《第67話 原初の粒vs新型の神編 祝宴の夜ーー到達者》
横浜・本牧の夜。
41は少年ジャンプとコークスクリューを片手に、日本屈指の天才ロックベーシストである「Mちゃん」の部屋を訪れていた。
音楽の道標であり、唯一無二の理解者でもあるMちゃん。
そして彼の愛娘・ミーサちゃん、さらに「かみかみ」も交えたハートフルでピースフルなセッションの夜が幕を開ける。
持参したデモテープ『FUN FUN In The Night』をみんなで歌い、演奏の渦中で41はかつてないほどの至福と自己の領域に到達する。
音に溶け込み、愛と奇跡が共鳴する中、それはジャンキーとしての、そしてクリエイターとしての「到達点」だった。
しかし、その最高潮の歓喜の裏で、41の胸を再びかすめる謎の鼓動が鳴った…。
《第67話 原初の粒vs新型の神編 祝宴の夜ーー到達者》
ここは 横浜・本牧。
今日は土曜日の夜。
21時を回ったところだ。
ここも本牧ベースがなくなってから、ずいぶん景色が変わってきたな。
初めて横浜に来たときは、まだアメリカに占領された名残があった。
本牧ベースのゲートの右側に「◯◯のブルース発祥の店」って小さな看板出てたっけ。
今の東京より昭和レトロ残ってていいなって思った。
ーー
オレは今、少年ジャンプとコークスクリューを手土産に、Mちゃんの家に遊びに来ている。
Mちゃんは、日本でも屈指のプロベーシストだ。
音楽雑誌の「好きなベーシスト」ランキングでは、必ず上位に名が挙がる常連。
高校生の時にプロデビュー。
まだ少年のあどけなさを残した顔。
だけど、そのプレイは斬新。当時の大人たちを軽々と超えていった。
アメリカ人とのハーフ。
整った顔立ちに、185を超える細身の長身。
天才ロックベーシストでありながら、その美しい容姿で女性ファンからはアイドルのように慕われていた。
一言で言えば、「何でもアリかよ、こんにゃろーっ」て人だ。
Mちゃんとは、共通の知人の紹介で知り合った。
オレより一回り以上年上なのに、いつも対等に接してくれるんだ。
道標の人。
羅針盤。
そして師匠と呼ぶなら音楽じゃない。
オレは仲間にちょくちょく、天才的なバカ呼ばわりされるが、この人には敵わないだろ。
オレの遥か斜め上を行く強者だ。
オレが「天才的なバカ。そんなあなたにワタシもなりたい」と願えば「41は生きてるオモチャみたい」と返してくる。
仲良しに決まってるよね。
ーー
ここはMちゃんの部屋。
オレ「そうなんだよ。Mちゃんごめん。悪さしてる変なのに絡まれそうになっちゃってさー。やっつけるのに大変だったの。」
ーーオレはマッドピエロの件で、Mちゃんに先週、少年ジャンプを早く届けられなかった事情説明してる。
本来、ジャンプは月曜日発売。
だが、オレは地元の馴染みの本屋で土曜日の昼に少年ジャンプを手に入れる事ができる。
Mちゃんもオレもドラゴンボール大好き。
1日でも早く読みたいし、手に入れたら早く読ませてあげたい。
なので土曜日の夜はMちゃんちにいる事の方が多い。
ジャンキースケジュールとして金曜日の夜はジュン・ケイ・サルと遊び、
土曜日の夜はMちゃんちとなっている。
ウィークデーはサラリーマン。
週末はジャンキーベーシスト。
この規則正しい生活を何年も続けてるんだ。
ーー
Mちゃん「何だよー。うちのすぐそばまで来てたんなら、ちょっと寄ってけば良かったのに。電話一本くれないからさー。家で楽しみに待ってたんだぞー。」
オレ「だからゴメンてば。Mちゃんの事教えてない他の友達とずっといっしょだったから、電話もかけづらかったんだよー。それにMちゃんだって電話かけてこなかったじゃん。もしかしたら、ちゃんと仕事してるのかなって思ってた。」
Mちゃん「ライブの時は前に教えてるだろ。身内枠で楽屋にも来てるじゃん。それに今週もジャンプ持ってこれる?って催促の電話するの、大人として恥ずかしいしw」
オレ「…大人として恥ずかしいんすか?へー。」
Mちゃん「そこはもういいから。早くジャンプ読ませてよ。」
そんなやりとりの時、ドアから視線を感じた。
小さい顔を出したり入れたりしながら、こっちをチラチラ見てる。
オレ「(*≧ω≦)あー。そこにいるのは誰かなー?ミーサ見ーつけた!」
それがスタートの合図。
よーい、どんで、オレに向かって突進してきた。
ドドドドドド!
