第58話《マッドピエロ編 サーチ&アタック――マッドピエロ掃討戦③》
時代から取り残されたような、古いアパートの佇まい。
賑わう原宿のストリートから一歩足を踏み入れた先で、41はふと自身の幼少期の記憶や、内に抱える「感情の欠落」へと静かに思考を巡らせます。
愛車の中で交わされる仲間たちとの軽妙な会話から一転、足を踏み入れたのは地下の怪しげな違法賭博店「サーカス」。
バキバキの瞳をした悪党たちが蠢く無法地帯で、誰にでも見える「フェイクマスク」の異変とともに、ゆっくりと、しかし確実に侵食していく異様な空気。
ヘラヘラとした態度の裏に潜む「本物の狂気」と、高次元の神々すら興奮させる《ジャンキーの王》の絶対的な美学。
ジャンキーの王の圧倒的な恐怖と支配が幕を開ける、
第58話《マッドピエロ編 サーチ&アタック――マッドピエロ掃討戦③》
ここはS21区。原宿。
オレたちはエミの描いた地図を頼りに、マッドピエロのたまり場「サーカス」に向かってる。
目的地の目印は、時代から取り残された古いアパート。
あそこは、ガキの頃からあった。
原宿が人気出始めたのは、代々木公園の歩行者天国からだろうな。タケノコ族とかローラー族、アクロバットを披露するパフォーマンス集団。
それを見物にくる暇人たちが集まる場所ってイメージ。
そして竹下通りはアイドルショップが人気になり、ラフォーレ側の出口でクレープ食べるのが定番。
キャイキャイした女子の場所。
オレには全然、縁のない街だ。
CONVERSEが安く買える靴屋はたまに行ってた。
あと、プレイボーイショップ開店したときに、叔母から服買ってもらった思い出はあるかな。
あれは誕生日だったっけ?
オレは家庭環境が変わってたので、親戚づきあいが出来なかった。
妾の子。
今、住んでいる家は、お祖父ちゃんが仕事で東京に泊まる時用に買ったと聞いていた。
お祖父ちゃんと呼んでた人が父親だと知ったのは、いつだっけ?
小学生の高学年だったかな…。中学入ってすぐ…?
いや、オレは《あの時》ーー。
蓋を閉じるように記憶が霞む…。
全く意味不明だよな。
大人になってから、そんなもんだよなって理解できた。
オレはどこか大事な感情が欠けてる気がするんだけど、わからない。他人から見るとわかるらしい。
でも教えてもらえないんだ。
そんなのも「まあ、いっかー」ですませてる。
こういうとこなのかな?
ーーーー
すでに午前1時。
ケイ「\( ̄0 ̄)/ついたぞー。」
オレ「(*≧ω≦)ここは夜だと心霊スポットみたいに見えるなー。」
ケイ「これ、関東大震災の復興住宅だったんだろ?」
ジュン「そうなのー?」
オレ「らしいよ。あれって大正時代とかだっけ?」
ケイ「そーだな。オレの、ばあちゃん、モロにくらって、焼け出されたって言ってた。川が死体でいっぱいだったって。」
オレ「その後に戦争だもんなー。うちのお祖母ちゃんも、東京大空襲で焼け出された話をしてた。その時も、川の話してたな。」
ジュン「何で、川なの?」
ケイ「火傷で熱くて飛び込んだんじゃない?死んだ人、捨てたとか?そこまで聞いてなかったw」
ジュン「(; ・`д・´)やめてよー。うちの近く神田川流れてるんだからー。川見ると怖くなっちゃうじゃない!」
ケイ「ジュンはお化け信じる方なんだ?意外。女の子っぽいとこあるじゃん。41相手にしてるくらいだから、怖いものないと思ってたよ。」
オレ「(´・ω・`; )…なあ。こういう会話ってさー。いつの間にかオレが非難されてく流れになってくんで、やめてくれるー。」
ケイ「(*≧ω≦)スゲー。41が学習した。」
ジュン「レベル41。ジュピタンがんばれ。ドラクエなら、もう少しだよ!」
オレ「( ;∀;)ほら、こうなるー…。」
ーーーー
オレ「じゃあ、路駐して待っててくれる?それとも30分後に、ここって感じにする?」
