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第70話《原初の粒vs新型の神編 絶望設計③封じられた追憶》

不穏な明晰夢の気配を察知し、41の意識へと急行する「ねこにゃん」。

しかし、その先で41が囚われていたのは、異様な気配を放つ見知らぬ「和室」だった。

目と口を縫い合わされた干し首が置かれた板の間。広大で不気味な屋敷の中、リモコンのスイッチ一つで照明が狂ったように暴走し、かつて封じられたはずの奥の部屋から、ついに漆黒の影が牙をむく。

圧倒的な恐怖の前に追い詰められる41。

すべてが飲み込まれそうになったその瞬間、突如として空間が切り裂かれる。

謎の影の正体とは、そして現れた銀髪の少女「ラミーノ」の目的とは——?

第70話《原初の粒vs新型の神編 絶望設計③封じられた追憶》


オレは物心ついた頃から明晰夢を見る。


それはいつも夢の住処から始まるんだ。


・豪奢な搭の中の、隠れ家のような部屋。


・特殊な乗り換えをしないと自室にたどり着けないエレベーターが付いてるホテル。


・神社境内の大きな石碑の裏にある一軒家。ここは玄関が二つある。


・玄関がそのまま広いリビングルームになっていて、左右に果てしなく部屋が続くタワーマンション。


明晰夢とはっきり認識できるまで、そんなに時間はかからなかったと思う。


「この夢、見たことがある」から始まり「この部屋知ってる。ここに来たことがある」という程度のモノだった。


そのうちハッキリと部屋で目覚めるところから始まるようになった。


見慣れた「住処」から始まるので「これは夢だ」と安心できる。


そのうちに外出して街並みを探索できるようになった。飲食店で好きなものを食べたり、友達に会ったり。


まるで普通の生活だ。


今、生きている現実が夢なのじゃないかと勘違いするほど、五感は働く。


ーーひとつ例外があったな。


それは、いきなり新宿に似た街に放り出されていた夢。


オレは気づいたら裸足で歩いていた。


ヤクのやりすぎで死んじゃってさ。

おまけに裸足だし幽霊になっちゃったと思った。


あれを明晰夢と判断するまで心細かったなー。


ーーーー


今、オレは見知らぬ和室で目が覚めた。


布団から起き上がり回りを見渡す。


印象的なのは板の間の飾り棚。

目と口を縫われた二つの干し首が置かれている。


ーー


オレ「…ここは?」


オレ《オレはMちゃんちから帰って、ジュンにセッションを録音したカセットテープ渡して…その後…。覚えてない。…寝たのか。》


だとしたら…。ーーこれは明晰夢。


オレ《いや。…この部屋、覚えてるぞ》


ーー


オレ「(´・ω・`; )はー。いきなりこれかよ。寝た気しねーなー。録音した曲聞きながら気持ちよく落ちてったのに。つーか、寝ながら起きてるって何なんだよー。」オレ《(*≧ω≦)まあ、何とかなるでしょ。じゃあ新しい明晰夢記念だ。気分転換に一発、狼煙をあげよう》