ミーサ「(*≧ω≦)よーいちだー!ねえねえ!今日はずーっといるのー?」
Mちゃんの娘が当たり前のようにオレの膝に座る。
座るってのは違うな。
真正面から抱きつかれた。
《ギュー》
ミーサ「へへへー」
かわいいなー。
ハグして得意顔で見上げてくる。
ーーここはミーサの特等席なんだろう。
Mちゃんちに初めて来た時も、いきなり膝に乗ってきた女の子。
子供は真っ直ぐだよね。
間違いなく好かれてる。
もうとっくに寝る時間を過ぎてるけど、オレが来ると聞いて寝ないで待ってたらしい。
オレ以外の友人が来てる時、パパにかまってほしくて部屋に入ってくる時はあっても、誰かの膝に座ったりしないんだって。
女の子って、ちっちゃくても女の子なんだよな。
スキ・キライがはっきりしてる。
好みのタイプあるんだろう。
今の時代、モテる男の条件は『3K』とか言うよな。
結婚するなら、高学歴・高収入・高身長だっけ。
バカ言うなよ。
ロマンがねえなー。
ズルとウソとクズだけ見分けられらば十分。
スキキライは子供の時の感覚のままでいいんだってば。
ミーサ「(*≧ω≦)えへへへへー」
ミーサさ満足そうに、オレを見上げて、ただ笑ってるだけ。
オレ「(*≧ω≦)ふふふのふーだ。」
ーーこんなに懐かれると、こっちもハート射ぬかれちゃうw
そして、今日オレはかみかみを連れてきている。
オレ「ほら。今日はよーいちの『家族』も連れてきたんだよ。ミーサ、一回おんりしてくれる?」
ミーサ「かぞくー?どこー?」
ミーサは不思議そうにオレを見てる。
オレ「あれー?ちっちゃいから見えないのかもねー。」
ミーサ「どこー?」
オレはジュンから借りたバッグから、かみかみを出した。
かみかみ「にゃお!」
ミーサ「(*≧ω≦)わー!黄色いねこちゃん!これ、よーいちのねこちゃん?」
オレ「そうだよ。ミーサに会わせたくて連れてきたの。かみかみって言うんだ。ちょっと喋れるんだよ。かみかみ、ミーサちゃんだ。挨拶してみな。」
かみかみ「(*≧ω≦)にーにゃー」
ミーサ「ホントだ!ミーサの名前呼んだ!ねえ、よーいち。かみかみと遊んでいい?」
オレ「(*≧ω≦)いいよー。かみかみ、ミーサちゃんと遊んできな。」
かみかみ「にゃお!」
Mちゃん「あははは。マジかよ?オレにもミーサって聞こえたぞ。あのねこが、さっき言ってたハッパ咥えてきたって?」
オレ「そーなんすー。かみかみ、Mちゃんにも挨拶できるか?」
かみかみ「(*≧ω≦)ん。にゃむにゃん。にー」
Mちゃん「あっははははは。Mちゃんて聞こえたぞ。どうなってんだ?」
オレ「オレもわからない。でもこの迷いねこがニルヴァーナ持ってきた。不思議すぎて説明できないから、実物連れてきてみた。ねえ、とりあえずコークスクリューやってから、話の続きしようよ。それにさ。オレ、オリジナル作ってデモ持ってきたんだ。これ楽譜。コード進行だけだけど。いっしょに弾いてみてくれない?」
Mちゃん「うーん…。」
Mちゃんが眉をひそめ悩ましくしてる。
オレ「ん?何、悩んでるの?」
オレ《一気に喋りすぎた?オレ早口だもんな》
オレ「あのさ…」
Mちゃん「順番。…ドラゴンボール先に読むか、コークスクリュー先に決めてから読むか。ねこ触ってから読むか。」
オレ《話を遮られたと思ったらこれだよ》