ケイ「もう少し近くまで入ってってやるよ」
オレ「そう?エンジン音大丈夫かな?」
ケイ「さっきのエミんとこよりマシだろ。じろじろ見られるし、お前待ってる間、遠慮してエンジン切ってたから、暑かったんだぞー。」
ケイの愛車。
リンカーン・コンチネンタルMk IV。
7.5LのV8エンジン。
悪の親玉が乗るような車だ。
オレ「こんなの、よく転がしてるよなー。悪者の乗る代表車だ。」
ジュン「ケイちゃんは、悪い遊びしてるだけで悪者じゃないよー。」
後部座席のジュンがケイのアタマを撫でた。
ケイ「41だってカトラス乗ってるじゃん。オレの車が悪者なら、お前の車は銀行強盗だろ。」
ケイ「ところで、ジュンて何乗ってるんだっけ?」
オレ「こいつ、お嬢様だよ。ポルシェ928乗ってたもん。」
ジュン「あれは、ポルシェでも不人気だったから安いんだよ。中古で100万円くらいだったもん。でも、運転しやすいんだよ。」
ケイ「若い女の子でスポーツカーっての洒落てるよな。マジ、カッコいいよ。」
ジュン「普段は乗ってないよ。ジュピタンの横に乗るから。地下鉄の方が早いもん。」
オレ「( ;∀;)オレはジュンのパシりなんですー。」
ケイ「お前、ジュンとつきあって良かったよ。」
オレ「何か、含みがある言い方だなー。」
ケイ「オレとサルだけじゃ、お前にブレーキかけられなかった。さすがポルシェ乗りだ。ブレーキが良く効く。」
オレ「(´・ω・`; )どゆことー?」
ケイ「(*≧∀≦)そーゆーとこだよ。」
ジュン「( ・`ω・´)ケイちゃん!コラ!ジュピタンいじめるな。」
ケイ「(*≧∀≦)わりい、わりいw」
オレ「(´・ω・`; )オレ、またいじめられてたの?どゆことー?」
ケイ「まあ、いつもの事だ。気にするな。えーと、地図だと、この辺じゃねえか?…やっぱり、じろじろ見られるなw」
ジュン「やっぱり、悪の親玉なんだーw」
オレ「ここから、探してみるよ。飲み物、一杯飲んで帰ってくるから。」
ジュン「アタシたちどこで待ってればいい?」
オレ「表通り。アパートの前でいいよ。見学するだけだから、小一時間もかからねえだろ。お巡りに職質受けるのもかったるいからさ。青山とか神宮前あたりドライブしててよ。」
ジュン「ジュピタン。本当に大丈夫ー?怖そうな人たちなんでしょ?すぐ逃げてね。」
オレ「(*≧ω≦)そのためのコークスクリュースプレーだろ。」
ジュン「そっか。あんなのかけられたら、たまんないもんねw」
ケイ「わかった。気をつけろよ。」
オレ「(*≧ω≦)じゃあ行ってくる!」
ーーーー
オレは車を降り、勘を頼りに歩きだす。
原宿も中に入りゃ住宅街。
街灯もうちの回りと大差ねえ。
夜は夜だ。
雑居ビル…雑居ビルねー。
ここらへん、意外とごみごみしてるよな。
ーーオレ《つーか、こんなとこで堂々と違法ギャンブルかよ。東京も闇が深いなー。》
オレは適当にブラブラ歩いてるのだが、何かに誘導されて目標に向かってる気がした。
オレ《知ってるとこに向かってるみたい。…あれ?あそこ?》
ーーーー
《ここは41のアタマの中》
二柱のねこ神が41をサポートしている。
ねこにゃん「よーそろー。取り舵いっぱいにゃん。」
ぴょこにゃん「まもなく、地下に入ります。ダウントリム90。」
ねこにゃん「潜水艦ごっこにゃん。」
ぴょこにゃん「見えないとこから、コークスクリューミサイル発射するにゃん。」
ねこにゃん「(*≧ω≦)完全に面白がってるだろ?確かに41動かすの面白いにょさ。」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)コイツ生きてるオモチャみたいなヤツだからにゃ。」
ねこにゃん「オモチャかー。おり、また一つ、アイデア浮かんだにゃ。意思共有モードでつなぐから。…どうにゃ?」