オレ「( ̄^ ̄)それでは一句詠もうじゃないか。《一人言、誰も返さぬ明晰夢》」


シーンーー


オレ「( ;∀;)…誰も突っ込んでくれないー。ん?余計な事言ったかな?…《返さぬ》が《帰さぬ》だったらヤバイな。オレ、たまに芯を食う事言っちゃうらしいから。」


《ギュー》


オレは自分のほっぺをつねる。


オレ「( ;∀;)痛てえ。やっぱり夢だけど夢じゃない。これは明晰夢だ。」


オレ《でも、この部屋見覚えあるんだよなー。とりあえず、あの干し首怖がるのはやめとこう。あれ怖がると悪夢に変わる予感がする》


ーーオレは明晰夢を見る時にルールを作っている。経験則から学んだ事だ。


・起きるまで見ることーーこれは夢の中で寝直すとループするから。


《今のは夢だったんだって起きると、同じ部屋で起きる。そっから悪夢に変わる》


・恐怖を跳ね返すことーーこれは、恐怖が恐怖を呼ぶから。


これも、いつからか《視線》を感じるようになってからかな。

怖がらせようと《恐怖》に狙われてる気がして…。


ドラゴンボール流で悟空みたいに気を発すると、視線は薄くなる。


ーー


オレ「さーてと。じゃあ始めようかな。おーい!誰かいないかー?」


オレは大きな声で呼び掛けた。


ーー


《シーン…》


オレ《無人?いや、油断しないようにしてこう》


オレは立ち上がり襖に向かう。


この和室は板の間のある場所以外、襖で仕切られている。


オレ「オレは板の間の方に足を向けて寝てた。作りからすると、左右に廊下。頭の方は襖で仕切られた部屋が続いているはずだ。」


ーー


オレ《…はず?》

《何でわかるんだ?知ってるからか?》

《まあ、いい。動けばわかるだろ》


《スー。スー。スー。》


オレは三方の襖を開いた。


オレ「ほらね。どっちにも廊下。そして隣にここより小さい和室だ。この先は襖取っちゃえば大広間になるんだろうね。こっちの廊下は庭か。」


オレは庭側の廊下に出る。

ーー幅も広い。

廊下もさらにL字になって続いている。

まるで赤穂浪士が斬りかかったような場所だ。


オレ《広いなー。殿中でござるーって感じか。天気は晴れ。ここってお屋敷じゃん。この広い日本庭園…。ここを探検した事あるぞ…。どこまで続いてるのか、先まで見たくて迷子になりそうになった…。途中にあった屋根のある場所に戻れなくて…。方向もわからなくなって、やっと板張りの壁を見つけて…。壁つたいに戻ってこれた…》


オレ「…これは記憶?いつのだ?オレの小さい頃?何歳の時だ?」


オレ《…オレはガキの頃、母親の実家や親戚の家にいたよな。…そこから今の家をあてがわれて…。あれ?今の家にお手伝いさんがいたよな?母親は?あれ?》


オレ「…夢の中だから思い出しきれないのか?オレはいつまで母親といた?」


ーー


オレ《(*≧ω≦)考えちゃダメ!これは悪夢スイッチの罠っぽい。まあ、いいや。起きたら思い出すだろ。次行ってみよう!》


ーー


今度は屋敷側の廊下に出た。


ここも長い廊下が左右に広がっている。


ーー薄暗い。


広すぎて外の光は入ってきてない。


オレ《暗いなー。こっちはホラー始まりそうな舞台だ。今のオレは記憶を奪われた男。せめてダークファンダジーにしてほしいよなー。廊下のスイッチどこだ?》


壁を見るが近くにスイッチは見当たらない。


オレ「あ、そうか。寝てた部屋の明かりつければいいんだ。オレって天才!さすが夢の中の主人公!」


オレは和室の照明をつけようとした。


吊り下げタイプの照明器具。


オレ「あれ?引っ張る紐ついてないじゃん。…壁にもスイッチがない。廊下側にも…ない。どうやって点けるんだこれ?」


オレ《あれは?…枕元に置いてあるのってリモコン?》


オレは白いリモコンを手に取る。


オレ「ONとOFF…。外国製?こんな昔の照明器具に?」


オレ「リモコンで電気つけられる照明器具なんて売ってたっけ?それとも後付け?あれば便利だなと思ってはいたけどさー。」


オレ《まあ、夢だしな。》


オレはリモコンのスイッチをONにした。


ーー


《ガッチャガッチャ!ガチャガチャ!》


吊り下げの照明器具が狂ったように踊り出す。


オレ「地震?揺れてないぞ?」


ガシャン!パリン!天井に打ち付けられた照明器具が破損していく。


《ーーユッサ、ユサユサユサ…。》


揺れは収まったが照明器具は巨大地震をくらったかのように破損。

残骸が布団や畳の上に散らばっている。


オレ「(*≧ω≦)…。えーとー。これはラッキーでいいのかな?だって布団に寝てる時にリモコンつけてたら破片落ちてきただろうし…。」


オレ《笑うしかねえ。「偶然ゲーム」が始まってる。こんなとこに、いつまでも閉じ込められててたまるか》


オレは薄暗い廊下に出た。


右前に引き戸の扉がある。


《ガラガラガラガラ》


オレ「ここはトイレか。タイル張りの水色の床。ビニールの緑色のスリッパが三つ。男子用の便器が二つも並んでる。個室は?和式と洋式の二つ。大人数住んでる?いや、大人数が集まれるようにか…。」