オレ「あははは。そんなとこで、つまづいてるわけー?いいよ。先にドラゴンボール読んでて。その間に全部用意しとくから。つーかさ。ドラゴンボール読むのに5分もかからないよね。悩んでる間に読めたでしょ。」
ーー
オレはジュンやケイたちと、遊んでる時よく突っ込まれるが、ここだとツッコミ側になれる。
オレ《(´・ω・`; )そうかー。勉強になるわー。オレのフツーも、こんな感じなのか。…気をつけよう。》
Mちゃん「あ、オレ何で41が《よういち》なのか、わかった!」
オレ「(´・ω・`)ん?」
Mちゃん「( ̄^ ̄)よういちが、用意するから用意ちーなんだ!わかる?」
オレ《(´-ω-`)わからねー…。さすがに意味不明》
オレ「(*≧ω≦)は?悩みすぎて壊れた?ん…。用意はわかったけど、『ちー』は何よ?『ちー』って?」
オレ《何の謎解きにつきあってるんだろ?》
Mちゃん「用意するの一番早いから、1(いち)のちーじゃない?」
オレ「なるほど。…って、何でそれオレに聞いてくるのさ?じゃあ、用意と1(いち)で、《ようい・いちー》がよういちって言いたいの?」
Mちゃん「どうでもいいから早くやろうよ。オレ、ドラゴンボール読むから。」
オレ「( ・`ω・´)おい。そこの大人。壊れてるぞ。」
オレ《(´・ω・`; )これかー。ケイたちの気持ちわかった…。マジ気をつけよう。》
Mちゃん「(*≧ω≦)あっははははは。でも、今週号の話、ワクワクするな。次どうなるんだろ?来週も来れる?」
オレ「え?もう、読み終わったの?早っ!」
オレ《今までのやりとりってムダなのでは?》
オレ「(*≧ω≦)ふーん。…来週ねー。わからないなー。無理かもねーだ。」
Mちゃん「( ;∀;)えー。この続き読みたい。」
オレ「待ってれば月曜日に出るじゃん。」
Mちゃん「よーいちに意地悪されたー。横浜で一番先にドラゴンボール読める人はオレなんだから。」
オレ「それ自慢なの?」
M「自慢だよ。よーいちも自慢だから。」
オレ「何の自慢よ?」
Mちゃん「よーいちに会うと元気もらえる。太陽からエネルギー補給してる感じ。いっしょにいると面白いし。音出すのも楽しい。生きてるオモチャみたいw」
オレ「ほめてる?ジャンプ欲しさに、おだててるでしょ。オモチャだのガソリンスタンドみたいに言われてもw 」
オレ「…いや元気玉か。オレはMちゃんに気を吸われて遊ばれてるのか。」
かみかみ「にゃん!」
ーー《ぽとり》
ダラダラと話してるオレとMちゃんの間に、かみかみがバッツを咥えて置いていった。
そして振り向き様に、一鳴き。
かみかみ「にるにゃーにゃ。にゃおー」
かみかみ《ほりゃ。ニルヴァーナだお。おまいら、うるちゃいから、これ吸って大人しくすればいいお。》
ーー
Mちゃん「(@_@)ホントだ!ねこがマリファナ咥えて置いてったぞ!」
オレ「見たでしょ?この不思議、ホントなんだってば。コークスクリュー決めてから、このハッパ吸うと祝福気分になるよ。マッドピエロの話はどうでもいいわ。とにかく先週は来れなくてゴメン。遊ぼうよ。」
Mちゃん「オレも41が来るから、良いヤツ取っといてあるんだよ。ホントは先週来ると思ってたからさ。なくならないように41の分、残してあげてたんだよ。」
オレ「(*≧ω≦)Mちゃん優しい!つーか、簡単に受け入れるんだなー。」
Mちゃん「ん?何が?」
オレ「何でもないっ!」
ーーーー
そしてーー。
