第55話《マッドピエロ編 潜入ねこ捜査 潜入ねこ操作 後編》
朝モヤの立ち込める早朝――。
サルは外の公衆電話から、マッドピエロの男・タツへと連絡を入れる。
違和感と探り合いが交錯する電話を終え、アジトへと戻ったサル。深い眠りへと落ちていく彼を見届けた41たちは、密かに《コークスクリュー》の実験へと足を踏み入れ、謎の迷い猫「かみかみ」とともに不思議な朝を迎えていた。
しかしその頃、41の頭の中に広がる異空間では――
サルを通して敵の「視界」と「現実」を観測していた高次元の二柱、ねこにゃんとぴょこにゃんの空気が一変していた。
人間のドロドロとした欲望と、裏で蠢くマッドピエロの本性。
41の意識とシンクロしたことで「ある感情」を芽生えさせたねこ神たちが、ふざけた最適解を叩き出した。二柱は密かに恐ろしい企みを張り巡らせていく――。
第55話《マッドピエロ編 潜入ねこ捜査 潜入ねこ操作 後編》
ここは41の家ーー
サル「じゃあ公衆電話で電話してみるわ。」
オレ「帰ってくるまでに布団敷いといてやるよ。オレのスウェット置いておくから、着替えて寝ろよ。」
《バタン》サルが外に出た。
ケイ「41。何考えてる?」
オレ「何か…引っかかる。サルの立場かなー。タツってヤツは完全にサルを型にはめてる感じがするんだ。たぶんタツが上かな…。ほら、同い年でも「さん」とか「くん」とか呼ぶ感じ。でも、タツってやつは、オレの事を「41さん」て呼ぶ。まだオレが上なのか下なのかわからないからだろ。そういうのに、こなれたヤツって感じするわ。」
ケイ「確かに不自然だよなー。」
ジュン「かみかみはどう思うー?ケイちゃん。コンビニで猫のエサ買ってきてよ。」
ケイ「オレー?ジュンまでオレをパシリにする気かよ。」
ジュン「かみかみー。ケイちゃんが、ごはん買ってきてくれるってさ。ありがと言いな。」
かみかみ「(*≧ω≦)ごわん!」
ーーかみかみが鼻をならしてケイにすり寄る。
ケイ「( *´艸`)ヤバっ!かわいすぎるだろ!わかった!すぐ買ってきてやる。もうオレたち、この子の奴隷だな。」
ーーケイもコンビニに出ていった。
ジュンと二人きり。
ジュン「…ジュピタン。あんまり深入りしないでね。」
オレ「オレさー。さっき《コークスクリュー》やったじゃん。それで突然かみかみ、登場だろ。偶然は必然て言うじゃん。ジュンもコークスクリューやればわかるよ。神様に導かれてるような気になる。これはごほうび?」
ジュン「ごほうびじゃない?いちおう人助けしたわけだし。」
オレ「(*≧∀≦)人じゃなくてサル助けだろ。コークスクリューが先のごほうび。後からこれ、ツケこないかな?幸せを前借りしちゃう先払いパターン。」
ジュン「ジュピタン。それよく言うよね。そして、そのパターンよく見る。自爆しないでよw」
オレ「(*≧∀≦)調子乗ってんなよって?」
かみかみ「( ・`ω・´)にゃおん!」
ジュン「(*≧∀≦)そうだってさ!」
しばらくして、ケイがコンビニから帰ってきた。ケイ「かみかみさーん。ご飯買ってきたっすー」
かみかみ「(*≧ω≦)ごにゃにょうにゃん!」
ケイ「何だ?ご苦労様って聞こえたぞ」
ジュン「この子、人語わかってるみたい。かみかみこっちおいで。」
ジュンが、ねこの缶詰を開けて、皿に出してあげた。
かみかみは猛ダッシュだ。
かみかみ「にゃふっ!にゃふっ!うにゃい
ジュン「(´-ω-`)アンタ、ウマイって言った?」
かみかみ「ごわん、うにゃいお!うにゃい!」
かみかみ《この、ねこボディで食べる《猫ご飯》、サイコーだお。》
パクパクムシャムシャ。
オレ《スゲー食欲。迷い猫だもんな。腹へってたんだろ。美味しそうに食べる。かわええなー。》
オレ「ケイ。ねこパシり、ありがとな。サル戻るまで一服して待ってよう。」
ケイ「(*≧∀≦)ねこパシりかよ。でも、こんなに美味しそうに食べてくれると嬉しいな。」
ジュン「(*≧ω≦)食べてるの、ずっと見てられるー」