ぴょこにゃん「おまい。本当にこういうのだけは天才だよにゃ。」
ねこにゃん「(*≧ω≦)フフ。ほめられたにゃ。おまいの《マッドサイエンティスト》の力なら、この次元でも作れるだろ?」
ぴょこにゃん「中身スカスカでいいなら簡単にゃん。アストラルボディに皮膚貼ったり、レイヤーで、服着させればいいんにゃろ?」
ねこにゃん「そう。見た目そっくりにして、話せて動かせればいい。おまいとおりと二人分にゃん。」
ぴょこにゃん「カラダ用意するとして、演出的にはどうするにょさ?」
ねこにゃん「それはね。ごにょごにょごにょ…。」
ぴょこにゃん「(((*≧艸≦)ププッ 天才かよ。マッドピエロには厄災だにゃw」
ねこにゃん「(*≧ω≦)じゃあ、『全米が泣いた』的なスケールで送る…。」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)真夏の心霊大作戦!」
ーーーー
オレは明かりのついている雑居ビルを見つけた。
オレ《全然迷わず来れた。エミのこんな地図で?》
地下に店がありそう。階段の壁ネオンの看板…。
オレ《(*≧ω≦)サーカス見ーつけた!一発じゃん。何か変な力に応援されて、背中押されてきたような…。》
オレ「とにかく、入っちゃおう!」
《トン、トン、トン、トン…》
迷いなく階段を下る。
地下独特の湿った空気。。
通路の両側にいくつか店のネオンが見えた。
オレ《えーと…。サーカス、サーカスっと。サーカスと言ったら…。角砂糖?ん?…熊へのご褒美。》
こんなときにも、ふざけた思考が勝手にくるくると回る。これがオレに欠けてるモノ?
こりゃ、余計な機能だろ。
オレはラジカセみてえだなー。
ーーオレ「あ。ここだ。」
乾いた飾り彫りの扉。雰囲気あるね
《ガチャ》
オレは躊躇いもなくサーカスの扉を開けた。
視線が一斉に注がれる。
オレ《へー》
正面にバーカウンター。
その後ろは厨房のスペースかな?
思ってたより広い。
角にコの字型のソファと四席のテーブル。
後はポーカーゲームの席ね。
店にはバーテンダーとカウンターに3人の男。
ソファに女が二人。
オレ《見られてるー。…オレは迷い込んだ一般人。おのぼりさんの一般人…。な、わけねーか》
確かに男女問わず、ろくなもんじゃねえって感じだ。
オレ《(*≧ω≦)とにかく全員、目がバキバキ。オレはどんなドラッグやってるか見分けられる。スピードだ。少しだけまともなのはカウンターの中のヤツくらいかな…。》
オレは真っ直ぐカウンターに進んだ。
店員「…いらっしゃいませー」
オレ《(*≧ω≦)うわー。場違い。でも…》
ーーオレ「…すいません。やってます?たまたま見つけて入ってみたんですけど。どこ座ればいいですか?」
店員「どこでもいいすよ。」
オレ「これ、本物のポーカーゲームですか?賭けれるやつ?」
店員「そうですけど…。」
オレ《一見さん、お断りなのかな。警戒されてる。》
オレ「ポーカーゲーム、最近、置いてるとこ少なくなったから。」
店員「やりますか?両替もしますよ。」
オレ「あ、じゃあ少しだけやらせてもらいます。飲み物も頼んでいいですか?コーラありますか?」
店員「お酒も飲めますよ。コーラでいいですか?」
オレ「(*≧ω≦)はい!じゃあ、勝てたら飲もうかな。」
オレはカウンターの店員に一万円札を両替してもらう。
オレ《チラチラ見られてるなー。一般客はオレだけか。店員は長袖着てるけど、他のヤツらは、Tシャツやガラの悪いデザインシャツ。タトゥーがのぞいてる。例の『死神の刻印』見せてもらえるかな。》
すると奥から別の男が出てきた。
オレ《…ケツ持ち?あっち系のヤツだと厄介だなー。》
オレ《じゃあ、見学料金として、1万円負けとけばいいんだな。そこから敗者のモブとしてカウンターで少し話でも…。》
ーー