オレたちはコークスクリューと、Mちゃんの出してくれたモノを楽しんでセッションに入る。
《ドツタツ、ドツタツ…》
8ビート。
最初はフツーに。
リズムボックスで適当にドラムパターンを選択。
これやってみようかで、どちらかが勝手に弾き出して合わせる。
そこから二人の《おしゃべり》が始まる。
二人のギターとベースから出る音は会話。
《楽しいね》ーー
《面白いね》ー《そうくる?》ーー
ー《じゃあ、こうしちゃお》
ー《あはははは》ーーー
《飽きてきたね》ー《休んでキメよう》
ーーーー
《じゃーん!》
オレ「(*≧∀≦)あっははははは。ピッタリ終わったー!」
M「(*≧∀≦)あはははは。さっきのとこ良かったね。41が変えようって言ったのわかったもん。」
《変えよう》ーー
これは言葉じゃない。
オレがベースで鳴らした言葉。
Mちゃんは、それに答えすぐ反応する
ー《わかったよ。次のとこからね》
ーー
天才っているんだな。
この人と初めてセッションしたとき、そう思った。
この人は音楽の世界にいる人だ。
ふだんバカ話してるのも面白いけどさ。
それは、ただのオマケみたいなもん。
同じ土俵に上がって初めてこの人を理解した。
こっちこっちって、上の世界を見せてくれる。
テクニックとか聞いたことも、教えられた事もないけど、この人とセッションするたび上達する。
ドラゴンボールのねこ神・カリン様。
いや、潜在能力を引き出してくれるから、もっと上かも。
神に愛されてる人なんだろうな。
ーーーー
M「41。このコークスクリューって変だぞ。どんどん元気になる。四種類混ぜてるんだろ?全部わかる。」
オレ「さすがMちゃん。そうなんだよ。かみかみの登場も含めて変なの。前にMちゃんちでさ、プレデターみたいなやつ見たじゃん。…オレたち不思議近づける能力あるのかもね。」
M「いや。実はさ。41来るまでちょっとイヤな事あって落ち込んでたんだ。だから41待ってたの。その間、一日中ずーっと聞いてたのが『ニルヴァーナ』。お前が持ってきた、いや、かみかみが持ってきたハッパがニルヴァーナって名前なんだろ。ビックリなんだけど偶然?」
オレ「えー。カート・コバーンしてたの!そうだったのかー。ゴメン!知らなかった。オレがニルヴァーナ手に入れた時、Mちゃんはニルヴァーナ聞きまくってた?何だこれ?…また不思議が重なった。何なのこの流れ?」
M「わからないけど、オレたちは会うべくして会ってる。だって前に来たときだって、お前オレに呼ばれる声がしたって電話してきたじゃん。それもお前の話してるときにかかってきたんだぞ。幻聴テレパシー。不思議すぎるだろ。」
オレ「だよねー。だけど不思議にも慣れてきた。というか、いつも不思議待ってワクワクしてる。」
M「それわかるよ。お前のそういうとこがオレに合ってる。だから気が合うんだよね。」
オレ「オレの不思議はMちゃんと出会ってから始まったんだよ。今のオレを作ってくれたのはMちゃんだと思う。こういう話って、あまりしないよね、でも照れずに素直に言葉が出ちゃうw」
M「41を作ったのはオレじゃないよ。こんなにベース弾けるの知ったのは最近だし、ずーっと教えてくれなかっただろ。それに、最初に会った時から41は出来上がってた。だから間に入ってくるような、めんどくさいヤツ飛ばして直接遊びに来ていいよってなったわけだし。見る目間違ってなかった。そのくらいわかるよ。」
