザワザワ…。


《フェスじゃないの?》


《ぴょこにゃん、マジっぽい?》


会場がざわめきたつ。


ねこにゃん「言葉の説明だけだと長くなるし、わかりづらいかもしれないからにゃ。ちゃんと理解できるように、みんなのアタマの中にも、直接イメージを送るにゃ。」


ぴょこにゃん「そのうえでだ。これから流す映画を観て欲しいにゃん。これは本当は何千年、いや何万年かもしれない物語を編集したもの。いや…物語じゃないな。ドキュメンタリーにゃ。みんなに思考加速施して観てもらうから、上映時間は二時間くらいにまとめてある。」


ねこにゃん「まず、最初に伝えとく。この世界は、41という人間の見る夢の世界だと言うこと。そして、この世界に住んでるみんなは、41の知識や概念が形となったものにゃん。」


ぴょこにゃん「そして、おりたちは別の世界から来た。エスネコを見た事あるやつも中にはいるだろ?あれは、ねこにゃんと、おりが合体して変身した姿だけどにゃ。元々、おりたちはアイツを追っかけて地球に来たにょさ。そして、この世界にたどり着いた。そこはゾンビみたいな、ねこがウロウロしてる世界だった。昔のみんなの事にゃん。」


ねこにゃん「おりたちも、元々ねこ好きだったから、ゾンビだろうが別にいいんだけどにゃ。何でねこなんだろう?って思ったにゃ。そして今、その謎も解けた。41という人間が《ねこは愛しい。ねこは尊い》と思ってたからにゃ。それが反映して、みんなは、ねこの姿になったんにゃ。」


ザワザワザワザワ…


《何?何言ってるんだ?》


《外の世界?外ってどこ?宇宙人?》


《自分たちが夢の住人?》


《自分は人の概念?》


《41って誰なの?》


ザワザワザワザワ…。


再び会場がざわめきたつ。


ここの、概念を司るねこ神たちは、自分たちの自我は獲得したが、自分たちの起源など考えたこともない。


生まれた理由さえわからないのだ。


これは、二柱が地球に降り立った時からの謎。


今日、それが、にゃんこたち全員に明かされる。


ーー


ぴょこにゃん「説明じゃわかりづらいよにゃ。じゃあ、まず、おりたちがここに来て、にゃんこシティを作ったり、エスネコを見つけたり、人の世界に干渉したりした、始まりから今日までのメモリを共有するぞ。最速時短で行くからにゃ。痛くも何ともないにゃん。怖がる必要はにゃいよ。じゃあ、いくぞー!《マッドサイエンティスト》の力において超次元圧縮メモリを構築。散らばれ!」


