第51話《マッドピエロ編 ウェルカム トゥ ザ ドラッグドクター》
深夜、東京S22区――。
サルの居宅へ乗り込んだ41とケイを待ち受けていたのは、重苦しく澱んだ部屋で麦わら帽子と靴を履き、傘を差して佇むサルの痛々しい姿だった。
重度の脅迫観念と「透明な虫」の幻覚に怯えるサル。
絶望的な状況のなか、41はあえて軽快に、そして力強くドラッグドクターとして笑い飛ばしながら手を差し伸べる。
「今からオレがコインランドリーして、乾燥機かけてやるからな」
家から持参した安定剤を処方し、狂気の渦から仲間を引っ張り出す41。
そして高次元では、いよいよ「かみかみ」の現実降臨に向けた構築が始まる――!
第51話《マッドピエロ編 ウェルカム トゥ ザ ドラッグドクター》
ここは東京N23区。41の家。
今オレは、コインランドリーで乾燥機にかけた洗濯物を、
せっせとたたんでいる。
ーーケイが背中越しに声をかけてくる。
ケイ「(*≧∀≦)お前、意外とマメなのな。」
オレ「( ・`ω・´)いちいち、うっさいんだよ。しわくちゃになっちゃうだろ。」
ケイ「(*≧∀≦)ほめてるんだよ」
オレ「これ終わったら、サルんち行くからさ。ケイ。悪いけどベランダに干してあるヤツ取り込んでくれる?シーツとかタオルケットとか大きいヤツ。ついでにたたんで。」
ケイ「あいよー」
ーー
オレ《(´・ω・`; )んー。調子乗って洗濯しすぎた。早くしなくちゃ。ジュンの置きパンツ、たたんでいるとこなんて見られたくない》
ーーーー
オレ「(ー_ー;)終わったー。ケイ、さんきゅー」
ケイ「(*≧∀≦)ハッパ吸いながら家事手伝いってのもいいな。たたむのにハマって真剣にやってたよ。」
オレ《(*≧∀≦)どんだけハマって、たたんだよ》
ケイの目の前に、シーツ、タオル、タオルケット等、
キレイに折り畳まれた高い洗濯物タワーができてた。
オレ「(*≧∀≦)/ホントだ。びっちりたたんでる!」
ケイ「( ̄^ ̄)どーよ。このバランスアート」
オレ「(*≧∀≦)アートなんだw お前いい奥さんになるよ。とにかくサンキュー。助かった。」
ケイ「すぐ出るのか? 41、電話借りるぞ。サルの姉ちゃんに一本連絡入れとく」
オレ「頼む。オレ準備するから」
ケイ「準備?」
オレ「サルの救急セットだよ。」
ーーケイが電話してる。
ーーケイ「もしもし。ケイです。深夜すいません。…そう、さっきもお邪魔したんですけど…」
ーーーー
オレ《ケイの話だとサルは脅迫観念状態。虫の幻覚かー。今からドラッグドクターが行くから待ってろよ、サル。》
ーー
ケイ「41。サルの姉ちゃんと話した。行っても大丈夫だよ。玄関開けとくから直接サルの部屋に行っていいって」
オレ「了解。それとさ。ケイ。お前いったんヤバイもの、うちに置いて行け。オレも合法のモノしか持ってかないから。」
ケイ「わかった。合法って何だよ?お前、何持ってくの?」
オレ「ケイの知らないヤツかも。赤玉って聞いた事ないか?エリミンって安定剤だよ。オレ、医者で処方してもらってんだ。」
ケイ「医者ー?初めて聞いた。どっか悪いのか?」
オレ「ちげーよ。ちゃんと睡眠取るためだよ。ジャンキーやってんだ。自分を無理矢理、落ち着かせて寝るのも大事だろ。」
ケイ「ケミカルかー。酒と飲む青いヤツ。ハルシオンならやったことあるけどな。お前、何でもやってんだな。アタマ平気か?」
オレ「今んところ平気だよ。つーか行くぞ。途中で飲酒検問に引っかかるのも面倒だから、危ないもの置いてくんだよ。」
ケイ「よし、わかった!抜け道コースで行こう。」
ーーーー
ここは東京S22区。ここも昔ながらの住宅街。
それでも来る度に風景は変わっている。
オレ「へー。ここマンションなったんだな。」