オレ「Mちゃんがそう言うなら嬉しいね。それは回りのミュージシャンや関係者やファンとか、たくさんの人たち見てきて磨かれてったの?」
M「そういう風に見える?」
オレ「( ̄^ ̄)見えません」
M「お前も直感組だろ。オレは子供の時から変わってないよ。」
ーーその時、かみかみとミーサの笑い声が聞こえてきた。
ミーサ「へー。かみかみってホントは、よーいちの夢の中で暮らしてるのー。いいなー。ミーサも行ってみたい」
かみかみ「にゃんにゃら、にゃんにゃん。」
ミーサ「え?ホント?」
かみかみ「(*≧ω≦)にーにゃー」
ーーーー
M「おい。うちの子、かみかみと会話してるぞ。…ぬいぐるみとか、着せ替え人形と話してる感じじゃないな。」
オレ「ミーサちゃん。かみかみの言葉わかるの?」
ミーサ「わかるよー。かみかみのおうち見せてって頼んだの。」
オレ「オレの家に来るって事?」
ミーサ「違うー。ナイショだもんねー。かみかみー」
かみかみ「にーにゃー」
M「今リアルタイムで不思議に遭遇してるぞ。」
オレ「ハイ。すでに日常であります。」
M「面白いなー。じゃあ、次は41の作った曲やってみようか。それにしても、この歌詞は何だ?にゃんけんは、この前教えてもらったからわかるけど、二次元レンズに遠い手?どっから出てきた?」
オレ「それがさっぱりわからない。歌詞も何となく閃いて…。この曲ってさ、何かのパクりなのかな?作りながら、どうも聞いたことがあるような気がして…。」
M「まあ、アレンジはその人のセンスで決まるけど、パクリじゃないだろ。このメロディは聞いたことないよ。弾いてみよっか。」
ーーーー
《FUNFUN In The Night》と書かれたデモテープをミキサーにセットしたところ、ミーサとかみかみが、やってきた。
ミーサ「お歌、歌うの?」
オレ「そうだよ。お歌作ったの。ミーサ歌ってくれる?じゃあ、歌詞に、ひらがなふってあげる。演奏だけ流すから、よーいちといっしょに歌ってみようか?」
ミーサ「(*≧ω≦)ミーサ歌うー。」
M「面白い。ミーサに歌ってもらうトラック作ろう。」
ーーーー
演奏に合わせてミーサちゃんが歌う?
もう、ワクワクしてきた。
これ子供にも歌ってほしかったんだ。
NHKのみんなの歌で採用してくれないかなw
オレはミーサに歌詞を読み上げながらフリガナを書いていった。
そしてメロディラインに合わせて歌ってあげた。
ミーサ「(*≧ω≦)にゃんこの歌だー。」
何度かアカペラで、ミーサといっしょに歌った。
この子ビックリするくらい覚えが早いんだけど…。
オレ《(*≧ω≦)やっぱ天才の血かな?》
ーー
Mちゃん「ミーサ、よく覚えたね。じゃあパパと41といっしょに録音してみようかw」
オレ「楽しくなってきたぞー!」
するとーー
かみかみがベースの上に乗ってきた。
オレ「どした、かみかみ?」
かみかみ「( ・`ω・´)にゃめ。」《ダメ》
オレ「ベース弾いちゃダメなの?すぐ終わるからちょっと待ってて。」
オレはかみかみを足元に下ろした。
ーーーー
かみかみ《どうしよう?弾かせたら41が危ないって言ってるお。》
エスネコ《( ;∀;)にゃーにゃー!》
かみかみ《スイッチが入っちゃうって?何の?》
エスネコ《( ;∀;)にゃー》
ーーーー
演奏開始!