オレ《(´-ω-`)あれ?みんなオレの事ずーっと見てないか?スゲー気になるんだけど…。何かこそこそ話してるし…。》
ーーーー
《再び、ここは41のアタマの中》
ねこにゃん「何だ、このゲームは?」
ぴょこにゃん「検索結果。ポーカーだにゃ。役を揃えればいいにゃんよ。」
ねこにゃん「やるか?」
ぴょこにゃん「んー?これ負けるようになってにゃいかー?ちょっと、いじるにゃん」
《ピュン!》
ぴょこにゃんが軽く手を振ると、インベーダーゲームのような音がした。
《マッドサイエンティスト》の力で設定を書き換える。
ねこにゃん「勝たせ過ぎないように、目立たないように。《偽装の悪魔》を構築ー。ちょいちょいっと。」
《サシャシャシャシャ》ーー
粗いブラウン管の画面にノイズが走った。
《魔のつくもの全て》の力によって、行き過ぎた勝ちは負けに変わる。
ぴょこにゃん「簡単だにゃあ。自然に不自然。おっけー。完成にゃん。」
ーーーー
オレ「じゃあ、軽くやってみっかな」
オレはゲームに千円札を食わせる。
ーーオレ《さて、最初の千円で、…これをベットして…。え?エースのフォーカード?いきなり?》
オレ《(´・ω・`; )勝つのは目立つから、よくないんだけど、まあ、いっか。次はこれとこれで…。はあ?フルハウス?この台ぶっ壊れてないよな?》
ーー
その後も、適度に負けをはさみつつも、オレはあっという間に5万円ほど勝ってしまった。
ーー
オレ《やべー。ここらへんでやめとこう…》
これは、もちろん、ねこぴょこたちの操作である。
オレはポーカーゲームからカウンター席に座った。
左側に3人の男達。右側のソファに二人の女。
まだ、チラチラ視線を感じる。…何なんだよ?
オレ「(*≧ω≦)ポーカーに勝てちゃった。じゃあ何かお酒、頼もうかな?」
店員がオレの顔をガン見している。
店員「…お前、鈴木か?◯◯中学でいっしょだったの覚えてる?」
オレ「え?違いますけど」
店員「あっ。あー…。すみません。昔の友達にすごい似てたんで。コーラの次は何飲みますか?」
すると、ケツ持ち風の男がオレの右側にやってきた。
こいつもオレをガン見してきた。
オレ《いきなり5万も勝ったから疑われてる?》
ケツ持ち「…いや、似てるけど違うなー。お兄さん、オレの知り合いにも似てるんだよ。」
他の仲間まで話に乗り出した。
客A「お兄さん、俳優の◯◯によく似てるって言われません?入ってきたときそう思っちゃって。」
オレ《(´・ω・`; )どゆこと?何なの、この人間違いムーブメント?》
ーー
これは、ねこぴょこたちが41の顔バレ対策に用意した《フェイクマスク》の力によるもの。
41に敵と認識されてるモノたちは、それぞれ「知り合いの誰か」に似てるように見える。
ーー
オレ《このノリなら話せそうかなあ》
ーーオレ「そうですかー?そんな俳優さんに似てるとか言われた事ないですしー。じゃあ鈴木さんて方は、その俳優さんに似てるのかな?」
店員「いや、鈴木はぜんぜん似てないですね。でも、オレの中学の友達の鈴木ってヤツには似て…。あれ?違ったかなー。」
ーー
店員は41の顔を正しく認識できない。
鈴木からまた、知り合いの誰かの顔に変化して見える。
そして思い出せない。
ーー
オレ「(*≧ω≦)変ですねー。」
オレ《確かに変だ。他の仲間も、女達もオレを見て同じこと言いそう。その前に…。》
オレ「あのー。気を悪くしたらすいません。みなさんタトゥー入ってるみたいだけど、よかったら、ちょっと見せてもらってもいいですか?自分もガキの頃、憧れて入れてみようかって思ったんですけど、もう時期過ぎちゃってw」
客B「…ああ。いいよ。オレたちチームなんだよ。だから同じヤツ入れてるんだ。場所はそれぞれだけどな。」
男が腕をめくりタトゥーをオレに近づける。
それとーー