《キュン!》


ぴょこにゃんの構築宣言とともに、ねこ神たちの前に小さな銀色の粒が現れる。

ナノサイズの圧縮メモリは肉眼では一瞬光ったようにしか見えない。


ねこにゃん「よしきた。《魔のつくもの全て》の力において《記憶の悪魔》を構築。ねこ神たちに圧縮メモリを刻み込め!」


ーー《ピンッ》


銀色の粒は見えない指で弾かれたように、

ねこ神たちのアタマに突き刺さった。


一瞬で、ねこ神たちのアタマに、二柱の記憶がまるで体験してきたように共有される。


ーーそれは、神秘の世界から始まる物語。


無限の異空間で、ふざけあって遊び踊るアルファとベータという《粒》。


突然の分裂ーーエスネコという新たな《粒》の誕生。


生まれたばかりのエスネコを、異形のモンスター『ワーム・オブ・レギオン』に変身したアルファとベータが蹴り飛ばす様子。


次元を突破しながら地球に飛んでいくエスネコ。


エスネコの衝突で、くるんとめくりあげられた地球


エスネコの消失により、綻びる異空間を縫うアルファとベータ。


住まいである異空間に留守番システム《秩序》を残して、エスネコ探しに地球に向かう二柱。


地球に降り立つアルファとベータ。

そこは、ゾンビのようなねこが徘徊する世界だった。


二柱は環境に合わせたオリジナルの《概念》と三次元ねこボディを構築。


アルファは《ねこにゃん》と自分の名前をつけ、

ベータは《ぴょこにゃん》とする。


周囲は、徘徊するだけのゾンビねこたち。


《恋》の概念のねこ神、アムリアとの出会い。


ゾンビねこたちに自我を持たせる環境作りのため、新宿を中心とした東京を三次元コピーし、にゃんこシティを建設。


ーーよろずや開業。


《ごっこ教育》ーー。


かみかみとの出会い。


ニルヴァーナへの旅ーー


エスネコの封印解除ーー合体ーー変身。


壊れた留守番システム《虚無》の襲来。


かみかみとエスネコで撃破される《虚無》


そして、

《ヤク》の概念、ヨーニャとの出会い


ーー謎の依頼。


眠りを必要としない世界で半年休眠するヨーニャの特殊性から、ヨーニャが《誰か》のアバターであることを知る。


ヨーニャの本体に侵入し夢を観測するシーン。

そこで本体が《41》というジャンキーの若者と知る。


41の夢の異質性を知り、

41のアタマの中に異空間を構築し観測。


さらに41を中心とした人間を知り、

《人》を学習する二柱。


そして41のトラブルから、

人の救済と祝福に干渉。


41の魂の形が自分たちと似た《粒》であることの発見。


エスネコから知らされる41の危機ー

ー41の魂を解析。


41を狙ってきたガンマとデルタと名乗る粒の襲来。

ver5との戦闘ーー捕食。


概念のねこ神たちは、

ねこぴょこ視点で一連の出来事をVRのように体験した。



ーー


ねこにゃん「あー。みんなアタマの中に入ったかにゃ?今、見せた通り、おりとぴょこの正体は他の世界からやって来た、ちっちゃい粒にゃん。粒だけど、元々ねこ好きにゃんだよ。ねこねこしたかったにょさ。」


ぴょこにゃん「地球に降り立った時、みんなが、ねこだったから嬉しくてにゃ。みんなに合わせて、ねこボディ作ったにゃ。まあ、細かい事は気にするな。質問。記者会見は後でアムリアとヨーニャが受けるにゃん」