さらに先を行く。左手にドア。


《ガチャ。》


オレ「ここは応接間か。赤で統一された豪奢な洋室。広いなー。長い大理石のテーブル。ひーふーみー…。左右に10人分の椅子。奧のシングルソファが主人の席か。出窓に高そうな装飾品が飾ってある。アールデコ調の家具。漆喰の壁。天井にシャンデリアか。建物は、ちょっと古いけどセンスいいな。レースのカーテンの窓から光が入ってきてる。この部屋はこれでよしと。」


オレ《さっきのリモコンみたいにトラップありそうだからなー。むやみにあちこち触るのはやめとこう》


応接間の隣には広い玄関があった。

引き戸の入り口。

ここにも高そうな調度品が飾られている。


オレは外を見ようと玄関に降りた。


オレ《あれ?何だこれ?》


玄関の入り口の足元。

左右に10センチ四方の赤い光がついている。


オレ《もしかして赤外線センサー?》


オレはいったん玄関から戻り、玄関の正面の部屋を見た。入るとそこは三方がガラス張り。


周囲を見渡せるようになっている。


Pタイルの白い床。

コの字形に配置されたいくつもの机と椅子。

それぞれダイヤル式の電話が置かれている。


正面と裏側に出入り口。

裏側は庭の廊下につながっていた。


オレ《何だここ?事務室?警備室かな?》《あれ?…これだけ白い受話器だ。この電話だけダイヤルの穴がついてないぞ。》


その電話の前には《警察》と書かれた札が置かれていた。


オレ《…ここも知ってる。たくさんの電話が置いてあるのが珍しくて、入ると…たくさんの大人たちがいて…。そうだ。警察用の受話器いじろうとして叱られたんだ…》


オレ《記憶がある…。玄関前の廊下を左に行くと、二階に行く階段があって、上からオレの名前を呼んでる人が立ってた…。光を背にしたシルエット…。知ってる人…。懐かしい気がする。呼んでたの誰だ…?》


オレ《…こっちはやめとこう。だいたいわかる気がする。確か事務室の横の通路の先は大きいリビングで台所があった。何か調理してるような生活感のある匂いもする。ならロープレ的にリビングも玄関も後でいい。反対側の薄暗い廊下の奥に…。あの部屋が…。》


オレ《あの部屋?あの部屋って何だっけ?でも、そこに呼ばれてるような…。まるでダンジョン攻略だな。この人の気配の無さが不気味だ。でも、この夢で一番確認しなきゃいけない場所がある気がする。じゃないと、終わらないぞ、この夢》