ーーああ、この目付きか。
男との間の空気が少し重くなった。
オレ《ん?何か急に威圧感出してきやがったな。こいつの性格も、スピードに乗ってるのか。目がバキバキ。怒ると怖いんだろうね。》
オレは、ちょっとキョドったふりをしながら、他のヤツらのタトゥーに目を配る。
細かいデザインは異なるが、お揃いの死神タトゥー。
他には肩、胸、背中。腕や手首にトライバル。
オレ「(*≧ω≦)ありがとうございます。カッコいいですねー。」
ケツ持ち「つーか。お兄さん、どこで、この店知った?ここは、フツーのやつは寄りつかない店なんだけどな。」
オレ「そーなんですか?ここら辺、あんまり詳しくないんすけど、街の裏道とか探すの好きなんですよー。」
ケツ持ち「いつも、どこら辺で遊んでるんだ?」
ーーオレ《(; ・`д・´)うっせーなー。コイツ》
オレ「だいたい、新宿ですねー。ロックバーとか一人で飲みに行ったり。友達と、たまに六本木や横浜に遊びに行きます。」
するとソファに座ってた女まで寄ってきた。
女A「マジ、カッコいい!」
女B「ホントだー。隣座りたーい。」
左側の男を寄せて、露出の高い女が左右、両隣に座ってきた。もちろん死神タトゥー入りだ。
オレ《(´・ω・`; )はあ?カッコいい?これ別料金でぼったくられるパターン?人間違い効果で予想してたよりフレンドリーな迎え方をされてるような…。でも、この女たちも目が…。たぶん、キメてからまもない。店の中でやってんのか。違法ギャンブルに店内で薬物接種。無法地帯じゃんw》
オレ「ポーカーゲームでちょっと勝たせてもらえたんで、よかったら、みんなに一杯ずつ奢りますよ。勝った分で足ります?」
ケツ持ち「ここは、ぼったくりじゃねえけど、ゲーム置いてるからな。それなりにもらってるよ。コーラ一杯1000円だ。だいたい、ここでまともな飲み物注文する客なんてこねえよw」
店員「それは、ポーカーゲームやりにくる客用の値段でしょ。一応、これでもフツーの店なんすよ。」
オレ「じゃあ、オレはビールで。ここ内装もお洒落ですよね。これはアーリーアメリカンな感じ?こういう雰囲気好きですよ。」
店の壁には昔のアメリカのナンバープレートやセブンアップの看板などが貼ってある。
…こりゃ、そこらへんの雑貨店で売ってる偽者。
青山の屋上プールあるビルの店、何つったけ?
チャイナホワイト?それはうちの極上ヘロインだな。
ケツ持ち「なあ、ところで、お兄さんさー。変わったTシャツ着てるな。それ木星か?…それと、もしかしてお前ヤバイ事やってるヤツか?」
オレ《ん?》
オレ「木星ですけど、ヤバイとは?」
ケツ持ち「知らばっくれんなよ。ハッパ、わかるだろ?そういう匂いしてるから気になってな。」
オレ《(´・ω・`; )あちゃー。車の中でジョイント、バカスカ吸ってたから、匂いついちゃってたのか。》
オレ《ごまかしても、おかしいな。》
オレ「(*≧ω≦)じゃあ、お兄さんもこういう匂い知ってる人ってことかな?」
オレの一言で急に空気が乾いた。
いきなり冬かよ。パチッと静電気起きそうだ。
ケツ持ち「ああ?」
オレ《すぐ、これだ。だから、『この手のヤツ』は苦手なんだよ。》
オレ「オレはお兄さんの言う通り。悪い遊びもやりますよ。好きな人なら親近感わくなーって思っただけです。じゃあ、ぶっちゃけ、お兄さん《たち》も、悪い遊び好きなんですか?」
《ガタッ》
乱暴に席を立つ音がした。
こういう立ち上がり方、慣れてるんだな。
静かに寄ってきた方が怖いのに…。
音を残して、またもう一人。
今度はいかついヤツが寄ってきた。
タンクトップ。
タトゥーだらけだ。
オレは肘の内側に視線を当てる。
注射跡。
オレ《へー》
男は、オレの視線を感じ腕を隠した。
ーー客C「だったら、どうなんだよ?てめー誰だ?」