ーーーー
その頃ーー
サルは外で公衆電話で、タツに電話していた。
早朝。
外はもう、白み始めている。
ーー
サル「あ。出た。もしもし。サルだ。こんな時間に悪いな。タツ起きてた?」
タツ「ああ。バリバリ起きてた。どうした?また、おかわりか?」
サル「…そうだな。だったら頼める?」
サル《こんな時間に電話して、用なしって言えないもんなー》
タツ「いいよ。すぐは無理だけど…。オレも今日は寝ると思うから…。ちょっと待ってろ。」
ーー電話の向こうで誰かと話してる様子。
ボソボソした声と、カラダを動かしてるようなゴソゴソ音がする…。
サル《誰か来てるのかな?41に言われて勢いで電話しちゃったけど、…ヤバかったかな…。フツー寝てる時間…。でも、コイツもスピードやってるから、起きててもおかしくない。女だったら悪いよな…。》
タツ「…待たせたな。ちょっとツレが遊びに来てて。まあ、遅くても明後日。オレの都合もあるからよー。誰か他のヤツに届けさせてもいいぜ。前みたいにエミに渡して届けさせてやってもいいけどよ。」
サル「エミに?前も、お前に頼まれたからって届けに来たよな?」
タツ「まあ、オレもバキバキで目立つ時、表にあんまり出たくねえし。…それよりよー、お前、電話出ねえとかエミから聞いてたぞ。せっかくオレが紹介してやったんだ、大事にしてやれよなー。」
サル「…わかった。ちょっと電話出れなくてさー。明後日でいい。待ってるよ。」
タツ「…何で、電話出ない?どこかに出かけてたのか?」
サル「ああ?たぶん…爆睡してたのかも。それと…姉ちゃんの用事につきあったりしてさ。」
タツ「…それホントか?今は?」
サル「ホントだよ。今は、ちょっと落ち着いてる。」
タツ「今は、どこにいるんだって聞いてんだよ?もしかして『41さん』のとこで遊んでるの?そろそろ紹介しろよー。」
サル「違う。今、家にはいねえけどさ。オレにもつきあいがあるんだよ。」
タツ「その、つきあいってヤツ、オレにも教えろよ。どうせ、ヤクがらみなんだろ?」
サル「別にいいだろ。相手にも、それぞれ都合あるんだよ。そのうちな。」
タツ「お前さー。オレたち昔からのツレだろ?だから、スピード回してやってんじゃん。それいいだろ?」
サル《…いい?…ヤクの質の事言ってるのか。だったら、さっきご馳走になった、41が持ってるスピードは、別モノだ。…あれなら、倍の金出しても買うよな…。》
サル「ああ。じゃあ遅くても明後日な。今日はこのまま友達んとこで寝て帰るから。」
タツ「…飲んでんの?お前?」
サル「酒?飲んでるよ。ちょっと落ち着こうと思ってさ。」
タツ「…ふーん。まあ、いいや。とにかく遅くとも明後日。いや、もう明日か?それまでは持つんだろ?」
サル「ああ。こんな時間に悪かったな。じゃあな。」
タツ「バイバーイ」
《ガチャ》ーー公衆電話の受話器を置く。
ーーサル《流れで、また買うことになっちゃった…》
サルは41の家に戻った。
ーーーー
ここは41のアタマの中の異空間。
サルを通して、タツを観察していたモノたちが呟く。
ねこにゃん「( ・`ω・´)タツか。こいつクソ野郎にゃん。」
ぴょこにゃん「(*≧∀≦)あーあ。ヤバイやつ怒らせちゃったにゃん。」
ーーーー
サル「ただいまー」
再び。ここは41の家。
時間を切り取られたような部屋。
神秘と現実の境界を曖昧にした迷い猫ーー
『かみかみ』が芽吹かせた大麻の霧が立ち込める。
かみかみ「にゃお」
かみかみが、遮光カーテンの隙間を開ける。
ほんの少し、のぞかせた朝日が現実の時間を教えている。
だがーー。
ここはまだ昨日の続きーー《夜》のままだ。
帰ってきたサルが、みんなにタツとの会話の内容を伝えた。
ーー
オレ「へー。こんな時間でも起きてるんだ。ヤベーなそいつ。」
ケイ「(*≧∀≦)どの口が言ってんだよ。お前は今、《昼》なんだろ?」