ケイ「うちの回りも、マンションとかアパート多くなってきたよ。土地売って八王子辺りの郊外に、でかい家建てる人増えてんだってさ」
オレ「なーるほーどねー。うちの回りはまだ一軒家多いけどさ。向かいのボロアパートなんて、住んでるの外国人だらけだよ。」
ケイ「ああ。わかる。うちの近所もフィリピン人の女ばかり住んでるアパートあるよ。夕方に送迎してるみたいだから、飲み屋とか風俗の寮代わりなってんじゃないかな?」
オレ「出稼ぎな。…東京も変わってきたよな。湾岸戦争あたりからか?イラン人だの中南米のヤツらとかさ。まあ、オレたちには、その恩恵もあるんだけどな。」
ーー深夜の住宅街。
人も車も通ってない。
明かりがついてる家も少ない
ーー
ケイ「ついたぞ。」
オレ「よし。行こう」
ーーーーまるで不審者登場シーン。
《ガチャ》
サルの家の玄関の扉にはカギがかかってなかった。
お姉さんが開けといてくれたんだろう。
玄関の電気もついていた。
ケイ「おじゃましまーす…。」
オレ「…しまーす…。」
一応、小声で挨拶して入る。
サルの部家は2階。
玄関からすぐの階段を上った突き当たり。
ーもう、12時を回ってる。
ご両親は寝てるのかな。
サルの家に来るのは久しぶりだ。
ケイからサルの事聞いてたのもあるのか、
家の空気も重苦しく感じる。
オレ《家族で入院させようか悩んでるくらいだもんな…》
サルがこの空気を作ってるんだろう。
《ギッギッギッギッ》
なるべく静かに階段を上る。
オレ《脅迫観念に囚われてるんなら、この音さえ敏感に聞こえるのかな?助けに来たけどこっちまで憂鬱になっちゃう。》
《ーーいや。明るく行こう》
ーケイが小声で話しかけてくる。
ケイ「…ここ。」
オレ《(*≧∀≦)知ってるってば。今さらお前まで何、神妙になってんだよ。》
ーーー
《ガチャ》
オレはいきなりドアを開ける。
オレ「サルー!来たぞー!」
ーーそこには目を疑う光景があった。
家の中だというのに、サルはハット形の麦わら帽子をかぶり、スニーカーを履いて立っていた。
おまけに部屋には開かれたビニール傘が置かれている。
陰気で澱んだ重い空気。
サルの病んでる心が充満してる。
ーー湿気てるな。こりゃ《虫》もわくだろ…。
オレ《今からオレがコインランドリーして、乾燥機かけてやるからな》
サル「…41か」
ーーサルの目がバキバキ。
何日か寝てないんだろうな。
見たまんまわかる。
これは《スピード》のやり過ぎ。
だが表情がない。
突然のオレの訪問に驚いてるというよりはーーーー
《来る日が来たって、観念した顔かな…。》
そんな風に見えた。
オレ《…バカだなー。イカれてやがる。こんなんなるまで、何してたんだ?》
オレ《ーそんなの後回しでいいか…。》
ーー
オレ「よお。ずいぶん痩せたな?大丈夫か?」
サル「…まあな」
オレ「この有り様は何だ?帽子に靴。そのビニール傘は?」
サル「…幻覚なんだろうけど…虫が床にいるんだよ。空気中にも浮いてるし。上から降ってくるんだ。」
オレ「そうか。エアコンついてるけど、換気してもダメなんだな?」
サル「透明な虫なんだよ…。ほら、たまに空見た後に《虫》みたいの見えたりするだろ。あれがたくさんいるから…。」
オレ「なるほどな。だから帽子かぶって靴履いてたのか。傘もそういうことなんだろ?」
サル「…。お前らには見えないよな?」
オレ「いや、オレには《虫》見えるよ。
ちっちゃくて透明で泳ぐように、うねうねしてるヤツだろ。
それにオレは《プレデター》まで見えた事ある。」
ケイが後ろからオレを小突いた。小声で囁く。
ーーケイ「( ・`ω・´)…おいっ」
オレ《( ̄^ ̄)虫なんて無視でいいんだってば》