ーー


オレは薄暗い廊下をさらに暗い方向へ歩いていく。


根拠は何もない。


断片的な記憶は霞の中。


必要な記憶が欠如した明晰夢の中をオレはすすむ。


オレ《左側は和室が続いてる。この屋敷は回り廊下だ。この先、この先にドアが…あった!》


オレ「間違いないな。開けるのはこのドアだ。何の部屋だっけ?開けるのちょっと怖いな。でも…》


《ガチャ》


ドアを手前に開く。


ーーそこは大きな和室だった。


12畳?もっとあるぞ…。


目を引くのは中央に置かれたベッド。


マットを支えてるのは飾り彫りを施した四脚の足。

フレームもそうだ。…高そう。アンティークかな、


オレ《でかっ。クイーンサイズ?和室にベッド…。いや、こんな部屋覚えてない…。》


ベッドの頭側、背もたれに当たるのだろうか。

目を引く奇妙な枕が置いてある。


オレ《扇形…三つのブロックを組み合わせてるのか。中央に赤、左右が金色…。これ何?これは趣味悪いよな》


その時、ベッドの奥の襖に小さな隙間が開いてるのを見つけた。


オレ《あそこは布団入れるとこかな?このベッド。シーツ敷いてあるけど枕だけってのもおかしいよな…。》


オレは部屋の奧に進んでいった。


収納の前に立つ。


オレ《この隙間。いかにも開けてって感じ。絶対、罠だよなー。》


《スー》


少し開いた襖の影から二本の白い指が出てきた。


それもピースサインしている。

さらにヒラヒラと指を振る。


オレ《わっ!ビックリしたー!…したけどさー…》


オレ「とりゃ!」


《スバーン!》


オレは収納の襖を一気に開いた。


ーー何もない…。


空っぽだ。

誰もいない。

さっきの指は?


ーーいや、何かいる!


オレ「やっべ!」


襖から重く黒い何かが吐き出されてきた。

明らかにオレを狙ってる。


オレは背を向け走り出し、ドアの外に出る。


《バタン!》


ドアを閉め押さえるが、向こう側から強い力が押し寄せてくる。


こんなときは、悪夢対策。

必殺ドラゴンボール流だろ。


オレはカラダの真ん中に気を集中するイメージを持ち、一気に吐き出した。


「( ・`ω・´)はーっ!」


ーー《ぐうーぅ》


だが、押し返せたのは一瞬だけ。

さらに強い力でドアを開こうとしている。


押し負けているドアは10センチほど開かれている。


オレ《(´・ω・`; )あれ?いつもなら…ちょっとマズイかも》


オレ「( ・`ω・´)ぬおー!」


オレは全力で押し返すが、向こう側の圧力に敵わない。


オレは徐々に開かれていく隙間を見た。


ーー黒い煙が暴れてる。


漆黒の火砕流みたい。


そしてーー


オレ《何だ…ドアの向こう…。黒い大男がオレを見下ろしてる。赤い目…。フランケンシュタイン?こりゃヤバイ!怖がるなよオレ!ドア離して明るいとこまで逃げ切れるか?明るさ関係ないとしたら?》


オレ《そんときは、そんときだ!》


オレ《ダーッシュ!》


《ダダダダダダダダ!》


全力疾走で目覚めた和室に飛び込んだ。


黒い気配は廊下を充満し、一気に押し寄せてくる。


《ブツブツブツブツ…。》


オレ《何の音だ?》


音の方向を見ると飾り棚の上の干し首たちが縫われている目と口を薄く開き、何かを呟くように声を出していた。


オレ《( ;∀;)これは大ピンチかな…。怖がっちゃダメ。でも怖いよー…。》


ーー


その時ーー


《ザシュ!ザシュザシュ!》


厚い布を切り裂くような音?


オレ《いや、もっと複雑だ。DJのスクラッチみたいな音だったぞ》


オレ「…気配が消えた?」


ーー


ラミーノ「41様。ご無事ですか?遅くなりまして申し訳ございません。41様の思考加速に追いつくのに時間がかかりました。マスターも向かっております。」


オレの前には、いつの間にか、長い銀髪、銀色の瞳の少女が、かしづいていた。


透き通る雪のように白い肌。

シルバーのドレス。

まるで神話の世界からやってきたような出で立ちだ、


オレ「だれ?」


ラミーノ「私は夢の悪魔。ラミーノ・モルフェでございます。」


オレ「ラミーノ?悪魔って言った?」


ラミーノ「はい。マスターに構築されました。」


オレ「マスターって?」


ラミーノ「すみません。それはまだ情報制限がかかってるのでお教えできません。でも、マスターは41様の味方です。ご安心下さい。」


オレ「この夢ってさ。ホラーからダークファンダジーに変わったって事でいいのかな?」


ラミーノ「(*≧ω≦)はい。おっしゃる通りです。」


ーーラミーノは立ち上がり、ウィンクしながら答えた。


ドレスに見えてたのは羽衣のようなマント。

ミニスカートにブーツ。


確かに悪魔だ。


だってめちゃくちゃキュートだもん。

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