オレ「ん?んんー。感覚的にはー…夜?いや、昼だな。何かコークスクリューやってから、時間が逆行してる気がする。今は《朝》だな。オレ元気だ。グッモーニン!エビバデイ!」
かみかみ「(´・ω`・)にゃごー…?」
《もしかして…。こいつバカにゃの?》
時間なんて逆行してない。
だが、コークスクリューで加速した思考は、過去に飛び、一気に《朝》へと戻ってくる。
過去から拾い集めた違和感や無視していた感情。
さまざまなピースが可能性の未来を描き出す。
オレ「(*≧ω≦)うっしゃー!」
ジュン「何よ、急にー?」
サルの布団を敷きに行ってたジュンが、2階から降りてきた。
文句の言葉と裏腹な笑顔が、ここの日常を照らす。
ケイ「(*≧∀≦)朝っぱらから、うるせーなー。そのテンションがコークスクリューなんだな。」
オレ「(*≧ω≦)ひひひのひー。」
サル「オレ、明後日。じゃねえや明日には、家にいねえと。また買う流れになっちゃったし、何か疑われてるよー。」
ジュン「ジュピタン。布団敷いたから、もうサル寝かしてあげなよ。」
オレ「そうだな。サル。腕出せ。つーか2階で打ってやろうか?3人でゾンビを担いで階段上がるのやだよ。」
ケイ「サル。そーしちゃえよ。今、元気なのはウソ元気だ。寝ろ。」
サル「…じゃあ、そうするよ。」
オレ「よく眠れるようにラジカセもつけてやる。音にハマって寝ろ。2階行くぞ。」
ーーオレとサルは2階の和室へ向かう。
布団に座るサルに『ブラウンシュガー』を打ち込んだ。
昭和の往診の医者のシーンみたい。
オレ《打ち込む毒が薬になるってか…。》
サル「あ…。ヤベ…。」
オレ「効いたろ。飲み物ここに置いとくからな。テキトーに起こすよ。おやすみー!」
《ガチャ》
ラジカセのプレイボタンを押す。
流れ出す音は夢幻に誘う。
『遠い手』掴んで夢に行ってこい。
オレはサルに、睡眠用セレクションのカセットをつけて部屋を後にする。
サル「…41。ありがとな。おやすみ…。」
オレ「(*≧ω≦)Any time!後でな!」
ーー居間に戻っても忙しい。
こいつら、少しの時間で待ちくたびれてる。
コークスクリュー待ちの御二人様。
何だかんだ、けっこう待たせてるからなー。
ジュンの膝に乗ってたかみかみが鳴く。
かみかみ「( ゜皿゜)にゃんご、にゃにゃんごぉー。」
オレ「わかった。そうだな。」
ジュン「(*≧∀≦)何それ?かみかみ何て言ってるがわかるの?」
オレ「二人がコークスクリュー待ってたよって」
ケイ「(*≧∀≦)当たりだ。」
ジュン「サル寝たんでしょ?やろうよ。かみかみ来るまで空気重かったもん。アタシ疲れた。」
ケイ「確かに。まあ、ドタバタした時間もサルが寝て無事に終了。長かったんだか、短かったんだか。」
オレ「じゃあ早速。ケイからね。」
オレはケイにコークスクリューを打ち込んだ。
ーーケイ「ん?…何だこの感じ。…お?おおおー?」
オレ「(*≧∀≦)ケイ。うるさい!」
続けてジュンにも。
ジュン「あー。…そっか。…ちょっと待って…。」
オレ「オレの説明わかっただろ?司令塔はコークだぞ。まあ、好きに味わえ。コントロールできそうか?トドメのニルヴァーナ吸いたくなったら言えよ。」
ケイ「うわー。これは…。そうか。…でもこれは…。41。ニルヴァーナくれ!」
ジュン「アタシも!」
オレ「…(*≧∀≦)イヤだ。もう少し楽しめよ。ほら、壁が溶けてくし、音だって景色に混ざり込むだろ?」
ーー
41の軽口が、ケイとジュンにダイレクトに刺さっていく。
ジュン「あー。…そっか。ホントだ。もう変な事言わないでー。」
オレ「(*≧∀≦)そっかとは?」
ケイ「( ;∀;)ギブギブ。」
オレ「じゃあほら。これ据え。」
オレは《ニルヴァーナ》を詰めたパイプをケイに渡す。
ケイが一服してジュンにバトン。
ケイ「…どういう事だ?あれ?何だこれ?」
ジュン「はあー!生き返るー!かみかみー!抱っこさせてー!」
かみかみ「(*≧ω≦)にゃおん!」
ジュンの膝に飛びつく。
コイツ言葉わかってんだろ?