オレ《(; ・`д・´)コイツも好戦的だな、いきなり『てめー』呼ばわりかよ。見学じゃなきゃ、ぶっ飛ばしてるなオレ。でもさ…。なめられるの好きじゃないんだよねー。》
オレ「(; ・`д・´)オレは誰でもねーし。フツーに飲みに入っただけだよ。さっき言っただろ。親近感わくって。そんだけだよ。」
オレも少し威圧。
オレ《やっちまったかな?隣の女たち、引いちゃってる…。》
ケツ持ち「おい。店で面倒起こすな。」
客C「はい。…お兄さん悪かったな。」
オレ《態度が…。そりゃ、警察入られたくないだろうし、ケツ持ちは止めるよな。》
オレ「オレもちょっと言葉荒くなっちゃって、すいません。ところで、さっき、チームって言ってたけど、何て名前なんですかー?」
客C「…マッドピエロって聞いた事あるか?」
オレ「マッドピエロ!うーん。聞いた事あるかも…。あのー。変な質問なんですけど、悪い遊びやってるなら《41って名前のヤク》聞いた事ありますか?」
オレ《かかるか?》
オレから出た意外な質問にみんなが、それぞれ目を会わせている。ん?少し長く視線を合わせてるヤツ。
オレ《(*≧ω≦)このリアクション。こいつら、知ってそうだな。じゃあ『カモ』だ。》
店員「それ…ヤクの名前?」
客C「…おい。『41さん』て名前の人の事か?」
オレ「いや。詳しくはわかんないんですけど…。ほら、スピードでもハッパでも、名前ついてるネタあるじゃないですか?たぶん、そんな感じかな?オレも噂です。」
客C「名前は聞いた事あるよ。その噂、オレにも教えてくれよ。」
オレ「でも、誰からとか曖昧なんで、はっきりとわかんないすねー…。まず、せっかくだから乾杯しませんか?何か人間違いとか質問責めで空気が重くてw」
ケツ持ち「お兄さん。41って何だ?」
オレ《こいつは、知らないんだな。じゃあこいつから潰そう。》
オレ「いやー。今、話した以上の事はわかんないっすねー。よく効くネタの名前なんじゃないかな?じゃあ、いただきます。かんぱーい」
《チン》
よそよそしい乾杯。
オレ《(*≧ω≦)オレ浮いてるなー。地上20センチは浮いてるだろ》
店員「もう、この時間だと仲間くらいしかこないよ。お兄さんの貸し切りだね。」
オレ「(*≧ω≦)身ぐるみ剥がされるのは勘弁してくださいね。」
女A「ねえ。お兄さん。名前、何て言うの?アタシはエリ。」
女B「アタシはミキ。やっぱり歌手の◯◯さんに似てるよー。彼女いるんですかー?」
客C「オレはロクだ。」
ケツ持ち「オレは『佐藤』でいい。」
オレ《ふん。こいつは偽名か。そーだろうな。》
オレ「オレは…。最近『サル』呼ばわりで、友達に『サルキチ』ってアダ名にされましたw」
エリ「(((*≧艸≦)ププッ何それ!お兄さんかわいそう!そんなイメージじゃないよ。何でー?」
他のモブにも自己紹介されたけど、すぐ忘れちゃうからいらん。モブ1とモブ2。
オレ《サルって言葉でわずかに反応した。『41』も知られてる。全く迷惑な話だよ。ロクって、いかついヤツが、『タツ』かと思ったけど違った。でも回りは雑魚。タンクトップ。コイツはクラスがちょい上ってとこか》
ーーオレ「確かに『サルキチ』はひどいですよねー。飲んで騒いだとき、狂った猿みたいだったらしいんですよー。それに顔も猿っぽいって。」
ミキ「ぜんぜん。猿より猫ちゃん顔ー。呼び方変えちゃえばいいのにー」
オレ「(*≧ω≦)そっかー。じゃあネコキチに変えますw」
ロク「仲間にサルってのがいるからな。その名前やめといた方がいいよ。」
オレ《はあ?サルが仲間?オレのヤク欲しさに友達をスピードで潰しといて、それを見下してる言い方。…気に入らねえ。これで見学だけで帰るのもな。どうせ顔バレしてるし、コイツらに武器試してみるか。ヤバかったら、スプレーして逃げればいいや》
ーー
だが、顔バレしてると思ってるのは41本人だけ。