オレ《うわー!一人で作ってたのと世界が全然違う。》
《Mちゃんのギター。娘への愛情が入ってる。ミーサちゃんの嬉しさや楽しさも入ってくる》
音楽ってこんな素敵な《お歌ごっこ》できるのか。
それも自分の曲で。
オレ《楽しい》ー《嬉しい》ー《自分が音に溶けていく》
ワンコーラス目が終わる。
オレ《ベースの指板が光ってる?》
オレのベース『moon』がさらに鳴る。
《グォン!》
あ、入った。
オレは自分で作ったグルーヴの檻に、自分もMちゃんも、ミーサも閉じ込めた。
オレ《カトラス運転してるみたいだ。指板が道になってる。ここ行けるよ。ここも通れる。あそこまで飛べるよ…。》
オレ《何かわかったぞ…。》
薬物で死んだミュージシャンたちが触れたモノに、手が届いた気がする。
《この人になりたいーーじゃない》
《こんな演奏どうすればできるの?ーーじゃない》
《ーーそうか。オレが好きなミュージシャンは、オレなんだ。》《好きな曲は自分が作った曲。それを好きな人と演奏する自分のプレイが好きなんだ》
ーーー《目指してたのはなりたい自分》
音が溶ける。
愛と幸福と奇跡が、空間の中で共鳴する。
オレは今、自分の中毒性の中心に立っている。
ナルシズムでもエゴでもない。
「自分」という音の存在そのもの。
オレ《わかったぞー!》
ツーコーラス目から変化が出た。
Mちゃんもその変化に気づく。
笑顔。
笑ってるけど目が真剣だ。
ミーサは大きな口を開けて自信たっぷりに歌ってる。
いいぞ。
オレのベースmoonがカラダと一体化。
オレが弾きコイツが鳴らし、その振動をオレを受け止める。
《ウォーーーーーーン》
誰もが踊り出すようなグルーヴの世界。
呼吸も鼓動も血流も。
リズムに乗ってうねり出す。
空間支配。
ドライでCOOLなプレイ。
だけどHOTに聞こえる。
弾きたいように弾いてるだけだが狂いはない。
オレは自分で作ったグルーヴ空間を、冷静に緻密に支配している。
オレ《届いたぞ。叶ったぞ。》ー《これが到達か。》
オレ「あっははははは!楽しい!」
Mちゃん「(*≧ω≦)…。」
ーーそして演奏は終わり一服。
ミーサもニコニコ。
オレもMちゃんもニコニコ。
ここにも祝福が降りてきた。
ーー
かみかみがすり寄ってきた。
かみかみ「にゃん」
かみかみ《…41スゴいお。届くとこ見たお。あとは…任せてだお。》
Mちゃん「41。途中から変わったな。ベースで歌ってるように聞こえたぞ。スゲーよかった。」
オレ「録音聞いてみようよ。ミーサの歌よかったよー。」
ミーサ「(*≧ω≦)ンフフフフフー」
オレたちは今のトラックを再生した。
ーー
オレ「何だこりゃ。最高じゃん。」
Mちゃん「これ、世の中に出せるよ。ミーサも楽しそうに歌ってる。」
ミーサ「よーいち。これミーサにちょうだい、ミーサこれ好き。ママにも聞かせてくるから。かみかみも行こっ!」
オレ「いいよ。すぐにダビングしてあげる。歌いたかったら、もう一回演奏するよ。」
Mちゃん「オレが41以外の友達といるとミーサは部屋に入ってこないんだよ。まあ、子供に見せたくない事してるからさ。自分がギターで伴奏して童謡の練習させたりしたけど、すぐ飽きられちゃったwでもさ。オレも演奏で子供にこういうことしてもらいたかったのかも。まさか、それが今だとはね。これは良い曲だよ。ちょっと感動してる。」
涙?
違うな。
この人はそんなヤワじゃない。
オレと同じ。
音とコークスクリューで気持ちよく、ぶっ飛んでるだけだ。
Mちゃんの目はキラキラとしている。
鏡ないかなあ?