《ギュー》
ジュンが、かみかみを抱きしめる。
浮かぶのは、これ以上ない幸せの表情。
ジュン「(*≧ω≦)かみかみー。ぎゅー!」
かみかみ「にゃおん!」
ケイ「…お前の言ってた《祝福》の感覚わかったよ。コークスクリューは何の前情報もなかったらヤバイ。41がトリセツ教えてくれなかったらパニックなってたかも…。」
かみかみ「にゃんにゃごにゃん!」
ケイ「ん?かみかみ、何て?」
オレ「みんな幸せで良かったねってさ。」
ケイ「(*≧∀≦)ホントかよ?ついに、コークスクリューで『ねこリンガル』ジャンキーになったか。」
ジュン「でも、何となくわかるよ。ねー。かみかみー。」
かみかみ「(*≧ω≦)おー」
ーーーー
ここは41のアタマの中の異空間。
球体の鏡の内側に、光るミラーボールが揺れるような景色。
虹色に輝く縞模様が音もなく
ーーだがいつもより重く蠢いていた。
その中心で、ねこにゃんとぴょこにゃんが、複雑な顔をしている。
ーー
ねこにゃん「( ・`ω・´)…タツにアクセスしたけどにゃ。こいつの見てる景色と思考は何にゃ。これは、フツーじゃないよにゃ?おり、ムカついてるにゃん。」
ぴょこにゃん「フツーの基準はわからんにゃ…。でも、おりたち、41にシンクロしてるからかな。まず、アイツだったら許さないだろうにゃ。」
ねこにゃん「( ・`ω・´)こんな気持ち体験したくなかったにゃ。だから《人》の世界に関わりたくなかったにゃ。」
ぴょこにゃん「( ・`ω・´)…おり、にゃんこ世界帰ったら、この《概念》消滅させてやるにゃん。」
ねこにゃん「それ『胸くそ』の事だろ?そいつは、ただの《概念》。現実を直接叩くにゃん。」
ぴょこにゃん「41にやらせるにょか?」
ねこにゃん「いや。アイツはアイツなりにケリつけるにゃろ?そんなんで、すまさないにゃん。」
ぴょこにゃん「裁くにょか?どーやって《人》の世界に直接干渉する気なにょさ?」
ねこにゃん「( ・`ω・´)説明めんどくさいにゃん。《知》の共有モードにチェンジする。この理解不能な感情ごと渡すにゃん。」
ぴょこにゃん「(*≧∀≦)おっけー。共有したにょさ。いい方法思いついた。」
《知》の共有モード。
二柱の思考は、無限の演算のグラデーションを走り抜ける。
そしてーー。
ふざけた最適解が出された。
ねこにゃん「(*≧ω≦)にー」
ぴょこにゃん「(*≧ω≦)にー」
ーー
この二柱が、サル経由で《視た》タツ。
タツの正体はマッドピエロの《アタマ》だった。
ーーそして、ねこぴょこたちは、タツの記憶から、さらに日常の景色を観測する。
《これは、どこかの店?たまり場ってヤツかにゃ。》
《ジャンキーの世界がいかに混沌としてるかわかる。…これじゃ41に届かない。》
ーーーー
そこには狂気をまとった、数人の汚れた男女。
そして、絶望したように俯く女たち。
望むと望まざるとに関わらず、全員の肌には《死神》のタトゥーが刻まれていた。
そこにあるのは、暴力とスピードが支配する縦社会。
41が見た夢のイメージと重なる。
そして何よりねこぴょこが《胸くそ》と感じたのは電話中のタツの行い。
タツはサルと電話しながら、自分の股間に女を引き寄せ、性的奉仕を強要していた。
ーーそれはタツがサルに紹介した女。
エミである。
サルの彼女であるエミはタツに、支配され利用されてる女だった。
ーーーー
二柱が見た、タツを頭とするマッドピエロの愚行。
41側の景色と、タツ側の景色だけで《人》を判断するには早い。
だが、いつもは、ふざけて遊んでばかりの、ねこぴょこたちを本気でムカつかせてしまった。
これは二柱が41とリンクして学んだ《人間》の感情と良識。
ーー《悪も正義も曖昧にゃ》
でもーー《やってもいいことと、悪いことあるにゃろ》
ーーーー
ねこにゃん「(*≧∀≦)決めた!悪いヤツには怪談、ねこ隠しにゃ!」
ぴょこにゃん「(*≧∀≦)ねこ裁判かけてやる。収容所送りにゃん。」
ーーーーーー
再びここは41の部屋。
応接間のカーテンとサッシは開かれ、朝の空気が循環している。
そこに3人のジャンキーが、コークスクリューの祝福を受けていた。
ケイ「あー。幸せ。確かに時間が巻き戻った感じするわ。オレ、今、朝だ。」
オレ「だろ?『整う』って感じ。」
かみかみ「(´-ω-`)にゃおー」
かみかみ《見りゃわかるじゃん。思いっきり朝だお。コイツら手強いバカたちだおー》
ジュン「アタシ、朝ごはん作ろうか?お腹すいてきたー。」
ーー
そんな平和な時間の中。かみかみがオレに何かを訴えてるように鳴いた。
かみかみ「にゃごお。にゃお」
オレ「(*≧∀≦)さすがに、何言ってるかわかんねえよー。」
かみかみ「にゃおー」
かみかみ《にゃんか、ねこにゃんとぴょこにゃんが悪巧みしてる気がするお。ろくでもないこと起きる予感するおー》
ーーーー
エスネコ「(*≧ω≦)にゃ」