実際は《フェイクマスク》の力で、誰からも別々の顔に見えている。
ーー
オレ「ねえ。さっき悪い遊びって話言ったけどさ。みんなスピードやってる?オレ少しだけど変わったヤツ持ってる。みなさん、仲間だから口固いんでしょ?誰も来ないんなら、今からちょっとナイショでやってみる?」
オレはド直球で切り込んだ。
佐藤「お前、何持ってるんだ?」
オレ「ん?スピードだよ。実はさっき噂でって聞いたヤツ。『41』なんて、聞いた事ないネタだったからさー。」
ロク「ネコキチが、その『41ネタ』持ってるって事か?」
オレ「ん?やらないなら教える必要もないし。だったら、このまま帰る。やる?」
沈黙ーーーー
最初に口を開いたのは佐藤。
佐藤「出してみろ」
オレ《(; ・`д・´)マジ、こいつ偉そうだな。たぶん、こいつがスピードのネタ元なのかな?こいつは『41』って名前を聞いた事かない。でも、マッドピエロの連中は知ってる。…ほっとけないわけだよな》
オレ《…面白いかもw》
ーー
オレ「携帯用の容器に入っててさ。こうやってやってる。」
オレはポケットからコークスクリューの入ったスプレーを出して、鼻と口に当てるように一吹きした。
《シュッ》
オレ「(*≧ω≦)あー。効く!簡単だろ?これだけで効くんだ。これならわざわざ打ったり炙ったりする必要ない。試してみる?」
ーー
エミ「えー?何、何ぃー?」
女がはしゃいでる。
気軽に腕組んでくるんじゃねーよ。
佐藤「…やってみる。」
オレ《葛藤とプライドか。》
ロク「オレもやる。本当にそんなんで効くのか?見たことねえぞ。」
オレ《こいつは『41』の名前効果。タツより先に経験できるチャンスって思ってる。ここから崩せそうだ。》
ミキ「やるやるー。やってみたい!」
エリ「アタシもー!スプレーなんて初めて!」
オレ《なるほど。こいつらは完全に漬けられちゃってる。長いものに巻かれろか…。エミもほっときゃ、いずれ、こうなるんだろう。》
最後に雑魚までやりたいって言ってきた。
ちゃんと上から順番ね。
ーー
オレ「じゃあ、全員に、一吹きずつかけまーす。顔出してください。目に気をつけてねー。」
《シュッ》ーー《シュッ》
ーー《シュッ》ーー《シュッ》…。
ーー
そしてーー。
佐藤は目を剥いたまま固まった。
ロクも他のヤツも何が起きたかわからず、固まったまま混乱してる。
ーーそりゃそうだ。
言葉が足りてなかったな。
スピードって言ったけど、
正しくは「スピードも入ってるよ」だった。
ーーーー
オレ「なあ。このスピードどうよ?シャキッとするだろ?」
この『掛け声』で全員が正気を取り戻す。
スピードが効果を出す。
コークスクリューは意識と意思で効き目が変わる。
オレから吐き出された言葉が、そのまま効果を命じた。
ーーオレ《シャキッとしてみろ》
佐藤「何だ。これ…。」
ロク「スピードって本当はこうなのか?」
エリ「これスゴい!…何かうまく言えないけど…。」
ミキ「ねえ。ネコキチは本当の名前、何て言うのー?」
男たちは《異形》を見るような目。
女二人は両側から自分のモノだと言うように、さらに腕を回し抱きついてくる。
オレ《女たちのこの目…。すでに四毒のアシッドも走ってる。コークスクリューすげえな。》
オレは薬物常習者の目を見るだけで、何を接種し何が顔を出してるか見分けられるんだ。
オレ《次は何が起きてくるんだろうな?》
ーー
オレ「これ、本当は打つんだよね。これだと薄めてあるから一瞬で覚めちゃう。もうピーク過ぎちゃっただろ?やってみる?あ。それと言い忘れてた。オレが『41』だよ。」
ーーーー突然の公表。
『41』の名前を聞いたことがあるモノたちは言葉を失う。
ロク「アンタが『41さん』?本物ですか?オレやります。」
佐藤「これスピードなのか?…オレも打ってみたい。」