アムリア「( ・`ω・´)コラ。偽ねこ。自分たちでやんなさいよー。」


ヨーニャ「(´・ω・`; )さっき起きたばっかりなんだけど…。」


ねこにゃん「だって、おりたち、話すのうまくないにゃん。」


ぴょこにゃん「途中でふざけちゃうから怒られるにゃん。」


かみかみ「( ・`д・´)じゃあ、代わりにボクから話そう。ボクの活躍をびしーっと解説するおー。」


小枝を手にした、かみかみが前に出る。


ねこにゃん「(´・ω・`; )かみかみー。おまいが絡むと余計めんどくさくなるにゃんよ。」


ぴょこにゃん「(*≧ω≦)かみかみ。いい子にしてにゃよ。映画始まるにゃん。ポップコーン食べるか?」


アムリア「じゃあアタシ。キャラメルポップコーンがいい。」


ヨーニャ「何が粒だよ。お前らの正体なんて、ねこの革かぶった、ふざけシステム生命体だろ。オレ、二度寝してきていい?」


そんな、いつものふざけあいをしてる中、会場から小さな声が上がった。


それは、ひとりのつぶやき。

それが、だんだんと広まっていく。


…《ズルい》

…《何だよアイツらだけ…》

…《面白っ!》…


《アタシも行きたい》


《なあ、ヒューマンボディって買えるのか?…》


ーー

ねこにゃん「はあ?よく聞こえないにゃ?みんな何ボソボソ喋ってるにゃ?」


すると、会場から大きくなった声が飛ぶ。


ぴょんぴょんと跳ねて手を上げてるのは《ギャル》の概念のメスねこ。


ギャル「アムリアだけズルい!アタシも下に下りてDISCO行きたーい!」


手を突き上げてるねこもいる。これは、以前アムリアの握手会で、揉め事を起こした《暴力》の概念のねこ。


暴力「マッドピエロの騒ぎの時に、何で呼んでくれなかったんだよ!正義の一撃くれてやったのに!」


目をキラキラさせて両手を握りしめてるメスねこはうっとりした顔で呟いてる。

《ファンタジー》の概念のねこだ。


ファンタジー「ステキ!アタシも参加できませんか!」


泣きながらメモを取ってるのは《片思い》の概念のねこ。


片思い「エミちゃん。辛かったよね。でも勇気もらったからね。覚えとこ。メモメモ。」


「秩序、ビミョー!カオス、サイコー!」


《秩序》のねこと《混沌》のねこが意気投合して大笑いしている


他にもワーワー歓声が上がっているが、否定的な言葉は見つからない。


メモリを共有した全員がワクワクしている。


初めて聞く不思議なお伽噺の絵本を、読み聞かされた子供たちのようだ。


ーー


ぴょこにゃん「(*≧ω≦)このリアクション。さすが41の概念たちにゃ。」


ねこにゃん「(*≧ω≦)これなら安心だにゃ。計画もうまくいくにゃろ。」


アムリア「( ・`ω・´)緊急事態宣言どこ行ったのよ?これじゃフェスじゃない。」


ヨーニャ「( ;∀;)アタマが追いつかないー。」


ーー


《カーン!》


硬質な金属音。


ねこにゃんのハンマーと、ぴょこにゃんのスプーンが打ち合わされた。


ねこにゃん「みんな、ちょっと待て。静粛にするにょさ。」


ぴょこにゃん「話はここからにゃん。みんな楽しいと思って見てくれてありがとにゃ。おりたちも、エスネコ追って地球に来てから楽しい事だらけにゃ。」


ねこにゃん「今から、見るのが本番。それを見てもらった上で、みんなの力が必要になるにゃん。最初に言っとく。この世界を作ったのは41にゃん。そして41が死ねば、この世界も消える。その41の魂が今、崩壊の危機にさらされてるにゃん。おりたちは、いろんな人間にコンタクトしたけど、こんな特殊なヤツはいない。特殊というより《異質》にゃ。人間たちの魂である《コア》は、ここにいる《概念》に似てる。だけど41の《コア》は、おりと、ぴょこと同じような《粒》の形だった。おりたちは、その謎を解析したにょさ。」


ぴょこにゃん「いいか。みんなは今から自分たちを創った創造主の物語を見る。それが41にゃん。だが41は神の真似事をしてるヤツに作られた実験体だったにゃ。41はそいつらの計画にのせられた入れ替わりのきく、たくさんの実験体の一人だった。でもにゃ。おりたちが登場してから話は変わった。さっき、みんなが見た物語は、おそらく41が書き直した物語にゃん。」


ねこにゃん「じゃあ、41の《粒》の物語を今から上映するぞ。そして、みんなも物語の登場人物で、41はみんなに憧れてる。それは、このにゃんこ世界が41の見る一番好きな夢だからにゃ。変な話だろ?おりや、ぴょこにゃんも、いつの間にか41が無自覚に作った物語にのせられてたにゃん。見たらわかる。」