オレの目も、ぶっ飛んでるはずだから。
ーー
オレ「オレも感動しちゃった。Mちゃん、ありがとう。うまく言えないけどさ。叶わない願いに届いた気がするよ。満足だー。今日来て良かったー。」
Mちゃん「飲み物取ってくるよ。乾杯しよう。そしてもっとセッションしよう。朝までいるだろ?」
オレ「もちろん!」
《カチ》ーー
ーーーー《あれ?何か鳴った?》
《ドクン》ーー
オレ《この鼓動は前に…。特にカラダに異変はないけど…。何だ?》
オレは少し冷静になる。
コークスクリューよ。
オレを見せろ。
異常を発見しろ。
何が効いてる?バランス悪くないか?
オレは四つの毒とニルヴァーナの効き目を、一つずつ確認する。
オレ《いつも通り…。いや、いつも以上にゴキゲンじゃん。》
ーー
オレ《ん。待ってても…何ともねえな》
オレ《よし!まあ、いっか。でも、みんなに心配させないように人間ドックでも入ってこようっと》
オレ「(*≧ω≦)ねえ、Mちゃん。次、何キメよっか?」
ーーーー
ここは、ねこにゃんとぴょこにゃんが、41の中に作った異空間。
だが、ねこぴょこたちは、ここにはいない。
ふたりはマッドピエロ騒動が決着したので、にゃんこシティに戻っていた。
マッドピエロ騒動の最中、ふたりより先に、何かを察知したエスネコは、異空間の中に121層の厳重な封印を作った。
エスネコはその封印の中で、41の《粒》を抱きしめてる。
人と異なる形をしているが、この粒は41の《魂》だ。
ーー
エスネコ《アルファとベータが解析する前にスイッチが入っちゃった。封印で隠しといたけど、防げなかった…。》
エスネコ《アルファとベータに早く教えないと。この残酷な設計を書き換えないと41は死んじゃう。そしたらみんなもボクも消えちゃう…》
エスネコ《絶望設計。…許さない。ボクが絶対助けるからね》
ーーーー
エスネコ《かみかみ!アルファとベータ、いや、ねこにゃんとぴょこにゃんを呼んで!お願い!早く!》
かみかみ《わかったお。41もみんなも大丈夫だお。ボクも守るからね。》
ーーーー
再び、Mちゃんの部屋。
ピースフルでハートフル。
楽しいと嬉しいに満ちた空間だ。
Mちゃんかキッチンからバドを持ってきてくれた。
かんぱーい!
オレ「プッハー!ビールうんめえー!サイコーだよ。」
M「何かお前、壁越えた感じだな。」
オレ「壁どころか次元越えた気がする。四次元大介なったw」
M「バーカ。じゃあオレは五次元大介。それにしても、コークスクリューか。これヤバイな。お前の楽しさとか嬉しさ入ってくるよ。ニルヴァーナの世界ってこれかもな。」
オレ「五次元!抜かれたーwニルヴァーナって涅槃でしょ?まだ行くの早いよ。死んでからでも遅くないじゃん。祝福は分けあわないとって先週、友達とも話してたんだ。そっから、できた曲だしね。回りのみんながハッピーならオレも幸せだよー。」
M「それ作ってるの41だよ。会うと元気もらえるって言っただろ。」
オレ「(*≧ω≦)照れるわーw」
ーーーー
《スーーーーーーーン》
紺碧の空。
微かな次元振動波が鳴っている。
生物のいない無音の音だ
木々の木の葉は光を浴びてキラキラと揺れるが、風は吹いていない。
ーー
ここは超次元異空間。
姿を見せぬ神々は笑う。
ガンマ《フッ。支配権が消えたとて大したことはない。どうせ願いなど叶わぬ。》
デルタ《万が一叶ったところで粒はほどけ、死ぬだけだ。どこかに隠れたとしても、滅びれば我らの元に返ってくる仕組みだ。またリサイクルすればよい。》
ガンマ《最後の一体。最高傑作の欠陥品か》
デルタ《ククク。どこにいる?シリアルナンバー『198X41』》