エリとミキはさらにカラダを密着させてきた。
エリ「エリはやる!」
ミキ「ミキも!」
オレ「わかった。じゃあオレが打ってあげる。自分のポンプ持ってる人は出してね。」
全員がそそくさと荷物を探り道具を出した。
オレ《驚くほどチョロいなー。これもコークスクリューの効果なのか?》
ーー
《ここは41の中の異空間》
二柱がニヤニヤとこの光景をモニターしている。
ねこにゃん「フフ。41は気づいてにゃいのか?」
ぴょこにゃん「コークスクリューに『乗ってるヤツ』と『乗せられたヤツ』じゃ違うにゃろ。41の言葉はコークスクリューへの《命令》になる。この空間の41は支配者にゃん。」
ねこにゃん「ジュンに『ダークファンタジーの主人公はバカでした』って言われてたよにゃ。」
ぴょこにゃん「行けよ。ジャンキーの王。《胸くそ》どもを蹂躙してやれ!」
ねこにゃん「(*≧ω≦)にー」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)にー」
ーー
オレの前に注射器が並ぶ。
オレ《(*≧ω≦)マイ注射器での予防接種みたいw》
オレ「アルコールあるか?針は消毒しろよ」
店員がそそくさとアルコールと脱脂綿用意してきた。
みんなは腕をまくり、オレに差し出してる。
《(*≧ω≦)何だこれ?もう、いいなりじゃねえかw》
オレ「じゃあ、一番上の人から。佐藤さんから順番ね。作ってきてあるから一人30秒もかからないよ。」
オレはさらにヤクの耐性を見抜くことができる。
体重。性別。経験値。依存状態まで一目でわかる。
人に合わせた適量のコークスクリューを次々と打ち込んでいく。
オレ《四種類の快楽ジェットコースター。コークスクリューのお味はいかがかな?》
ーーーー当然のごとく最後に自分にも打つ。
オレはいつだって自分に公平だから。
オレ《おー。スプレーよりも格段に効くわー。》
ーーオレ「はい。終わり。どお?」
オレはさっさと自分の事を終わらせ視線を戻した。
オレ《あれ?…こいつら、今、止まってなかったか?》
景色がぎこちなく動き出した気がした。
ーー
佐藤「これは何だ。オレは…」
オレ「うるせー。お前は床に寝てろ、床は冷たくて気持ちいいぞー。」
オレは躊躇なく佐藤に命令を下した。
何で、それができたのかわからない。
でも、命令を吐き出した直後には「できる」ってわかってたんだ。
《ズリィー》
佐藤は床に横たわった。
じゃあ、次の命令を下そう。
オレ「おい、そこの雑魚。お前らもポーカーの席で大人しくてろ。」
言われたまま、モブたちもポーカー席へ移動する。
ロク「これが41って名前のスピードなのか?何か目がおかしい。部屋が斜めに崩れてく…。うぅー。」
オレ《知るかよ》
ーー
オレ「ねえ、店員さん。シャキッとして。オレにコーラくれよ」
店員「は、はい!すぐお持ちします!」
店員は即座に反応。
自然に不自然。
オレはそれをコントロールしてる?
原理を考えるのは後にしよう。
できてるんだから、それ以上の事実はないだろ。
ーー
オレ「ありかとう。じゃあ、あらためてカンパーイ!」
オレ《プッハー!うめえ!》
オレ《ちょっと、ほっとくだけで、みなさん。目が虚ろ。もう、こんなのでダウンかよ?》
オレ《(*≧ω≦)バーカ。こんなの入口にも入ってねえよ。死神ピエロの諸君。ジャンキーの世界へようこそ。いっぺんにいろんなもの味わえれるなんて、貴重な体験だぞー。さて、サルの敵討ちとマッドピエロ掃討戰の始まりだ》
オレ《オレの仲間をを道化にしたピエロのみなさん。コークスクリューの効き方は、オレが手を引いてあげるから大丈夫。さあどうなるかなー…》
ーー《ゴクリ》
コーラを飲み込む音が大きく響く。
オレ「あれ?この店って、入ってきたときから何も音楽かかってなかったっけ?」
それだけが不自然に思えた。