ぴょこにゃん「おりたちは、41の過去を見て、アタマにきて泣いたにゃ。ハンカチ用意しときにゃよ。」


ーー



41の現実世界と過去の輪廻。

ーー《リバース》の上映会が静かに始まった。


《リバース》の映像は色褪せ綻びていく虹色の空間から始まった。


そこには崩壊していく、ひとつの《粒》の姿があった。


《ハラリ…》


《ホロリ…》


虹色の糸がほどけ、霧のように散りながら消えていく…。


ーーフェスの熱が一気に冷める。


ざわめきはピタリと止まり、

数十万のねこ神たちが息を呑んだ。


ーー


小さく呟く声が聞こえる。


《そうか…。こんなときにわかるなんて…》


《オレには届かなかった…》


《次のオレ。…次こそは頼む……》


《願いは先じゃない…。も、もっと前に…根元的な…》


《忘れるな。…消える前に…この歪な魂に刻め…。つ、対を…つ…く…》


ーー誰に託したメッセージなのか。


粒は崩壊し、祈りのような声も、色褪せた欠片となって散っていった。


絶望の余韻が残る空間は真っ暗になり色を閉じた。




ーー

そして、場面が変わる。


会場のねこ神たちが見てるのは41の魂の《粒》


それはエスネコが構築した虹色の異空間に封印されていた。


封印の蓋の下で、ハラハラと白い糸屑が剥がれ落ちていく粒の姿が見える。


その粒を守るように真紅の粒が回っている。

エスネコの粒だ。


すでに崩れだしている41の魂にソウルダイブする二柱。


ねこにゃんは夢の悪魔ラミーノを構築。

41の明晰夢へ向かわせる。


ねこにゃんは、さらに、ぴょこにゃんを補佐させるために、色の悪魔クロノアと自分のクローンver10を構築する。


ぴょこにゃんが《マッドサイエンティスト》の能力で41の粒の設計工程を《リバースプレイバック(逆再生)》し観測を始めた。


41の粒の魂は徐々に崩壊前の姿に戻っていく。


それに応じて粒の記憶ーー41の人生を観測。


さらに41の粒は、人に産み出される前の世界に向かっていく。


41の魂は、人のように肉体に魂が宿るのではなかった。


ーー41の《粒》は高次元空間を進んでいく。


粒は螺旋を描きながら何層のスクリーンを突き破る。


そして最後に無限を映し出す鏡面のスクリーンを越えていくーー。


ーー


その世界に入った41の魂の粒は、ねこぴょこたちと似た《十一次元構造体》の形を模していた。


ーー《リバースプレイバック》

逆再生はまだ続く。


まだ自我を持たない41の魂の記憶ーー。


それは絶対的な拒否と痛み。


強い力で圧縮され目覚める感覚。


魂の一部を剥ぎ取られていく感覚。


そのたびに魂はねじ曲げられ、絡み、もつれる。


ーーそして解放。


幾度も組まれ壊された、

ジグソーパズルのような意識の断片。


既視感ーー

繰り返された記憶が見せる景色。


誰かに託された祈りも全て、

泡のように洗い流されていく。


ーー…


機械のような冷徹な男の声が低く響く。


ーーガンマ「…よし。これで新品同様だ。過去ノイズ検出なし。シリアルナンバー《198X41》リサイクル完了。ロールアウトするぞ」ーーー



ーーーーデルタ「また失敗だ。…最後に残った実験体。お前を使うのもこれで最後になるのかな。もう覚醒など望んでおらんよ。」


ガンマ「《198X41》。届かぬ願いが叶ったときに、お前は滅ぶ。何と美しい絶望設計だ。今度こそ、それを見せてみろ。クククク。」


デルタ「ワレらを楽しませておくれ。さあ、行ってきなさい。可愛いオモチャよ。」


ガンマ「デルタ。リサイクル品など、どうでも良い。さあ、新しい《魂》をロールアウトさせよう。」


デルタ「わかった。」


ーー

再び、場面は変わる。


現実世界では1000年の時がたっていた。


ーー

ここは超次元空間。


光はあるが太陽のない青空。

透明な柱の上に立った神殿が聳え立つ。


天と地が曖昧な白いテラスで、二人の紳士が向き合っている。


テラスの下には、崩れた多次元の層が幾重にも重なり、断面がゆっくり回転している


テーブルの上にはコーヒーの入った二客のカップ。


二人はそれを細い指にかけ、コーヒーを味わっている。


そしてーー


二人の間には小さな虹色の《粒》が浮かんでいた。


ーー


ガンマ「まただ。…リサイクルできたのは、またこの粒だけか。デルタ。次のロットも残らなかったのか?」


デルタ「そうだ。198Xのロットは41以外残ってない。《199A00》から《202X99》までのロットも全滅だ。どれもリサイクルできん。」


ガンマ「そうか…。ククク。残念な事だ。新しいロットには、少しずつ手を加えverアップしてるのだがな。ところで、《198X41》のリサイクルは何回目になる?」


デルタ「誕生させた時代の平均寿命にもよるが、次で13回目になる…。このロットは初期のプロトタイプ。旧型だ。」


ガンマ「…そうか。だがこいつはすでに壊れてるのではないか?1000年たつのに起動せぬ。この粒はとっくにリサイクルが完了してるのだがな。…目覚めを拒否してるかのようだ。」


デルタ「フフフ…。まあ、よいではないか。壊れたオモチャに愛着を持つのも悪くない。人らしさとは、こういうものなのだろ?」


ガンマ「そうだな。《欠陥品の完成形》とでも言おうか。覚醒どころか、願いは届かぬまま、もがいて生き抜き、滅ぶ。そして欠片となってワレらの元に戻り、自己修復しリサイクルを繰り返す粒。これでは《人は神になれるのか》の答えも出せぬ。リサイクルだけが取り柄の凡庸な生きてるオモチャだ。」


デルタ「目覚めぬなら。刺激してみてはどうだ?時間を操作して1000年を100年に圧縮してみるか。」


ガンマ「耐久性だけは高いからな。どうせ壊れてるオモチャだ。圧縮して壊れてもかまわん。やってみよう。」


デルタ「では、まずいつもの通り、次元構造を剥がして行こうか。」


ガンマ「待て。圧縮するのなら十一次元構造体のまま圧縮してみよう。そこから五次元まで剥がした方が面白い。」


デルタ「十一次元構造体といってもベースは《人の魂》だぞ。無理矢理、捻らせて粒の形にしただけだ。圧縮に耐えられず壊れるかもしれぬぞ。…いや、すでに壊れてるのだったな。これで目覚めぬのなら、廃棄すればよい。こいつの耐久性は次世代モデルにフィードバックさせよう。」


ガンマ「では、やるぞ。二次元レンズ起動。時間圧縮操作。ターゲットをシリアルナンバー《198X41》に。」


デルタ「フォーカス!フフ…起きてみせろ。そしてワレらを楽しませてくれ。」


《ギリギリ、ギリギリ…》


41の魂は剥がされ捻られていく。


そして魂は歪な粒の形に変わっていった。


ーーーー



また場面は変わる。


音もなく、画面が優しい光に溶けていく。


そして映像は、無慈悲な観測者たちの世界から、

ひとりの小さな子供の世界へ滑り落ちていった。


ーー


瓦屋根の古びた一軒家。


小さな庭には紫陽花が彩り、

梅の木や薔薇の木が植えてある。


軒先で足をブラブラと揺らしながら座っている小さな男の子。


空の大きな雲を見上げたり、花を咲かせた薔薇に視線を移しながら背中越しの誰かに話しかける。


41「…ねえ、お母さん。何でボクにはお父さんがいないの?…お仕事?」



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