オレ「サル。救助に来たんだ。まず、いいから、これを飲め。」
オレはポケットから、
赤いパッケージの錠剤をサルに差し出した。
サル「…いや。これ以上変になりたくない…。」
オレ「(((*≧艸≦)ププッ もう充分、変だよ。いいから黙って飲め。オレは《医者》だ。それにここは《虫》だらけだ。いまからオレんちに行くぞ。」
サル「…出たくねえよ。…盗聴されてるし、見張られてる。」
オレ「そうか。じゃあ、なおさら逃げなきゃな。うちは安全だ。盗聴もされてねえし、《虫》対策もしてる。とにかく、それを飲め。これは《命令》だ。」
ケイ「サル。41はオレからお前の事聞いて、すっ飛んできたんだ。いいから飲めよ。」
サル「…ケイ。お前もこれ飲んだ事あるのか?」
ーー今度はオレが後ろにいるケイに、
軽くひじ打ちを当てる…。
《とすっ》
ケイ「☆(>。☆)ぐっ!…あるある!それいいよ。落ち着くぜ。」
オレ《ーー(*≧∀≦)ケイ。わりい。みぞおち入っちゃった?でも合わせてくれてサンキュー》
サル「これ何だ?」
オレ「(*≧∀≦)医者からもらってる精神安定剤だ。《虫退治》にもよく効く。オレで実験済みだ。いいから信じて飲めよ。オレのはいつも間違いないだろ?」
オレ《虫退治ーー(*≧∀≦)よくもまあ、オレって、ぬけぬけとウソをつくよな。感心するわー》
サル「わかったよ。」
オレ「それ飲んだらすぐ、うちに帰るぞ。」
ーーサルが赤玉の袋を開け素直に飲んだ。
オレ「効くまで30分もかからないよ。それよりお前、着替えろ。そんな汚いナリじゃ、うちにあげねえぞ。風呂もうちで入れてやる。パンツ何枚か用意しろ。じゃあ外で待ってるからな。」
サル「( ・`ω・´)わーかったよ!」
オレ「( ・`ω・´)あん?てめー、助けに来た往診ドクターに逆ギレか?」
サル「(´・ω・`; )…わかった。支度して行くから。」
オレ「それと、ヤバイものは置いてけ。絶対来いよ。」
《バタン》
ーー
オレとケイは部屋の外に出てドアを閉めた。
ケイ「( ・`ω・´)おい。さっきのひじ打ちー。モロにみぞおち入ったぞ」
オレ「(((*≧艸≦)ププッ悪かったな。でもナイスだった。このウソつき。」
ケイ「( ・`ω・´)ウソつきはどっちだよ。お前だって虫見えるとか言ってたじゃねーか。」
オレ「( ̄^ ̄)プレデターはホントだもんね。」
ケイ「(´・ω・`; )めんどくせーなー…。」
オレ「あ!そうだ!言うの忘れてた。」
《ガチャ》
またサルの部屋のドアを開ける。
サルは言われた通り着替え中。
サル「( ・`ω・´)何だよ。ちゃんと行くよー」
オレ「(*≧∀≦)言うの忘れてた。ビニール傘いらねえからなー」
《バタン!》
ドアの向こう側からサルの声が聞こえた。
サル「( ・`ω・´)うるせー!」
ーー
オレ「(*≧ω≦)ヒヒー。サル怒っちゃったw」
ケイ「(((*≧艸≦)ププッ お前マジか?」
オレ「(*≧∀≦)ケラケラケラケラ。行こうぜ。」
ーーーー
ーーここは、ねこぴょこたちが作った、
41のアタマの中の異空間。
ねこにゃん「(((*≧艸≦)ププッ こいつ天才かよ。」
ぴょこにゃん「(((*≧艸≦)ププッ キレッキレのバカにゃん。」
ねこにゃん「(*≧∀≦)でも、こいついいヤツにゃん。もっとドライで機械的だと思ってたにゃ。」
ぴょこにゃん「(*≧∀≦)そーだにゃ。ふざけ方がいい。ますます、やる気出てきたにょさ。」
ねこにゃん「よし。そろそろ、かみかみ召喚にゃ」
ぴょこにゃん「かみかみの現実アバターねこボディ構築開始だにゃ。」
ーーーー
ー自分がほめられてるように喜んでいるヤツが、隠れていた。
エスネコ「(*≧∀≦)にゃ」ーー《嬉しそう》
ーーーーそして、未来線が傾いていく。




